事例集

2023.06.12 06:00

図面をデジタル化、暗い現場でもタブレットで見える。社内の書類も社長が率先してデジタル化 藤木サッシ(新潟県)

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新潟市内でも江戸時代から続く中心市街の古町にあって、ガラスが多く使われた外壁を持ったスタイリッシュな建物が、複合商業施設「古町ルフル」だ。市街地再生のシンボル的な建物で、中には新潟市役所の機能の一部や開志専門職大学などが入っている。この「古町ルフル」の建設に、サッシなどの建材の供給・施工で携わったのが、新潟県北蒲原郡聖籠町に本社を置く藤木サッシ株式会社だ。(TOP写真:書類が置かれていないすっきりしたデスクで作業する荒井義雄代表取締役社長)

建築工事でアルミサッシ等の鋼製建具を施工

親会社の藤木鉄工株式会社は1927年創業で、ビルや工場、橋梁(きょうりょう)といった建築物で使われる鉄骨を製造してきた新潟の老舗企業。東京オリンピックで新設された国立競技場をはじめ、地元では万代橋のそばにそびえ立つ新潟日報メディアシップや、信濃川河口にあって大規模イベントの開催場所となっている朱鷺メッセなどに製品を供給してきた。藤木サッシは藤木鉄工のサッシ部門として60年余りの経歴を持ち、2007年に分社化し現在に至っている。

藤木サッシ株式会社の荒井社長

藤木サッシ株式会社の荒井社長

「建築工事でゼネコンよりアルミサッシやシャッター、ドアといった鋼製建具の注文を受けて メーカーに作ってもらい、でき上がったものを現場で取り付けるのが弊社の仕事です」(荒井義雄代表取締役社長)。こうしたことから仕入先には、LIXILや三協立山やYKKap、文化シャッターや三和シャッターといった著名な建材メーカーが並び、納品先にも大手ゼネコンをはじめ、広く名を知られた建設会社がずらりと名前を連ねる。

発注を仲介して製品を納入しているだけの商社的な存在ではない。仕入先となるメーカーと共に設計図より施工図を作り、製品の製作から納期・品質の管理を行い現場で取り付けまで行う、ゼネコンのパートナーとしての役割を果たしている。

仮設照明の現場作業、施工管理を行う従業員はタブレットで図面を確認

鋼製建具の取り付け工事にあたっては、「建物の外観ができ上がって、床や壁ができてきた段階で中に入って行うことになります」と荒井社長。照明工事はまだ行われておらず、作業用仮設照明の薄暗い中で作業することが多くなる。「そうした場所で、施工を行うために図面を引っ張り出しても暗くてよくわかりません」(荒井社長)。ヘッドライトで照らしても見づらいためで同社では、現場で施工管理を行う従業員に1人1台ずつタブレットを持たせることにした。

タブレットなら暗い場所でも、ディスプレイに映し出された図面をしっかりと確認できる。拡大して細かいところを確認することも容易だ。「1人の従業員が幾つもの現場を担当していることもあり、取り扱う図面も多くなります」(荒井社長)。そのような時も、必要な図面の最新バージョンを簡単に呼び出せるタブレットは大いに威力を発揮する。

ここで重要になるのが、図面をあらかじめデジタル化してサーバーに保管するよう、会社の体制を切り替えておくことだ。過去から営々と続けてきた事業の中で、紙の図面を使った作業フローが定着していればいるほど、新しい作業フローに切り替える決断はしづらい。同社の場合も、藤木鉄工サッシ部として業務を行っていた時代は、藤木鉄工に入っていた基幹業務システムを使っていた。 藤木鉄工の主要生産設備はCAD-CAMで稼働させており、セキュリティーが厳しく、外部からデータを閲覧するようなクラウドのシステムは組めなかった。

図面をすべてPDF化してサーバーで保管

これが、2007年に藤木サッシとして分社化されたことで、新たなシステムを検討、図面をデジタル化して共用できるようなクラウドのシステムを導入した。「事務所や本社の倉庫に、過去に施工した図面が山のように保管されていました。メンテナンスの時に必要になるといった声もあったため、図面は廃棄しましたが、全部PDF化してサーバーに保管しました」と荒井社長は振り返る。

「紙の図面をすべてデジタル化していつでもどこでも活用可能にした」と語る荒井社長

「紙の図面をすべてデジタル化していつでもどこでも活用可能にした」と語る荒井社長

こうしてデジタル化を進めたことで、本社に戻って図面を探さなくても、現場から図面を閲覧できるようになった。「端末には通信機能も付いているので、本社で行われる会議に参加できない時は、現場からオンラインで参加できるようになりました」(荒井社長)。あらかじめリモート環境を整えていたところに、新型コロナウイルス感染症が流行して人の移動が制限されるようになりましたが、従業員は、自宅などからのリモートで業務の遂行ができました。

