事例集

2022.07.29 06:00

オンライン礼拝、オンライン面会、タブレットで訪問看護の情報共有化しサービス向上 医療法人弘和会ケアホーム愛(まな)の家(群馬県)

オンライン礼拝、オンライン面会、タブレットで訪問看護の情報共有化しサービス向上 医療法人弘和会ケアホーム愛(まな)の家(群馬県)
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ステンドグラスに描かれた羊たちが、緑の牧場に伏している。旧約聖書の詩篇23篇を題材にしたというこの絵が意味するところは何か。医療法人弘和会ケアホーム愛(まな)の家の吉永摂理事務長は、「羊は不安があると決して伏せません。ステンドグラスの絵は、この施設を誰もが安心して暮らせる場所にしたいと、祈りと願いの表れなんです」と解説する。

吉永事務長は、コロナ禍でも礼拝や面会ができるように、ICTによってできる限りの工夫をしている。同時にICTによって職員の負担をできるだけ減らし、利用者へのサービスが充実できるように、様々な機器の導入を職員とともに取り組み成功させている。

ケアホーム愛(まな)の家の吉永摂理事務長

ケアホーム愛(まな)の家の吉永摂理事務長

テレビ会議システムを使ったオンラインでの礼拝を実施するケアホーム愛の家

前橋市で医院を運営する傍ら、「クリスチャンの方々が集う“終の棲家”を作りたい」という吉松弘理事長が2012年に開設したケアホーム愛(まな)の家には、20人の高齢者が移り住んで、20ある部屋で日々の暮らしを送っている。設立の経緯から入居者にクリスチャンが多いため、毎週日曜日には近くの教会で行われる礼拝に参加していた。

それが、新型コロナウイルス感染症の拡大で、教会に集まっての礼拝ができなくなった。代わりに2020年頃から、WEB配信によるオンラインでの礼拝がスタート。「日曜日はデイサービスがないので、そちらの施設にモニターを置いて、牧師のお話を聞けるようにしました」。感染を気にせず礼拝ができるだけでなく、足腰が弱くなって教会に行けなくなっていた入居者も参加できるようになって喜ばれた。「感染症が収束して教会での礼拝が再開しても、中継は続けていただけるようです」

実はケアホーム愛(まな)の家では、日曜礼拝とは別に毎週水曜日の朝9時半から10時までを「チャペルタイム」と称して、教会の牧師に話をしに来てもらう機会を作っていた。これがコロナ禍でできなくなってしまった。しかし、日曜礼拝のオンライン化を既に実施していたので、従来から行っていたチャペルタイムも即座にオンライン化することができた。「遠くの教会にいる牧師の方とも、オンラインならお話ができると好評です。コロナは大変でしたが、新しいことに挑戦する良いきっかけになりました」

オンライン礼拝の様子

オンライン礼拝の様子

体を動かすことが困難な方へ、ワゴンに付けたタブレットでオンライン面会を可能へ

コロナではもうひとつ、入居者と家族との接触も制約を受けた。以前のように気軽に居室を訪ね、言葉を交わすことが難しくなった時、ケアホーム愛(まな)の家では「LINEビデオ、スマートフォンの動画通話、テレビ会議システム等を用意してオンラインで面会できるようにしました」。ベッドから起き上がったり、体を動かすことが困難な入居者向けに、ワゴンにタブレットをアームで取り付け、ベッドサイドまで運んで会話できるようにする装置も自作した。

起き上がれない入居者でも外と会話ができるように、ワゴンにタブレットを取り付け持ち運びできるようにした

起き上がれない入居者でも外と会話ができるように、ワゴンにタブレットを取り付け持ち運びできるようにした

パソコンやスマートフォンが苦手な方は施設の入口にモニターとカメラを設置、オンライン面会可能に

パソコンやスマートフォンの操作が苦手な家族のために、施設の外から入ってすぐの場所にオンライン面会スペースを作った。机と椅子、モニターとカメラが設置してあり、そこからテレビ会議のように面会できる。入居者が最後の時を迎えるその瞬間まで、家族も含めて幸せでいられるようにしたいという信念で、あらゆる事態に創意工夫で対応している。

外から入ってすぐの場所に作られたオンライン面会スペース

外から入ってすぐの場所に作られたオンライン面会スペース

常に見守りが必要な入居者へのセンサーは、微弱な動きを察知する見守りロボットを導入

「終の棲家」を標榜している施設だけあって、入居者の状態にも差があり、常に状態を見守る必要がある方もいる。こうした状況に一般的な高齢者向け施設ではベッドセンサーを取り入れることが多い。ケアホーム愛(まな)の家でも試しに導入してみたが、「床ずれを防ぐために柔らかいエアマットを使っているせいか、センサーがうまく反応しないことがありました」。

