コラム

2020.10.19 06:00

親族内?それとも親族外?中小企業の事業承継をサポートする支援策を紹介

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会社の状況・お悩み別!事業承継におすすめの支援策フローチャート

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事業承継問題に取り組むための、様々な補助金や支援策をまとめてご紹介。各種支援策の検討順序を確認するフローチャートもご用意しました。

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※本記事の内容は、記事作成日(2020年10月)時点の情報に基づいています。最新の情報は各施策の公式サイトなどをご参照ください。

進む中小企業経営者の高齢化と後継者不在

現在、日本企業の約3割にあたる127万者の企業の後継者が不足しているとされており、事業承継問題が深刻化しています。

その一方で、日本企業全体で70歳以上の経営者の割合は23.8%と、約4人に1人の社長が70歳以上。経営者の高齢化が非常に進んでいることが見て取れます。

これには、後継者不在のために「辞めたくても辞められない」という理由もあるのです。しかし高齢社長ががんばっている会社でも、後継者が見つからなければ、いずれは廃業をせざるをえません。

経済産業省は、後継者問題が解決せず中小企業の廃業が続く場合、2025年頃までに最大約650万人の雇用と約22兆円分のGDP(国内総生産)が失われると試算しています。

この日本経済全体への大きなマイナスインパクトを避けるために、国を挙げてさまざまな事業承継支援策が実施されています。

今回は以下のような、事業承継に関する補助金や支援策の代表的なものをご紹介します。

経営承継円滑化法に基づく総合的支援

事業承継補助金

経営資源引継ぎ補助金

事業承継トライアル実証事業

事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策

「事業承継特別保証」制度を拡充する「経営承継借換関連保証」(予定)

経営承継円滑化法に基づく総合的支援

経営承継円滑化法は中小企業の事業承継を総合的に支援する目的で2008年に施行された法律で、次の3つの政策が盛り込まれています。

(1)事業承継税制

非上場中小企業の株式について贈与税・相続税の納税を猶予するもの

(2)遺留分に関する民法の特例

後継者に生前贈与株式を遺留分から除外、または価格を固定するもの

(3)金融支援

日本政策金融公庫などによる低利融資と、信用保証協会による特別保証枠の設定

事業承継税制と遺留分特例は経営承継円滑化法の目玉とも言える政策ですが、内容が複雑でわかりにくい面があるため、以下でくわしく紹介します。

(1)事業承継税制

一般的に、業績のよい会社は、その株式の株価が高騰します。すると、自社株式を贈与または相続で引き継いだ後継者には、相応の贈与税、相続税が課されます。

ところが、非上場企業の株式は、現実的には売却が不可能なので、いくら評価額が高い株式でも現金化できません。現金化はできないのに贈与税、相続税は高い、この自社株式の特徴が事業承継の大きなネックになっていました。

そこで、従業員の雇用維持など一定条件のもと、後継者が先代経営者から贈与または相続により取得した自社株式等に課される贈与税・相続税について、納税を猶予される措置が、この事業承継税制です。

2018年4月からは、10年間限定の特例措置として適用要件が緩和され、また対象が拡大されるなどして、それ以前より使いやすくなっています。

なお、事業承継税制には、個人事業者を対象とした「個人版」もあります。個人は株式を発行しませんが、事業用土地、建物などの贈与、相続に際して事業承継税制を適用することができます。

●事業承継税制のメリット

  • 会社の後継者が受け継いだ自社株式にかかわる贈与税、相続税の納税が猶予される。

●事業承継税制のデメリット、注意点

  • 制度が適用後、5年間は後継者が代表者として経営を続ける、株式の保有を続ける、原則として従業員の8割の雇用を続ける、などの条件がある。

  • 報告をしなかったり、条件が守られていなかったりした場合、猶予されていた贈与税、相続税を納めなければならない。

●事業承継税制(特例措置)を受けるための手続き

事業承継税制の適用を受けるには都道府県知事の認定が必要です。特例措置の場合、事前に事業承継の計画(特例承継計画)を策定、提出します。提出できる期間は、2023年3月31日までです。

なお、計画策定にあたっては、国に認定された士業事務所・金融機関などの専門機関(認定支援機関)の指導・助言を受けることが義務づけられています。

(2)遺留分に関する民法の特例

先代経営者から後継者が自社株の贈与を受けた場合、一定の条件のもとで、他の相続人がその自社株に対する「遺留分」を主張できなくなる民法の特例です。

●遺留分とは?

