事例集

2022.12.06 06:00

クラウドサービスの活用で全国の営業担当者が情報を共有。電話を使わなくても本社と現場のコミュニケーションが円滑に クリハラ(香川県)

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産経ニュース エディトリアルチーム

産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。

香川県丸亀市のアパレルメーカー、株式会社クリハラは、クラウドサービスを活用して全国の拠点の営業担当者がリアルタイムで在庫情報などを共有できるシステムを導入し、商談に役立てている。いつでもどこでも情報が確認できることで、本社と現場との電話のやり取りが9割以上減少する効果が生まれている。

女性向け衣料品を大手流通企業に供給

今年、設立30周年を迎えた株式会社クリハラは、ショッピングセンターや大型スーパーを運営する流通大手企業を対象に女性用を中心とした衣料品の企画・製造・販売を行っている。発注先のブランド名で服の企画・デザインから生産までのプロセスを請け負うODM(Original Design Manufacturing)を得意とする。本社は企画やデザインに特化し、生産の9割以上を海外で行っている。

クリハラの倉庫の外観

クリハラの倉庫の外観

設立時は経営陣も含めた社員全員で商品を配送するなど懸命な取り組みで取引先を増やし、高い品質とリーズナブルな価格の商品で消費者の支持を獲得していったという。「好奇心をもって常に明るく前向きに挑戦し、成長を求め、お客様に喜ばれる企業であり続けたいと思っています」。クリハラの理念について30年の歴史を振り返りながら西山章彦常務取締役は話した。

毎年、ストレッチパンツ、スカート、スパッツ、ヨガパンツなど300~500アイテムをデザイン・生産している。豊富な在庫を確保するため、中国、バングラデシュ、インド、カンボジアなどの海外の工場で年間200万枚以上を生産し、本社に併設している大型倉庫に移送して保管している。商品は、取引先からの注文に応じて全国に出荷され、スーパーやショッピングセンターの衣料品コーナーで販売される。

クリハラが企画・製造・販売している女性向け衣料品

クリハラが企画・製造・販売している女性向け衣料品

「Mr.JUNKO」ブランドの男性向けシャツも販売

11年前、有名ブランドのファン層を新たな顧客として取り込もうと有名デザイナーのコシノジュンコ氏が手掛けるファッションブランド「Mr.JUNKO(ミスタージュンコ)」の正規ライセンスを取得した。主力の女性向け衣料品とは異なる販売網で、デザイン性が高い男性向けのシャツなどを企画・販売している。

クリハラが販売しているブランド商品

クリハラが販売しているブランド商品

全国の営業担当者がクラウドで本社の情報にアクセス。在庫数などの情報をリアルタイムで共有

「消費者のニーズは大きく変化しています。機能性や着心地への要求水準が高まる一方で、低価格でカジュアルな商品へのニーズも高まっています。コロナ禍の影響もあるのかもしれませんが、10年ぐらい先になると思っていた変化がすでに現れています。しかも、その変化のスピードは年々加速しているように思います」と西山常務は表情を引き締めた。

クリハラの西山章彦常務取締役

クリハラの西山章彦常務取締役

国内消費者の衣料品に対する支出優先度が年々低下する中で、新しい取り組みを始めなければならない。そういった観点から3年前から力を入れているのがICTの活用だ。最初に導入したのが営業部門だった。

クリハラは西日本におけるアパレル産業の中心地として知られる大阪・船場のほか、東京、福岡にも拠点を構え、全国で10人の営業担当者を配置している。社外からスマートフォン、パソコン、タブレットなどの端末を通じて本社のデータにアクセスできるクラウドサービスを導入することで、離れた地域で日々活動している営業担当者が、取引先との商談を進める上で重要なアイテム別在庫数などの情報をリアルタイムで共有できるようにしている。

営業担当者自らが在庫情報をリアルタイムで更新するので、常に最新の在庫情報を元に顧客へ情報提供が可能

全国の営業担当者は商談がまとまった時点で、パソコン、スマートフォンなどの端末から本社のデータにアクセスし、出荷が決まったアイテムの在庫数を更新している。このシステムのおかげで、全国の営業担当者は商談に臨む前にそれぞれのアイテムの最新の在庫数を把握できるようになっている。商談先で取引先から入手した情報もリアルタイムで共有し、商品の資料、新しい商品の入荷時期や入荷枚数といった情報もすぐに入手できる。

