事例集

2021.01.18 06:00

成長とともに現れる「壁」をICTで突き破る  クラウド型財務会計システムで“自立”経営を実現 孫の手(群馬県)

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執筆者

フジサンケイビジネスアイ

産経新聞グループの日本工業新聞社が発行する日刊ビジネス情報紙。我が国経済の成長を盛り上げると同時に、経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。


群馬県太田市のリハビリ型デイサービス施設「デイホーム孫の手・おおた」は、ちょっとユニークな高齢者施設だ。利用者がくつろぐ施設の部屋のレイアウトにはさまざまな趣向が凝らされている。

リハビリルームは、ハワイアン装飾を施されたトロピカルな雰囲気。カラオケルームはウェスタンアメリカン風だ。利用者がくつろぐ部屋はブリキのバスや古びた炊飯器や菓子箱、看板などが飾られた昔懐かしい昭和レトロ風な部屋や、昭和のスナック風のお部屋もある。こたつを置いた和室、山小屋のロッジ風の部屋もある。利用者はそれぞれお気に入りの部屋でテレビや会話を楽しんでいる。

「孫の手」を経営する浦野幸子社長。自宅の一室からスタートした

「孫の手」を経営する浦野幸子社長。自宅の一室からスタートした

「部屋に入ったら、『わあ、ここは、こんな感じなんだ!』って思えるでしょう。目から入った刺激が心を動かして、脳に刺激を与える。『ちょっと遊びに行ってこよう』という気持ちになってもらえます。“介護のテーマパーク”というか、そんな建物づくりを心掛けているんです」と施設を運営する株式会社孫の手の浦野幸子社長は語る。

リハビリ型デイサービスは、理学療法士や作業療法士が要介護者や脳疾患などで障害認定を受けている患者に機能訓練や身体機能の改善を支援するサービスだ。孫の手では、「おおた」を含め群馬県を中心に9カ所のリハビリ型デイサービス施設のほか、訪問看護ステーション3か所、ショートステイ、サービス付き高齢者住宅などを運営しており、「おおた」はその中でも最も新しい施設だという。

「運動して汗をかいたり、笑ったり、怒ったり、泣いたりしながら、人の五感をちゃんと使ってもらえるように」(浦野社長)。こだわりのレイアウトにはそんな思いが込められているという。

「転んではいけない。何かあってはいけないと縛りつけても利用者は楽しくありません。抑制しないで体を動かし、感情を表に出すことで、機能の回復につながります。大事にすることと健康にするということはある意味、逆行しています」と浦野社長は、リスクを鑑みながら要介護者たちの機能改善、自立支援に取り組む。確かに通所する利用者の表情はみな生き生きとしていた。

地域のニーズに応える形で事業が拡大

リハビリ型デイサービス施設「孫の手おおた」。浦野社長のこだわりがちりばめられている

リハビリ型デイサービス施設「孫の手おおた」。浦野社長のこだわりがちりばめられている

仙台の病院で理学療法士として働いていた浦野社長は、結婚を機に群馬に。結婚から数年を経て、訪問看護ステーションに配置された訪問のリハビリの事業を2001年に起業した。「当時、訪問看護はあっても、訪問リハビリはなかった」と振り返る。旧笠懸町(現みどり市)の自宅の一角に事務所を設け、看護師を雇用。雇用した看護師の管理のもと、経営者の浦野社長が訪問リハビリのサービスを提供するという事業スタイルだった。

ハワイをイメージしたリハビリルーム

ハワイをイメージしたリハビリルーム

当時から地域のニーズは高く、周辺市町村からも依頼が寄せられた。「病院を退院して通院するといっても、患者さんはなかなか通院できません。また、一定の期間が過ぎると、治療も打ち切りになります。その間、何のリハビリも受けなければ、機能はどんどん落ちていく。訪問リハビリは利用者にとって健康でいるための重要なサービスです」。

自宅を訪問し、1時間ほどストレッチや筋力訓練、歩行訓練、日常生活動作の指導をしたりする。車で1日9件を回り、会社に戻るのが夜遅くになることもあった。介護保険制度がスタートしたタイミングでの起業も大きな追い風となった。高まる地域でのニーズに対応するため人員を増強。2年が経過したころには職員の数は20人に増えた。

