事例集

2023.02.27 06:00

基幹サーバー不具合で綱渡り半年、危機を乗り越えた オーイケ(長野県)

基幹サーバー不具合で綱渡り半年、危機を乗り越えた オーイケ(長野県)
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災難は思わぬ時に降ってくる。長野県山形村でコンクリート関連事業を中心に展開する株式会社オーイケは2022年、業務の心臓部にあたる基幹サーバーの不具合で業務がストップするトラブルに見舞われた。原因は何だったのか、どう対応したのか。同社の3代目、大池健一代表取締役(43歳)に聞いた(TOP写真:インタビューに応える大池健一代表取締役)。

地元中心に事業を拡大、2022年10月に3代目社長誕生

同社は1970年に大池康吾氏が地元でブロックなど道路用品の製造販売を始めたのがスタートだ。1976年、昭和コンクリート工業(岐阜県岐阜市)の協力会社として大池コンクリート工業有限会社を設立。1979年に康吾氏の次男・悦二氏が2代目代表取締役に就任し、コンクリート関連製品だけではなく、地元の下水道整備など土木事業を手掛け、バブル期に不動産売買で資金を得て工場を整備するなど事業を拡大した。1991年に株式会社オーイケに社名変更。3代目は悦二氏の長男・健一氏で、2022年10月に代表取締役に就任し、悦二会長と弟2人とともに、165人の従業員を抱え、2022年8月期で約48億円の売上を誇る同社の経営を担っている。

用途に合わせて使用できる道路の側溝部品(同社のホームページから)

用途に合わせて使用できる道路の側溝部品(同社のホームページから)

社員が自発的にアプリ開発、業務連絡を効率化

同社のICT化は6年ほど前、簡単に業務アプリが作成できるクラウド型のソフトを導入したのがきっかけになった。導入にあたりソフトの説明を受けた設計部(当時)の三島淳志氏は「せっかくだから何か自分の業務に活用できないか」と考えた。

外回りの営業スタッフが、本社の設計部署に顧客からの図面依頼や発注具材の指示をかけ忘れることが当時よくあった。三島氏は「業務アプリ作成ソフトにはカレンダーを表示できる機能が付いている。これを活用すれば、営業さんがモバイルで外出先でも予定を確認できるのではないか。何か予定が来たら記入してもらうようにすれば、指示をかけたかどうかが判断できるし、スケジュールも確認できる」と考えた。

さっそくスケジュールアプリを作成した。「興味本位でエクセルを組む感じで取りかかったら、意外とすぐできました」と三島氏。たたき台を作り、ブラッシュアップしながら1日ほどで完成し、今では製品を扱う営業担当全員が使っている。出荷連絡やデータ保管も簡単にできるので、データを出力して保存している人もいるそうだ。

「うちは優秀な社員ばかり」と大池社長。「製品営業の記録は、昔は全部手書きでしたから、何か予定が変わればあっちを消してこっちを足してと全部手作業でやっていた。このアプリで今まで紙ベースだった業務管理を一元管理できるようになった。営業部はもちろん製造部も予定がわかって、間違いが起こりにくい」と満足気だ。

本社工場の屋上には同社製作の太陽光発電設備が据えられている

本社工場の屋上には同社製作の太陽光発電設備が据えられている

基幹サーバー不具合のトラブル発生、業務停止。復旧にも手間取る

同社がアプリ活用でICT効果を実感し始めた頃、トラブルが発生した。2022年3月上旬、土日の休みが明けた月曜日午前10時頃、「これから仕事をしようというタイミングで直近の社内データが飛んでしまったのです」と同社総務課の栁澤宏幸課長が打ち明ける。売上、出荷、製造など業務に関わるデータすべてが、パソコンの画面に表示されない。本社だけでなく他の営業所も同じだった。「お客さんに見積りを出せないし、請求書も出せない。配送車の予定が組めないし、製造の指示もできない」と大池社長も振り返る。同社の心臓部にあたる基幹サーバーがダウンしてしまったのだ。

