コラム

2020.09.24 06:00

ICTソリューションとは?ICTが必要な背景やITとの違い、活用事例まで解説

今さら聞けないICT用語 ICTソリューションとは?
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ICTに関連する技術がどれだけ発展しても、それをどのように使うか、どのような課題を解決できるのかを考えて活かさないと、効果がありません。そこで、ICTでどのようなことが実現できるのか、実際に活用されている事例や課題、今後の見通しなどを紹介します。

ICTソリューションとは「情報通信技術を使った問題解決方法」

「ICT」は情報通信技術と訳され、コンピュータを単独で使うだけでなく、ネットワークを活用して情報や知識を共有することも含めた幅広い言葉です。一方、「ソリューション」は課題解決を意味する言葉で、企業や組織が抱える問題をさまざまな方法で解決することを表します。

つまり、「ICTソリューション=情報通信技術を使って企業の課題や問題を解決する」ことで、ICTによる業務の効率化や品質の向上などを実現することを意味します。

ICTの歴史

総務省による「令和元年版 情報通信白書」には「平成の30年間は、ICTサービスが大きな発展と普及を遂げた時代であった」と書かれています。1989年(平成元年)には米国においてインターネット接続事業者が設立され、日本でも複数の大学間を結ぶインターネットの研究プロジェクトが発足しています。

参考) https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r01/pdf/index.html

1987年には自動車電話から大幅に小型化した端末により携帯電話のサービスが開始され、1990年代中頃に普及が進みました。2007年にAppleが発表したiPhoneなど、スマートフォンの拡大もあり、モバイル回線での通信が定着しています。

ICTとITの違いは“技術の活用法”か“技術”かにある

ITは「Information Technology」の略で、日本語では「情報技術」と訳されます。ハードウェアやソフトウェア、ネットワークなどの技術のことを指し、これまでも自動化やシステム化が進められてきました。

一方のICTはコミュニケーションに関する部分をより強調した言葉で、これらの技術を「活用」してさまざまな課題解決に貢献します。

IoTとはさまざまなモノがインターネットでつながる仕組みのこと

IoTは「Internet of Things」の略で、日本語では「モノのインターネット」と訳されます。スマート家電やセンサーなど、さまざまなモノがインターネットにつながることで、生活が便利になることが期待されています。

例えば、設備の稼働状況をセンサーで把握したり、遠隔地から機器を操作したり、といったIoTを使った課題解決はIoTソリューションだといえます。

ICTでできること

ICTにおける「コミュニケーション」という言葉は「通信」と訳されるように、ネットワークを通じてさまざまなことができるようになりました。その代表的な例を紹介します。

ヒト、モノ、コトをつなぐコミュニケーションの活性化

誰もが常にインターネットに接続していることから、コミュニケーションの手段も変わってきました。TwitterやInstagram、FacebookなどのSNSにより人とのつながりが可視化されるだけでなく、チャットによる密なやりとりも可能になりました。

また、IoTにより外出先からも社内や自宅の機器にアクセスする、といった使い方や、「オンライン飲み会」など新たなイベントのスタイルも登場しています。

クラウドシステムによる情報の同時共有

最近ではファイル共有サービスがいくつも提供されています。これまでのようにメールに添付してファイルを送受信するのではなく、クラウド上にファイルを配置して共有することで、複数人で同時に編集することも可能になりました。

担当者が社外にいても、インターネットに接続できる環境さえあればファイルにアクセスできるため、速やかに情報を共有できます。

物理的制限のないビジネスや社会活動

高速なインターネット回線が普及し、便利なWeb会議システムを安価に利用できるなど、リモートワークやテレワークが可能な環境が整いつつあります。クラウド上でメールのやり取りができ、外出先や自宅などさまざまな場所から社内のシステムにアクセスできれば、時間や場所にとらわれない働き方が可能になります。

ICTを活用したソリューションの事例

ICTはIT業界だけの話ではなく、さまざまな業界で活用されています。そこで、いくつかの業界でのICTソリューションの事例を紹介します。

建築業界での活用事例

建築業界では、建設機械の遠隔操作などに注目が集まっています。最近話題の5Gを用いて、その特徴である高速・大容量、同時多数接続、低遅延を活かし、現場にある複数のカメラ映像をもとに遠隔地にいる操作者が建設機械を操作します。制御信号を低遅延かつ高速に送受信することで、リアルタイムに操作できるのです。

災害時など、危険を伴う場所であっても作業員の安全を確保できるだけでなく、人員の有効利用や作業時間の短縮など効率化の面でも貢献できることが期待されています。

製造業界での活用事例

製造業では不良品の検出や製品の分別などを瞬時におこなうセンサーなどが一気に広がりを見せています。AI(人工知能)による不良品の検出では人間を超える精度を実現できるようになっていますし、製造機械やロボットの自動運転により大量生産が可能になりました。

さらに、製造を管理する作業員の配置や資材の管理、倉庫からの搬入、搬出などあらゆる場面にICTが活用され、効率よく仕事を進められるようになっています。

医療現場での活用事例

医療現場では、遠隔での医療相談だけでなく、オンライン診療に進むことが期待されています。診断や薬の処方だけでなく、手術ロボットを用いたオンラインでの手術が可能な技術も開発が進んでいます。