法定相続人(配偶者や子など)には、遺言の内容などにかかわらず、相続財産の一定割合を必ず受け取る権利があります。これを「遺留分(いりゅうぶん)」といいます。

たとえば、相続人が子3人である場合に、遺言で「長男にすべての財産を相続させる」と指定されていたとしても、残りの2人の子は一定額を相続できる権利があるということです。

また、遺留分は原則として生前に贈与された財産にも適用されます。たとえば、親が死亡前に長男に全財産を贈与していたとしても、残りの2人の子はその贈与財産のうち、一定額を相続できる権利を主張できます。

●事業承継における遺留分特例

子が3人いる経営者が、長男を後継者として事業承継をするため、自社株式をすべて長男に生前贈与したとします。これに対して、相続後、長男以外の2人の子から遺留分を請求されると、安定した経営ができなくなります。

そこで一定の要件のもと、遺留分の例外を規定したのが、遺留分に関する民法の特例です。本特例には「除外合意」と「固定合意」の2種類があります。

除外合意:後継者に贈与した自社株式の価額を、遺留分を算定するための財産の価額に算入しないことの合意です。

固定合意:後継者に贈与した自社株式の価額について、遺留分を算定するための財産の価額に参入すべき価額を合意時点における価額に固定することの合意です。

これは、たとえば承継時点で自社株式の相続税評価額が1億円だったとして、その後、相続のときに自社株式が2億円に値上がりしていたとしても、その値上がり分は承継した後継者のお陰だから、値上がり分だけは除外して考えよう、ということです。

なお、本特例は、上記の例の場合は後継者(長男)と、遺留分を持つ他の推定相続人(長男以外の2人)とが、協議の上一定の合意をし、所要の手続き(経済産業大臣の確認、家庭裁判所の許可)を経て実行されます。

自社株式の保有状況を確認しておくことは重要

経営承継円滑化法関連だけではなく、法人の事業承継全般に言えることとして、自社株式の保有状況、つまりだれが株主で、どれだけ株式を保有しているかを把握しておくことは、非常に重要です。これは法人税申告書の別表に書かれているので、必ず確認しておいてください。

社歴の長い企業は意外と他者に株式が渡っていることがあります。もし後継者に株式が集中できないと、経営権の基盤が脆弱になります。分散した株式を集中させることにも時間がかかりますので、早めに確認し、必要に応じた対策を講じることをお勧めします。

事業承継補助金

事業承継補助金は、後継者不在などによって事業継続が困難になることが見込まれている中小企業が、経営者の交代、事業統合などをしたあと、承継者が行なう経営革新などにかかわる取組を補助対象とする補助金です。

単に「事業承継をすること」に対しての補助ではなく、あくまで後継者が経営革新や新規事業などを行うことの経費に対する補助であるという点に注意してください。

事業承継補助金には、だれがなにを承継するのかによって、2つのタイプにわかれています。

(なお、以下の解説は令和2年度に実施された事業承継補助金制度の内容です。令和3年度以降についての実施は記事執筆時点では未定であり、制度の内容が変更になる可能性があります)。

I型:後継者支援型

経営者が交代する場合。主に、親族内外の個人が会社を引き継いで新社長になる場合。

II型:事業再編・事業統合支援型

法人(株式)の譲渡や合併など、いわゆるM&Aの場合。

基本的に、個人が承継するならI型、法人が承継するならII型と考えればいいですが、承継の仕方によっては例外もあるので、個別に確認する必要があります。

補助対象事業者

補助の対象となるのは中小企業で、「日本国内で事業を営む者であること」「地域経済に貢献していること」「暴力団等の反社会的勢力でないこと、出資金等の資金提供を受けていないこと」などの7つの条件に当てはまる中小企業です。

なお、中小企業の定義は、中小企業基本法第2条に準ずるものです(製造業の場合、資本金3億円以下または常勤従業員300人以下、など)。

補助対象となる事業と経費

最初に書いた通り、経営革新に関わる事業が対象となります。より具体的には次のようなものです。

●補助対象となる事業

  • 新商品や新サービスの開発、生産、提供

  • 制度が適用後、5年間は上記の条件が守られていることを毎年報告しなければならない。また、5年経過後は3年間に1回報告書を提出しなければならない。

  • 新たな生産方式や販売方式、サービス提供方式の導入

  • 事業転換による新分野への進出

  • その他、事業の活性化につながる取り組み(新たな事業活動による販路拡大や新市場開拓、生産性向上など)

●補助対象となる経費

人件費、設備費、原材料費、広報費、外注費などのほか、事業転換にともなって古い事業を辞めるときの廃業費も補助対象となります。対象事業のための経費と事務局が認めるもので、一定期間内に支払われているなどの条件があります。

補助金額

補助金の上限額、補助率は、大きく「原則枠」と「ベンチャー型事業承継枠または生産性向上枠」の2種類にわかれます。また、それぞれの枠ごとに、I型とII型で補助金額上限などが異なります。

原則枠

補助率

2分の1以内

補助上限額

Ⅰ型は225万円、Ⅱ型は450万円

補助上乗せ額(廃業費が対象)

Ⅰ型は225万円以内、Ⅱ型は450万円以内

ベンチャー型事業承継枠または生産性向上枠

補助率

3分の2以内

補助上限額

Ⅰ型は300万円、Ⅱ型は600万円

補助上乗せ額(廃業費が対象)