「たまに1、2時間ほどシステムが不具合に陥ることはあったが、丸1日全部ダメというのは初めてだった。つながらない、出先のデータがない、と社員みんながあたふたし始めて」と栁澤課長。原因は不明だが、サーバーの稼働が6年目に入っており「交換しようか」と考え始めた矢先だった。不幸なことにバックアップ用の機器は動いておらず、稼働しているのは1基しかなかった。システム支援会社が駆けつけ必死で復旧にあたったが復旧までに丸5日、そこから段階を踏んで確認作業を行い、業務が正常に戻るまで1週間かかった。

新しいサーバーを活用して執務中の大池社長

新しいサーバーを活用して執務中の大池社長

半導体不足で綱渡りの半年間を経て、バックアップ体制を整備する

復旧後は新しいサーバーを入れることにしたが、一難去ってまた一難。通常なら1ヶ月程度で納入されるのに、物流網の混乱で半導体が不足し、新しいサーバーが入るまでにさらに時間がかかった。その間に旧サーバーが再び不具合に陥っては困る。予備の機器を入れてしのぎながら新しいシステムが動き出したのは9月に入ってからだった。稼働サーバーを2台に増やし、それぞれにバックアップサーバーを本社オフィスとは別棟に配し、計4基体制とした。これで不具合が発生しても接続をバックアップに切り替えれば、業務が止まってしまう時間を最小限に留めることができる。

3月の不具合発生からおよそ半年間の綱渡りだったが、「新しいサーバーは容量が増えて動きが早い。何よりバックアップがあるという安心感があって気持ちが楽ですね」と栁澤課長は話す。大池社長は今回のトラブルを教訓に「災難はいきなり降ってくる。あらかじめ、こういうことがあるかもしれないと考えてセーフティネットを構築しておくべきですね。いまは世の中ネットワークがないと何も動かない。ネットワーク環境のバックアップ構築は基本でしょう」と力を込めた。

各人のスマートフォンを間違えないように名刺を壁紙にした

各人のスマートフォンを間違えないように名刺を壁紙にした

業務連絡を密にするため、営業・製造部隊にスマートフォン支給

システムトラブル直後の2022年4月には、営業部隊15~16人にタブレットやノートパソコンより持ち運びしやすいスマートフォンを支給した。「最前線の営業は業務連絡を密にすることが不可欠。営業同士でLINEグループを組んだり、チャットで意見交換をしたり、製品写真も送れる」と大池社長。2022年12月には製造部のライン長以上にもスマートフォンを支給し、工場内でもWi-Fiが繋がるようにした。みんな同じ機種なので、間違えないようスマートフォン画面の壁紙を各人の名刺にしたのは大池社長のアイデアだ。

100年続く企業を目指して歩みを進める

100年続く企業を目指して歩みを進める

地元になくてはならない企業に、創業100年を目指す

同社はコンクリート関連製品の製造のほか、太陽光発電施設や不動産開発などの事業を展開しているが、2022年8月期でみると、太陽光の売上が約2億2000~3000万円、不動産が7000~8000万円。残りがコンクリートで、47億8000万円の売上のうちコンクリート関連が45億円を占めている。大池社長は「僕が入社した時、会社の売上は20億円いかなかった。全体で見れば右肩上がりで伸びているし、利益もそれなりに出ている」と話し、「創業以来53年目。これまでの成長を止めずに、目指すは100年企業」と将来展望を語る。

売上の9割以上を占めるコンクリート事業を基盤にしながら、長野県内でシェアをさらに伸ばしたい。3代目社長は「うちの従業員の多くは地元の人。我が社ががんばらないと地域も盛り上がらない。地元になくてはならない企業になって、いろんな業務分野で雇用を創出できれば創業100年も夢ではない」と張り切っている。

事業概要

会社名

株式会社オーイケ

住所

長野県東筑摩群山形村54-1

電話

0263-98-2238

HP

https://www.ooike.net

設立

1976年

従業員数

165人

事業内容

製造販売(コンクリート二次製品、鋳鉄製品など)、環境インフラ整備(汚水処理、雨水処理など)、太陽光発電施設整備、不動産開発

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