事例集

2021.09.07 06:00

天井裏の配管をRFIDタグで「見える化」、万が一に対応 昭和螺旋管製作所(東京都・茨城県)

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工場の製造ラインから波状に加工された2メートルほどのステンレス製の配管が流れてくる。巻き出し管と呼ばれ、ホテルやショッピングセンター、高層マンションなどに設置が義務付けられている防火用スプリンクラー用の配管だ。

「天井裏にあるスプリンクラーの配管元と、出火の際に消火剤を巻くスプリンクラーヘッドをつなぐ管です。この配管はどこからでも自由に曲げることができるんですよ」

茨城県常総市にある昭和螺旋管製作所茨城工場(茨城カンパニー)の田野尻豊・生産管理課課長は、工場内を案内しながら製品の特性を分かりやすく説明してくれた。

自在に曲がる配管を幅広い産業分野に供給


昭和螺旋管製作所は、自由自在に曲げることができる特殊な管を製造し、国内ではトップクラスのシェアを誇る。国内の3つの主要工場で自動車部品から工場やダムなどに設置される大型配管まで幅広い製品を生産している。その中で、茨城工場は水道や消火関連の配管を製造。売り上げが大きく、会社の稼ぎ頭になっているという。

昭和螺旋管製作所茨城工場の田野尻豊・生産課長

昭和螺旋管製作所茨城工場の田野尻豊・生産課長


管の構造が波型になっていることで自在に曲げて形を変えることが容易になる。簡単に言うと、ストローの「曲がる部分」を構造だ。天井裏の構造に合わせて調整しながら配管を設置することができ、スプリンクラーの設置に欠かせないという。

製造ラインの一角に目を向けると、完成間近の配管一つ一つに従業員が手際よく白いシールを貼り付けている。田野尻課長が「あのシールがRFIDタグなんです」と声をかけた。

設置した配管の場所をピンポイントで探索

昭和螺旋管製作所が導入したシール型のRFIDタグ。つまめるように立っている部分が電波を受発信するアンテナの役割をしている

昭和螺旋管製作所が導入したシール型のRFIDタグ。つまめるように立っている部分が電波を受発信するアンテナの役割をしている


RFIDタグは、記憶媒体を埋め込んだタグのことで、無線通信で接触することなく、情報を読み取りや書き込みができるシステムだ。タグの情報は無線通信でやり取りするので、遠隔から読み取ることができる。タグをつけた製品や部品、運搬物などの情報を効率的に管理できるメリットがあり、製造業や物流、流通業など幅広い産業分野に活用が広がっている。

昭和螺旋管製作所は、RFIDタグをどんな風に活用しているのだろうか。

「万一、取引先に販売した製品のトレースが必要になった場合の対策です。すでに設置されてしまった製品のRFIDタグを遠隔から読み取り、どこにあるのかを特定するのです」と商品開発の責任者である石井誠執行役員ENGカンパニープレジデント兼商品開発部長は話す。

石井誠執行役員は今後PRIDタグの展開に大きな期待を寄せている

石井誠執行役員は今後PRIDタグの展開に大きな期待を寄せている


オフィスやショッピングセンターなどの施設でスプリンクラーの配管をみることはほとんどない。天井裏に隠されているからだ。このため、施工済商品のトレースには、天井をはがさなくてはならない。配管の場所が分からなければ最悪の場合、すべての天井ボードを外すことになる。これでは修繕コストが膨大になり、工事中は施設が閉鎖するなど多大な迷惑をかけてしまう。

設置された配管に製造番号や製造日時などのデータを埋め込んだRFIDタグをつけておけば、遠隔からピンポイントで交換が必要な配管の位置を確認できる。普段、見えない場所をRFIDタグで「見える化」することで、万一の場合には施設への影響を最小限に抑えることを目的にしている。

昭和螺旋管製作所の製品は、商社や代理店経由で設備業者にわたるため、どこに設置されたのか追跡しにくい。こうした製品を見つけ出せるようにすることで、完全な形でのトレーサビリティ(生産から消費、廃棄まで製品の流通経路を追跡可能にする仕組み)ではないものの、それに近い効果が持つことになる。一見すると、過剰な対策のようにも見えるが、RFIDタグの導入には、製造者としての責任をしっかりと果たしていきたいという強い思いが感じられた。

競争力強化の切り札に


RFIDタグの導入には、もう一つの狙いがある。それは、競争力の強化だ。

昭和螺旋管製作所の創業は戦後間もない1927年。鹿児島県の喜界島から上京した創業者が螺旋管(らせん)管を製造する会社を設立した会社だ。社名にある「螺旋管」は、細長い金属を螺旋状に丸めながらつなぎ合わせて作り出され、「自在に曲がる管」の原点でもある。「もともとはマイクスタンド用に製造していた」(石井執行役員)という螺旋管は、その後、しくみも大きく進歩。その技術を採り入れながら活用先を開拓。さまざまな産業に用途を広げたパイオニア的存在となった会社だ。

