事例集

2023.12.13 06:00

園児に寄り添う時間確保と保護者との連絡と対話のため、ICT化を推進 群馬県からICT先進園に選ばれる 三郷こども園(群馬県)

園児に寄り添う時間確保と保護者との連絡と対話のため、ICT化を推進 群馬県からICT先進園に選ばれる 三郷こども園(群馬県)
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幼保連携型認定こども園を運営する社会福祉法人淳尚会「三郷こども園」(群馬県伊勢崎市)は、市内で最大規模の入園者を持つ。園児たちの心を育てる方針を打ち出し、様々な未就学児童を受け入れる体制の整備と一人一人に寄りそう教育を実践している。また、職員が保育・教育に出来るだけ専念するために、保護者との連絡やイベント開催通知等の登園管理システムとネットワーク環境を整備し、タブレット端末も導入した。結果、職員の業務が大幅に軽減し、保育・教育に専念できる時間が増えた。(TOP写真:三郷こども園 園庭)

働く保護者を幅広く支援するため、幼稚園教諭免許と保育士の資格を持つ保育教諭を養成し2018年に幼保連携型こども園に認定

社会福祉法人淳尚会「三郷こども園」は、1981年に三郷保育園として開園。その後共働きが増える中、保護者の要望もあり、2018年には幼保連携型認定こども園として認可された。さらに2019年には0歳児向けの乳児棟を完成させた。

幼保連携型認定こども園とは、女性の社会進出や待機児童の社会問題化などを踏まえた国の幼保一元化政策に伴い、幼稚園教育と保育を一体的に行うもので、地方自治体が認可する。従来の保育園は共働き世帯しか入園できず、幼稚園は働く保護者にとっては保育時間が短いという課題があった。

認定こども園はこうした課題を解決するためにできた制度で、内閣府が管轄する。0歳から5歳児を対象として、保護者が働いていなくても入園可能な点が特徴だ。ただ、幼稚園教諭免許と保育士の資格を併せ持つ保育教諭を置くことが条件だ。

様々な未就学児童のために、子育て支援センター、病児病後児保育室も整備。地域の交流拠点の機能も

こども園について説明する松本亨江理事長(左)と吉田典子園長(右)

こども園について説明する松本亨江理事長(左)と吉田典子園長(右)

2010年には、松本理事長の次女で、保育士と幼稚園教諭の資格を持つ吉田典子氏が園長に就いた。吉田園長は伊勢崎市からの委託により、2005年には地域の子育て支援事業を行う子育て支援センター、2008年には病児病後児保育室を新設するなど、総合的な保育環境や地域との交流拠点としての機能を整えていった。

子育て支援センターは、入園者以外の親子でも利用でき、保護者のための保育講習のほか、児童向け体操教室などさまざまなイベントを開催するなど、地域コミュニティーの役割を果たしている。病児病後保育室は児童の急な発熱などに対応するほか、病気の児童を一時的に保育する施設で、保護者が子どもの病気が原因で仕事を休まなくても済むようにする支援施設だ。このため、看護師2名を配置。歯科と小児科の嘱託医も指定している。

2019年に増設されたカフェのような0歳児の乳児棟

2019年に増設されたカフェのような0歳児の乳児棟

「園児も職員も楽しく」。毎年内容が違うイベントを展開

3歳児の教室

3歳児の教室

三郷こども園には現在、保育教諭48人、看護師2人、栄養士3人、調理員4人、薬剤師1人など、総勢60人の職員が働く。現在の入園児数は319人だ。

園児が伸び伸び行動している理由を聞くと「園児も職員も楽しく、生き生きと保育しているためです」(吉田園長)という。それを実現できているのは、例えば3~5歳の園児30人に1人の職員を配置する決まりだが、同園は2人にしているという。そこで職員に時間の余裕が生まれ、具体的な保育内容の改善について話し合う雰囲気が出来上がっている。

