事例集

2023.09.21 06:00

新社長がオフィス一新。働き方改革、デジタル活用を推進し、全員参加型経営を実践。最新のソフトウェア導入で競争力も維持  豊田工務店(群馬県)

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設立から60年がたつ株式会社豊田工務店(群馬県藤岡市)。2021年4月に就任した屬(さっか)武志代表取締役は、オフィス改装などの職場環境の改善、資格取得支援による従業員のスキルアップ、デジタルの積極活用による業務改善など様々な改革を進めてきた。事業面でも最新のソフトウェアを導入。全員参加型の経営により、今後も堅実な発展を目指している。(TOP写真:社長就任後の様々な改革を説明する屬社長)

別の建設会社役員から転身。すぐに会社に溶け込む

株式会社豊田工務店は1963年、豊田清一郎氏が藤岡市で設立。公共施設やコンビニエンスストア、ホームセンター、個人向け住宅などの建築に加え、河川工事、舗装、災害復旧工事など土木も手掛ける、いわゆるゼネコン(総合建設会社)だ。中でも「コンビニや店舗などの商業施設の建設が得意」(屬社長)で、20年間、無借金経営を続けるなど堅実路線を歩んできた。

ただ、2代目社長の豊田一郎氏(現会長)が高齢となり、後継者も見つからないことや人材が集まらないことなどから事業継続に危機感を抱いていた。以前から豊田氏と親交があり、藤岡市内の別の建設会社で役員を務めていた屬氏は「自分1人で会社を経営してみたい」と思っていた。その事を豊田氏に話したところ、屬氏が豊田工務店の代表者となることが決まった。2021年1月に入社し、同年4月に代表取締役に就任した。

屬社長の背中を押したのは、それまで勤めていた建設会社で営業を担当してきたため「社長就任に協力したい」という不動産オーナーたちがいたことに加え、中堅ゼネコンとのつながりがあったことで新天地でもそれを生かせると考え、「社長就任に迷いはなかった」。代表取締役となることで、自分がもう一段スキルアップできるという思いもあったという。46歳で社長に就任したが、「従業員は全員が年上だった」。それでも営業部長が以前から顔なじみだったこともあり、すぐに社内に溶け込んでいった。

昭和の事務所から令和のオフィスへ。「環境づくりのパートナー」をキャッチに、事務所もフリーアドレスで働き方改革に取り組む

道路脇に設置した豊田工務店の看板。刷新したキャッチフレーズとロゴ

道路脇に設置した豊田工務店の看板。刷新したキャッチフレーズとロゴ

社長就任後は、社内改革に矢継ぎ早に取り組んだ。まずは「環境空間づくりのパートナー」というキャッチフレーズを作り、会社のロゴも作成して本社の入口ドアに表示。会社の入口となる道路脇には看板も掲げた。事務所の内装もリニューアル。オフィス家具も入れ替えてフリーアドレスの大型デスクを導入し、従業員の働きやすさと、気軽に来社できる雰囲気づくりとしたほか、照明のLED化も進め、オフィス内にはBGMを流し、無機質な空間を働きがいのある空間に変えた。

フリーアドレスにしたオフィス

フリーアドレスにしたオフィス

従来は就業中に他の人のパソコンのタッチ音が聞こえるほど静かだったが、それを和らげるための工夫だ。「昭和の事務所から、令和のオフィスにしたいという思いの改装は、従業員の反応もいい」(屬社長)という。

2021年ホームページを開設。2022年InstagramとTwitterを開始

2021年に開設したホームページ

2021年に開設したホームページ

デジタル活用では、2021年11月にホームページを開設したほか、2022年4月にはInstagramとTwitter(現X)を開始するなど若者らへの魅力訴求を始めた。「一番の狙いは、若い世代の採用のため」である。

