コラム

2022.12.06 06:00

トレーサビリティとは?製造業での取り入れ方や注目されている背景を解説

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トレーサビリティとは?1行で解説すると

トレーサビリティとは、製品の原材料の調達から生産、流通・販売、消費までを追跡可能な状態にすること。

トレーサビリティとは

トレーサビリティとは、直訳すると「追跡可能性」という意味。製品がどんな原材料によって、どこで、どのように作られ、流通し、販売されているのかを、把握する仕組みを指します。主に、製造業や食品業界などで広く導入されています。

トレーサビリティという言葉の使い方

トレーサビリティという言葉は、「追跡ができる状態であること」、または、「追跡を可能にする仕組み」という意味で使われます。たとえば、「トレーサビリティを確立する」「トレーサビリティによって追跡する」「トレーサビリティの改善を行う」という使い方がされます。また、「食品トレーサビリティ」「医薬品トレーサビリティ」という形で、具体的なトレーサビリティを指す言葉として使われます。

トレーサビリティの考え方

トレーサビリティという用語を理解する上で知っておきたいのが、「トレースフォワード」と「トレースバック」というふたつの考え方です。

トレースフォワードとトレースバック

「トレースフォワード」と「トレースバック」とは、トレーサビリティの追跡の仕方を示す言葉です。生産を出発点と考えた場合、生産から出荷までの時間経過に従って追跡することをトレースフォワード、反対に、遡って記録をたどることを、トレースバックと呼びます。

製品の不良が見つかった場合、トレースフォワードを行うと、それがどのような経路で市場に出回っているかを特定し、回収することができます。トレースバックは、製品に問題が見つかったときに遡って追跡することで、原因となった工程やロットを特定します。

トレーサビリティの大まかな種類は2タイプ

トレーサビリティは、大きく分けてふたつのタイプに分けることができます。それは、「チェーントレーサビリティ」と、「内部トレーサビリティ」です。

チェーントレーサビリティ

チェーントレーサビリティとは、流通における、メーカー間の複数の工程における製品の移動を把握することです。原材料から生産、流通、販売までの履歴を全体的に追跡できる状態を指します。一般的なトレーサビリティは、このチェーントレーサビリティに該当します。

内部トレーサビリティ

内部トレーサビリティとは、企業や工場などのひとつの場所に限定して、製品の動きを追跡できる状態にすること。物流全体ではなく、拠点ごとに実施するトレーサビリティです。品質向上やリスク管理のためには、部品の仕入先、組み立て方法、検品結果などを、その拠点から出荷した後も追跡できる状態にしておく必要があります。また内部トレーサビリティは、自社内で完結できるため、導入がしやすいという特徴があります。

ほかにもこの言葉の意味はご存知ですか?

トレーサビリティのほかにも、ガバナンス、アセスメントなど、言葉の意味を知らずに困ったことはありませんか? 中小企業応援サイト独自の資料「聞くに聞けない経営用語集」では、今さら人に聞けないビジネス用語を詳しく解説しています。

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トレーサビリティが必要な理由、注目されている背景とは?

なぜ今、トレーサビリティが重視されているのでしょうか。その背景には、BSE問題や、リスクアセスメントの課題があります。

BSE

トレーサビリティが注目されたきっかけとなったのが、BSE(牛海綿状脳症)の問題です。イギリスなどで牛へのBSEの感染が広がり、日本でも2001年に感染が初確認されました。2003年、農林水産省は牛トレーサビリティ法を施工。牛の生産履歴を開示することが求められ、その後、ほかの食品に対するトレーサビリティも義務化されました。

リスクアセスメントとして

トレーサビリティは、リスクアセスメントの観点からも重要です。リスクアセスメントとは、工場や事業所などで起こりえるリスクを特定し、それを事前に取り除くための対策を行うこと。製造の作業工程や、出荷までの流れを追跡できる状態にしておくことで、問題が起きたときに迅速に原因を特定でき、被害を最小限に止めることができます。職場の安全性を高めるためにも、トレーサビリティによって各工程を可視化して、危険な要素を排除することが有効です。

「リスクアセスメント」について詳しくはこちら

トレーサビリティ導入のメリット

トレーサビリティ導入には、さまざまなメリットがあります。最大のメリットは、不良品の流出を防げること。製品や食品に問題が生じたとき、製造工程や流通経路を追跡することで原因を特定し、回収などの対策を講じることができます。スピーディな問題解決により、企業の損害や、消費者に与える影響を抑えられます。

また、トレーサビリティを確立して、商品や食品の産地や流通経路を明らかにすることで、消費者からの信頼を得ることができます。自社製品の安全性を伝えることは、顧客満足度や、企業イメージのアップにもつながります。

トレーサビリティの徹底は、製品の品質向上にも寄与します。問題が起きたときに、その原因を正確に把握できるため、具体的な改善策を講じることができます。また製造工程の可視化により、作業の効率化や、品質向上などの業務改善に取り組むことも可能です。

例│食品製造業におけるトレーサビリティを導入するために、工程別に確定すべきこと

では、トレーサビリティの各ステップにおいて、何を確定しておくべきなのでしょうか。食品製造業を例に、各工程で明確にすべきことを解説します。

調達・購買計画

トレーサビリティの導入には、原料の仕入れ先など、取引先との連携が重要です。調達・購買計画を立てる際には、製造から販売までの工程における追跡が可能になるように、取引先との間で情報を伝達できる仕組みを整えましょう。企業間を移動する食品の識別番号と、移動日、移動元・移動先の企業名は、基本的な情報として必ず共有する必要があります。また、その他の情報は、トレーサビリティの目的に応じて、どの情報を、どのようなときに、どのような手段で伝達するのか、企業間で定めておきましょう。