こども園に必須の各種イベントについても、その都度チームを結成して、成功するように職員同士が話し合ってオリジナルのコンテンツを生み出し、毎年内容が違うという。これが職員の主体性の養成ややりがい、意欲向上につながっている。これは吉田園長が保育教諭の現場を経験しているから実現できたもので、「職員の採用の際にも、評価をいただいている点です」(吉田園長)。

三郷こども園は職員育成にも力を注ぐ。新人、中堅、リーダーの階層別研修のほか、栄養士、看護師の職種別研修も行って専門知識の一層の拡大やスキルアップを図る。複数担任制のため、新人職員にも丁寧な指導を行う。

タブレット端末利用の登園管理システム導入。高速通信環境も整備

保育状況や業務状況などを確認できるタブレット端末用画面

保育状況や業務状況などを確認できるタブレット端末用画面

ただ、こども園の職員の仕事は保育だけでなく、園児の出欠管理、保育の様子を保護者に伝えるほか、各種イベントの案内、園内のお知らせ掲示など多様だ。そこで同園は業務量や園児の増加に対応し、これまでの紙を使用した業務から、本格的なICT化に乗り出した。

2018年には、タブレット端末とパソコンを利用した登園管理システムを導入。日々の保育記録や今後の計画、各種の書類などを書き込めるようにした。同時に、園児の午睡時には5分ごとに呼吸測定するが、園内の無線環境が整っておらず無線データが届かないこともあったことから、アクセスポイントを付けた無線LANシステムを導入し、高速通信によりWi-Fi接続が安定した。登園管理システムについては当初、保護者が利用方法に慣れるため登園時に打刻するだけだったが、その後は機能を徐々に拡張。2022年には写真付きの保育記録を送付できるようにした。

登園管理システムのパソコン画面

登園管理システムのパソコン画面

現在ではタブレット端末は12の全教室と給食室、事務室に計15台を配置。2023年からは、園だよりや給食メニューなどを保護者一人ひとりのスマートフォンにPDF方式で送るサービスも始めた。ここにはアンケート機能もあり、回答は自動的にエクセルデータに保存されるという。こうしたICT化は職員の仕事量を大きく軽減し、ある職員は「仕事がすごくやりやすくなりました」とその効果を語った。

ホームページ作成も容易に 群馬県からICT先進園として選定される

ホームページ作成ソフトも導入し、2022年1月にはホームページを更新した。こども園は保護者の休職や妊娠・出産、あるいは災害などに対応するため、園児を毎月受け入れる体制が必要となる。その度にホームページを変更する必要があるが、作成ソフトの採用により修正・更新が簡単にできるという。このほかにも、2019年には紙で管理していた勤怠管理と給与計算をシステム化、カードで管理する方式にした。コロナ禍時には空気清浄機、一定の震度を超えた場合に自動放送される地震速報機、さらにはAED(自動体外式除細動器)も導入した。これらICT機器などの導入には、県や市の補助金を活用した。

こうしたICT利用によって2022年、群馬県から先進園として選ばれた。保育業務のICT化を推進する中で、導入を悩んでいる園に向けた研修で、三郷こども園での導入事例を紹介されたという。

「誰もが利用できる施設にしたい」。保育・幼児教育の枠を越えて

三郷こども園

三郷こども園

吉田園長は、こども園の認可を得た時から「誰もが利用できる施設にしたいと思っていました」。現在も、発達に障がいがある児童も受け入れているが、さらに学びを進めて医療との関係も深めたいと考えている。地域が一層豊かになる拠点にもしたいとしており、「地域の方々が気軽に園に立ち寄れるよう、様々なイベントを企画していきたいです」という。伊勢崎市最大規模の三郷こども園は、保育・幼児教育の枠を越えて発展していきそうだ。

企業概要

会社名

社会福祉法人淳尚会 三郷こども園

住所

群馬県伊勢崎市波志江町2381-7

HP

https://misato-h.com/

電話

0270-23-6122

開園

1981年4月

従業員数

60人

事業内容

幼保連携型認定こども園などの運営

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