働き方改革で土日祝日を休日に。資格取得支援で現場担当はもちろん事務担当にも1級建築施工管理技士取得を奨励

働き方改革では、残業ゼロを打ち出したほか、2023年7月からは土日祝日を休日として、年間労働時間を短縮した。以前の会社に勤務していた時は、屬社長自身が「仕事優先で、会社人間だった」ことの反省から、自分自身を含め従業員全員のプライベートを重視したいという考えからだ。このため、たとえ現場監督であっても、事情が許せば自分の采配により工事中でも休日を取るように勧める。従業員の働きやすさに加え、若者が入社しやすい会社に変化することを目指している。

従業員の育成も怠りない。ほとんどの従業員は1級建築士、1級建築施工管理技士、1級土木施工管理技士などの資格を持つが、本社2階のスペースで出張の教育サービスを活用して、取引先を含めて10人以上を集めた勉強会を開催する。事務担当の従業員にも簿記だけでなく、1級建築施工管理技士などの資格取得を勧め、建築現場に出ることも可能とする。

もちろん、資格取得費用は全額を会社で負担し、「基本的には、全ての従業員に国家資格を取得してもらう」(屬社長)と強調する。従業員全員がオールラウンドプレーヤーに育ち、会社全体で仕事に取り組む体制とすることを目指している。

本社前で従業員と並ぶ屬社長

本社前で従業員と並ぶ屬社長

国交省が支援するBIMソフトを導入。設計効率を向上

事業面では、新技術の導入も決めた。3次元CAD(コンピューター支援設計)の一種であるBIM(ビルディングインフォーメーション モデリング)がそれだ。BIMは3次元設計を先に作成し、そこから2次元図面にも転換できる。3次元画像をクリックすると、その部分の材質や寸法なども表示されるなどの性能を持つ。

3次元から2次元図面を簡単に作成でき、施主などの関係者と3次元モデルでイメージを共有した上で、変更点があれば素早く2次元設計に落とし込めるため、設計変更なども容易だ。加えて、BIMソフトは資材発注書、見積書、確認申請書類なども作成できることで、設計から施工、維持管理までの全ての工程で情報を活用でき、業務効率が格段に向上する。すでに住宅だけでなく、工場や空港建設などに利用されている。

国土交通省は、建設業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化推進のため、建築BIM促進事業を展開しており、一定の要件を満たす新築プロジェクトについて、設計費や建設工事費を補助する制度を実施している。屬社長が設計事務所と話しているときにBIMの効果や支援策などについて知り、いずれはBIMが公共事業の入札条件となる可能性もあり、そうした事態に対応し、競争力向上にもつながると考え、BIMソフトと専用のハードの導入を決めた。

従業員全員の総意で経営。社長が全てをフォロー

屬社長は就任後、経営理念を「人から人へ繋ぐ組織存続」と決めた。社内外の人とのコミュニケーションを密にして、たとえ小さな工事でも、一つひとつの案件を丁寧にこなしていくためだ。特に社内コミュニケーションについては、社長が個別に情報を伝えることができ、全ての案件について理解しているから、会議も開かないという。ただし、毎月1回、全従業員を集めてランチミーティングを開催し、現場の報告などから、雑談、悩みなどなんでも話し合う機会を設けている。「従業員全員の総意で仕事を進めたい」との思いからだ。

最近では、従来得意だった商業施設だけでなく、福祉施設建設の受注が増えているという。豊田工務店の将来像を尋ねると、「私の目が届く範囲内の組織を維持したい」と、単なる拡大路線からは一歩身を引いている。たとえ小さな案件でも、社長が全てをフォローできる体制を保ちたいという。今後も全員参加型の経営を続け、小粒ながらもキラリと光る企業像を描いている。

豊田工務店が施工した福祉施設

豊田工務店が施工した福祉施設

将来の企業像を語る屬社長

将来の企業像を語る屬社長

企業概要

会社名

株式会社豊田工務店

住所

群馬県藤岡市藤岡1736

HP

https://www.toyoda.gunma.jp

電話

0274-22-1948

設立

1963年2月

従業員数

7人

事業内容

公共・商業・福祉施設、住宅などの建設、道路、河川、解体などの土木工事

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