事例集

2023.03.16 06:00

医療連携の強みだけではない。最新のICTで利用者の健康を守る 美心会カーサ・デ・ヴェルデ 黒沢(群馬県)

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群馬県高崎市にある介護付有料老人ホーム「カーサ・デ・ヴェルデ 黒沢」(以下カーサ)は、群馬県で信頼と実績を備えた医療機関として定評がある「黒沢病院」を核とする「医療法人社団美心会(黒澤功理事長)」が運営する。介護付き有料老人ホームはその多くが株式会社による運営であるのに対し、カーサは医療法人が運営にあたっている点が最大の特徴であると同時に強みでもある。黒沢病院と隣接する立地によって、入居者とその家族が安心して生活できる実感を持てる。更に、ホーム運営には2018年9月の開設当初からICT(情報通信技術)を積極的に取り入れ、入居者とその家族の満足度と職員の働きやすさ両面での向上を図っている(TOP写真:左がカーサ・デ・ヴェルデ 黒沢。奥の左が黒沢病院。その右が黒沢病院付属ヘルスパーククリニック。一番右が薬局)

「保健」「医療」「介護」「住まい」「生活支援」を一体化した地域包括ケアを実現へ

美心会の地域包括ケア。ここにメディカルフィットネスや健診センターが加わる

美心会の地域包括ケア。ここにメディカルフィットネスや健診センターが加わる

カーサは、医療・保健・介護の相互連携による質の高い地域包括ケアのサービスの実現を目指す医療法人社団美心会にとって重要なポジションを占める。美心会が構築しようとしている地域包括ケアシステムは、高齢者が可能な限り住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けられるよう支援する医療サービスを意味する。それは要介護状態になった場合でも「保健」「医療」「介護」「住まい」「生活支援」を一体的に提供できる仕組みだ。

美心会は既に、「医療」では130床を抱え、年間4,000台を数える救急車を受け入れる黒沢病院と、早めの治療を手掛ける外来診療クリニック、さらに「保健」としては病気にならない体づくりにつなげるメディカルフィットネスや定期的に健康をチェックする健診センターなど予防に向けた施設を備える。「介護」面ではリハビリ機能を設けた老人保健施設(老健)や居宅介護、訪問介護、デイケアなどの各種施設、「住まい」としてはサービス付き高齢者向け住宅(サ高住)や特別養護施設を設けている。さらに介護保険の対象外で在宅部門の日常生活を支援するサービスを担う「生活支援」については、グループ企業がカバーする。その意味で、美心会が目指す地域包括ケアシステムは全方位で提供できる仕組みがほぼ整ったと言える。

保健・医療・介護の相互連携による安心して暮らせる終の住み家へ

しかし、「住まい」という点においてはまだ解決すべき課題が残っていた。黒澤理事長はこの点を「当法人のサ高住は要介護2を超えると住み続けるのは難しく、特養は要介護3以上でないと入居できない」と指摘。「地域の皆さんが自宅での生活に不安を感じたら入所でき、終の住み家としての機能を持った施設が必要だ」として、介護付き有料老人ホームであるカーサの開設に踏み切った。

カーサの入所対象は原則65歳以上で、介護保険を利用していない高齢者から要介護5までの高齢者を対象とした終の住み家と位置づけた。100の完全個室を備え、2018年9月にオープンし、美心会が目指した「保健」「医療」「介護」「住まい」「生活支援」を一体的に提供する地域包括ケアシステムは「カーサの開設によって完結した」(黒澤理事長)とも言える。

その一端は立地環境にも明確に表れている。カーサと隣接する土地には黒沢病院に加えて、予防医療を担う人間ドック・健診部門と外来診療部門、さらにメディカルフィットネス&スパを併設した「黒沢病院附属ヘルスパーククリニック」と薬局があり、保健・医療・介護の相互連携による質の高いサービスを実現している。

