事例集

2023.12.14 06:00

廃棄物処理管理のクラウドシステムを独自開発 ICTを活用した新しいビジネスモデルを構築する 玄武(奈良県)

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産経ニュース エディトリアルチーム

産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。

奈良県橿原市に拠点を置く株式会社玄武は、関西全域で廃棄物処理を展開するNANBUグループに所属する清掃関連の事務処理支援を担うコンサルティング企業だ。取引している業者数は約800社・2,500拠点に上る。コンサルティング業務とデジタルの親和性に着目し、廃棄物処理管理のクラウドシステムを開発するなどICTを活用したビジネスモデルの構築に力を入れている。(TOP写真:玄武のオフィス)

廃棄物処理に関する法改正が毎年のように行われ、排出事業者の責任が年々重くなる中、安心、安全、安定の三拍子そろった廃棄物管理サービスを提供

玄武は、廃棄物の収集・運搬にあたる各地域の企業の選定、契約書や行政に提出する書類の作成支援のほか、排出物処理、コスト、収集条件に関する改善目標の設定、請求や問い合わせ先の一本化による業務の簡素化、リサイクル率の向上やコンプライアンス強化に関するアドバイスなど様々なサービスを提供している。廃棄物処理に関わる業務を玄武に任せることで、顧客は他の業務により一層力を入れることが可能になる。

「数多くの廃棄物の収集・運搬企業と幅広いネットワークを構築しています。排出物と排出量、収集処理業者の社会的属性、収集条件などの実態を調査して適正な廃棄物処理コストを解析し、お客様にとって最適な解決策を提供しています」。株式会社玄武の大上純也営業部長は玄武の業務についてこのように説明した。

玄武の大上営業部長

玄武の大上営業部長

廃棄物処理に関する法改正は毎年のように行われ、排出事業者の責任は年々重くなっている。法改正を知らなかったことで、業務停止命令などの処分を受ける企業も増えており、コンサルティング業務の需要は年々高まっているという。「各地域のパートナー企業を通じて様々な情報を入手し、行政の動向にも目を光らせ、お客様に的確なアドバイスを行っています。廃棄物管理業のトップランナーとして安心、安全、安定の三拍子そろった廃棄物管理サービスを提供していきたい」と大上部長は力強く語った。

廃棄物一元管理のサービス提供に強み キーワードは「7D」で、ワンストップサービス企業として存在感

玄武は、店舗や工場などから出る廃棄物の保管や分別の方法、収集業者・処理業者の選定、行政機関に提出する書類の作成、請求書管理などを総合的に行う廃棄物一元管理のサービス提供に強みを持っている。

大上部長は2013年、廃棄物を管理する上での要点をわかりやすく説明するために7Dという表現を考案した。7Dは、どこから(場所)、どのような(廃棄物の種類)、どれだけ(排出量)、どのような(保管方法)、どこに(搬入先)、どのような(処分方法)、どれだけ(費用支払い)を意味している。

玄武の廃棄物一元管理のイメージ図

玄武の廃棄物一元管理のイメージ図

「7Dに基づく廃棄物一元管理によって支払窓口を一本化すれば、請求書が1枚で済み、毎月の膨大な事務作業を軽減することができます。支払時に発生する各店舗にかかっていた振込手数料も1回で済むので、経費の削減につながります。業務の透明性の確保やリサイクル率の向上にも大きな効果を見込めます」と大上部長は廃棄物一元管理の利点を説明した。約40店舗を持つ外食企業から依頼を受け、年間18%のコスト削減につなげた実績もあるという。

業界の信頼度向上を目指した一般社団法人の運営で中心的役割

大上部長は、全国の廃棄物処理のコンサルティング会社をネットワーク化した一般社団法人廃棄物管理業協会の代表理事を務めている。玄武が設立に大きな役割を果たした同協会は、廃棄物管理業の法的地位を確立し、健全な経営で業界全体の信頼度を向上させることを目的に活動。廃棄物管理業者の育成支援を行うための講習会や認定試験の実施、定期的な情報交換と交流会の開催、廃棄物管理業者へのクレーム対応、廃棄物管理システムの提供、廃棄物処理に関する政策提言や情報発信に取り組んでいる。廃棄物管理業協会のホームページでは廃棄物管理をわかりやすく説明する漫画も掲載している。「二足のわらじは大変ですが、業界全体の信頼度を向上させる大切な仕事と思って頑張っています」と大上部長は笑顔を見せた。

