コラム

2021.11.26 06:00

「2025年問題」に介護関連事業者としてどう取り組むか│解決策など紹介

「2025年問題」に介護関連事業者としてどう取り組むか│解決策など紹介
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本記事では、2025年問題、また介護業界の直面している問題について解説します。特に介護人材不足について、解決策のひとつとしてICTを活用した業務効率化の方法を紹介します。ぜひ参考にしてください。

「2025年問題」とは

はじめに、2025年問題とは何か解説します。

2025年前後に団塊の世代が後期高齢者(75歳以上)に達します。国民の4人に1人が75歳以上になり、さまざまな問題が顕在化します。2025年問題とはこれらの顕在化する問題の総称です。特に社会保障(介護、医療、年金など)の負担が急増することと、介護人材の不足が懸念されています。また、少子化の影響もあり社会保障の持続性に関する懸念も取りざたされています。

「2025年問題」で顕在化が予想される日本社会の3つの問題点

2025年問題で顕在化すると予想されている日本社会の3つの問題点について、解説します。

介護問題

後期高齢者が増加し、介護サービスの利用者が増えていきます。これに伴い、介護保険の財源もひっ迫していく問題があります。社会保障の財源がひっ迫するなか、介護報酬の改定もあり、国や自治体に頼った事業運営は難しくなっています。

わが国ではアクティブシニアと呼ばれるような、年齢に関わらず元気な方が多くいます。一方で、75歳という年齢は健康寿命と平均寿命の節目を迎えるタイミングとなります。健康寿命を過ぎてから天寿を全うするまでの間に要介護認定を受け、なんらかの介護サービスを必要とする期間となります。

高齢者が軽度要介護の状態だと、同居する家族などが介護することも可能です。一方で、認知症や寝たきりの状態となると、特別養護老人ホーム(以下、特養)への入居希望や、介護費用が膨れ上がるという問題が発生します。また、都市部では特養の待機人数が多いところに、さらに入居待ちの要介護者が増えるという問題もあります。

介護サービス利用者は、金銭面で二極化が進むという問題があります。同居家族がおり、年金を満額受給されている方は、介護サービスの利用や老人ホームの入居に際し金銭面の不安は少ないと思います。一方で、同居する家族がおらず、年金を満額受給されていない方は、金銭面の不安が大きく、場合によっては生活保護を頼る必要もあると思います。

介護サービス利用者の増加は、サービスを提供する介護人材も同時に増加していかなければ成り立ちません。しかし、人材不足が続いている介護業界では、思うように介護人材が増えていないという問題があります。厚生労働省によると約34万人が不足すると言われています。この状態が続く場合、必要な方に介護サービスを提供できなくなるという恐れがあります。介護人材が働きやすい職場に整えていくことで、人材不足を解消していくことが必要です。

医療問題

高齢者は病院に行く頻度が増加し、処方薬の種類と量も増加します。高齢者医療費の大部分は税金と健康保険の拠出金です。高齢者が増加するなかで、少子化で高齢者を支える側が減少するため、需給バランスが悪化していくことが問題です。また、医師や看護師などの医療従事者の不足、都市部への病院の偏在なども問題です。

社会保障費(年金)問題

社会保障費は保険料だけでなく、税金や国債などの借金が投入されています。借金は子や孫世代に負担を先送りするため、世代間格差が問題です。わが国の年金システムは、賦課方式が採用されています。少子高齢化で納付する人が減少し、受給する人が増加することで、年金システムの持続性が懸念されています。このため、年金支給年齢の引き上げや支給額の減額、増税などが行われると予想されます。

2025年問題の中の「介護問題」に対し福祉・介護関連事業者としてどのような対策が必要か

福祉・介護関連事業者としてどのような対策が必要か解説します。

介護人材の確保を行う

2025年問題は、介護を必要とする高齢者が増加することにあります。それに伴い、不足する介護人材を確保することが必要です。国も介護人材の処遇改善や人材確保の支援を行っていますが、目に見える改善効果は得られていません。

厚生労働省は「総合的な確保方策」を推進しています。三本柱で①参入促進、②労働環境・処遇の改善、③資質の向上からなっており、国と自治体等が連携して、これらの施策に取り組んでいます。

①参入促進

介護職のイメージアップ、若者の掘り起こし、未経験者や外国人などの多様な人材の参入促進など

②労働環境・処遇の改善

資格取得の支援、キャリアパスの構築、事業所内保育所の運営支援、人材育成に取り組む事業所の見える化、介護ロボット導入やICT活用など

③資質の向上

介護福祉士の資格取得方法の見直し、介護福祉士の配置割合が高い事業所の加算、研修の受講支援など

待遇面、労働環境の改善も必要になる

人材不足が常態化している介護サービスでは、事業者間での人材の奪い合いではなく、広く人材マーケットを見つめる必要があります。これは他の業種においても人材不足が常態化しているためです。待遇面、労働環境の改善を含めて、どのようにすれば介護人材を確保し、定着されることができるのかを考えなければなりません。

