事例集

2023.01.16 06:00

成長中の企業が新たな事業分野を開拓し、データ活用によって次の飛躍を狙う 中西工業 (群馬県)

成長中の企業が新たな事業分野を開拓し、データ活用によって次の飛躍を狙う 中西工業 (群馬県)
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10月29日、今年も伊勢崎スケートセンターがオープンした。冷凍設備事業を展開する中西工業の本社に隣接する私設スケート場で、1965年9月に設立された。開設は10月末から3月までで、年末年始も無休。入場料は子ども400円、大人700円の低価格で利用時間制限もないため、多くの人で賑わっている。中西工業株式会社は昭和12年4月の創業。空調・給排水設備、冷凍・冷蔵設備、食肉プラントと多彩な分野で事業を展開している。スケートリンクの下にはパイプが仕込んであり、同社の冷凍技術で運営しているのだ(冬のオープン前のスケート場を案内する中西栄介代表取締役社長)。

自社の冷凍技術を活かしたスケートリンクで地域貢献

北海道出身の祖父がスケートが得意で、近隣に子供の遊び場がないことから「自社の技術を活かしてスケートリンクを作ろう」というのが始まり、と説明するのは3代目の中西栄介代表取締役社長(53歳)。大学で機械工学を学び、東京都内の電気工事会社に就職、30代後半で祖父の興した中西工業株式会社に入社した。その後、国際的な取引を行う際の基準となるISO規格の取得に奔走し、食肉プラントの責任者を経て2021年にトップに就任した。

設備工事から食肉プラントまでを手がける同社本社

設備工事から食肉プラントまでを手がける同社本社

3年前までは空調給排水事業が中心だったが、食肉プラント事業を強化し、今では50%が食肉プラント施工・メンテナンス

中西社長の先見性が発揮されたのは、食肉プラントの仕事だ。食肉業者に生産設備を設置する事業で、従来の10倍の食肉処理能力があるオランダのプラント機器の施工を行う。顧客に長く喜んでもらえるよう、プラントの施工だけでなく納入後のメンテナンスにも注力している。「きちんとアフターフォローをするのが当社の強み。これが信用に繋がっている」と強調する。

3年前は空調・給排水60%、冷凍冷蔵30%、食肉関係10%だった。今では、空調・給排水30%、冷凍冷蔵20%、食肉関係50%になった。売上も3年前に比べ、前期1.5倍になった。従来の仕事に満足するだけではなく、新しい分野に積極的に挑戦する中西社長の行動力の成果と言える。

会計処理効率化と情報の一元化へ建設業専門ソフトを導入

そんな同社がICT導入に本腰を入れ始めたきっかけは「紙ですね。データがあるのに紙で書類を回していた」と中西社長。売上管理や会計のデジタル化は10年以上前から進めていたが連動していないため業務間は紙でやりとりしていた。そこで2022年に更新したのが建設業専門のソフトだ。振替伝票を入力するだけで、工事台帳、工事一覧表などの工事関連書類や、元帳、試算表などの経理関連書類を自動記載するこのソフトの導入で、金銭の出し入れや、工事の進捗を管理することができるようになった。合わせて従業員全員にスマートフォンを持たせ、顧客情報や設計図などの安全をフルタイムで守るセキュリティーソフトも導入した。

メンテナンスにも定評がある同社の設備工事

メンテナンスにも定評がある同社の設備工事

建設業専門ソフト導入で残業時間短縮効果に期待

建設業専門ソフトは、財務管理に加え、出面管理や共通費の自動配賦、経営事項審査や工事進行基準への対応、進捗管理などを行うことができ、業務の簡素化、時間短縮に繋げられた。ソフト導入でまず期待されるのは残業時間の短縮だ。建設業の中でも同社が展開する設備工事は残業が多くなりがちだ。建設現場の工程上、設備の仕事は建築の後になる。その場で待機も含め効率がとても悪かった。

従来は紙に書いて提出していた残業時間のデータを手元のスマートフォンからリアルタイムで確認できる。「出てきた時点で上司が確認出来るので残業しなくてもよくなる。現場の記入を本社でイライラしながら待っていた内勤の従業員たちも、データが入っているかそうでないかわかるので仕事の効率が上がる」と中西社長。「月に数百万円単位でかかっていた残業代が減るだろうし、ほかの経費も社内の多くの人間でチェックができるから見落としミスが軽減できる。これぐらいはいいだろうという経費もなくなると思う」と見ている。

次の課題は現場の膨大な画像処理

2022年9月にはサーバーを更新した。「現場で撮影した画像をどんどんサーバーに入れていたら容量が足りなくなって」と中西社長。撮りためた画像の点数は中西社長だけでも数十万点。「現場で問題が発生した時に原因を特定するのはすごく大変。でも、例えば新設工事の時、ここに古いパイプがあったと確認できる画像が残っていれば、お客さんにも喜んでいただける。それを考えるとなかなか捨てられない」と話す。

データを元にした若手社員会議

データを元にした若手社員会議

画像解析で説得力のあるプレゼンを

これから始めたいのは画像の解析だ。新しい食肉プラントを作る時、「この高さではできない」「今までこれだったからやりやすかったのだ」という点が必ず出てきて、手直しが必要になる。既存の設備を撮影してデータ化したものがあれば、配管の長さから鉄やステンレスなど必要な材質量が逆算できる。同じ施工図が作れるし、使い勝手の悪いところを顧客と相談して変えたりすることができる。施工業者に発注する時も、原価を把握できるから見積りと乖離がある場合に指摘できる。設備のエネルギー量から電気代も算出できるし、精肉課程で出る廃棄物を炉で燃やして電気へ応用すればSDGsの循環システムもできる。顧客へ説得力のあるプレゼンができるはずだ。中西社長は「アイデア段階だが、実行したい」と力を込める。

その上で中西社長は「これからICT活用は必要不可欠」と話す。「それなりにお金はかかるが、導入してみると必ず発見があるし、業務の効率も上がってくる。ICTを新しい武器として早めに導入しないとこれから生き残れない」と考えている。

2022年10月上旬、新しい目標を従業員に示した。「データの時代だからこそコミュニケーションが大事。データを送付した事をお客様に確認し伝えることが重要」と中西社長。そこで「お客様、協力会社、社員を全部含めて「みんなを不安にさせないこと」を目標に掲げた。社長就任時は創立85周年だった。創立90周年に売上100億円を目指す「V90100」の達成はその先にみえてくるはずだ。

事業概要

会社名

中西工業株式会社

本社

群馬県伊勢崎市今井町732-1

HP

http://www.nkk-nakanishi.co.jp/

電話

0270-25-5900

設立

1937年4月

従業員数

65人

事業内容

空気調和設備工事、冷凍冷蔵設備工事、給排水設備工事、食肉プラント工事、上下水道設備工事、アイススケート設備工事、24時間監視保全業務、建築の設計・施工・管理、フロン回収センター

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