事例集

2023.01.27 06:00

情報共有で1人の知恵を全員の知恵へ。環境保護のため、信州大学と連携 フレシード信州(長野県)

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葬儀といえば白木の祭壇といった日本の伝統が、近年は変わってきているという。「関東では、花を飾る生花祭壇が中心になってきていますね」と話すのは、株式会社フレシード信州の林秀樹代表取締役だ。著名人や企業経営者の葬儀やお別れの会で設えられた、花でいっぱいの祭壇を見たことがある人も多いだろう。そうした生花祭壇の利用が、個人の葬儀にも広がり始めているという。(TOP写真:株式会社フレシード信州の林秀樹代表取締役)

生花祭壇を信州に根付かせ世界へ広げる

林社長は、東京都葛飾区で生花祭壇を提供する株式会社東永の代表取締役も務めていて、東京で起こっているこうした変化を肌身に感じつつ、事業として自ら変化を促す役割を果たしてきた。その中で、生花祭壇を使う動きはいずれ地方にも波及するといった意識を抱くようになっていた。そして、「ご縁がある方に誘われたこともあって、2017年にフレシード信州を創業しました」と振り返る。

フレシード信州の松本営業所で制作中の生花祭壇

フレシード信州の松本営業所で制作中の生花祭壇

「当初は知名度が全くなく、生花業を長く営んでおられる地元の競合会社もあって、ゼロどころかマイナスからのスタートでした」(林社長)。葬祭でも伝統的な白木の祭壇を使うところが多かったが、「逆に、そこにチャンスがあると考えました」。林社長の目には、すでにレッドオーシャンと化している地域ではなく、これから拡大する余地があるブルーオーシャンの場所だと映ったのだ。

広告に顔を出し会社を宣伝、プロサッカーチームのスポンサーにも

「地縁もまったくない土地で、右も左もわからない状態でしたが、まずは会社の存在を知ってもらおうと考えました」。その一つが広告だ。林社長が花束を持って微笑む顔を乗せた広告を、信濃毎日新聞や市民タイムスといった地元紙や、松本駅等に出して市民の耳目を集めようとした。個性的な風貌と相まって、松本市民の間にフレシード信州の名前がじわじわと浸透していった。

林社長が広告塔となってフレシード信州のPRを行っていた

林社長が広告塔となってフレシード信州のPRを行っていた

2019年からは、松本市に本拠地を置くプロサッカーチーム、松本山雅FCのオフィシャルスポンサーになった。「まったく事情がわからなかったので、いきなり選手のユニフォームにスポンサー名を出したいと言って、先方に驚かれました」(林社長)。金額的に難しいとわかって試合会場に社名を出すくらいに留めたが、11月22日の「いい夫婦の日」に合わせて花束を贈ろうとPRしたり、所属選手の記念セレモニー用に花束を提供したりして、地元の人気チームを支えながら、地域に根付いていった。

多彩な花を注文に答えて花束や供花の形に仕上げていく

多彩な花を注文に答えて花束や供花の形に仕上げていく

「長く松本市で生花を取り扱っておられた会社が、社葬やお別れの会といった事業者向けから生花店向けに切り替えたこともあって、地元の大きな企業が行うお別れの会やホテルでのイベントなどに生花を納めさせていただけるようになりました」(林社長)。こうした事業の拡大で必要になったのが、一つひとつの仕事の記録を社員の間で共有化することだ。「一人の社員が受けて対応した案件の情報を、別の社員が見て参考にできるようにして、効率化を図りたかったのです」(林社長)

情報の共有化で過去の事例を参照しミスを減らす

そこで活用したのが、サーバーに情報を集めて社員間でシェアできるようにする仕組み。そこには「過去に提供した祭壇のデータや画像、依頼していただいた葬儀社様との打ち合わせの内容、そして生花祭壇をどのように作ったのかといった工程が、フォルダごとに分かれて入っています」(林社長)。

例えば、来月の予定に企業によるお別れの会が入ったとする。それと同規模の仕事を手掛けた過去の記録を参照することで、「飾った写真のサイズはどれくらいだったのか、当日会場で必要になったものは何だったかといった検討を行えます」(林社長)。案件ごとにゼロからスタートしてかかる手間を、共有化によって減らすことができる。

一人ひとりのデスクにパソコンが置かれたフレシード信州本社のオフィス

一人ひとりのデスクにパソコンが置かれたフレシード信州本社のオフィス

個人に紐付いていたノウハウを大勢で共有化することで、個人にかかる負担を減らし、働き方改革につなげることもできる。「慣れていない当初は、それこそ給与明細までアップしてしまうようなミスも起こりましたが、今は必要な情報を必要なフォルダに入れるようにして、皆で参照しています」(林社長)。使えば使うほど事例が蓄積されていき、やがて貴重なノウハウの塊になっていく。

