事例集

2022.08.04 06:00

学校経営にICT、複合機導入で学習環境の変革を実現 松商学園 松本秀峰中等教育学校(長野県)

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長野県初の完全中高一貫教育校 “松本秀峰中等教育学校”

学校法人松商学園松本秀峰中等教育学校は、中高一貫、男女共学の私立学校だ。文部科学省が1999年に導入した学制改革を受け、「リーダーの育成」を旗印に2010年、松商学園グループの一員として建学した。

長野県下では初の中等教育学校で、生徒は1年生から6年生(高校3年生)まで高校受験に煩わされることなく、部活動などそれぞれが興味を持つ内容や分野に励むことができる。開校13年目の今、生徒数は1学年で約80人、全学で約500人。男女の割合はほぼ半々で、4年生(高校1年生)の4月には英国で2週間の海外研修を実施する。
授業料は後期課程生で月3万5000円ほど。卒業生はほとんどが国公立大や有名私大に進学している。※(参考)前期課程は月3万円.

校内を案内する塩畑教頭、壁には卒業生が合格した大学名が貼り出されている

校内を案内する塩畑教頭、壁には卒業生が合格した大学名が貼り出されている

キーマンの着任をきっかけに「教育のICT化」が進んだ

同校で手腕を振るうのは塩畑泰一教頭(47歳)だ。大学を卒業後、教育サービス業を歩き、大手通信教育社を経て転職し、2013年、同校の数学科教諭として着任した。
「中等教育の現場で、すくすく伸びていく生徒たちをじかに見ることができて楽しい」と話す。
開校10周年記念を迎えた2020年、教頭の任を受け同校のさらなる発展のため、ICTをはじめとする様々な教育改革に勤しむこととなった。

課題を感じたのは校内の印刷作業だった。前の職場では複合機にフィニッシャー(自動的にホチキス留めする機能)が付いた機器を使っていたが、同校には職員室にフィニッシャー機能なしの複合機が1台、印刷室に簡易印刷機が2台あるだけだった。

同校の教員は、授業で教科書のほかに手作りの補充プリントを使う。定期試験の前には印刷した試験用紙を折って解答用紙を挟み込む作業も必要だ。印刷機の台数が限られているので、授業の合間の休み時間などに印刷し、生徒が帰宅した後に折り込み作業をするなど、試験前は教員の残業が不可避になる。勤務時間は通常午前8時15分から午後5時だが、平均で午後7時くらいになっていた。

塩畑教頭は「印刷物を冊子化するのに手間がかかりすぎる。やはりフィニッシャーが付いたものが欲しい。どこかのタイミングで全面的に入れ替えたい」と赴任後ずっと考えていた。

最新複合機導入で教員の業務高速化と印刷物の品質が激変

印刷室で今春導入された、モノクロ高速複合機とフルカラープロダクションプリンター

印刷室で今春導入された、モノクロ高速複合機とフルカラープロダクションプリンター

念願が叶ったのは8年後の2021年末のことだ。2022年春から運用を開始した新校舎の増設タイミングに合わせて予算が採れた。さっそく職員室内にフルカラー複合機1台、印刷室にはフィニッシャー機能付きのフルカラープロダクションプリンター1台と同じくフィニッシャー機能付きモノクロ高速複合機1台を設置した。いずれも既存機に比べ2倍ほど大きい最新型だが、以前の複合機と画面設定を同じにしてもらったので使う側の混乱は少なかった。

新しい複合機はボタン一つで必要な作業がすべてできる。カラー印刷された教材はモノクロ印刷よりずっと見やすく使い易やすい。「教員の業務は大幅に効率化された。少なくとも試験前に印刷のために居残りをする教員はいなくなった」と塩畑教頭は話す。試験問題や教材作成の作業工数が大幅に改善され、順番待ちや複数部数の手作業による仕分けがなくなった。さらに、印刷機の印字品質が格段に上がり生徒からの評判も大きく向上した。


最新複合機の導入が教員の意識に変化をもたらし、より教育効果の高い教材やツールの開発を自ら積極的に行うようになる

複合機で印刷された教材

複合機で印刷された教材

効果は教員の残業削減だけではない。
新型機は導入して1年未満のため、印刷コストの差はまだ見えないが、同校は創立以来、少人数制教育を実施しており、1つの授業の受講者数が少ない。そのため教材1種類あたりの印刷部数が多くないことから、以前の「印刷機」よりも新型機によるPCからのダイレクトプリントの方が、余剰プリントも必要なくコストメリットも高くなった。
また作業効率も圧倒的にあがる。塩畑教頭は「印刷に取られていた時間を短縮できたことで、教員は空いた時間を授業準備や生徒との面談に充てることができている」とみている。
さらに新型複合機はOA用紙だけでなく、クリアファイルなどにも印刷ができる。
従来の印刷機ではできなかったきれいなカラー資料やリアルで美しい写真、特殊紙を活用した教育・啓蒙に効果的なツールを作成することが可能である。これまでにない工夫された教材を創り出し、生徒個々の力を引き出す個性的な授業が展開されることが期待できる。

授業は電子黒板、教員はタブレット型PC、校務システムはクラウド。デジタル化が進み効果的な学習環境へ

教員のSurfaceと連動し、授業も電子黒板で行う

教員のSurfaceと連動し、授業も電子黒板で行う

同校のICT化は複合機だけに留まらない。2022年4月から教員にSurface(Microsoft社)を1人1台貸与し、出席や成績管理など校務システムを最新のクラウド型に変更、教室内で出欠を入力すると調査書などにそのまま反映される形にした。「いずれ教員が使いこなせるようになってくれば、紙で出していた生徒の家庭への連絡や行事案内などを電子化してネットワーク上で通知することができる」と塩畑教頭。

同校にはすでにパソコン教室があり、1年生からExcel、Wordを使用しキーボード入力体験をさせているが、いずれは入学時に学校が指定したスペック(性能)に合致するパソコンを生徒に購入してもらい、生徒用のポータルサイトで行事予定や成績を確認できるようにしたい。生活記録や学習計画を生徒が自分で管理できるようになれば、教員との紙のやりとりがなくなるので、業務はさらに効率化できるはずだ。
塩畑教頭は「試験導入を来年度の新入生からはじめたい」と考えている。

より自由に、より強かに。ICT導入が変革の種になる

学校経営の現場でICT導入を進める塩畑教頭は「機器を一つ導入したからといって何かが革新的に変わるわけではない。複合機の入れ替えに付随して印刷前の段階でどういう変化が起こるのか、そこにどういった変革を求めるのかまでを考えに入れておかないと、お金を無駄にしてしまう」と説く。

少子化が進む中、中等教育の学校経営は楽ではない。今は県内在住の生徒がほとんどだが、県外の生徒をどう集めるか。教員も教科や年齢にばらつきがある。理科では物理、化学、生物、歴史でも世界史、日本史と、専門性を強めた採用をして若い教員を確保したい。中等教育学校では中学内容、高校内容のカリキュラム(教育課程)の一部を組み替えることが法律で認められており、6年間で系統立てて教えることができる。
「今後は、10年先を見据えて教育課程の再編成に取り組み、私学としての独自性をさらに強化していきたい」と語る。

地方私学の新設校である同校の課題は山積している。サバイバルを勝ち抜くためにもICT化が大きなアドバンテージになりそうだ。

人工芝のグラウンドを備えた学舎

人工芝のグラウンドを備えた学舎

会社概要

名称

学校法人松商学園松本秀峰中等教育学校

住所

長野県松本市埋橋2丁目1番1号

電話

0263-31-8311

教職員

43人

設立

2010年

事業内容

中等教育

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