一般社団法人廃棄物管理業協会のホームページ

一般社団法人廃棄物管理業協会のホームページ

廃棄物処理の管理会社、排出事業者、収集運搬業者を連携するクラウドシステムを開発

玄武は、外部のIT企業と連携したシステムの開発に力を入れている。「廃棄物一元管理とデジタルは親和性が高い」。このような視点から開発したのが、廃棄物処理の管理会社、排出事業者、収集運搬業者を連携するクラウドシステム「Hicom(ハイコム)」だ。2019年からサービスの提供を開始し、契約数は600件に達している。「ハイコムを導入することでお客様は簡単に廃棄物一元管理体制を構築することができます。導入後の活用についてのきめ細かなサポートも行っています」と大上部長。

ハイコムは産業廃棄物の電子マニフェストに対応 紙からの移行で年間約3,000時間の事務処理時間短縮を実現

ハイコムは産業廃棄物の電子マニフェストに対応している。マニフェストは、産業廃棄物の収集運搬や処理が適切に行われたかを確認するための書類で廃棄物管理票とも呼ばれ、廃棄物を排出した事業者は都道府県に提出する義務がある。紙マニフェストでは記入漏れや記載ミスが発生しやすいが、電子マニフェストに移行すればこれらのミスを未然に防止した上で、管理業務の手間を大幅に削減できる。

電子マニフェストの運用管理を行う公益財団法人日本産業廃棄物処理振興センターによると紙マニフェストから電子マニフェストに移行することで、年間約3,000時間の事務処理時間の短縮が実現できるという。

また、電子マニフェストは情報処理センターにデータで保存されるので紙マニフェストと比べて保管のコスト、スペースを大幅に削減できる。また、過去の電子マニフェストの検索もすぐに行えるので、必要な書類を探す時間も節約することができる。

臨時収集の依頼、収集日程の調整、費用の見積額承認作業をオンラインで完結

それだけではない。ハイコムを活用することで臨時収集の依頼のほか、収集日程の調整や費用の見積額承認作業までオンラインで実施できる。「収集予定日をカレンダーで閲覧できる機能も備えているので、複数の拠点を運営する企業はいつ、どこで、どの業者が何を収集するかを一目で確認することができます。定期収集や臨時収集に関係するコスト管理を一元的に行い、分析する機能も備えています」と大上部長は説明した。

収集履歴もハイコムに蓄積されるので、ハイコム導入企業などの責任者やスタッフが異動や退職する際に、過去の記録、業者の情報、管理会社への問い合わせ内容を簡単に新しい担当者に引き継ぐことができる。ハイコム導入企業の店舗が所在する自治体指定袋の発注ができる機能も付いている。ハイコムを導入した企業からは書類の保管がなくなってオフィスの利用可能なスペースが広がったことや、伝票の照合、確認作業の手間がかからなくなったことなど様々な感謝の声が寄せられているという。

ペーパーレス化推進など自社業務のデジタル化も推進

玄武はシステムの開発と普及に取り組む一方で、自社の業務のデジタル化に取り組んでいる。複合機で紙文書をスキャンしてデジタル化するなどペーパーレス化を推進することで業務の効率化と業務スペースの拡大を進めている。「デジタル技術は日々進化しています。お客様にフィードバックできるようデジタル技術に関する情報収集にはこれからも力を入れていきたい」と大上部長。

紙文書を複合機でスキャンしてデジタル化する様子

紙文書を複合機でスキャンしてデジタル化する様子

AI を活用してハイコムの機能向上に取り組みたい

玄武は今後、AIを活用してハイコムの機能向上に取り組んでいく方針だ。「今後もハイコムを導入いただける取引先を増やせるよう取り組んでいきます。私たちのサービスで地球の未来を変える。それぐらいの意気込みで頑張っていきたい」と大上部長は話した。

人口減少時代の人手不足に対応するために、企業は人材をより一層効率的に活用しなければならない。その中で複雑化する廃棄物管理に関するコンサルティング業務のニーズは今後、ますます高まるはずだ。デジタル技術を活用して玄武が生み出す新しいサービスに注目したい。

企業概要

会社名

株式会社玄武

本社

奈良県橿原市五井町187番地の2

HP

https://genbu.co.jp

電話

0744-21-8888

設立

1998年3月

従業員数

13人

事業内容

廃棄物管理、廃棄物コンサルティング

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