事例集

2023.11.20 06:00

軽自動車1台で運送業を始め、効率化ノウハウと信用で取引を拡大し今や保有車両は100台以上。情報化武装で次世代型物流を目指す 翔和サービス(神奈川県)

軽自動車1台で運送業を始め、効率化ノウハウと信用で取引を拡大し今や保有車両は100台以上。情報化武装で次世代型物流を目指す 翔和サービス(神奈川県)
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株式会社翔和サービスのルーツは、岡庭伸一代表取締役が1986年に軽自動車1台で創業した岡庭運送だ。大手運送業者の請負を主体に車両も従業員も徐々に増える中で、岡庭社長は「信用を得られるように法人化したい」と考えて1997年、神奈川県横浜市に有限会社岡庭運送を設立した。宅配を中心とする小規模運送業だったが、神奈川県内を中心に軽貨物の車両数を100台以上まで増やしていく。

2004年、翔和サービスに社名を変更し大手ハウスメーカーと組んで独自の物流効率化システムを構築、建材配送事業を開始した。2011年には株式会社化し、現在に至るまでに物流センターを7拠点開設している。(TOP写真:大型トラックの増車で運送効率アップを目指す)

物流業の労働環境を積極的に改善。ICT活用による業務改革を推進

親子2代で物流業務の改革に挑む=右が岡庭伸一社長、左が岡庭大翔氏

親子2代で物流業務の改革に挑む=右が岡庭伸一社長、左が岡庭大翔氏

2020年には大手航空会社に勤めていた長男の大翔(ひろと)氏が入社。ICT活用による業務改革を担い、長い労働時間など劣悪といわれてきた物流会社特有の労働環境の改善にも積極的に取り組む。健全で先進的な物流サービス会社を目指してきた岡庭伸一代表取締役だが、頼もしい右腕の活躍によって、そのビジョンが現実味を帯びてきた。

独自の物流効率化システムを構築し建材配送に強み

物流センターに建材を集積し、必要に応じて現場に配送する

物流センターに建材を集積し、必要に応じて現場に配送する

株式会社翔和サービスの主力事業は建材の配送だ。住宅メーカー、住友林業株式会社との取引をきっかけに建材の配送業務でノウハウを蓄積し、独自の物流効率化システムを考案した。元来建材物流は、資材メーカーが建設現場ごとに配送業者を使って直接納品するのが普通だったが翔和サービスでは複数メーカーの資材を自社の物流倉庫に一時保管し、現場の工程に合わせて必要な資材を計画的に配送する。現場の作業工程やスペースに合わせて配送するため、コスト削減と配送効率の向上が実現。

住友林業関連事業は、神奈川県と西東京の2地区の中継センター業務を請け負い、年間800棟分の建材を扱っている。住友林業が全国で建てる家屋の1割に当たるという。取扱商品も住宅設備全般、太陽光発電などに広がっている。ミサワホーム株式会社や大手建築資材問屋などとの取引も拡大し、今や同社の屋台骨となっている。

県内17ルートの共同配送事業を展開。荷主拡大で効率化目指す

協力会社も活用した共同配送事業が県内をきめ細かく網羅する

協力会社も活用した共同配送事業が県内をきめ細かく網羅する

翔和サービスの物流センターは現在、海老名(海老名市)、湘南(藤沢市)、西東京(相模原市)など8ヶ所に上り、独自の物流効率化システムの拠点となっている。建材以外の配送業務では協力会社も活用して神奈川県内主要17ルートで共同配送事業を展開。「決まったエリアで荷主が増えると効率がどんどん上がる。現在、荷主は包材関連問屋を中心としており、荷主を増やし積載効率を改善されれると、さらに高効率なビジネスになる」(岡庭社長)と期待している。

大型トラック20台体制へ。往復積載で運送効率向上が課題

幹線輸送の輸送効率向上のために積載量10トンクラスの大型トラックを増やしている。現在、11台保有しているが、近く4台納車される予定。「毎年4台増やして早く20台体制にしたい」(同)考えだ。

1台約2000万円もする大型トラックの維持コストを軽減するためには、荷物のない空便を減らして往復の積載率を引き上げなければならない。大翔氏ら新設された営業部のスタッフが新規顧客拡大や既存建材関連事業との配車の組み合わせに知恵を絞っている。競合他社との価格競争は厳しく、営業部員も苦労しているが、岡庭社長は適正価格での受注を最優先し、適正利潤を棄損してまでの受注合戦には背を向ける。

