事例集

2022.07.08 06:00

人本経営+SDGs+デジタル化=未来戦略で成長を続ける 堀田ハガネ(大阪府)

人本経営+SDGs+デジタル化=未来戦略で成長を続ける 堀田ハガネ(大阪府)
関連記事のお知らせを受け取る
問い合わせをする

この記事に書いてあること

制作協力

産経ニュース エディトリアルチーム

産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。

大阪府堺市の堀田ハガネが、国連が推進するSDGs(持続可能な開発目標)の実践を通じた脱炭素化を目指すGX(グリーントランスフォーメーション)とデジタルを活用するDX(デジタルトランスフォーメーション)を同時に進めている。

ニッチに強み 含ニッケル鋼の豊富な品揃え

含ニッケル鋼と呼ばれる特殊な鋼材の販売、加工に取り組む堀田ハガネは、大阪府堺市の臨海工業地帯の一角に本社を構えている。

「含ニッケル鋼はニッチであるがゆえに競争相手が少ない商品です。他社が扱わない鋼種の品ぞろえを充実させることが強みにつながっています。しかし、既存の事業を守っているだけではいずれ先細りになるので、常に新しい分野を開拓することを心掛けています」。6月初旬、取材に応じた堀田靖社長はきっぱりとした口調でそう語った。

堀田靖社長

堀田靖社長

明るいイメージを発信 受付では踊るロボットがお出迎え

受付に置かれたガンニッケルマンのロボットが音楽に合わせてご挨拶の踊り
受付に置かれたガンニッケルマンのロボットが音楽に合わせてご挨拶の踊り

受付に置かれたガンニッケルマンのロボットが音楽に合わせてご挨拶の踊り

本社の受付にはオリジナルキャラクター、「ガンニッケルマン」のロボットが置かれている。「訪れる皆さんに楽しんでいただけたらと思って。堀田ハガネは、伝統的に組織、財政に加え、宣伝を重視しているんです」と堀田社長。YouTubeに「ガンニッケルマンチャンネル」を開設して会社の明るいイメージを発信する一方、2015年9月には期間限定で大阪府貝塚市を走る水間鉄道の列車の先頭にガンニッケルマンのヘッドマークを掲出し、反響を呼んだこともある。「ガンニッケルマンは、会社について知っていただく上での『つかみ』の役割をしっかり果たしてくれています」と堀田社長はにこやかに話した。

先を見据えて機械加工事業に進出

5年前から工作機械をはじめ、トンネル向けのファン、粉砕機などを手掛ける機械加工事業にも進出している。技術力があるにもかかわらず、後継者がいないことで廃業が懸念されていた2つの加工事業会社から設備や人材を引き継いだ。「材料の販売だけでは取引の広がりはなかなか見込めません。加工にも取り組むことで、新しい取引につなげていきたいと考えています。徐々に成果が出始めているので、将来的には機械加工の分野を主力として育てていくつもりです」と堀田社長は今後の戦略を語った。

堀田ハガネが力を入れている加工部門

堀田ハガネが力を入れている加工部門

注目集めるSDGsファーストの取り組み

堀田ハガネは2019年からSDGsの実践に積極的に取り組んでいる。中小企業の間でSDGsへの関心は高まりつつあるが、コストや業務への負担などさまざまな理由から本格的な実践に踏み出せない企業は多い。それだけに、堀田ハガネのSDGsファーストの取り組みは注目を集めている。

堀田社長がSDGsに関心を持ったのは、人を大切にする「人本経営」との親和性を感じたからだ。堀田社長は、ボーイスカウトのリーダーを務めた経験から、仲間同士が助け合い、年長者が後継者を育てることを大切にするその精神を経営に生かしたいと考え、実践してきたという。「堀田ハガネの社是は『ええ会社にしまっせ』です。『誰一人取り残さない』を原則とするSDGsが、長い間考えてきた理念と合致したんです」(堀田社長)

本社倉庫兼工場の風景

本社倉庫兼工場の風景

身近なことからSDGsの行動目標を実践

SDGsの実践にあたっては、社内でプロジェクトチームを結成し、業務グループの中谷建太さんをリーダーに指名した。「理念だけが先行するわけにはいきませんので、会社として既に取り組んでいることや確実に取り組めることを社員のコンセンサスを得ながらSDGsの行動目標として掲げるようにしています」と中谷さんは説明した。 

SDGs推進リーダーの中谷建太さん

SDGs推進リーダーの中谷建太さん

例えば、SDGsの目標11「住み続けられるまちづくりを」の実践として取り組んでいるのが、会社周辺や南海電鉄石津川駅周辺での清掃活動だ。主に金曜日の午前中、数十分にわたって、社員がごみ拾いなどに従事している。「多くの方に感謝していただけるので社員のモチベーションアップにつながっています」(中谷さん)。

会社周辺で清掃活動に取り組む社員

会社周辺で清掃活動に取り組む社員

また、飲み物を飲む際にネーム入りタンブラーを使ってペットボトルの使用を減らす取り組みは、目標13「気候変動に具体的な対策を」の実践だ。北海道・クッチャロ湖の保全を応援するオフィシャルメンバーとしての活動は、目標15「陸の豊かさも守ろう」の取り組みとして打ち出している。

