コラム

2021.12.09 06:00

事業継続力と競争力を高めるためのデジタル化とは?

事業継続力と競争力を高めるためのデジタル化とは?強い中小企業の作り方〜コロナで傾いた企業、傾いてない企業どこが違った?〜
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強い中小企業を作るには?デジタル化成功10の事例

強い中小企業を作るには?デジタル化成功10の事例

具体的に、中小企業にはどんなデジタル化ができるのか。業務形態と3つのデジタル化の段階別に、10の事例をまとめました。ぜひ社内でもシェアなどして、デジタル化推進のヒントにお役立てください。

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本連載では、3回にわたり、「コロナ禍で傾いた企業と、そうではなかった企業」との違いがどこにあったのかを見ていきます。

第2回となる本記事のテーマは「デジタル化」。結論からいうと、デジタル化への取り組みが進んでいた企業ほど、コロナ禍の状況下においても力強く生き残れる傾向があったことがデータでも確認できます。

今後のデジタル化を進展させ、危機でも傾かない強い企業を作るためにぜひ知っておいていただきたい考え方を解説します。

デジタル化に積極的な中小企業は、業績や生産性も高い傾向がある

『中小企業白書』2021年版では、「危機を乗り越え、再び確かな成長軌道へ」をテーマとして、新型コロナウイルスが中小企業・小規模事業者に与えた影響を分析し、危機を乗り越えるための取り組みについて紹介しています。

その中で、生産性向上や働き方改革に加えて、事業継続力強化の観点からも、中小企業におけるデジタル化の重要性が急速に高まっていることが指摘されています。

まず、中小企業において、デジタル化に対する意識がどのような影響をもたらすのかを、同白書の第2部第2章第4節「中小企業におけるデジタル化に向けた組織改革」において掲載されているいくつかのデータにより確認しましょう。

デジタル化に対する社内の意識

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データでは、「全社的にデジタル化に積極的に取り組む文化が定着している」は約1割しかなく、「積極的に取り組む文化が醸成されつつある」企業をあわせても、半数程度です。まだ半数近くの企業では、デジタル化に消極的な姿勢であることが見て取れます。

では、デジタル化に消極的だと、問題があるのでしょうか?次のデータを見てみましょう。

デジタル化推進による業績への影響

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(注)ここでの「積極的な文化がある」とは、「全社的にデジタル化に積極的に取り組む文化が定着している」又は「デジタル化に積極的に取り組む文化が醸成されつつある」と回答した者を指す。ここでの「抵抗感の強い文化がある」とは、「デジタル化に取り組む風潮もあるが、抵抗感も強い」又は「全社的にデジタル化に対する抵抗感が強い」と回答した者を指す。

デジタル化に積極的な企業では、デジタル化の推進により業績が「大きく」または「ある程度」向上した企業が、約75%に上ります。

一方、デジタル化に抵抗感が強い文化がある企業では、それが約42%にまで落ちています。また、業績への影響が「どちらともいえない」という回答は56%に増加します。

つまり、デジタル化に抵抗感が強い文化がある企業では、デジタル化を推進したとしても、それが業績の向上に結びつきにくいという結果が示されています。

さらにデジタル化への意識の差は、生産性への差となって現れてもいます。

労働生産性の水準

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(注)1.各回答数(n)は以下のとおり。全社的にデジタル化に積極的に取り組む文化が定着している:n=217、デジタル化に積極的に取り組む文化が醸成されつつある:n=929、デジタル化に取り組む風潮もあるが、抵抗感も強い:n=864、全社的にデジタル化に対する抵抗感が強い:n=90。

2.労働生産性=(営業利益+給与総額+減価償却費+福利厚生費+動産・不動産賃借料+租税公課)÷従業者合計。

3.2018年度時点の労働生産性の平均値を集計している。

上記データからは、デジタル化への意識が積極的な企業ほど労働生産性の水準が高くなることがわかります。全社的にデジタル化に対する抵抗感が強い企業では、全社的にデジタル化に積極的に取り組む企業の約60%の労働生産性しかありません。

デジタル化の実施状況は、人材採用にも影響を与える

なお、デジタル化は社員の採用にも影響を与えます。たとえば、現在の就職活動をしている若手人材の多くが、会社にテレワーク環境があることが当然だと考えています。つまり、テレワークなどのデジタル環境を整えていない会社は、若手人材の採用面でも不利になる現実があるのです。

