事例集

2023.05.10 06:00

SDGsの理念に沿って経営戦略を策定 DXとGXを推進して社会課題の解決を図る 三承工業(岐阜県)

SDGsの理念に沿って経営戦略を策定 DXとGXを推進して社会課題の解決を図る 三承工業(岐阜県)
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産経ニュース エディトリアルチーム

産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。

住宅の建築事業を中心に外構事業、メンテナンス事業を手掛ける岐阜県岐阜市の株式会社三承工業は、国連の持続可能な開発目標、SDGsの達成に向けた取り組みを全社規模で行っている。元々企業の社会的使命を第一に経営に取り組んでいた三承工業にとってSDGsは強力なバックアアップを得た思いだった。「誰一人取り残さない」ことを目指すSDGsの理念に沿って経営戦略を策定。地域の自治体、企業、学校、メディアと連携しながら様々なプロジェクトを展開し、ICTを活用して全国、世界に向けて情報発信している。(TOP写真:第2回「ジャパンSDGsアワード」特別賞受賞“貧困脱却”“ジェンダー平等”“外国籍の方との共生”などの取組みが評価され2018年12月21日に総理大臣官邸にて表彰された)

社会課題の解決に主体的に取り組む

「SDGsに力を入れるのは、ビジネスを通して様々な社会課題の解決に主体的に取り組むことで、地域社会に根付く中小企業としての社会的責任を果たしたいと思っているからです。何より大事なのは人づくりであることは言うまでもありません。SDGsの理念を多くの人に知っていただきたいという思いで日々取り組んでいます」と株式会社三承工業の西岡徹人代表取締役社長は力強く語った。

改革した社内風土がSDGsにつながっていた

西岡社長は2017年、地域社会の活性化を目的に社会貢献の一環として力を入れている日本青年会議所(JC)の活動を通じてSDGsに関心を持つようになった。「貧困をなくそう」「すべての人に健康と福祉を」「質の高い教育をみんなに」「ジェンダー平等を実現しよう」「働きがいも経済成長も」「人や国の不平等をなくそう」「住み続けられるまちづくりを」「つくる責任 つかう責任」「パートナーシップで目標を達成しよう」。これらSDGsの行動目標が、「チーム夢子」や「SUNSHOW夢ハウス」、外国人顧客を対象にした「グローバルオフィス」といった自社の取り組みと非常に高い親和性を持っていると感じたからだ。

西岡徹人代表取締役

西岡徹人代表取締役

「SDGsに沿った経営戦略については、社内風土の改革を通じて既に取り組んでいることを行動目標にあてはめるだけで策定することができたのでその点は苦労しませんでした。課題だったのはいかに社内に浸透させるかでした。いきなり国連や世界の課題といった話から入っても社員にはピンときませんし、反発があるのも当たり前と思いましたので、一人ひとりの身近なことに置き換えて、持続可能な豊かな社会をつくるために自らができる行動を考えて実践してもらうようにしました」と西岡社長は振り返った。

建設業界で初めてジャパンSDGsアワードを受賞

全国の建設業界に先駆けてSDGsの理念に沿った経営戦略を策定、実行したことが高い評価を受け、三承工業は2018年、建設業界で初めて外務省のジャパンSDGsアワードの特別賞を受賞した。SDGs貢献コミット企業としての認定も受けた。

その後も三承工業のSDGsへの取り組みは加速し、2019年には、SDGsの情報発信拠点として環境に配慮した商品の販売やフェアトレードなどの訴求に取り組むショップ「SUNDAYs GOOD」を開設したほか、西岡社長が日本政府SDGs推進本部の「次世代SDGsプラットフォーム」のキャプテンに就任した。2022年には外務省からSDGs推進本部運営支援の業務を受託し、SDGsアクションプランの策定やジャパンSDGsアワードの実施支援を担った。

SDGsの導入を図る上での詳細なカリキュラムも作成し、これからSDGsに取り組むことを考えている企業を対象にした研修とフォローアップも行っている。

Z世代の若者を対象にしたイベントを企画

一般社団法人WOMAN EMPOWERMENT PLATFORM(WEP)は、2022年3月26日(土)、岐阜市文化センターにてZ世代を対象としたサステナブルな設計コンペ「Generation→Z Style ART PRIZE 2022」の最終選考および授賞式を開催

一般社団法人WOMAN EMPOWERMENT PLATFORM(WEP)は、2022年3月26日(土)、岐阜市文化センターにてZ世代を対象としたサステナブルな設計コンペ「Generation→Z Style ART PRIZE 2022」の最終選考および授賞式を開催

チーム夢子を結成する上で中心的な役割を果たした社員の寺田有希実さんが代表理事を務める一般社団法人WOMAN EMPOWERMENT PLATFORM(WEP)の活動を通じて、SDGsをテーマに、Z世代の若者を対象にした公募アートコンペティションの企画やSDGsバッジの売上を活用した一人親世帯へのランドセルの寄付を行っている。