クリハラは同じ素材でデザインが少し異なるだけの商品をサイズ別に豊富にそろえている。営業担当者はアイテム別の在庫情報を元に売れ筋の商品や在庫が豊富な商品を積極的に提案し、在庫があまりない商品をあらかじめ提案リストから外すなど商談前にしっかりとした準備ができる。「クラウドサービスのおかげで営業の体制を根本から見直して強化することができました」と西山常務は話した。

クラウドサービスの導入以前は、全国の営業担当者からFAXで届く注文書を本社の担当者がまとめた上で在庫一覧表を作成するのに1日程度必要だったため、営業の現場は在庫の状況をリアルタイムで知る術がなかった。緊急で最新の在庫数を知りたい場合は本社の担当者に直接電話で聞くしかなかったが、担当者は離席していたり電話に出られない時もある。そのため、商談がまとまった後で、前日まであった在庫が完売していることが判明し、改めて別の商品を提案し直す手間が生じることがあったという。

クラウドサービスを使うことで無駄にしていた時間が浮き彫りに

今は営業担当者がクラウドサービスを通じて在庫数を直接更新してくれるので、在庫管理担当者が注文票を元に集計する作業も不要になった。クラウドサービスを活用していつでもどこでも情報の共有ができるようになった結果、電話で情報をやり取りする時間が導入前と比較して9割以上減少したという。

「在庫管理担当者が営業担当者と電話応対する時間は、1回あたりは10分以内でも、人数と回数が多いので合計すれば1日あたり2〜3時間程度は費やしていたと思います。しかも文書作成などの作業中に電話がかかってくるとその間手は止まりますし、ミスが発生する原因にもなっていました。以前は在庫の細かい枚数を確認するためにオフィスと倉庫を行き来しなければならないことも多かったのですが、そういった手間もなくすことができました」と西山常務はその効果について説明した。

倉庫では豊富な在庫が保管されている

倉庫では豊富な在庫が保管されている

「クラウドサービスを使うことで無駄に使っていた時間を浮き彫りにすることができました。在庫管理業務の効率化だけでなく、現場での商談にもプラス効果が出ています」と西山常務。Web会議システムも本社と拠点の円滑な情報交換に大きな効果を生み出しているという。

消費者とダイレクトに結び付くECの強化を検討

クリハラは消費者の関心やニーズを迅速に把握するために今後もICTを積極的に活用していく方針だ。現在は試行的に取り組んでいる自社商品を専用のWebサイトを通じて販売するEC(Electronic Commerce:電子商取引)を今後、強化することを検討している。「ECなら自社商品を消費者に直接購入してもらうことが可能になります。取引先は常に情報を求めていますから、売れ筋に関するデータは商談にも活用できます。ECサイトは商品を売るだけでなく消費者の声を収集するアンテナショップとしても活用していきたいと思っています」と西山常務は話す。

「Mr.JUNKO」のライセンス管理会社と協議して、クリハラが企画する「Mr.JUNKO」の商品をECサイトで販売する許可を得たことも追い風にしていきたいという。今後はECサイト専用の自社商品を企画・販売することも検討している。

ベテランの知識と経験をICTで更に活かす

社員はベテランが多く、知識と経験を更に活かすことができるようなICTの使い方を考えるとともに、若者が魅力を感じる職場環境づくりにもICTを活用していきたいという。

クリハラ本社の外観

クリハラ本社の外観

「ICTは本当に奥が深いのでしっかりと研究しながら導入していくつもりです。ICTの力を借りて変化が速いファッション業界の動向に対応することで会社を成長させ、縫製の技術を若い世代に伝えていくなど、アパレルに携わる企業として地域に貢献できることを増やしていきたいですね」と今後の抱負を話す西山常務。これまで蓄積してきたデザインや企画力を磨く上で、ICTはクリハラの大きな武器になるはずだ。

事業概要

会社名

株式会社クリハラ

本社

香川県丸亀市綾歌町富熊77-1

HP

https://www.kk-kurihara.net/

電話

0877-86-5858

設立

1992年9月

従業員数

22人

事業内容

婦人服、紳士服、子ども服など衣料品の企画、製造、販売

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