入居者の安全を第一に考え、すぐに対応できるよう準備しているだけに、誤反応ばかり出てしまうと介護担当者は疲弊してしまう。だからといって、「ご利用者様の体にセンサーは取り付けられません。体に何かを付けられるのを嫌がる方がおられます。カメラも廊下には設置できますが、部屋にはプライバシーの問題があって取り付けられません」。何か良いシステムはないかと探していた時、「微弱な動きを察知する見守り介護ロボットのことを知って、3台取り入れました」。

空気圧の変動から微弱な動きを察知する仕組みが搭載されているそうで、呼吸や心拍数をしっかりと把握して、介護の職員が詰めている部屋のモニターに映し出してくれる。「認知症の方がベッドから出てしまうような状況もすぐに察知して、すばやく対応できるようになりました」。

見守りロボットで入所者の状況を把握

見守りロボットで入所者の状況を把握

タブレット活用にチャレンジ、訪問看護でタブレットとグループウェアが大活躍

職員に楽をしてもらおうと思って導入したシステムが、逆に負担をかけてしまうことがデジタルへの移行期にはよく起こる。「職員の方とよく話して、お互いに納得した上で進める必要があると分かりました」。

タブレットは、外回りの訪問看護の業務では大活躍している。「タブレットとスマートフォンを持たせて、毎日の処置や状態を記録したものをグループウェアで共有できるようにしました」。入力したデータはクラウドのサーバーにアップされるため、ログイン権限を持つ人なら外からでも閲覧できる。「急な用事で担当を代わってもらうような事態が起こった時、代わりの人に簡単にデータを引き継げます」。

職員の方がタブレットを操作しているところ

職員の方がタブレットを操作しているところ

ケアマネージャー等の人材確保にICT化は欠かせない

従来は、ホームまで来てパソコンを開いて記録を確認する必要があった。テレワークが推奨される時代の働き方改革に、大いに役立っている。 テレワークについては、ケアマネージャーが家でも仕事ができるよう、リモートデスクトップのシステムを導入した。常に人手不足が言われる業界だ。働く人にも常に気を配る必要があった。

仕事が厳しいから、人員が不足するという訳ではない。「働きづらいなと思っていた時に同じような施設ができると、すぐに移ってしまうんです。長く働いてもらえれば、資格も取れてマネジメントの仕事もできるようになるんですが……」。だからこそ、働きやすい環境を作ることで、より長く定着してもらえるように策を講じていく。

今後も積極的なICT導入によって職員の負担軽減を行いたい

今は、デイサービスの利用者たちを送り迎えする車を、もっと効率的に走らせる方法はないかと考えている。「30人くらいの方の家を回るとなると、ルートを考えるのが大変です」。これを効率化できれば、前夜に遅くまで計画を練るような運転手の負担を減らせる。10月から義務化されるアルコールチェックも課題で、今は簡易キットでそれぞれの職員がチェックし、メールで報告している仕組みを、効率化できるようなツールはないかと探している。

災害発生時の緊急対応のためBCPの策定に取り組む

政府の通達で課題とされたBCP(事業継続計画)にも取り組み始めた。災害が発生した場合、全職員にメールで通知する仕組みを整える一方、メールが使えなくなる場合も想定し、災害時に近くにいて手が空いている職員はホームまで来られるようにしておいたり、時々の訓練で大切なシステムを守る体制を整えたりしている。「水害の可能性に備えて介護システムはクラウド化しました。ネットワーク接続型ストレージは水害が起こりそうなら2階に運び上げます」。最も守るべき入居者は、最初から2階の部屋にいるため安心だ。後はどれだけシステム面を守り切れるかが事業継続の鍵。早急に取り組んでいくという。

「業務の効率化は大切ですが、それが職員の方々にとってどれだけのメリットになるのかを考えることが必要です」。上意下達ではない、目的のために必要なことはないかを皆で考えて取り組む姿勢が、結果としての成功を呼ぶ。

医療法人弘和会ケアホーム愛(まな)の家

事業概要

法人名

医療法人弘和会ケアホーム愛(まな)の家

所在地

群馬県前橋市朝日町四丁目5-5

電話

027-225-2311

設立

2012年11月

職員数

47人

事業内容

ケアホーム/デイサービス/ヘルパー/訪問看護/居宅介護支援

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