事例集

2022.08.24 06:00

作業状況を社内と顧客で同時把握。サービス品質を高めるISO22000取得 SOCSマネジメントシステムズ(神奈川県)

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産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。

食の安全を守るため、大勢の人たちが昼夜を問わず絶え間なく、さまざまなことに取り組んでいる。SOCSマネジメントシステムズ株式会社もそうした食の安全を担う企業の一つ。工場にある食品を製造するラインを毎日きれいに洗浄して、誰もが安心して口にできる食品を送り出せるよう働いている。

食品安全マネジメントシステム「ISO22000」の認証を顧客の工場で取得

同社の高い業務品質は、2021年7月に食品安全マネジメントシステム「ISO22000」の認証を取得したことが証明している。「食品工場の生産ライン洗浄サービスの提供という登録範囲で取得しました。顧客の工場へと出向いて作業する業態での取得は、日本で初めてだと思います」と田中晃社長は胸を張る。

作業現場からの報告を確認している田中晃社長

作業現場からの報告を確認している田中晃社長

清掃作業中の様子を写真付きで記録してクラウドで社内共有

取得の対象となった顧客先も、世界的なファストフードチェーン向けに食材を加工し出荷する専用工場。同社の仕事がグローバル企業の厳しい基準で認められたものだと言える。そうした厳しさをクリアするために必要だったのが、社内の情報管理を徹底するシステムの導入だ。業務アプリ構築のためのクラウドサービスを活用し、ここに幾つものシステムを載せて運用を始めた。

有効だったのが、「清掃作業の様子を写真付きで記録して、社内で共有したこと」だ。食品の製造工場ではたいてい、昼間に稼働している工場のラインを夜に停止し、清掃作業に移る。同社の出番となるわけだが、そこで行った作業のすべてを現場からタブレットなどでクラウド上に記録していく。写真も撮って報告に添え、どのような状態にあるかを分かるようにしておく。「これを手書きで行っていたら、毎日が大変でした」。TOP画像は記録された清掃作業中の様子。

クラウド化は記録の活用も容易にした。もしもこれが、毎日記録されてファイルに綴じられていく紙の書類だったら、問題点を抽出してとりまとめ、現場にフィードバックして改善につなげることは容易ではなかった。「クラウドサービスを利用したことで、記録の活用が効率化されました」。ISO22000の取得に必要な書類の管理にシステムの導入が大きく貢献した。

シビアな姿勢で作業をしているので 顧客も作業状況を閲覧できる

クラウドシステムの画面イメージ

クラウドシステムの画面イメージ

同社のシステムがユニークなのは、ゲストIDの機能を使って、顧客が作業状況を閲覧できるようにした点だ。「当社はあらかじめ『結果』を具体的な数値基準でお客様と取り決め、その『結果』を達成できたらお金をいただく『結果保証』サービスです。お客様が見て、悪い点があったらどんどん指摘してもらえるようにしています」。つたない点が多ければ売上が飛んでしまう。「万一、どこかに問題があったとしても誰がどこを担当したかも分かるため、トレーサビリティの要求にも合致しています」。現場で働く従業員の意識も、必然的に高まるというわけだ。

「中には、いっぱい書き込んでいただくお客様もいらっしゃいます」。目標には達していても、気になるところはどうしても残る。そうした部分を指摘してもらうことで、業務をより高度化したり改善したりして、顧客が満足するサービス内容へと近づけられる。いたずらにクレームをつけてくる顧客はいないのか。そんな心配も浮かぶが、「お互い、長い信頼関係の中で仕事をしていますから、指摘は正しいものばかり。受け止めて改善につなげていけます」。

汚れの度合いの基準は、天気予報の晴れと曇りの判断を参考にした だから結果にコミットできた

こうした信頼関係が構築できた背景にも、同社ならではの独自性がある。きれいか汚いかという主観的になりがちな判断を、ある程度数値化して診断できるようにした点だ。「ATP(アデノシン三リン酸)を計測する機械で、汚れが残っているかどうかは測れますが、その結果だけでは規準になりません。当社では清潔さにグレードを付けてクリアすることを目指しました」。

汚れというのは主観的なもので、大丈夫と言う人もいれば、まだまだダメと言う人もいる。これを客観的にするために試行錯誤をしていたある日、天気予報は「晴れ」と「曇り」の判断を何に基づいて行っているのかを調べた。天気予報では、空に雲がどれくらいあるかで晴れか曇りかを決める。その方法を汚れにも適用して、「どれくらいの汚れがどれくらい残っていたら未達成かを決めました」。内部で規準を明確にした上で作業を行い、その経緯と結果を顧客に対してオープンにすることで理解を得ていく。流行のキャッチフレーズになぞらえれば、清掃の結果にコミットする会社と言える。

