事例集

2023.02.14 06:00

インターネットを駆使してドイツ発祥の高性能住宅の良さを発信。地方に拠点を置く工務店の大きな挑戦 パッシオパッシブ(香川県)

インターネットを駆使してドイツ発祥の高性能住宅の良さを発信。地方に拠点を置く工務店の大きな挑戦 パッシオパッシブ(香川県)
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産経ニュース エディトリアルチーム

産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。

香川県丸亀市の株式会社パッシオパッシブは、年間上限14棟で省エネや耐久性に優れた高性能住宅を専門に手掛けている工務店だ。住宅の設計、建築にあたっては高気密・高断熱の建材を活用して住宅の長期的価値を高めるドイツ発祥のパッシブハウスと呼ばれる手法を重視している。インターネットを活用してパッシブハウスの理念とともに高性能住宅の情報発信を積極的に行い、大きな拡散効果を生み出している。(TOP写真:パッシオパッシブの佐藤大治社長)

ドイツ発祥の高性能住宅パッシブハウスの普及を目指す

「断熱性能が高く、エネルギーをほとんど使わずに快適な生活を実現できるのがパッシブハウスです。夏は冷やした空気をクーラーボックスのように保ち、冬は南面からの日射で家の中の空気を暖めることができます。堅牢な建材を使用するので建てる時のコストはかかりますが、冷暖房を極力使用しないため、環境にも、財布にも、体にも優しいエコ住宅です。長期的な観点では、環境、コスト、健康の三拍子そろった住宅だと自負しています」と佐藤大治代表取締役社長はパッシブハウスについて説明した。特に昨今電気やガスの料金が高騰しており、脱炭素も叫ばれる時代にふさわしい住宅だ。

パッシオパッシブが建てた高性能住宅

パッシオパッシブが建てた高性能住宅

レインボーオーシャンの発想で市場を開拓

一級建築士の資格を持ち、設計事務所に勤めていた佐藤社長は約20年前、他界した父親が経営していた内装工事会社を29歳で引き継ぎ、新たに住宅事業に乗り出した。寿命が長く快適な住宅を社会に提供したいとの思いから家づくりの探求を続け、十数年前にヨーロッパを中心に世界で普及しているパッシブハウスのことを知った。パッシブハウスの本場、ドイツで複数回にわたって視察を行うなど調査を進め、日本でも普及させたいと強く思うようになったという。

佐藤社長は、価格は高いが価値も高いものを消費者に適正価格と認識してもらうことで生まれる市場を「レインボーオーシャン」と名付け、情報発信に取り組んでいる。高性能住宅を手掛ける全国の工務店を対象にしたコンサルティング活動も行い、会員向けに販売戦略などを伝授する教材動画を週1回のペースで作成している。高性能住宅の購入を検討する人向けに、ライフプランの作成と高性能住宅の冷暖房費の削減効果の計算をするためのソフトウェアも開発した。

「競合相手が多く価格競争で消耗する市場をレッドオーシャン、顧客の望む価値に集中することでコストダウンして新しい商品やサービスを考案することで生み出す競合相手のいない市場をブルーオーシャンとするなら、レインボーオーシャンは顧客が潜在的に望む真の価値をプロサイドが信念をもって伝える事で生まれる市場です。高品質な素晴らしい商品を作っているのであれば、後は伝え方です。自分たちが堂々と価値を伝えることで大きな変化を生み出せるはずです」と佐藤社長は力強く語った。

2018年から高性能木製サッシの生産、販売をスタート

断熱には、窓枠サッシが重要な役割を果たすことに注目し、2018年に、パッシブハウス向けにドイツ企業が生産している高性能木製サッシをライセンス生産する事業部「レインボーオーシャンビュー」を設立。本社の隣に工場を建設し、ドレーキップ、ヘーベーシーべ、fixの3タイプの木製サッシを生産し、「スマートウィン佐藤の窓」の商品名で販売している。大手窓メーカーの高性能トリプルガラス樹脂サッシよりも高い断熱性能やデザイン性を備えていることや1~2週間程度での短納期を実現したことで、全国から注文が寄せられている。今後、輸入している部材を国産に切り替えてコストを抑えることで価格競争力も強化したいという。