長い歴史を持つ半面、「海外のメーカーに模倣されやすい技術でもある」と石井執行役員は語る。なかでもスプリンクラー用配管は市場でのシェアが高く、利益率も高い。海外を巻き込んだ競争が予想される中、売り上げを伸ばすには今まで以上に新たな付加価値をつけないといけない―。そんな危機感がRFIDタグ導入を促した。

導入はしたものの、さまざまな課題に直面


だが、運用までの道のりは順風ではなかった。2018年から試作に入ったが、製造ラインに乗せてみると、いろいろな課題が浮き彫りになったという。

東京都水道局が採用しているモデル配管。障害物を避けて配管できるメリットがある

東京都水道局が採用しているモデル配管。障害物を避けて配管できるメリットがある


配管に取り付けるRFIDタグはシール状になっており、配管に巻き付けるようにして貼り付ける。シールの先端部分は無線電波を受発信するアンテナの役割を持っており、管に貼り付けず、立たせておかなくてならない。しかし、当初設計したタグシールは、アンテナ部分の裏面にも接着剤がついていて、余白を折り返してアンテナ部分を立ちやすくさせるしくみになっていた。

「実際やってみると、折り返しの作業が大変でした。一人が作業をしても、1日に必要な枚数を用意できませんでした」と田野尻課長は振り返る。コスト高になるだけなく、折り返し作業にあたる人員のやりくりも大変だった。「企画ばかりが先行して、手間やコストなどをあまり考えていなかったです」と石井執行役員は苦笑いした。

RFIDタグを改良、作業効率が大幅アップ


「もっと効率的に作業ができるようにしないと…」

コストの最適化を目指し、RFIDタグシールの改良に乗り出した。

茨城県常総市にある昭和螺旋管製作所茨城工場。ここで生産する水道や消火設備向けの配管は稼ぎ頭だという

茨城県常総市にある昭和螺旋管製作所茨城工場。ここで生産する水道や消火設備向けの配管は稼ぎ頭だという


「こういう変更はできないか」「ああいう改善はできないか」と社内で議論。議論から導き出された改善点をタグシールの設計に反映させた。

改良したのはアンテナ部分。ペットボトル飲料につけられているPR用シールのように、アンテナ部分だけ接着剤を塗布せず、シールの長さも短くした。この設計の変更で折り返しの作業がなくなり、作業効率は大幅にアップ。本格運用にこぎ着けた。

隠れてしまう製品の管理にRFIDという可能性を開拓し、次は・・・


改良にあたって昭和螺旋管製作所はRFIDタグの仕入先を変更した。

「RFIDタグの利用を今のままで終わせたくはない。さらに発展させていきたい。そのアイデアを一緒に生み出してくれる会社を選びました」と石井執行役員は打ち明けた。

仕入先に選んだのは、リコージャパンだ。「われわれはRFIDタグを活用した新たなビジネスモデルを創り出したいのですが、ビジネスモデルの構築は中小企業にとって難しい課題です。企画をできる人材もいません。仕入先企業の総合力を取り込みながら可能性を追求していきたい」と石井執行役員。アイデアを出し合い、多くの活用法が見つかればRFIDタグの受発注が増え、仕入先もメリットを享受できる。そんなウィン・ウィンの関係構築に大きな期待を寄せている。

RFIDタグは従来のビジネスを一変させる可能性を秘めている。物流分野では配送品の自動仕分けに活用したり、製造分野では製品の製造管理や在庫量の管理に役立てていたり。また、小売りの分野では、買い物かごに入った商品をいちいちレジに打ち込むことなく、瞬時に会計するシステムを導入する動きもある。使い方は多種多様。アイデア次第では成長を大きく後押しする起爆剤になる。

また、長い目でみれば、昭和螺旋管製作所が始めたRFIDタグの活用法は二酸化炭素の排出抑制にもつながる。無駄な工事をなくし、廃棄物の発生を極力抑えるからだ。そう考えると、知らず知らずのうちに「脱炭素社会」の構築にも貢献していことになる。昭和螺旋管製作所のチャレンジはスタートしたばかりだが、どんなアイデアを生み出し、ビジネスを伸ばしていくのか。大いに注目される。

事業概要

法人名

株式会社昭和螺旋管製作所

所在地

東京都板橋区小豆沢2-26-10(本社)
茨城県常総市大輪町178(茨城工場)

電話

03-3967-5751(代)

設立

1960年6月

従業員数

180人

事業内容

自動車関連製品、水道関連製品、消火関連製品、変電・プラント関連製品の設計・開発・製造。生産設備の設計・加工・組立・メンテナンス

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