事例集

2022.12.08 06:00

理想的な訪問看護ステーションをつくるためICTを積極活用 うらら(香川県)

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産経ニュース エディトリアルチーム

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香川県高松市内で訪問看護ステーションを運営する株式会社うららが、地域医療を支える上で不可欠な関係者間での情報共有にICTを積極活用している。高齢者を中心とした利用者に充実した医療ケアを提供するための時間を捻出する上で、ICTが大きな役割を果たしている(TOP写真:通信ネットワークを整えたうららの社内)。

24時間体制で地域の医療を支える

訪問看護ステーションは、看護師や保健師が管理者となって運営する在宅看護を担う事業所だ。在宅看護は利用者が住み慣れた環境で家族と一緒に過ごせることに加え、起床、食事、就寝といった生活時間を本人のペースで決めることができるメリットがある一方で、病院に比べると医療サービスを受けにくいというデメリットがある。そのデメリットを補うのが訪問看護ステーションの役割だ。24時間体制で地域の医療を支えている。

社長自ら看護の現場でも活躍

うららは、ベテラン看護師の川田順子代表取締役社長が、自らが理想とする訪問看護の実現を目指したいとの思いから2017年8月に設立した会社だ。川田社長は経営者と看護師の「二刀流」の業務を日々元気いっぱいにこなしている。「病院で勤務するよりも訪問看護の方が、一人ひとりの患者さんにじっくりと向き合うことができると思ってこの道を選びました。好きなことをしているので忙しさは全く気にならないですね」と川田社長は笑顔を見せた。

うららの川田順子社長

うららの川田順子社長

「社名には麗(うら)らかな時間をご利用者様とご家族に提供したいという思いを込めています。一人ひとりが希望するその人らしい生活を送ることができるように最適なケアを提供することを心掛け、安心して利用できる訪問看護ステーションと評価していただけるようにスタッフ全員で日々頑張っています」と川田社長は朗らかに話した。

様々な資格を持った17人のスタッフが医療ケアに日々奔走

スタッフの人数は17人。5人の看護師を始め理学療法士4人、作業療法士5人、言語聴覚士2人、事務担当1人が在籍し、90人近い利用者をケアするため、日々奔走している。

利用者の9割以上は70歳以上の高齢者。スタッフは役割分担しながら血圧、体温、呼吸、脈拍の確認などの状態観察から医療処置、食事・洗面・洗髪・入浴介助といった療養上の世話、リハビリテーションといった様々なケアを行っている。突発的な依頼にも迅速に対応できる24時間体制を整えている。

訪問看護に赴く前に準備をするスタッフ

訪問看護に赴く前に準備をするスタッフ

「できる限り希望を叶えてあげられるようにご利用者様とご家族の気持ちに寄り添い、一人ひとりの疾患の状況だけでなく人生観や価値観についてもしっかりと把握することを心掛けています。気軽に何でも話していただける人間関係を作ることを大事にしています」と川田社長。スタッフが利用者と家族の橋渡し役を務めることも多いという。「困った時はうららに任せれば安心と思っていただけるように取り組んでいます。スタッフが来ることを楽しみにしていると言っていただけたら、それに勝る喜びはないですね」。

利用者についての情報を共有するため看護業務向けの支援システムを活用

訪問看護ステーションのスタッフは、利用者についての情報を組織内だけでなく、在宅医やケアマネージャー、介護士、薬剤師、地域のボランティアらとも共有しなければならない。うららは、組織内外のシームレスな情報共有と円滑なコミュニケーションを実現するための手段としてICTに着目し、5年前から看護業務向けの支援システムを導入している。

看護業務の支援システムを使う様子

看護業務の支援システムを使う様子

スタッフが利用者の情報を随時更新し、パソコン、タブレット、スマートフォンなどの端末から、利用者の状態やサービスの利用状況、カルテ、検査結果などの情報を確認できるようにしている。利用者の状態や様子について気付いたことをコメントとして入力し、意見を交換できるほか、訪問先で撮影した患部などの写真を関係者間で共有することで適切な処置に繋げることができる。アクセス権の設定ができるので 特定の関係者だけで情報を共有するといった使い方もできる。