カーサ・デ・ヴェルデ 黒沢の小林大介ゼネラルマネージャー

カーサ・デ・ヴェルデ 黒沢の小林大介ゼネラルマネージャー

実際、カーサの入居者が外来受診する際は、受診と会計の待ち時間はほとんどない。受診までの順番が残り5人となった時点でカーサ側に連絡が入り、入居者はそれから受診に出かけるので受診までの待ち時間は大幅に短縮できる。受診終了後も会計待ちをせずに帰ることができ、薬は処方箋を届けることで隣接の薬局から薬剤師が届けてくれる。これによって、入居者にとってのストレスは軽減でき、まさに医療連携によるメリットを生み出している。医療連携という点ではもちろん医師による訪問診療や往診、夜間の入院にも対応している。

全室見守りシステムで入居者も安心、介護スタッフも即対応ができるので夜間勤務が人気という珍しい現象も

部屋の上には、見守りカメラが設置されている

部屋の上には、見守りカメラが設置されている

エアバッグセンサーが全室に設置され異常を感知したら、見守りカメラで状況を把握できる

エアバッグセンサーが全室に設置され異常を感知したら、見守りカメラで状況を把握できる

入居者とその家族に安心感を醸成する仕組みとして、開設当初からICT化に積極的に取り組んでいるのもカーサの大きな特徴の一つだ。全室に見守りシステムと緊急呼び出しボタン、いわゆるナースコールと連動した見守りカメラ(映像・会話ユニット)を設置。入居者がナースコールを押すと居室内の様子が職員の専用スマートフォンに映し出され、入居者の状況を瞬時に把握できる。全室に設置されたエアバッグセンサーが異常を感知した場合も同様だ。

カーサの介護・看護職員の配置は平均で入居者2.5人に対し1人以上で、介護保険が定める「要介護1以下で10人に1人」「要支援2以上で3人に対し1人」の基準を上回る手厚い職員配置体制を敷いている。しかし、介護保険の基準を上回っているというだけで入居者が安心して暮らせる介護サービスを満たしたとは言えず、ICTを活用した見守りシステムという「ケアの見える化」によって入居者の満足度を高める仕組みを取り入れた。

見守りシステムの導入について、小林ゼネラルマネージャーは「当初はスタッフの働き方を楽にするのとご入居者様に安心感を持っていただくのが目的だった」と話すものの、現状においては手厚い職員配置と相まって、さらなる介護ケアの品質向上につながる相乗効果を生んでいる。その結果、一般の施設では職員が消極的になる夜間勤務も、希望者が多く希望に添えない人も出てくるほどだという。

全室にエアバッグセンサーが設置されているため、職員はもちろん入居者も何かあればすぐ駆けつけてくれるという安心感がある。健康状態が急変するのは夜中から朝方にかけてという事がよく言われるが、このような設備があることが重要だという事を改めて認識させられる。

見守りシステムで異常を把握できる事務所に設置してある管理用パソコン

見守りシステムで異常を把握できる事務所に設置してある管理用パソコン

ナースコールと連動したスタッフの専用端末

ナースコールと連動したスタッフの専用端末

受付の入退室管理のICT化で、家族が来た時も2回目からは「顔パス」

受付に設置された来訪者受付システムは面会に来る家族などに好評だ

受付に設置された来訪者受付システムは面会に来る家族などに好評だ

カーサのICT化への取り組みはこれにとどまらない。2021年12月には新たに介護施設向け来訪者受付システムの導入に踏み切った。受付に設けた顔認証機能を備えたタブレット端末とQRコードの利用により手書きの手続きを廃止した。最初の登録は必要だが、2回目からは本人確認のための記入はなくなり、入退館管理の利便性が大幅に向上した。しかもデータとして残るので、誰がいつ来ていつ帰ったかも把握でき、安全性や管理上の様々な活用が可能になった。

職員の出勤時のチェックにも顔認証&タブレットは大きな効果

職員に関しては出勤時の検温への課題があった。職員は体温測定器の前に置かれた用紙に記入しなければならず、どうしても対応しなければならない仕事がある職員は、熱があるのに虚偽の体温を記入するかもしれないという管理上の不安があった。また、職員の入れ替わりがあった場合はその都度記入用紙を作成し、毎月プリンアウトしなければならず、紙の管理では記録をさかのぼるのが大変な作業となっていた。その苦労が、来訪者受付システムで解決した。