堀田ハガネでは5つあるグループのうち2つのグループで女性がリーダーを務めている。電話受注や仕入れ、配車の手配などを行う業務グループでは10人のうち、8人が女性だ。管理職を女性が務め、女性社員の活躍を積極的に後押ししている社風は目標5「ジェンダー平等を実現しよう」に合致している。

それぞれの目標と取り組みは、社員がリフレッシュするための厚生棟の階段やオフィス前の階段などに掲示し、自然な流れでSDGsを意識できるようにしている。

本社の階段に掲示しているSDGsの行動目標への取り組み

本社の階段に掲示しているSDGsの行動目標への取り組み

SDGsのための設備投資を惜しまない

社員たちの取り組みと共に重視しているのが、脱炭素社会の実現に貢献するための設備投資だ。

使用する電力を減らすために、オフィスや工場兼倉庫の数百本の照明を水銀灯から順次、LEDに交換した。営業活動などで使う社有車についても7台のうち、6台はハイブリット車にしている。今年3月には太陽光発電システムを導入し、オフィスの電力を再生可能エネルギーでまかなう体制を整えた。今後、太陽光発電システムや蓄電池を増設することで工場兼倉庫のクレーンや切断機、コンプレッサーなどの電力も再生可能エネルギーでまかなえるようにしていきたいという。

堀田ハガネのオフィス。感染症対策のパーテーションも手作り

堀田ハガネのオフィス。感染症対策のパーテーションも手作り

SDGs関連事業を本業に

中期経営計画では、SDGs関連の事業に積極的に取り組んでいくことを打ち出している。「現在取り扱っている特殊鋼は石油化学プラント向けの鋼材が多いのですが、化石エネルギーから水素燃料や太陽光などの再生可能エネルギーへの転換は世界的な潮流になっています。大企業だけでなく中小企業もSDGsに積極的にかかわっていかなければ世界でビジネスを展開できなくなっていくでしょう。水素エンジンや風力発電などSDGs関連事業を本業にすることで提案力の強化を通じて得意先の役に立つことができますし、新規の取引先の開拓にもつながると考えています」と堀田社長は話す。

組織の活動による環境への負荷を最小限にすることを定めた国際標準規格ISO14001の取得にも動いている。9月に取得できるように準備を進めているが、SDGsに積極的に取り組んでいることもあって手続きは順調に進んでいるという。

SDGsを通じて深まる地域との絆

堀田ハガネは、地元・堺市の「さかいSDGs推進プラットフォーム」にも参加。堀田ハガネの取り組みは地元で広く知られており、高校生がSDGsについて学習するために見学に訪れることもある。SDGsに積極的に取り組むことで地域とのつながりが深まり、多くの人に認められることで社員たちの会社に対する誇りが生まれるという好循環につながっている。

石津川駅前の定期的な清掃を行っている

石津川駅前の定期的な清掃を行っている

デジタル化にも注力する

堀田ハガネは、SDGsへの取り組みを通じたGXだけでなくDXにも力を入れている。
デジタル化については、約50年前に大手銀行と提携して仕入、販売、経費処理のためのコンピューターシステムを導入するなど以前から技術の活用に積極的に取り組んできた。現在、営業の担当者を中心に本社でなくても仕事ができるようにVPN(仮想プライベートネットワーク)を構築して外部から本社のサーバーにアクセスして資料を共有したり、複合機にFAXで入ってきた書類を見ることができるようにしており、コロナ禍で大きな効果を発揮したという。

「出張中でも空いた時間で仕事をこなすことができるようになって非常に便利になりました。新幹線の中でも仕事ができるようになりましたし、社内でするより集中できるときがあります。テレワークシステムの導入で一番恩恵を受けているのは私かもしれません」と堀田社長はうれしそうに話した。

人本経営+SDGs+デジタル化=堀田ハガネの未来戦略

SDGsの前文では、「だれひとり取り残さないことを誓います」とあり、5つの決意として「人間を守る」、「自然と調和した繁栄」、「平和の実現」、「すべての国と人が協力」、「地球を守る」とある。この後に続くのがご存じの「17の目標」。当然のことながらSDGsを推進する企業は、「人」を企業の大切な存在としてみる必要がある。そのことがSDGs推進企業の前提となる。

堀田ハガネは「人本経営」を以前から推進しており、その流れの中で「SDGs」に力を入れている。SDGs推進の作業を通じて改めて自社のやっていることが未来社会からの要請と合致していることに勇気を得たに違いない。

堀田ハガネの本社外観

堀田ハガネの本社外観

SDGsの取り組みとデジタル化投資の両輪でGXとDXを同時に推進している堀田ハガネ。堺市に隣接する大阪市で2025年に開催される大阪・関西万博の追い風を生かして、これからどのような取り組みをしていくのか引き続き注目したい。

事業概要

会社名

株式会社堀田ハガネ

本社

大阪府堺市西区築港新町3丁19-2

電話

072-244―0011

設立

1959年3月(1956年1月創業)

従業員数

42人

事業内容

特殊鋼、ステンレス鋼全般の販売及び加工、機械加工

関連記事のお知らせを受け取る
問い合わせをする