だが、以前本社を置いていた建物は自社物件でなかったことから通信ネットワーク構築の新たな工事を行うことが難しく、システムにアクセスするパソコンの台数が数台に限られていた。そのため、複数のスタッフが社内で支援システムを使用する時は、順番待ちをしなければならないことが多かったという。

本社の新築と共に通信ネットワークを完備 業務レベルの向上を行った

訪問看護のニーズが年々高まる中、体制を強化するためにうららは、昨年8月、本社を新築した。新しい本社に備える機能でなにより重視したのがWi-Fiをはじめとする通信ネットワークだった。通信ネットワークの完備と共に10台のノートパソコンとスタッフ全員分のスマートフォンを導入し、社内のどこからでもシステムにアクセスできるようにした。「Wi-Fiのおかげでスタッフ全員がいつでもシステムを使うことが可能になりました。順番待ちをする必要がなくなったので業務が円滑に進むようになりました」と川田社長はうれしそうに話した。

うららの社内の様子

うららの社内の様子

システムはグループウェアとしての使い方もできる。緊急連絡で電話を使う場合を除いて、休暇申請やシフトの変更など勤務に関する情報のやりとりは全てシステムを通じて行っている。川田社長とスタッフにとって大切な時間を捻出する上で、ICTは大きな恩恵をもたらしてくれているという。

情報セキュリティを考えてUTMも導入。USBメモリーは使用禁止

利用者の個人情報を守るため情報セキュリティにも気を使っている。不正アクセスを遮断するファイアウォール、パソコンなどの端末へのコンピューターウイルスの感染を防ぐアンチウイルスなど様々な機能を併せ持つ「UTM(統合脅威管理)」を導入している。基本的にノートパソコンは外部に持ち出さず社内だけで使用するようにしており、コンピューターウイルスの感染源になるリスクがあることからUSBメモリーも使わないようにしている。

Web会議システムを活用して移動時間を節約

Web会議システムを、外部の医療サービスに携わる関係者との会議や研修でも積極的に活用している。会議や研修の会場に移動する時間を節約できる効果は大きく、直接顔を合わせてコミュニケーションを取った方が効果的なケースを除いて、今後もメリハリをつけてWeb会議システムを使っていきたいという。

また、今年10月からホームページのデザインを一新した。「訪問看護ステーションのことをできる限り多くの人に知ってもらえるよう、ブログなどを通じた情報発信にも力を入れていきたい」と川田社長。

増えるマネジメントの仕事はICTで対応して現場に出る時間を増やす

訪問看護のニーズが高まる中で依頼は増え続けており、マネジメントの仕事は増える一方だが、川田社長は、これからもICTを活用することで事務作業を効率化し、看護師として現場で働く時間を確保していきたいという。うららは組織づくりや人との繋がりを深めるために目的意識をしっかり持ってICTを活用している。

うらら本社の外観

うらら本社の外観

「自ら動いた方がスタッフの負担も減りますし、現場で利用者の皆さんと接している方が私自身も楽しいので一石二鳥です。高齢化が進む地域の医療を支えるために、これからも訪問看護ステーションの事業を進めていきます」。訪問看護に赴く準備をしながら川田社長は意欲的に語った。今日も利用者がうららのスタッフの訪問を待っている。

事業概要

会社名

株式会社うらら

本社

香川県高松市香南町由佐205番地1

電話

087-899-6200

設立

2017年8月

従業員数

17人

事業内容

状態の観察、療養上のお世話、リハビリテーション、ご家族らの支援、相談、状態が変化した時のケア、ターミナルケア、高次脳機能障害の看護、嚥下・発語訓練など

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