システム導入の効果について、入居者の面会に来る家族からは「受付がスムーズになり感染症対策のしっかりした施設として安心できるようになった」といった声が聞かれるようになった。小林ゼネラルマネージャーは「見学者や家族にICT化が進んでいて、安心感のある施設といった印象を与えることに成功している」と話す。受付スタッフには「受付業務が楽になった分、面会者とのコミュニケーションの時間を取りやすくなった」と好評だ。また、コロナ禍で職員の検温、健康チェックの記録を保健所や母体の病院から提出を求められてもシステムのデータ提出で対応できている点も、システム導入の効果になっている。施設運営側とすれば、入退館情報がデータ化されたことで集計や分析が可能となり、施設の安心感や信頼性の向上につながった点でメリットは大きい。

介護施設とは思えない充実の施設、全ては「いつまでも健康人」というコンセプトから

ICTの導入だけではない。寝たきりにならないために、動くことが楽しみになる施設やいつまでも尊厳を忘れないための施設も用意している。まず驚いたのが温泉かと思うような大浴場が用意されていること。ここが介護施設とは思えないほどだ。

入口にのれんがかかり、入ると介護施設とは思えないくつろぎの空間が広がる

入口にのれんがかかり、入ると介護施設とは思えないくつろぎの空間が広がる

なぜ温泉のような大浴場を持ち込んだのか、小林ゼネラルマネージャーに聞いた。「大浴場は1日の疲れをいやしてくれる。この大浴場に入るために、足腰を鍛えていつまでも健康体でいようという意欲が生まれる」。その足腰を鍛える施設が、大浴場の隣にある。

足腰の筋力をつけるバイクが並ぶ部屋。バイクは最新型で安全に考慮した設計となっている

足腰の筋力をつけるバイクが並ぶ部屋。バイクは最新型で安全に考慮した設計となっている

コロナで時間短縮しているが地域の方にも公開されているフィットネススタジオ

コロナで時間短縮しているが地域の方にも公開されているフィットネススタジオ

このような施設が介護施設の中に普通にあるのが驚きだ。(医)社団美心会の入居者への健康に対する配慮と熱意が込められている。

食と美という観点からもしっかりしたサポート体制が敷かれている

食事は、旬の食材を使ったシェフのオリジナルメニュー。一人ひとりの健康にあった細かな対応をするために、あらかじめ作ったものを提供するのではなく、それぞれの健康と好みに合った料理が食べられるようになっている。

それぞれの料理が保温され、自分に合った料理を選べるようになっている

それぞれの料理が保温され、自分に合った料理を選べるようになっている

「いつまでも美しく」は女性の永遠のテーマ、美容室もただ髪を整えるだけでなく、自分の好みに合った美容師を選べる。

5つの美容室が入っている

5つの美容室が入っている

さらなるICTの加速を展望

介護施設向け来訪者受付システムの今後の運用については、入退館者にとどまらず、タイムカードなど職員の勤怠管理と連動したシステムへのバージョンアップも計画している。カーサ全体としては今後もICT活用を加速していく方針だ。例えば、全室に備えた見守りシステムのエアバッグセンサーで得られる睡眠状態などのデータを分析し、それをどうやって活用し現場の業務に落とし込んでいくかなども検討の課題に挙げている。

小林ゼネラルマネージャーは「ICT化の推進は、職員の働き方と入居者の快適で安全な生活とその家族の満足度の向上を目指す上で欠かせない。それはひいてはカーサのブランドを高めることにつながる」とし、ICT化を加速したその先の姿を見据える。

事業概要

施設名

医療法人 社団美心会 カーサ・デ・ヴェルデ黒沢

住所

群馬県高崎市矢中町192

HP

https://cvk.jp/

電話

027-345-5200

設立

2018年9月2日

従業員数

62人

事業内容

介護付有料老人ホーム(特定施設入居者生活介護)

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