デジタル化の3階層

以上のデータからもわかるように、デジタル化に積極的に取り組む企業文化を作り、そして実際にデジタル化を推進していくことは、労働生産性を高め、業績をアップさせることに結びついています。それがひいては、環境変化に対しても生き残れる強い競争力を持つ企業を作ります。

では、中小企業がデジタル化を積極的に推進していくためには、なにが必要となるのでしょうか。

まず、「デジタル化」といっても、その内容は、(1)デジタイゼーション、(2)デジタライゼーション、(3)デジタルトランスフォーメーションという3階層にわかれていることに注意してください。

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(1)デジタイゼーション(=デジタルデータ化)

アナログでおこなっていた作業をデジタルに置き換えるという、もっとも広い意味でのデジタル化です。たとえば、紙で帳簿をつけていたものを、パソコンの表計算ソフトでつけるようにする、といったことです。

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▼デジタイゼーションの事例

情報共有のデジタル化で、職員・利用者・家族の満足度が大きく高まった 社会福祉法人みちくさ(福岡県)
営業マンの日報は「情報の宝庫」。クラウドによる「見える化」で新たな取り組み

(2)デジタライゼーション(個々のプロセスのデジタル化)

個々の業務プロセスをデジタル化することです。たとえば、会計システムソフトを導入して伝票作成から決算書の作成までを、会計システムソフトでおこなうようにすることです。「デジタルシフト」ともいいます。

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▼デジタライゼーションの事例

成長とともに現れる「壁」をICTで突き破る  クラウド型財務会計システムで“自立”経営を実現 孫の手(群馬県)

FAX受信の自動PDF化&クラウド化により本格テレワーク可能体制へ 信越工業(新潟県)

(3)デジタルトランスフォーメーション(DX)

デジタルを活用することでビジネスモデルを見直して、顧客に提供する価値を変化させることです。たとえば、CD-ROMなどのメディアでパッケージソフトウェアを販売していた会社が、クラウドのシステムを利用して月額課金制でサービスを提供するといったことです。

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これらの実施難易度は(1)→(3)の順で高くなります。これまで、業務における個々の作業でのデジタイゼーションへの取り組みが進んでいなかったり、各部署のデジタライゼーションが進んでいなかったりする会社が、いきなりデジタルトランスフォーメーションを実施しようとすることは、少し無理があります。自社の状況に応じて、どの段階でのデジタル化を進めるべきかを見極めましょう。

失敗の可能性が少ない「クイックウィン」での導入

デジタル化を進める上で、次に重要となるのが「クイックウィン」という考え方です。これは、「取り組みやすくて、かつ効果が感じられやすいところから素早く導入する」ということです。

たとえば、営業部にいきなりマーケティングオートメーションなどのツールを導入して、マーケティング活動全体をデジタライゼーションしようとするのは、それなりに準備に時間もかかる、大がかりな変更になります。また、現場の社員に効果が実感できるのに時間がかかるということもあります。

あまりデジタル化に積極的ではなかった企業が、業務の中心部でいきなりそのようなデジタル化をしようとすると、結局現場の社員が、「やりなれているアナログなやり方のほうがよかった」と感じてしまい、移行に失敗する可能性があります。

一方、たとえば経費精算システム、出退勤管理システムといった部分的、周辺的なところでのデジタル化であれば、比較的スピーディに導入が可能でしょう。それによって「デジタル化されると便利だな、楽になるな」という体験をしてもらい、デジタル活用への抵抗を減らしておくのがクイックウィンです。すると、次は、より大規模あるいは中心的な業務でのデジタル化を実現しやすくなります。

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デジタル化にあたっては、業務プロセスの見直しと効率化が必須となる

デジタルトランスフォーメーションは、ビジネスモデルや提供価値そのものを変更または追加することなので、既存の価値提供プロセスの考え方とは違った考え方で取り組まなければなりません。

たとえば、パッケージソフトを販売していたときは、「なるべく高機能で完成された商品を発売する」という考え方のほうが、顧客が感じる価値は大きかったものが、クラウドで提供するときには、「不足する機能があっても提供を開始して、素早く機能追加などのアップデートを繰り返していく」という考え方のほうが顧客の価値がより高くなるかもしれません。

当然ながら、それにあわせて、既存の業務プロセスを変更する必要があるでしょう。

また、デジタルトランスフォーメーションまではいかない、業務プロセスのデジタライゼーションを実施する場合でも、既存の業務プロセスは変えずに、それに合わせるようにシステムを導入するといった考え方はやめたほうがいいでしょう。

