事例集

2022.10.26 06:00

「これからの時代、健康経営とICT武装が必須」と社長自ら推進する 備福電気通信建設(岡山県)

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産経ニュース エディトリアルチーム

産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。

備福電気通信建設有限会社の河原貴行代表取締役が経営を先代から引き継いだ2019年。定年後すぐの元社員が健康を害したり、ヘビースモーカーの社員が肺がんで亡くなるなど、不幸な出来事が相次いだことをきっかけに、同社は健康経営の取り組みに本腰を入れ始めた。「熟練社員の高齢化や人材確保が難しくなる環境の中、社員には元気なまま定年を迎えてほしい」と、河原社長の取り組みは人材を大切にすることが企業にとっていかに重要かを示唆している。

体が資本の工事会社だからこそ、定年まで元気に働いてほしい

備福電気通信建設は、社会インフラとしての通信設備工事をメインとして、高所でのケーブル配線工事も多く、常に健康管理が求められている。健康経営の取り組みを開始して間もなく、国内でも新型コロナウイルスの感染が拡大を始めた。すでに社内に健康管理体制を整備していた同社は、アルコール消毒やマスク着用、サーマルカメラによる体温チェックなどを直ちに実施。社員の衛生意識も高まることとなった。また最近では社内のデジタルサイネージやホワイトボードを使って、心の健康をテーマに外部専門機関によるセミナーも開催し、コミュニケーションの取り方を教える講座も実施している。

従業員の健康のために新しい社屋を建設中

「ストレスを感じていない人より、ストレスを感じている人の方が事故を起こしやすい傾向があるようです」と話す河原社長は、安全と健康の両面からもメンタルヘルスが重要だという思いから、同社の敷地内に新しい社屋を建設中だ。そこには休憩室やカフェ、会議室や倉庫など、一息つける場所やほかの社員とのコミュニケーションが図れる空間を設け、体力と神経を使う仕事の合間や終わりに心をリフレッシュできる設備も用意する予定。

本社社屋。この奥に別社屋を建設中

本社社屋。この奥に別社屋を建設中

通信設備工事では、通行者や周辺への告知が必須のケースが多い

通信設備工事では高所作業車を使った作業も多いことから、安全に対する万全の準備と対策を怠ってはならない。作業者のみならず周囲の一般の人々にも注意を促したり、作業中であることを知らせる告知表示も重要な安全対策の一部だ。県内の様々な場所で行われる携帯用無線基地局設置時の光ケーブル接続や道路情報板工事、その他の電気通信設備工事の現場には、その都度工事の告知や注意看板の掲示、工事場所と工事名を撮影した写真などが必要になる。

周辺への告知や工事で利用するため、雨水を弾く耐水紙に印刷できるデジタル複合機を導入

特殊用紙が使えるデジタル複合機

特殊用紙が使えるデジタル複合機

これまでは通常のコピー用紙にプリントし1枚ずつラミネート処理を施していたが、今回導入したデジタル複合機では特殊用紙が使えるため、屋外で使用するものについては雨水を弾く耐水紙>に直接プリントし、そのまま現場に持ち込んで使っている。これが可能になっただけでも社員の業務は大幅に軽減されたという。今のところ現場で撮影した写真を持ち帰りプリント処理しているが、今後は携帯電話やタブレットで撮影したデータをクラウドにあげて、電子黒板で確認できるような、さらなるICT化を図っていく計画だという。

現場掲示用の作業中サイン(耐水紙)

現場掲示用の作業中サイン(耐水紙)

現場写真に入れて撮影する工事概要シート(耐水紙)

現場写真に入れて撮影する工事概要シート(耐水紙)