地域住民にも介護職員からも選ばれるサービス提供者になる

施設の魅力や得意とするサービスを地域住民に対してアピールし、地域住民から選ばれる存在になることが必要です。また、介護人材が働きやすい職場に整えていくことで、介護人材からも選ばれるサービス提供者になっていく努力も必要です。

不足する人材を業務の効率化で解決する

介護人材不足が常態化すると、従業員の負荷が増大し疲弊するため離職を促してしまう状態を招きかねません。そうなると労働環境の悪化や事業規模の縮小につながり、さらなる離職を招くといった負のスパイラルを生み出します。また、従業員が急に欠勤することや、離職することも想定しておく必要があります。
ICTや介護ロボットなどによる業務効率化で、この問題の解決を図ることができます。業務の標準化を図ることや、マニュアル化しておくことで属人化を避け、業務効率化を図りつつ問題解決を目指しましょう。

介護業界の人材不足対策については、ICTを活用し業務を効率化する方法がある

介護人材の不足に対して、ICTを活用した業務効率化を図る方法を推奨します。

介護サービスの仕事は業務が幅広いため、システム化により効率化できる部分が多々あります。例えば、紙の日報で利用者の管理などを行っている場合、システムを導入することで事務作業の大幅な時間短縮や工数削減が実現できます。効率化は働きやすさにつながり、さらには利用者のケア充実につなげられます。

介護業界の問題は、人材不足の影響が大きいことです。いつ獲得できるかわからない介護人材を待つことよりも、従業員の負荷軽減のためにICTを使った業務効率化で働きやすさを高めることを優先することを推奨します。事務作業など間接業務の軽減のためにICT化やシステムの導入を行うことで、直接業務である利用者の介護などに集中できるというメリットが生まれます。

ICT化やシステム導入は、事務所内でのPC利用に限定される話ではありません。タブレット端末やスマートフォンを利用することで、事務所の外でも効率的に業務を行うことができ、働きやすさにつながります。

人事管理のICT化

人事管理は、従業員の採用、教育訓練、役割分担・配属、業績評価、処遇(昇進・昇給)など、人材を採用し、より良い介護サービスを提供できる人材に育成し、従業員の満足度を高めつつ離職率を下げるという目的のために行います。人にまつわる情報を紙で管理している場合は、ICT化により業務効率化を図ることが可能です。

人事管理システムを導入することで、従業員の経験や資格、業績評価などを適切に管理し、キャリアパスを策定・運用することができます。適切な評価やキャリアパスが策定されることで従業員のモチベーションが高まり、定着率向上に寄与します。

就業管理のICT化

就業管理は、従業員の負荷を平準化することや、働きやすくすることで生産性を高めるために行います。

介護業界に適した就業管理システムを導入することで、管理者の業務負荷を軽減することができます。例えば、シフト勤務に対応したシステムは、シフトを素早く作成できるだけでなく、従業員間のばらつきを減らしつつ人員配置基準を満たしたシフトを作成できます。また、従業員ごとの残業時間の把握や有給休暇の消化状況の把握も容易にできます。

介護記録のICT化

介護記録は、ICT化によって大きな生産性向上が期待できます。法律の定めにより、介護事業者は利用者の状態や実施したケアの内容をきちんと記録・保管しなければなりません
多くの介護事業者は介護記録を手書きで作成しています。例えば、現場で利用者の状態をメモし、事務所に戻ってから記録用紙に転記します。また、交代する介護職員への申し送りのために再度同じ内容を記入し、別途一日の終わりに日報に同じ内容を記入するといったことを行っています。同じ内容を何度も記入することは時間のムダという問題だけでなく、誤記や記入漏れが発生する可能性が高まるため、適切な情報伝達が行われず事故を発生させるといった問題も引き起こしてしまいます。

介護記録システムを導入することで、手書きの転記作業が不要で記録業務が効率化し、円滑な情報共有ができます。スマートフォンやタブレット端末を利用することで、外出先から過去の記録を確認することや、情報入力のためだけに施設に戻ることを不要にできます。

セキュリティ面のICT化

大量の個人情報を扱う介護事業者は、セキュリティにも目を配る必要があります。紙による運用でも紛失や破損などがありますが、業務をICT化する場合はウイルス感染やデータの窃盗、USBメモリの紛失による情報漏えいなどのリスクを予防することが必要です。

セキュリティに配慮されたシステムを導入することやウイルス対策ソフトの導入、暗号化などで情報が守られたストレージによるデータのバックアップ、USBメモリを使用させないためのセキュリティソフトの導入などが手軽にできる対策です。より高いセキュリティを実現する必要がある場合は、外部のプロを頼ることが望ましいです。