Ⅰ型は300万円以内、Ⅱ型は600万円以内

ベンチャー型事業承継枠の適用条件

補助対象事業(上記)を行うことに加えて、所定期間内に従業員数を一定以上増加させる計画を持ち、補助事業に直接従事する従業員を1名以上雇い入れた事実が確認できること

生産性向上枠の適用条件

申請を行う事業と同一の内容で、生産性向上特別措置法に基づく「先端設備等導入計画」か、中小企業等経営強化法に基づく「経営革新計画」の承認を受けていること

経営資源引継ぎ補助金

新型コロナウイルス感染症等の影響で廃業が懸念される中小企業が増えていることから、新設された補助金です。

経営資源の引継ぎを促進し、我が国経済の活性化を図るために、 事業再編・事業統合等に伴う経費の一部を補助するものとされています。簡単にいうと、中小企業がM&Aをおこなう際、そのM&A費用の一部を補助するものです。

I型:買い手支援型

II型:売り手支援型

の2種類があります。

補助対象

M&Aに要する、謝金、旅費、外注費、委託費、システム利用料などです(I型の場合)。

M&Aの売買代金そのものは対象になっていない点に注意してください。

補助金額等

  • 補助率:3分の2

  • 補助下限額:50万円

  • 補助上限額:Ⅰ型は200万円、Ⅱ型は650万円

事業承継トライアル実証事業

近年は、中小企業の事業承継は、子が引き継ぐなどの親族内承継よりも、従業員、あるいは外部の人間が引き継ぐ親族外承継の割合の方が多くなっています。親族外承継の中でも、社員でもない完全な外部の人間が承継するのが第三者承継です。

しかし、会社のことを従前から知っているわけではない第三者が事業を承継することは、難しさもあります。

そこで、第三者への事業承継を検討する中小企業と、後継者として入社を検討する外部人材とをマッチングし、入社後の経営者教育をサポートする中小企業庁の事業が、事業承継トライアルです。

後継候補者が経営者として成長できるように、OJT、Off-JT、共通研修、メンターのサポートなどの施策を実施。迎え入れる中小企業と、後継者候補の両方をサポートします。

なお本事業は、経済産業省が打ち出している「第三者承継支援総合パッケージ」の一貫として位置付けられています。同パッケージでは、M&Aを中心とした第三者承継を推進して、今後10年間で60万者の第三者承継を実現することを目標としています。

事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策

これまで、事業承継の足かせの1つとなっていたのが、会社が金融機関から借入をする際の経営者の連帯債務保証、いわゆる経営者保証でした。これまで、日本の金融機関は中小企業が借入をする際、経営者に連帯保証を求めていました。

そして、事業承継で経営者が交代する際には、新経営者に連帯保証を付け替えることが求められます。

しかし、とくに従業員への承継をしようとする場合など、多額の連帯債務保証を引き継ぐことを銀行から求められると、それがハードルになって、承継が実現しないことがあります。

こうした実態を改善するため、まず平成25年に中小企業庁・金融庁の後押しで「経営者保証に関するガイドライン」が策定され、事業者への融資の際の経営者保証を不要とする方向性が示されました。

さらに、令和2年からは「事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策」が策定され、事業承継時に後継者の経営者保証を可能な限り解除していくため、金融機関と中小企業者の双方の取組を促す、総合的な対策が実施されています。

事業承継時の経営者保証解除に向けた総合的な対策の中身

(1)政府関係機関が関わる融資の無保証化拡大

商工中金では、「経営者保証ガイドライン」の徹底により、一定の条件を満たす企業に対して、経営者保証を原則必要なしにしています。

(2)「事業承継特別保証」制度の創設

事業承継時に一定の要件に該当する場合、経営者保証なしで信用保証協会からの保証を受けられる制度です。経営者保証がついている既存債務の借り換えにも利用できます。なお、保証枠は最大2.8億円です。

(3)「経営者保証に関するガイドライン」に、事業承継のための特則を設定。

「事業承継特別保証」制度を拡充する「経営承継借換関連保証」(予定)

令和2年の法改正で10月から「中小企業成長促進法」(経営承継円滑化法の改正法)が施行されます。その中で、新たに「経営承継借換関連保証」の実施が予定されています。

これは「事業承継特別保証」の保証枠2.8億円に追加して、さらに2.8億円の保証を受けられるようにするものです。債務額の大きい中堅企業の事業保証がサポートされます。

まとめ

日本には知名度は低くても優れた技術を持っていたり、質の高いサービスを提供したりできる中小企業がたくさんあります。

せっかく優れた内容の事業を行っている会社なのに、それを引き継ぐ後継者がいないばかりに消えていってしまうのは、国にとって大変な損失です。ぜひ、本記事でご紹介したような支援策を活用して、次の世代へと事業のバトンをつないでいってください。

自社に合った支援策は何か、どこに相談すれば良いのかわからないという方のために、状況に応じたおすすめ支援策や相談先をフローチャートで確認できる、ダウンロード資料をご用意しました。無料配布中ですので、ぜひこちらからダウンロードください。

ダウンロード資料のキャプチャ画像

※本記事の内容は、記事作成日(2020年10月)時点の情報に基づいています。最新の情報は各施策の公式サイトなどをご参照ください。

【文】編集部

監修

石井照之(いしい てるゆき)

2018年3月より事業承継センター株式会社取締役。事業承継士と中小企業診断士の資格を活かして事業承継コンサルティングと後継者育成、セミナー等を数多く実施。寄り添って一緒に悩みを解決する、伴走型支援を心がける。

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