パッシオパッシブが生産している高性能木製サッシ

パッシオパッシブが生産している高性能木製サッシ

高性能木製サッシを設置した様子

高性能木製サッシを設置した様子

ネットによる多種多様な情報発信と豊富なコンテンツで拡散効果を生み出す

高性能の住宅づくりに自信を持つパッシオパッシブが力を入れているのが、インターネットを活用した情報発信だ。広報の専任担当者を置いて、SNSをはじめメールマガジンやブログによる発信、冊子のWeb配信など様々な手段を使って消費者をホームページに誘導する仕組みを作っている。

ホームページでは「デザイナー×インテリアコーディネーター」、「世界基準の家パッシブハウス セーブエナジー」「木製サッシを作る工務店」「街並みづくり企業」といったパッシオパッシブのコンセプトの説明、施工事例、モデルハウスの紹介、見学会の告知のほか、パッシブハウスの要素や高性能木製サッシの機能などをテーマにした佐藤社長のブログ、レインボーオーシャンビューの木窓を採用した住宅のレポートなど豊富なコンテンツを掲載している。

インターネットを活用した情報発信に力を入れている

インターネットを活用した情報発信に力を入れている

「ホームページにアクセスした人はコンテンツが充実していないとすぐに立ち去ってしまいます。多彩なコンテンツで高性能住宅に関心を持つ人の滞在時間を増やすだけでなく、積極的に情報を更新して頻繁にアクセスしてもらうことで、パッシブハウスに対する社会的な関心を高めることを狙っています」(佐藤社長)

パッシオパッシブのホームページ

パッシオパッシブのホームページ

パッシオパッシブの訴求力の高い取り組みは、高性能住宅に関心を持つ全国の工務店や建築会社、こだわりの家づくりに関心を持つ人たちから高い評価を受け、詳しい説明を受けるために香川県の本社まで足を運んでくる人も多い。そうした人たちがそれぞれYouTubeやSNSでパッシブハウスや「佐藤の窓」の情報を発信してくれるので、自社で取り組む情報発信以上の拡散効果が生まれているという。

7年前に本社とモデルハウスの情報共有にVPNを導入

パッシオパッシブは7年前、本社と本社近くに設けているモデルハウスで社内情報を共有するためにVPN(仮想専用ネットワーク)を導入した。VPNの導入前、モデルハウスのパソコンに入力した顧客データは担当者がUSBメモリを介して本社のハードディスクに移していたが、住宅設計の仕事は情報の一元化が最も重要。ルールをしっかり決めてもタイムラグで上書きしたり二重作業が起こるなどのミスが常に隣合わせ。「VPNの導入後は、モデルハウスのパソコンからネットワークを介して本社のハードディスクにデータを移すことができるようになったので、ミスがなくなり、ストレスもなくなりました」と佐藤社長は振り返る。

NASの外部接続機能を使ってコスト削減

パッシオパッシブのオフィスの様子

パッシオパッシブのオフィスの様子

2年前からはコストを抑えるためVPNの代わりに外部とアクセスできる機能を備えたNAS(ネットワーク接続型ハードディスク)を活用している。導入したNASは外部のサーバーを経由して専用アプリを入れたスマートフォンなどの端末と接続できる機能を備えている。外部のサーバーにはNASのデータが残らないので情報流出を気にせず安心して使うことができるという。「ハードディスクと外部接続の機能を一本化することでコスト削減を実現できました」と佐藤社長。佐藤社長は木製サッシの生産・配送拠点を全国に複数設ける構想を温めている。拠点が増えた時に本社との間で情報を共有できる機能は今後、大きな効果を発揮しそうだ。

目的に応じて臨機応変にデジタル技術を活用

パッシオパッシブの高性能木製サッシ工場の外観

パッシオパッシブの高性能木製サッシ工場の外観

「日本では景観や環境に配慮した計画的なまちづくりが必要と思っています。パッシブハウスだけでまちを構成するパッシブタウンを作ることを目標にしていきたい」と話す佐藤社長。これからも情報発信や業務の効率化などの目的に応じて臨機応変にデジタル技術を活用していきたいという。「ドイツでは自動車産業と並んで林業が主要産業の一つになっています。パッシブハウスの普及を通じて国産木材の需要を高めることで、日本の林業の振興にも貢献していきたい」と佐藤社長は力強く語った。

事業概要

会社名

株式会社パッシオパッシブ

本社

香川県丸亀市垂水町3145-1

電話

0877-28-2855

設立

2007年9月

従業員数

30人

事業内容

木製サッシ製造販売、建築工事業、大工工事業、屋根工事業、タイル・れんが・ブロック工事業、鋼構造物工事業、内装仕上工事業

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