一方で、利用者からはこんな声も聞かれた。「自宅にいてもつまらない…」。そこで2003年、リハビリを受けられるデイサービス施設を太田市内に最初に開所。需要にこたえる形で施設の数が増え、今に至っている。利用者の数は介護保険の申請件数ベースで2000件近くになり、スタッフは約270人に上っている。

管理システムを一気に更新 業務の改善につなげる


拠点となる施設が分散化し、社員の数が増える中、大きな課題となってきたのが、会計・経理の事務対応だった。孫の手では、労務管理や介護保険管理のシステムを独自に構築して運用していたが、経理事務が追い付かなくなるようになってきた。

自社で開発した労務管理ソフトは、介護職特有の業務内容に対応した機能があり、使い勝手はよかったが、「残念ながら給与計算ができるだけだったのです」(浦野社長)。また、日々の収支の計算は別の経理ソフトで対応。こうしたデータを毎月、会計事務所に送り、給与の払い込みや収支や決算などの会計処理を行っていた。

年末調整や欠勤届など職員が会社に届け出る書類の作成はすべて手書き。浦野社長をはじめ管理職が施設を訪問した際に回収していた。「回収するまでに3~4日タイムラグが生じることもあり、届け出の処理が遅れることもあったんです」と浦野社長は語る。欠勤届の遅れ一つとっても給与の支払いだけでなく、経理や会計管理など会社の経営全体に影響が及んでしまうことにもなりかねない。

そこで、こうした状況を見直そうと、2020年9月に導入したのが財務や会計、給与計算などを一元的に対応できる基幹業務ソフトだ。
さらに11施設をグループウエアでつなぎ、情報をクラウドで管理。ネットワークのセキュリティーも強化した。

基幹業務ソフトを導入したことで、これまで会計事務所に任せていた財務・会計処理は一元的に対応できるようになった。労務に関する届け出は、職員が各施設にあるパソコンに入力すれば、グループウェアを通じて管理部門が確認できる。「書類を持ち運べば、紛失のリスクも出てきますが、その心配もなくなりました」と浦野社長は頬を緩めた。

基幹業務ソフトを導入したことで、これまで会計事務所に任せていた会計や経理などの管理業務は自社で対応できるようになった。「会社が成長した証(あかし)ですね」。会計事務所の税理士からこう声を掛けられ、浦野社長は20年の歩みを噛み締めていた。

業務に合ったソフトを探し出す


職員の教育にも力を入れる浦野社長。介護事業に求められるものとして「人間力」「社会人としての能力」「専門的な能力」の3つを挙げ、「3つがそろわないと利用者を喜ばせることはできない」と強調する。技術だけではなく、ふだん、利用者と接しているときの態度にも気を配る。職員のスキルアップのために毎月、各施設で勉強会を開催しているが、その指導内容などを映像に記録し、ICTを活用して介護事業者向けに提供することも考えている。

多くの利用者が集う昭和のスナックをイメージした部屋

浦野社長がこれまで自社のソフトにこだわったのは既成のソフトでは、ほしい機能がなかったり、不必要な機能があったりして、長年培った事業のスタイルやノウハウを生かせないと判断していたからだ。介護事業という一般の企業と異なる業態に適合するソフトはあまりなかった時代だったかもしれない。だが、時代の流れとともにソフトの開発も大きく進歩。さまざまな業態のニーズに対応した機能が開発され、活用の幅は昔に比べて広がっている。

事業の規模が大きくなれば、規模か小さかったころは目立たなかった非効率な部分が新たに顕在化するようになる。そこをどう改善するか。成長とともに経営者が必ず突き当たる壁だ。ICTはその壁を容易に突き破るドリルの役割を果たしてくれる。

中小企業の多くはICTの専門知識を持つ人材がないのが現実だが、リコージャパンのように幅広い業務ソフトに精通した事業者のアドバイスを受けることで、自社にぴったりのソフトを見つけ出すことも可能だ。自社の課題を見つめ直し、成長の突破口を探し出してみよう。

会社概要

会社名

株式会社 孫の手

本社

群馬県太田市大原町156-3

電話

0277-46-7010

設立

2001年

従業員数

約270人

事業内容

訪問看護、訪問介護、ショートステイ、通所介護、居住介護支援事業・理学療法士・作業療法士・言語聴覚士などの訪問事業、サービス付き高齢者住宅、健康増進事業など

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