定期的な清掃業務にも、社内と顧客同時に清掃状況を把握できるシステムを投入

食品製造ラインの清掃以外にも、同社では世界に拠点を持つ会員制大型スーパーが日本で展開する施設などを顧客に持ち、空調関係の定期管理業務などを行っている。年に4回程度の訪問となるが、ここでも作業の様子を視察した結果を、クラウドサービスにアップして社内で共有化している。「問題点があれば、早急に手を入れるよう指示します。現場に計画を出してもらって、達成できたかを確認します」。業務への高い意識が効率化を実現するシステムと融合し、高品質のサービスを実現した。

清掃業務を行う会社間の意識に差がありクレームとなるケースも

2007年の創業から15年。アルバイトを入れても100人に満たない中小企業がそこまでの高品質で日々の仕事をこなし、日本有数のファストフードチェーンや世界的な会員制大型スーパーを顧客に持つまでになったのは、「清掃業界の地位を底上げしたい」という田中社長の強い思いがあったからだ。

「外資系メーカーから独立して、コンサルタントを始めました」という田中社長が、その時にスローガンとして作ったのが「Provides Safety on Cleanliness and Sanitation to People, Environment, and Your Business」という言葉。直訳すれば、「人と環境、そしてあなたのビジネスにクレンリネス(清潔感)とサニテーション(衛生管理)に基づく安全を提供します」となる。当初から環境と衛生の確立を視野に入れていたが、ほどなくコンサルだけでなく現場の作業も請け負うようになった。そこで、「清掃を手がける事業者の意識に差があることに気がつきました」。

業務を請け負って清掃を行った事業者があったとする。依頼主が現場を見てまだ汚れが残っていたと苦情を言っても、清掃業者はすでに清掃したと答えるだけ。これでは顧客は困るし、清掃業の信頼も損なわれる。だからといって、どこまでもクレームが繰り出されれば、今度は清掃業者が困ってしまう。そこで「清潔さの規準」を明確にし、規準を超える仕事をすることで、お互いが納得できる関係を築いていった。

顧客先に育ててもらって、ここまで来ることができた

「最初はクレームばかりでした。大手の食品製造工場から仕事をもらったのですが、毎日40も50も『不適』の指摘をもらっていました。時間内に作業を終われず、工場の再開を遅れさせたこともありました」。普通だったら数ヶ月で切られていたところを、「先方にきちんとした清掃会社を育てたいという意識があったのでしょう。こちらの取り組みがそうしたお眼鏡にかなったようで、仕事を続けさせてくれました」。3年くらい経ってようやく納得できる状態になった。その会社との取引は今も続いている。

顧客工場が全国に広がるため、サテライトオフィスを展開、Web会議やコミュニケーションツールが活躍

事業地域は全国に渡る

事業地域は全国に渡る

ISO22000を取得し、勤怠管理もクラウドサービスで行うようにした。現場が神奈川県にはないため、各地にサテライトオフィスを置いて「Web会議システムやコミュニケーションツールで連絡をとり合っています」とICT化にも熱心。食品製造過程に関わる事業者に導入が求められているHACCPの制度化にも取り組んでいる。こうした一連の業務に関する取り組みを、田中社長は「頼まれればいつでも教えます」と言って、忙しい業務の合間にセミナーや講演などに飛び回っている。自分たちが業界に育ててもらった恩返しでもあり、また「清掃業全体が底上げされれば、結果として自分たちの仕事にもつながりますから」と理由を話す。

責任を持てる分野、勝てる分野でなければ勝負をしてはいけない

事業に関しては、いたずらな拡大は目指さない。新型コロナウイルスの影響で、病院の殺菌業務を依頼してくるところもあったが、「食べ物に関わる現場しかやらないと決めています」と現在の業務範囲にこだわる。根底には、若い頃に読んだビジネス書『エクセレント・カンパニー』に書かれていた、本筋を外さない経営の大切さがある。「責任を持てる分野、勝てる分野でなければ勝負をしてはいけません。それが小さな会社が生き延びる秘訣だと思っていますから」。下請けはせず、下請けを使わないのも責任を持てるサービスを提供するためだ。

少ない所帯で世界的なファストフードチェーンの日本戦略を支えるSOCSマネジメントシステムズ。高品質のサービスを追求し続けること、そのために必要なシステムを取り入れることで、小さいが強靱なエクセレント・カンパニーが生まれた。

事業概要

会社名

SOCSマネジメントシステムズ株式会社

所在地

神奈川県横浜市港北区新横浜3-6-12 日総第12ビル8F

電話

045-624-8661

設立

2007年4月11日

従業員数

80人(子会社含む)

事業内容

環境洗浄(空調機器クリーニング/ダクトクリーニング/厨房・室内加工室クリーニング)/バックステージサービス/コンサルティング&教育サービス

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