災害時の河川ライブカメラ視聴にも活用できるデジタルサイネージを設置

本社1階に設置されたデジタルサイネージ

本社1階に設置されたデジタルサイネージ

本社1階の事務所壁面に設置されたデジタルサイネージでは、通常は業務の情報や健康管理の啓蒙告知などを流している。災害時などには国土交通省が開示している各地の河川ライブカメラを映し出し、万が一の出動要請にも対応できるツールとして活用可能だ。2018年7月に起きた西日本豪雨災害時には岡山県各地の無線基地局が被災し、その復旧対応に走った経験から、デジタルサイネージの活用はまだまだ広がっていくに違いない。

またこの場所で行った心の健康セミナーでは、パソコンと連動したモニターとしてもデジタルサイネージが活躍。日常的には事務所で働くデスクワークの多い社員のために、運動不足を解消するトレーニング「スマトレ」も開始。モニターを見ながら体を動かす社員たちのストレス解消に役立っている。

職場での安全と健康管理意識向上のためのアルコール探知と体温測定

新型コロナウイルスの流行以降、エントランスにはアルコール消毒器と体温測定用のサーマルカメラを設置。ビル後方にある社員通用口にはそれに加え、勤怠管理用端末とアルコール検知器を設置した。社用車や特殊作業車を運転する社員には欠かせないチェック機能だが、測定に1人1分程度を要することから、なかなか徹底するまでには至っていないという。前日に飲酒しなかった人や飲酒の習慣がない人にとってはまだなじめないことかもしれないが、義務化されていくことを考えると、どうしてもクリアしていかなければならない作業である。

用意されたパイプに息を吹き込んでアルコールを検知する

用意されたパイプに息を吹き込んでアルコールを検知する

サーマルカメラとアルコール検知器、勤怠管理用端末のある通用口

サーマルカメラとアルコール検知器、勤怠管理用端末のある通用口

社員の健康管理と安全管理を徹底するためには、勤怠管理の記録とアルコール探知情報や体温測定データを統合してウォッチできれば、個人的な体調管理をサポートできるようになると河原社長は考えているのだが、異なるメーカーのデータを融合するにはもう少し時間がかかるようである。

勤怠管理カードを検知する端末

勤怠管理カードを検知する端末

3台のNASで対応していたデータ管理を1台のサーバーに統合

様々な工事物件をNAS(Network-Attached Storage:ネットワーク対応ハードディスク)3台で管理していたが、度重なる故障やコンピュータウイルスによるトラブルで何度も修復せざるを得ない状況であった。そこでマグニチュード6.7以上の地震にも水害にも対応できるよう、専用スペースを設け、ファイアウォールを搭載したサーバーを設置し全てのデータをそこに集約。それから以降はトラブルもなく、社員もストレスなく運用可能になった。

設置されたサーバーには地震対策も

設置されたサーバーには地震対策も

会社から離れた現場にいることが多く、コミュニケーション強化のためにもグループウェアは必須。推進するのは経営者

建設業という現場中心の仕事では社内のコミュニケーションが希薄になりがちだが、グループウェアやテレビ会議等のコミュニケーションツール活用によって社内の交流が促進され、新たな知恵も生まれる。

河原社長は、ICT化を推進しようとする時、最も重要なことは社長が率先して進めることだと断言する。社会インフラに携わる企業として責務のある「従業員の健康と安全の向上」、「工事周辺での告知や安全への配慮への迅速な対応」、「BCP対策の強化」はスタートした。

次はグループウェア等のクラウドを駆使したコミュニケーション強化による従業員の知識の共有と活用。それに知識の共有から生まれる新たな知恵の共有。すでに河原社長には構想があり、あとはそれをどう実施していくかだ。今後の備福電気通信建設に注目したい。

事業概要

会社名

備福電気通信建設有限会社

本社

岡山県岡山市南区福吉町29-28

電話

086-264-2694

設立

1970年11月

従業員数

25人

事業内容

通信設備工事(外線・接続)、宅内工事、光ケーブル接続工事、建柱工事、通信線路設計、施工管理、電気設備工事、電気申請業務

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