物流業界では猶予期間として認められていた年間960時間までの時間外労働規制が2024年4月から適用されるため、物流各社も対応に追われている。翔和サービスも1年前から前倒しで月平均80時間以内残業の実現を目指してきた。ドライバー100人のうち8~9割が規制の範囲内に収まったが、100%達成へ追い込みをかける。

2024年問題に対応、賃上げ7%で人材確保

ドライバー不足も深刻な問題だ。慢性的な人手不足が続いている物流業界では、時間外労働規制によりドライバーは14万人不足すると予想されている。政府は積載率向上やモーダルシフト(鉄道や船舶による輸送)への転換などの対応策を打ち出しており、人手不足の軽減を目指すが、物流業界にはドライバー確保のために労働環境の整備や待遇改善が重い課題としてのしかかる。

岡庭社長は、2024年4月から7%の賃上げの実施を検討している。現在ドライバー確保のための原資が必要で、取引先との価格交渉を行っている段階だ。「ドライバーが足りなくては事業計画を進められない」という岡庭社長は、これまでも県平均を上回る賃金にこだわってきた。現在のドライバーの平均年収は約500万円だが、これを「600万円に引き上げるのが目標」と意気込んでいる。

VRを用いて安全研修を実施、対応スキルを学習する

VRを用いて安全研修を実施、対応スキルを学習する

ドライバーには待遇に見合うスキルも要求される。2022年8月に導入したのがVR(仮想現実)研修システムだ。一般貨物自動車運送事業者に義務付けられている12項目の教育・研修カリキュラムに準じており、360度カメラによる事故のデモ映像など、いざという時の対処スキルも学習することができる。VR研修システムはドライバー全員が毎月受講。義務化されていないフォークリフト版の研修も始めた。

倉庫業務では女性も活躍。安全運転の研修には力を入れている

倉庫業務では女性も活躍。安全運転の研修には力を入れている

トラックの速度や走行時間、走行距離等を記録するため、積載量4トン以上の車両に搭載が義務付けられているデジタル式運行記録計(デジタコ)を、翔和サービスでは全車両に搭載している。「急発進やアイドリング、速度、走行時間など運転成績を数値化してランキング表が見られる。現在、運転成績を給与に反映させるように検討中」(大翔氏)で、ドライバーにはどれだけ安全で効率的に運転したかという視点の成果主義が求められるようになる。

大翔氏はICT活用による業務全般の改革にも取り組んでいる。2021年に人事管理や車両管理など各部署がエクセルで作成していた帳票をクラウド型簡易業務作成ソフトに置き換え、情報の一元管理と共有化を実現。稟議書、収支管理、営業管理、事故記録簿などの置き換えも進めている。元々県内に分散する拠点で情報共有する仕組みがなかったため、全社でみると大きな効率化が図られた。

勤怠管理システム導入で全社的な業務効率改善

勤怠管理システムの活用によって、全社的な効率化が実現した

勤怠管理システムの活用によって、全社的な効率化が実現した

また、タイムカードで打刻していた就業時間管理を廃止し、勤怠管理システムも導入。社員証のタッチにより自動的にデータが蓄積されるようになり、勤怠状況の見える化を実現。毎月膨大な勤怠データの入力処理が必要だったが、導入により効率化が図れている。また総務課の残業がゼロになったほか、各拠点の責任者や従業員の残業の申請・承認手続も簡素化。人件費換算でかなりコスト削減になったようだ。次のステップは請求書発行や見積書作成をクラウド型簡易業務作成ソフトでシステム化する計画だ。

同社が2021年に策定した2022年度からの5ヶ年経営計画は、2026年度売上高30億円、最終利益率5%を目指す。2022年度は売上高24億円と計画以上だったが、利益率は未達だった。ICTの徹底活用による業務改革と従業員への十分な還元を両立させるため、筋肉質の物流事業者への変身を急ぐ。

企業概要

会社名

株式会社翔和サービス

住所

神奈川県横浜市瀬谷区阿久和南4-14-1

HP

https://shouwa-ex.jp/

電話

045-363-1155

設立

1997年4月

従業員数

207人

事業内容

一般貨物自動車運送事業、貨物利用運送事業、物流センター運営業務、軽貨物自動車運送事業

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