施工の現場で同社の従業員が行うのは、作業する職人の安全・工程・品質を管理して進捗状況を見守ること。コロナ禍ではこうした差配を自宅から行うように切り替え、現場に関わる人数を極力減らして、「お客さまに迷惑をかけないようにしました」(荒井社長)。始めた当初はコロナ禍という状況ではなかったが、結果としてテレワークの推進につながり、コロナ禍という突発的な状況に役立った。

業務アプリの連携で管理の質の向上を目指す藤木サッシの荒井社長(右)と羽田課長(左)

業務アプリの連携で管理の質の向上を目指す藤木サッシの荒井社長(右)と羽田課長(左)

タブレットの導入と平行して、業務管理を行うアプリの導入も進めている。「見積書や請求書といった帳票関係はこれまで、作業ごとにいろいろなソフトがあって、内容を転記するようなこともしていました。業務アプリを使ってこれらを連係させて一元管理できるようになれば、部門間や現場ごとの管理ももっと簡単になるのではと考えています」(総務部総務経理課 羽田豊課長)。連携させることでデータの見える化が出来、さまざまな無駄や仕事の質の見直しも可能になる。

社長が率先してペーパーレス化を推進。目的別フォルダを作成し、必要な書類のみを複合機でデジタル化した

同社では図面のデジタル化がもたらした効果を受けて、本格的なペーパーレス化に取り組み始めている。「1年間で1度も開けたことがないファイルがあったら、それは2度と見ないものです」(荒井社長)。そういった書類で机や書庫がいっぱいになっていても意味がないと考え、必要のない書類を捨てていくよう指導し始めた。

引き出しの無い机と机上にも書類がない

引き出しの無い机と机上にも書類がない

従業員に指示するなら、「まずは役員が手本を見せる必要があります」(荒井社長)ということで、荒井社長は導入した複合機を使って身の回りの書類をスキャンし、PDF化していった。机もファイルなどが保管できる引き出しのないものを導入し、書類を溜めないようにした。「まだ処分しきれていないものもありますが、7、8割は削減できたのではないでしょうか」(荒井社長)。現在の仕事と並行して推進する必要があり、全社を挙げて一斉に取り組むことが難しいところもあるが、「現場を管理している従業員の仕事の整理を、私が代わりに行っていきます」(荒井社長)。

やみくもにデジタル化していっても、どの書類をパソコンのどこに保存したのかがわからなくなって、後の活用が面倒になってしまったら意味がない。荒井社長はデジタル化にあたって、「自分の仕事とは何かを見つめ直して、どのような書類が必要なのかを考え、パソコン上にフォルダを作ってそこに電子化した書類を入れていきました」。DXの推進にあたって大切なのは、自分たちの仕事のフローにマッチしたシステムを取り入れること。そのために、自分たちの仕事は何かを改めて検討するという基本を遵守したものと言える。

書類のデジタル化には複合機が大活躍

書類のデジタル化には複合機が大活躍

書類のほとんどをデジタル化し、社内をフリーアドレスにして、構想を練るスペースや仕事集中スペースをつくりたい

いずれ書類のほとんどがデジタル化されたら、「机もフリーアドレスにして、誰でもどこでも仕事ができるようにしたいですね」と荒井社長。「営業も現場を管理する人間も直行直帰が多く、全員が集まることは年に何回もありません。いない人のために机を置いておいても意味がありません」(荒井社長)。最小限の作業スペースを置き、そこでパソコンを使って書類を取り出し作業するようなオフィスを構想している。

紙類を減らしてすっきりしたオフィスの次はフリーアドレス

紙類を減らしてすっきりしたオフィスの次はフリーアドレス

こうした作業を、「できれば1年以内にはやりたいですね。オフィスの中も、集中して仕事に取り組むコーナーや、のんびりとしながら構想を練るコーナーを作って色で分けられれば面白いなと思っています」(荒井社長)。本社屋が、内装も含めてスマートなものになる日も遠くはなさそうだ。

藤木サッシ株式会社本社

藤木サッシ株式会社本社

企業概要

会社名

藤木サッシ株式会社

所在地

新潟県北蒲原郡聖籠町東港3丁目872番地11

電話

025-256-2116

HP

https://www.fujiki-s.co.jp

設立

2007年4月

従業員数

21人

事業内容

建築工事業/建具工事業/ガラス工事業/鋼構造物工事業/板金工事業/内装仕上げ工事業

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