【介護業界の人材不足解消に役立つICT活用事例】

高齢者増加と働き手減少からICTとAIを積極活用して大きな効果。医療法人母体の社会福祉法人ふるさと会

ICT、さらにはAIやIoTセンサーを活用することで利用者の満足度を高めるだけでなく、従業員の生産性向上に成功している事例を紹介します。

[事例集] 高齢者増加と働き手減少からICTとAIを積極活用して大きな効果。医療法人母体の社会福祉法人ふるさと会(高知県)

2025年問題の中の介護問題は一般企業にも影響を与えると言われている

2025年問題は高齢者や介護事業者だけの問題ではなく、一般企業にも影響が及ぶことについて解説します。

従業員の働き方・採用・業績にも影響する

一般企業の従業員の介護離職を防ぐこと、多様な働き方を認めること、業務効率化を図る必要性について解説します。

【働き方】

介護は高齢となった親に認知症が発症するなどで、働き盛りの従業員に突然発生します。育児とは異なり、いつ介護がはじまり、状況に応じて仕事と介護の両立をどうするか、それがいつまで続くのかが不明確なため、介護離職が起こりやすいです。また、企業側も個々に従業員の状況が異なるため、どのような支援が求められているかわかりづらくなっています。介護離職を防ぐために、多様な働き方を可能とする対策が必要です。

【採用】

どの業種でも人材不足は共通の課題です。従業員が安心して働き続けられる職場かは、就職先を選ぶ際に重要視される基準のひとつになると考えられます。少子高齢化の時代の人材採用は、重要な課題のひとつだと考えます。企業は採用活動に有利になるよう、介護が発生しても安心して働ける職場となるよう、社内業務の整備を進めることが必要です。

【業績】

介護を理由とした突然の離職者や休職者が発生することや、時短勤務を希望する従業員などが増加することを想定しておく必要があります。あらかじめフォロー体制が整っていなければ、業績に影響が及んでしまうことも考えられます。介護をきっかけとして突発した人材不足に対して、業務をフォローできる体制を整えておくことが必要です。

介護問題に対し一般企業が取れる対策例

介護問題に対し一般企業が取れる対策は、介護と仕事の両立が図れるよう支援制度を整え、誰もが制度を利用しやすい環境をつくることが必要です。制度策定後は、制度を知ってもらうために周知を図ることや、相談窓口を設置することなどを行います。また、介護問題が発生した場合に上司や同僚と相互理解に立った関係構築ができるよう、会社として手助けすることも重要な対策と言えます。介護問題による人材不足が発生することを想定し、介護業界同様にICTを活用した業務効率化を図っておくことを推奨します。

2025年問題の解決に向けた国・地域・個人の取り組み

2025年問題の解決に向けた国・地域・個人の取り組みに関して解説します。

国の取り組み

国は、介護・医療・日常生活の支援などの「地域包括ケアシステム」を充実させる取り組みを行っています。そこでは、体制の構築やネットワークづくり、人材確保を支援するなどを行っています。

介護人材の確保については、人材の質的確保と量的確保の好循環を進めるため、参入促進、労働環境・処遇の改善、資質の向上という3方向からの施策を行っています。少子高齢化が進む中で公費負担の見直しや公平化を図ることにも取り組んでいます。

地域・個人での取り組み

地域での取り組みは、社会保障の持続性を高めるために地域住民による安否確認や見守りを行うこと、ボランティアとして介護予防プログラムへ参加することなどの方法があります。

個人での取り組みは、年金などの社会保障に過度に頼らずとも生活できるよう各自が資産運用などを行いつつ老後の生活を計画しておくことや、年齢を重ねても働ける間はなるべく長く働くなどの方法があります。

まとめ

ここまで2025年問題について解説してきました。

最後にまとめてとして振り返ります。2025年問題とは何か、介護問題に対して福祉・介護関連事業者としてどのような対策が必要かを解説しました。特に介護業界の人材不足対策については、ICTを活用した業務効率化の方法について解説しました。
2025年問題はあらかじめ発生することがわかっている問題です。ICTを活用して業務効率を高めることや、働きやすくすることで定着率を高めるといった対策を取ることが必要です。

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髙橋潤氏の顔写真

執筆者

髙橋 潤(たかはし じゅん)

東京都中小企業診断士協会城南支部所属。中小企業診断士、MBA、ITコーディネータ、PMP。事業構想、新規事業企画・開発、マーケティングなど、ビジネスモデルの創出から上市まで顧客に寄りそった伴走型の支援や、企業変革・経営変革の支援を得意とする。ITやWebの利活用、データ分析、IoT、RPAなどデジタル領域の支援にも精通している。

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