5Gにより遠隔手術操作での遅延を解消し、遠隔地にいるベテラン医師が手術の難しい部分を分担することで医療の地域格差をなくすなど、質の向上などが期待されています。実用化までは少し時間がかかりますが、インフラの整備が待たれています。

福祉・介護業界での活用事例

福祉や介護の現場では、地域の医療機関や介護施設間での効果的な情報収集といったこれまでの延長線上の対応だけでなく、徘徊を感知する機器や排泄を予想してくれるデバイスなどさまざまなセンサーが登場し、自立支援や介護者の負担軽減につながっています。また、サービスロボットも増加しており、高齢者と会話するロボットや、介護者の体への負担を軽減する支援ロボットなどがあります。

運輸業界のための活用事例

タクシー会社では、GPSを利用した配車アプリが登場しています。現在地の近くにいるタクシーを調べることができ、その位置情報と到着までの時間が予測できるので、タクシーを呼ぶ前に確認できます。

また、宅配業者などでは配送状況をインターネット上で確認できるサービスが当たり前になっただけでなく、Uber Eatsのような配達員のネットワークが登場し、利用者の都合にあわせて最適な時間と場所に配達できるサービスも登場しています。

ICTを導入する際の課題

上述の「令和元年版 情報通信白書」では、平成30年版から引き続き、「ICT投資が効果を発揮するためには、業務改革や企業組織の改編等をあわせておこなうことが重要」としています。

つまり、これまでと同じ仕事を同じ方法で外部委託してしまっており、業務改革をせずにICTを導入しているだけでは意味がないのです。

ICTを導入するときはこれまでと同じ仕事をICTで自動化するような「業務の効率化」ではなく、これまでとは違った視点で新たな仕事を作り出すような「ビジネスの創出」にならないと効果が薄いのです。

国際社会における日本のICT競争力は低迷

ICTに関わる人材について考えると、日本では「ICTを使う側」の企業ではなく、「ICTで何かを作る側」の企業に多いという特徴があります。「令和元年版 情報通信白書」に書かれているIPAの調査によると、ICT企業(ICTで何かを作る側の企業)に所属する人材の割合が、2015年時点で日本の72.0%に対し、米国では34.6%、英国では46.1%、ドイツでは38.6%となっています。

このように利用者側の企業の実務を理解した人材が少ないことが、導入の効果を限定的にしてきたとともに、今後の障壁となることが考えられています。そして、ICT人材が量的に不足しているだけでなく、質の面でも一部不足しているとの見方があります。

例えば、日本はIoT製品では「産業用ロボット」「コンシューマヘルスケア機器」「デジタルサイネージ」等の5項目、ICT製品等では「ポータブルゲーム」「据置型ゲーム」「画像センサー」の3項目で世界トップシェアを占める」とありますが、技術面においては、データ分析やスマホ、クラウド、セキュリティなどに詳しい人材が不足しているのです。

各企業がICTソリューションを展開している

このような課題がありながらも、業界や業種、企業規模を問わず、多くの企業がさまざまなICTソリューションを展開しています。どのようなICTソリューションがあるか、導入事例などは展開している企業のWebサイトで紹介されていますので、調べてみると良いでしょう。

ICTソリューションの開発会社も増えており、「あらゆる産業にICTが一体化していく」という状況が発生しています。これはデジタルトランスフォーメーション(DX)と呼ばれています。

ICTソリューションの今後

政府のICT政策の動向を見ると、「令和2年版 情報通信白書」では、「ICT分野については、デジタル市場のルール整備、スマート公共サービス、次世代インフラ等の取組を進めていくこととしている」としています。

また、「2020年にフォーカスした5つの「重点テーマ」(「IoTおもてなしクラウド」による都市サービスの高度化、多言語音声翻訳技術の社会実装、サイバーセキュリティの確保、テレワーク/サテライトオフィスの推進及び社会におけるキャッシュレス化の普及展開)をピックアップし、目標の達成に向けて取り組んでいる」とのことです。

このように、技術面やビジネス面だけでなく、制度の改革なども必要になってきます。世の中の変化に注目し、新たな視点でICTソリューションの活用に取り組むことが求められているのです。

参考) https://www.soumu.go.jp/johotsusintokei/whitepaper/ja/r02/pdf/index.html

まとめ

今回はICTソリューションの概要と、ICTを活用したソリューションの概要、課題などを紹介しました。ICTソリューションを導入するだけでなく、これまでになかったビジネスの視点が必要です。

「中小企業応援サイト」では、中小企業を中心にICTといったソリューションによる経営革新の事例についての記事を掲載しています。事業継承や補助金、中小企業支援施策など中小企業経営者が持つ悩みに応えるコラムなども掲載していますので、ぜひご覧ください。

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執筆者

増井 敏克

増井技術士事務所 代表。技術士(情報工学部門)。情報処理技術者試験にも多数合格。ビジネス数学検定1級に合格し、公益財団法人日本数学検定協会認定トレーナーとしても活動。「ビジネス」×「数学」×「IT」を組み合わせ、コンピュータを「正しく」「効率よく」使うためのスキルアップ支援や、各種ソフトウェアの開発をおこなっている。『IT用語図鑑』など著書多数。

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