三承工業はSUNSHOW夢ハウスをはじめエクステリア、リノベーションの各建築事業やSUNDAYs GOOD、チーム夢子、働きやすい職場づくりといったそれぞれの分野で、進捗状況を評価するためのインディケーター(指標)を国レベル、県レベル、個人レベルでそれぞれ設定。それぞれの取り組みを通じて解決できる社会課題や改善効果を明確にした上で、毎年、進捗状況を確認しながら新しい取り組みにつなげている。

インディケーターを個人レベルまで設定することで参加者は自分事として取り組む

インディケーターを個人レベルまで設定することで参加者は自分事として取り組む

人権や環境に配慮したアパレル、雑貨、食品などを販売

SUNDAYs GOODは(岐阜市内の)JR岐阜駅西に隣接した複合商業施設や各務原市内のショッピングセンターで開設しており、人権や環境に配慮したアパレル、雑貨、食品などを販売。生産過程や「顔の見える関係」を重視して商品を選択している。商品をただ販売するだけでなく、SDGsを生活に身近なものとして知ってもらえるよう店員が商品にまつわるストーリーを買い物客に説明している。「自然素材」や「フェアトレード」をテーマにオリジナルエコバッグなどを作るワークショップも開催している。

JR岐阜駅西に隣接した複合商業施設や各務原市内のショッピングセンターで開設した「SUNDAYs GOODJ

JR岐阜駅西に隣接した複合商業施設や各務原市内のショッピングセンターで開設した「SUNDAYs GOODJ

TikTokを活用 3ヶ月で再生が累計540万回に

これらの取り組みは、ネットを活用して費用をかけることなく全国、世界に発信している。三承工業のWebサイトは、20を超えるWebページで構成し、文章だけでなく、写真、動画、漫画など多彩な手法を組み合わせて一つのメディアとして機能させている。

短尺動画に特化したSNS、TikTokを積極的に活用している。ホームページからアクセスできるようにしており、朝礼の様子や女性社員が子どもの世話をしながら仕事をする様子、西岡社長と社員のコミュニケーションの様子などオフィスの日常を数十秒の動画に編集し、定期的に発信している。約60にのぼる動画の再生回数は2022年9月の開始から3ヶ月で累計540万回に達し、「いいね」評価は3万5000件、会社の取り組みを応援するコメントは1000件近く寄せられたという。

TikTokを活用 3ヶ月で再生が累計540万回に
TikTokを活用 3ヶ月で再生が累計540万回に

「反響が大きいのはやはり嬉しいですね。会社の日常をありのままに公開しているところに面白さを感じていただいているのかもしれません。動画を見たことで入社を希望してくれる人が増えるなど様々な効果をもたらしてくれています」とダイバーシティ推進室の神田純代係長(SDGs担当)は話した。

ダイバーシティ推進室の神田純代係長

ダイバーシティ推進室の神田純代係長

社会的信頼性の向上が企業としての成長につながる

SDGsに沿った三承工業の取り組みは社会性が高いことからテレビ、新聞、雑誌など様々なメディアで取り上げられることが多い。ネットによる情報発信と報道の相乗効果で社会的信頼性が高まることを通じて、社員がやりがい、働きがいを持つことで生産性が高まり、人材が集まることで更に会社が成長する好循環につながっている。

地域のカーボンニュートラルを先導

2021年、政府の動きと連動して2050年を目標に温室効果ガスの実質排出量ゼロを達成するカーボンニュートラル宣言を行った。社内でカーボンニュートラル委員会を設けて、SDGsの取り組みと合わせて毎月、二酸化炭素排出の現在値を把握して勉強会を開催するなど継続的に取り組んでいる。今後、再生可能エネルギーの需要が高まることを見据えて、具体的に取り組んでいく方針だ。

その一方で、地域全体で脱炭素化を進めていくために協力業者会とカーボンニュートラルへの取り組みを進める連携協定を結んだ。カーボンニュートラルについての定期的な勉強会などを通じて、短期での数値目標や具体的な行動目標の達成を実現していきたいという。

また、元日本青年会議所のメンバーと一般社団法人日本カーボンニュートラル協会を設立し、脱炭素のための普及活動を開始している。

「デジタル技術を活用しながらこれからも持続可能な未来にできるようしっかり取り組んでいきたい」と西岡社長は話す。DX(デジタルトランスフォーメーション)とGX(グリーントランスフォーメンション)の相乗効果を発揮することで、三承工業の可能性は更に広がるに違いない。

三承工業株式会社

事業概要

会社名

三承工業株式会社

本社

岐阜県岐阜市水主町2丁目53番地

HP

https://www.sunshow.jp

電話

058-275-5556

設立

2006年3月

従業員数

68人(2023年1月時点)

事業内容

新築工事、建築工事、リフォーム工事、土木工事業、管工事業、タイル・レンガ・ブロック工事業、舗装工事業、造園工事業、水道施設工事業、産業廃棄物収集運搬業

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