社長も情報を一元化し異動先で状況把握

林社長自身も、サーバー上に情報を集めている。東京にある東永と松本のフレシード信州を行き来して仕事をしている関係で、「どこにいても情報を見られるようにしておく必要がありました」(林社長)。東京で進行中の生花祭壇の画像を松本で見る、松本で行われた会議の議事録を東京で確認するといった対応が可能になった。

林秀樹代表取締役のデスクにあるパソコンから営業所の様子を把握できる

林秀樹代表取締役のデスクにあるパソコンから営業所の様子を把握できる

林社長のパソコンやモバイル端末からは、松本市内にある松本営業所の様子も、設置されたカメラを通して確認できる。生花祭壇が作られていく様子や、花を選り分けて並べていく様子を見ることで、現在の仕事の進捗状況を把握したり、これからの仕事に対応できるかを判断したりできる。

フレシード信州ではここからもう一段の情報共有化を目指し、今年の3月から4月にかけて業務改善プラットフォームソフトの導入を進める予定だ。これで何が変わるのか。たとえば現在、注文を電話やFAXで受けたとして、それを元に手書きの作業指示書を作成して現場に回しているが、「その場で受けた顧客の名前やプランなどの情報をパソコンに打ち込んで、ネット経由で現場に指示書を回せるようになります」。

個人の記憶に頼り、口頭やメモによって指示を行うと、どうしてもミスが出てしまう。電子化すればそうしたミスを減らせる上に、「記録が残って次の仕事にカスタマイズして活用できるようになります」(林社長)。葬儀社からの依頼も電子化されれば、現場への指示まで一気通貫で作成できるが、「葬儀社様のご都合もあるので、今は自分たちの中で効率化を進めている段階です」。東京の会社では導入済みだそうで、「最初はいちいち入力するのが手間だとこぼしていた社員も、今はこれがないと困るようになりました」(林社長)。

小学校でフラワーアレンジメント教室を開講

社内の体制を着々と固めていく一方で、外に向けて生花業の存在を伝えていくことにも積極的だ。フレシード信州では現在、地域の小学校にあるフラワーアレンジメントクラブに花を持って訪問し、アレンジメントの方法を教えている。「海外では花を贈り合う習慣が根付いていて、子供の頃から花に触れて親しんでいきますが、日本では花に触れる機会がなかなかありません。教室を通して花に触れる機会を作ってもらいたいと考えました」(林社長)。

フレシード信州がフラワーアレンジメントに訪れた小学校からの感謝の言葉

フレシード信州がフラワーアレンジメントに訪れた小学校からの感謝の言葉

最初の頃は、フラワーアレンジメントクラブはそれほど人気がなかったが、活動を通して花束を作る楽しさや花を介してコミュニケーションをとる素晴らしさに気づく子供たちが増えて、「今では、じゃんけんかくじびきに勝たないと入れない人気クラブになったそうです」(林社長)。こうした活動を通して花に慣れ親しんだ人が増えていけば、生花を扱うフレシード信州の仕事にもプラスになる。

環境への意識も事業の中に取り入れている。「生花業は水をたくさん使います。切り取った枝葉もたくさん出ます」(林社長)。業務の性格上、仕方のないことではあるが、そこで留まらず、利用した水の再利用が可能か、廃棄物を減らすことはできるかといった課題に取り組んできた。信州大学が中小企業庁の採択事業として実施している「信州100年企業創出プログラム」の第4期にフレシード信州は参加し、客員研究員を迎えてそうした課題を研究してもらった。

環境問題に取り組みSDGs事業者としても登録

2022年2月には、長野県が実施するSDGs登録制度の登録事業者となって、花や花材消耗品の活用事業や、花育事業、地元花材を活用した商品開発などに取り組み始めた。花育では、訪問してフラワーアレンジメントを教える小学校を1校から5校に増やしたい考え。花や花材消耗品の活用でも、「花の幼稚園」を作ったりオリジナル包装紙を開発するといった目標を掲げている。

そうした改革の生花を、ホームページを通して広く知ってもらう予定だ。ホームページ自体もより事例などが見やすいように改装していき、地元だけでなく全国の人にフレシード信州の取り組みを知ってもらえるようにする。

ホームページで毎日のように更新されている社長ブログには、現状を理解する必要性や、チャレンジする大切さが真摯な言葉で綴られている。そのブログではいつも末尾に、「松本から全国へ、信州から世界へ」というフレシード信州のキャッチフレーズが掲げられる。「世界を富士山の山頂に例えたら、まだ裾野にもたどり着いていません」(林社長)と謙遜するが、マイナスだった場所に会社を立ち上げ、わずか5年で高い認知度を得た事業力に、ICTによる効率化が加えて、頂上を目指して突き進んでいく。

フレシード信州 松本営業所

フレシード信州 松本営業所

事業概要

会社名

株式会社フレシード信州

本社

長野県松本市庄内1-10-11 グランビュー東和庄内102

HP

https://www.fleceed-shinshu.co.jp/

電話

0263-87-3487

設立

2017年7月

従業員数

41名(2023年1月現在)

事業内容

生花祭壇の企画・制作・設営

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