事例集

2023.03.24 06:00

ICTの活用で残業のない働き方を実現 水道×デジタルで地域のDX推進を目指す 森下住設(奈良県)

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この記事に書いてあること

制作協力

産経ニュース エディトリアルチーム

産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。

森下住設株式会社は、奈良県北部に位置する金魚産業の町として知られる大和郡山市に本社を構える。生活に欠かせない「水」に関する総合設備会社として半世紀以上にわたって、地域の水道工事、下水道工事、配管工事、家庭の水回りのリフォームや補修に携わってきた。本社の近くには、戦国時代、豊臣秀吉の弟として手腕を発揮し、百万石の所領を誇った豊臣秀長が居城とした郡山城の城跡が残り、城下町の面影が漂う町並みが広がる。(TOP写真:水道に特化したCADシステムを活用して図面作成に取り組む様子)

地域の水道のインフラを支える

「地下に埋設されている水道は、あまり目に触れることはありませんが、地域を支える重要なインフラです。縁の下の力持ちであることを誇りに思って地域に密着し、お客様一人ひとりの顔を思い浮かべながら仕事に取り組んでいます。変化が激しい今の時代をチャンスと考え、デジタル機器やICTを活用することで地域を支え、会社を成長させていきたいと考えています」。創業者を祖父に持つ森下優二取締役は、森下住設株式会社が創業以来地域で果たしてきた役割を振り返りながらこれからの抱負を語った。

工事と事務の分業で効率的に仕事を進め、ほぼ定時に帰宅

水道管の工事をはじめ、マンションなど大型の新築建造物の設備工事、個人宅向けの水回りのリフォームや補修など、森下住設が請け負っている工事は年間数百件に上る。
水道管の新設、改造、撤去、修繕といった水道設備に関わる工事を行うには、自治体に図面を添えて申請書類を提出しなければならない。現場工事に必要な書類や設計図面の作成、現場写真などの資料整理を担う現場事務の仕事を会社にとって重要なポイントと早くから考え、手厚い体制を敷いてきた。

写真整理に取り組む事務担当の従業員

写真整理に取り組む事務担当の従業員

事務担当に工事とほぼ同数の人数を配置し、水道管の設計をはじめとする幅広い業務に対応することで、工事担当者をデスクワークから解放した。一人で現場作業とデスクワークの両方をこなすのではなく、うまく業務を分担することで作業の効率化を図り、長時間労働が発生しないよう取り組んだ。結果、従業員はよほどのことがない限り毎日、ほぼ定時で帰宅できるようになった。

事務業務の効率化を支える水道に特化したCADシステム

事務の業務はICTを活用することで効率化している。中でも大きな役割を果たしているのが、水道設備の施工に特化したCADシステムだ。10年以上前から導入し、2022年11月に、より直感的に扱えるなど操作性が向上した新バージョンに更新した。CADシステムは給水、排水用の水道工事を行う際の申請書類の作成を支援する機能だけでなく、設計図、施工図、本管の管割図といった図面作成をサポートする機能も備えている。全国の自治体ごとに異なる申請書類のフォーマットや、工事で使用する器具、仕様のデータも豊富に搭載されているので重宝しているという。

森下住設のオフィスの様子

森下住設のオフィスの様子

CADシステムのおかげで未経験の人材でも短期間で戦力に

CADシステムを導入する以前、申請書類や図面は手書きで作成していたので時間もかかり、長時間労働の原因にもなっていた。マンションの配管など難度が高い図面の作成は外部委託する必要があったのでコストもかかっていた。CADシステムを導入したことで、図面や書類を作成する時間が大幅に短縮できただけでなく、外部委託していた仕事も内製化できるようになり、受託できる案件の幅が広がったという。

「汎用のCADシステムと違って水道に特化しているので非常に使いやすいですね。製図に関する自動機能も充実しているので、水道設備の業界で働いた経験がない人でも数ヶ月も使えば操作に慣れて正確な図面を作成することができるようになります。CADシステムがあるからこそ工事と事務の分業も可能になっているといえるでしょう」と森下取締役。

水道DXの推進を見据えて情報収集に取り組む

森下取締役は、2016年、母親の森下美千代社長をサポートするために森下住設に入社する以前、東京都の企業でシステムエンジニアやITコンサルタントとして働いていた。過去の仕事で培った知識を活かしながら、今後、水道事業へのICT活用を積極的に進めていきたいと考えている。通信機能を備え、遠隔で検針に必要な水量データを取得することができるスマートメーターの情報収集に力を入れており、今後、地元の水道局がスマートメーターの設置に動き出した時に迅速に対応できるよう準備を進めている。ネットと接続可能なIoT機能を備えた水回り設備にも関心を持っている。

森下住設の森下優二取締役

森下住設の森下優二取締役

「安易に価格競争に走れば走るほど経営体力は低下していきます。ICT機能を備えた水道設備の施工に強みを持つことで事業の付加価値を高め、会社の競争力強化につなげていきたいと考えています。これからの水道DXの動きにしっかりと対応していきたい」と森下取締役は力強く語った。

ホームページをリニューアルして事業紹介や人材募集に活用

20年ほど前から開設していたホームページを会社の情報発信を強化するために、昨年リニューアルした。縦スクロールで見やすい構成にした上で、キッチン、風呂、トイレなど水回り設備のリフォーム事例を写真付きでわかりやすく紹介している。人材募集のページでは入社後に取り組む仕事の内容やサポート体制、福利厚生を詳細に掲載している。InstagramなどのSNSの活用にも力を入れていきたいという。

森下住設のホームページ

森下住設のホームページ

森下住設は、水道設備の業界が未経験の人でも短期間で仕事に慣れることができるように業務のポイントを整理したマニュアルを用意し、工事と事務それぞれの分野で、仕事が属人化しないように互いにフォローし合う体制を構築している。建設業経理士、管工事施工管理技士、土木施工管理技士、建築施工管理技士、消防設備士といった資格取得を奨励し、取得した従業員には資格手当を支給している。「一生役立つ資格を従業員が取得できるようにバックアップしていきたい」と森下取締役は話した。働きやすいオフィス環境を作るため、複合機のスキャン機能を活用した紙文書のデジタル化も進めている。

複合機のスキャン機能を活用して紙文書をデジタル化

複合機のスキャン機能を活用して紙文書をデジタル化

地域のデジタル化推進にも意欲

マネジメントシステムの向上にも力を入れ、企業が提供する製品やサービスの向上を目的とした品質管理システムの国際規格、ISO9001と環境マネジメントシステムの国際規格ISO14001も取得している 。「これからもしっかりと地域の生活基盤を支えていきたい。デジタル機器やICTの活用を取引がある企業にも積極的に勧めていきたいと考えています。DXに積極的な企業同士の連携強化を通じて、地域全体のデジタル化を進め活性化することにも貢献していきたい」と森下取締役は話す。

森下住設の本社の外観

森下住設の本社の外観

奈良県では、自治体の水道事業効率化のため県域の水道を一体化する動きが進んでいる。今後生じる様々な問題への対応や利用者の利益を損なうことなく経営を効率化する上でデジタル技術の活用は避けることができない課題といえる。地域の水道DXを牽引する森下住設のこれからの取り組みに期待したい。

事業概要

会社名

森下住設株式会社

本社

奈良県大和郡山市城南町5番37号 

HP

https://www.morisita-j.co.jp/

電話

0743-53-2277

設立

1996年12月(創業1970年)

従業員数

12名

事業内容

上下水道、冷暖房、浄化槽、エコキュート、環境機器工事

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