事例集

2022.11.14 06:00

最新ICTの積極導入で情報の見える化を推進、総合建設業へ飛躍をめざす 津端(群馬県)

最新ICTの積極導入で情報の見える化を推進、総合建設業へ飛躍をめざす 津端(群馬県)
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群馬県前橋市の幹線道路沿いに黒い外壁のお洒落なオフィスがある。2011年12月の創業以来、土木工事をメインに着実に成長を続ける株式会社津端の本社だ。土木建設業者にはまだ珍しいことだが、最新ICTを積極導入しているという(本社入口で津端裕介代表取締役)。

32歳で起業、「若さと機動力」武器に着実に成長

津端裕介代表取締役は43歳。高校卒業後、群馬県内で土木関係の仕事に就いた。職場の先輩から「作業員の仕事だけでなく管理や営業など事務もやれば給料がたくさんもらえるよ」とアドバイスされ、「40歳までに起業したい」と、積極的に仕事を身につけ、資金を蓄えた。

当時勤めていた会社の経営が傾いたのを機に32歳で独立。はじめは従業員4人を抱える個人事業主として仕事を請け負っていたが、2009年5月に株式会社化した。いま、同社の従業員はパートを含め38人。平均年齢は30代後半で「若さと機動力」を武器に、道路舗装や水道敷設など群馬県だけでなく県外の仕事も引き受け、顧客数は40社を超える。年商は約8億6000万円と右肩上がりで、津端社長は「切れ目なく仕事に恵まれ、これまで赤字に陥ったことはない」と胸を張る。

道路舗装作業をする同社従業員たち

道路舗装作業をする同社従業員たち

会社の伸張に社内管理が追いつかず、情報共有できていないため不都合続出

ところが、会社の規模が拡大し、売上が増えるにつれ、社内の管理システムが業務実態に後れを取るようになってきた。

顧客に仕事の見積もりを出そうにも、原価情報を従業員がそれぞれで管理していて共有ができていない。工事の施工管理も現場の代理人が個別に管理しており、情報の共有がない。工事関係の図面や書類を紙で保管していたため、保管スペースが次第に増え、後で資料を探すのに時間がかかる。群馬県館林市に出先事務所を設置したものの、7~8人いる作業員は昼間仕事で出払ってしまい、受信したFAXの確認がタイムリーにできない。津端社長の悩みは増えるばかりだった。

施工管理や原価管理情報が入ったパソコンで作業中の従業員

施工管理や原価管理情報が入ったパソコンで作業中の従業員

効率化と情報の共有のため矢継ぎ早にICTを導入

そこで津端社長はシステム支援会社に相談し、まず2020年春、施工管理ソフトを導入した。作業員が自分の端末で担当する現場の工程をいつでもどこでも確認できるようになり、仕事の効率が上がった。館林事務所では、受けたFAXを本社で確認できるようにしたため、急ぎの要件にも迅速に対応できるようになった。

2021年夏には、複合機を入れ替え、紙の情報をスキャンしてパソコンの共有ファイルに入れるソフトを導入した。紙文書を電子保管しておけば、必要なものだけパソコンの中から取り出して作業ができる。「それまでは毎月30~40件ある見積もりや打ち合わせの書類を全部紙で保管していた。おそらくのべ数千枚あったと思うが、だいぶ減りました」と津端社長は話す。

2021年10月には、懸案だった原価管理ソフトを導入して情報の共有化を行い、誰でも確認できるようにした。「当初は依頼された仕事の見積もりは私がやっていたが、忙しくなったため、2年ほど前から他の従業員にも任せるようになった。原価情報を共有化したので移動先や自宅にいる時でも、従業員が作成した見積もりが携帯やパソコンに入ってくる。すぐに返事ができるのが何より」と津端社長。意思決定が早くできれば顧客にすぐ見積もりを出せるから、受注の可能性も高まる。

執務中の津端社長

執務中の津端社長

3D-CADの「見える化」で広がる可能性、ICT重機導入も準備中

最近になってパソコンで立体図面を作成する3D-CADも導入した。津端社長は「お客様へ工事のプレゼンテーションをする時は、紙の資料よりCADで3次元のモデルを作り完成図を “見える化”した方がわかりやすい。これまでは見積依頼から受注できる確率は半々くらいだったが、3D-CADのおかげで受注比率が上がりそうだ」と期待をかけている。

3D-CADは土木業務の新しい可能性も拓く。今考えているのは、情報通信技術を取り入れたICT重機の導入だ。多くの土木工事現場では、表土を取り除く場合、重機を操縦する人が目算で動かしている。だがICT重機は、3D-CADで図面を出してデータを入力しておくと、重機のセンターが電子情報を察知してデータ通りに自動で削っていく。土地の形状に応じ、土を削る高さをmm単位で設定できるため、工事で発生する土の量を減らせる。撤去や掃除の手間や時間が減って廃棄費用を抑えることが可能になる上、これまでより工期や作業員の労働時間も短縮できる。津端社長は「1台1000万円くらいすることもあり、導入しているところはなかなかない。今年か遅くとも来年には導入したい」と話す。

矢継ぎ早にICT機器を導入しているのは「うちと同レベルの中小土建業者さんより先をいきたい」からという思いがあるからだ。他社との差別化を図るためにも「視野を広くもって新しい技術を積極的に取り入れていきたい」と思っている。

将来展望を語る津端社長

将来展望を語る津端社長

課題克服しながら足固め、将来は元請け事業者に

一方で、ICT化に向けた課題も少なくない。例えば、従業員が毎日の仕事内容を報告する日報だ。「現場に出ている作業員が入力した内容を、社長や管理部門の担当者がすぐに確認できるようになれば時間や業務の短縮化が図れるが、23人いる土木作業員のなかには手書きでしか日報を書けない人もいる」と津端社長。従業員のICTスキルの底上げをどう図っていくかは難しい課題だろう。

津端社長は従業員に「仕事を取り過ぎです」と怒られるそうだ。だが、「うちだって数ヶ月仕事が途絶えたら手元の現金がなくなる。あと1年分仕事があっても、2年後にまったく仕事がなくなってしまったらと考えると不安になる。1年くらい仕事がなくても耐えられるような会社にしておかないと」と自社の足固めを忘れていない。

2021年10月、メインの土木工事のほか、創業当初に手がけたことがある建築業務を再開した。「土木と建築の両方をやると総合建設業になる。今は孫請けなど請負工事が多いが、10年くらい先には総合建設業者として官公庁の入札を勝ち取り、元請け工事を増やしていたい」と、さらなる成長へ意欲を示す。今はICTの力を借りながら飛躍への準備をしているところだ。

事業概要

会社名

株式会社津端

本社

群馬県前橋市駒形町1487-1

電話

027-267-7120

設立

2011年12月

従業員数

38人

事業内容

土木工事、石工事、鋼構造物工事、舗装工事、水道施設工事ほか

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