製造管理

製造に関する情報を記録することで、食品を識別できる仕組みを整えます。まずは、加工・製造・包装した製品を、どのような条件でひとつの識別単位で管理するかを定めます。製造ロット番号の割り当てや識別記号の記録ルールに基づき、製品の外箱にロット番号や識別記号を記載します。ロットにより製品の在庫状況を把握しやすくなり、問題発生時に、ロット番号に従って問題のある製品を探せます。また、出荷済みの製品に関しても、出荷先や消費者にロット番号を知らせることでスムーズに回収が行えます。

原材料入荷・保管

原材料の入荷に関する情報も、正しく記録する必要があります。①いつ、②どこから、③何を、④どれだけという4つの項目について確認しましょう。入荷に関する情報を把握することで、問題が発生した際に、対象となる食品の原料や、入荷元を特定できます。また、入荷ロット番号の記録・表示によって、入荷品の識別や、保管も効率的に行えます。

加熱・冷却

加熱、冷却、乾燥などの加工に関しては、作業前の入荷ロットを照合し、加工日、加工前後の重量、その他、識別に必要な作業の情報があれば記録します。作業後のロットに、識別記号を記載したラベルを貼るなどして、加工後の製品を正確に管理しましょう。

検品・梱包・出荷

検品・梱包の工程においても、必要な情報を記録・保存する必要があります。また梱包時には、物流梱包を識別できるよう、SSCC(出荷梱包シリアル番号)を活用しましょう。問題発生時に出荷先を特定できるよう、出荷時の確実な伝票や台帳の作成・保存を行うことも重要です。

品質管理

食品の製造工程においては、衛生管理や品質管理に関する記録も、製品のロットと紐づけることが大切です。製品検査記録や温度などのモニタリング記録に、原料や製品のロット番号や、日付を記入することで、問題が起きたとき、その製品ロットの製造工程においてどのような品質管理や温度管理がなされていたかを追跡することができます。

在庫管理

在庫管理においても、ロット番号や識別記号による記録が重要です。入荷品の入出庫台帳に、入荷ロット番号、入庫日、品名、製造日、数量を記載し、入荷ロットごとの出庫数や残数を記録しましょう。この情報によって、在庫数が正確に把握でき、日付が古いものから先に出庫でき、不良在庫を減らすなど、効率的な在庫管理が可能になります。

トレーサビリティ導入のためのICT技術

現在、トレーサビリティの効率化のため、さまざまなICT技術が用いられています。その具体的なソリューションは、次のとおりです。

基幹システム導入による情報の一元管理

トレーサビリティの効率化に有効なのが、基幹システムの導入です。基幹システムの導入によって、トレーサビリティを含む、製造から販売までの情報を一元管理することができます。生産、販売、物流など、各フェーズで別のシステムを運用していると、情報の追跡に時間がかかる、また入力作業が重複するなどの非効率が発生しますが、基幹システムで一元管理することで、情報のスムーズな閲覧や、情報管理の生産性向上が可能になります。

改ざん防止のためのブロックチェーン

トレーサビリティには、ブロックチェーン技術も活用されています。ブロックチェーンとは、分散化してデータを管理する技術で、優れた改ざん耐性と、記録性を持っています。サプライチェーンによるトレーサビリティを運用するためには、データが正しいものであると保証されることが重要です。ブロックチェーンに記録された情報は、一度書き込まれると書き換えることは困難です。トレーサビリティにブロックチェーンの技術が活用されることで、高い機密性と、サプライチェーン間や消費者へのスピーディで正確な情報提供が可能になります。

RFIDタグ

RFIDタグの活用も、効率的でスムーズなトレーサビリティに有効です。RFIDとは無線通信ができる電子タグのこと。タグに記録された電子データを、リーダライタを使って、非接触で読みとることができます。タグを1枚1枚、スキャンするのではなく、電波が届く範囲にあるタグを一括で読み取ることができるため、各流通過程での記録を効率的に行えます。また、データの読み取りだけでなく、書き換えも可能で、トレーサビリティシステムを、効率的に運用できます。

【事例】製造業におけるRFIDタグを用いたトレーサビリティ

茨城県のラセン管などを手がけるメーカー、昭和螺旋管製作所では、販売後の製品の追跡にRFIDを活用しています。ショッピングセンターやオフィスなどの天井裏にあり、容易に取り出すことができないスプリンクラーの配管に、製造番号や製造日時などのデータを埋め込んだRFIDタグを設置。遠隔地から、交換が必要な配管の位置を確認することができます。RFIDタグによって、納品後は商社や代理店経由で設置業者に渡り、どこに設置されたのかが追跡しにくい自社製品のトレーサビリティを実現しています。

#製造業(その他)の事例

天井裏の配管をRFIDタグで「見える化」、万が一に対応 昭和螺旋管製作所(東京都・茨城県)

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よく聞くビジネス用語を使いこなそう!

食の安全や、消費者からの信頼獲得の観点からも重視されているトレーサビリティ。その意味は理解できましたか? トレーサビリティへの関心が高い製造業や食品業界の取引先との会話で、さっそく使ってみてはいかがでしょうか。

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