なぜなら、アナログ的な業務プロセスの場合、そもそもそのプロセスが非効率であったり、他部署との連携が十分に取れていなかったりするということが考えられるためです。

デジタライゼーションの実施にあたっては、既存のプロセスを全般的に見直し、システムが想定する効率的な業務プロセスに、あわせていくという発想での取り組みが必要です。

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デジタル化導入のタイミングや投資費用の考え方

次に、デジタル化を導入するタイミングや、その費用については、どのように考えればいいのでしょうか。

まず、タイミングについては、「思い立ったときにすぐに実行したほうがいい」というのが基本のセオリーです。たとえば、コロナ禍のような危機、大きな環境変化が生じたとき、「危機になったからデジタル化しよう」ということでは、なかなか迅速な対応はできません。先に述べたように、デジタル化は業務プロセスの見直しが必須になりますので、それは一朝一夕にできることではないためです。

日頃からデジタル導入に積極的な企業文化という基盤があるからこそ、危機に見舞われたときにもそれに対応した、迅速なデジタライゼーションやデジタルトランスフォーメーションが可能になるのです。

ただし、デジタル化にそれなりに投資が必要ですので、投資ができるタイミングでなければなりません。その意味で、人材採用を考えたときは、デジタル化を検討するよいタイミングでしょう。

つまり、人材採用に投資をするのか、デジタル化に投資をするのかという選択として検討できるということです。

人材を1人採用すれば、企業によっても異なりますが、年間500万円~1000万円程度の人材投資は必要になるでしょう。それであるなら、その分をデジタル化投資にまわすことで、より高い生産性が上げられる可能性はないかを考えるのです。

ICT機器やシステムは、費用と考えると高額に思えますが、何年にもわたって利益を生む投資だと考えれば、適切な計画に基づき実施を検討できるはずです。

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デジタル化を進める際には、トップが強い決意で社内を導くべき

これまでの説明からも感じられたと思いますが、デジタルトランスフォーメーションはもちろん、デジタライゼーション、あるいはデジタイゼーションについても、業務内容の見直し、部門間連携の見直しなどを必ず伴う、全社的なプロセスとして取り組まなければなりません。

そこで、経営トップ自らが「絶対にデジタル化を成功させて会社を変える」という強い決意を持って、トップダウンで主導をすることが、デジタル化実施のもっとも重要な点です。

社員想いの社長には、デジタル化についても、「現場の意見を尊重しながらボトムアップで進めよう」と考える方がいますが、これは多くの場合、失敗につながります。

なぜなら、現場から上がってくるニーズは、どうしても各部門の部門最適を求めたもの、また、目先の楽さを求める近視眼的なものになってしまいがちだからです。すると、社内で力が強く、声が大きい部門の意見が通りがちですが、それが必ずしも全社的に最適化された意見だとは限りません。

長期的な視野に立ち、社内全体の最適化を考えたデジタル化導入を決断できるのは、社長しかいないのです。

とはいえ、社長が実際に動きまわる必要はありません。社内全体を見渡せて、かつ現場からも信任が厚い部門長クラスの人物をトップに据えた、社長直属のプロジェクトチームを作り、チームからの報告に基づいて社長は決断を下せばいいのです。

まとめ

社内のデジタル化が、常に成功して必ず成果を出せるとは限りません。他の業務や他の投資と同様に、ときには成果が出せずに終わることもありえます。だからこそ、まず小さいところから素早く取り組み、トライ&エラーを繰り返しながら、自社ならではのノウハウを積んでいくことが重要なのです。

そうして作られたデジタル化の基盤が、危機に強く、継続性の高い企業体質を作るのだといえます。

取り組みを検討する際に役立つのが、自社と近い事業を行っている他社の事例です。そこで、「デジタル化に成功した10の企業」の事例をまとめた事例集を用意しました。ぜひダウンロードし、取り組みの参考にしてください。

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新土居統弥氏の顔写真

取材協力

新土居 統弥(にいどい とうや)

みらいコンサルティンググループカンパニーリーダー。中堅・中小企業のデジタル化、デジタルマーケティング、基幹システムについてのご支援を取りまとめる。システム化にこだわらない企業風土、組織、人に向き合うデジタル化を大切にしている。

吉江奈那江氏の顔写真

取材協力

吉江 奈那江(よしえ ななえ)

みらいコンサルティンググループシニアコンサルタント。システムインテグレーター企業、事業会社にて情報システム開発、導入に携わり20年以上の実績。プロジェクトマネジメント実績も多数あり、PMP(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)資格を取得。

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記事執筆

中小企業応援サイト 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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