製造業(機械)
事例集
2022.04.25 06:00
LED加工企業の成長に貢献 LEDモジュールの自動配置システムで顧客へ素早いレスポンス LEDグロー(香川県)
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必要であるが故に手間がかかることが当たり前と思っていた業務が、たったひとつのデジタル技術を活用することで大幅に効率化できることがある。香川県のLEDメーカー、LEDグローが導入したLEDモジュールに特化した配置システムは、そのケースのひとつだ。
LEDの時代を見据えて誕生した企業
LED(Light Emitting Diode)は電気を流すと光る性質を持った半導体。寿命が長く省エネ効果も高いことから蛍光灯や電球といった光源から置き換わる動きが進んでおり、発光型のサイン、看板にも広がっている。
LEDグローは、香川県内のサイン、看板の企画、制作会社、サンエイのグループ企業だ。サンエイは、十数年前にLEDが一般市場に普及し始めたころから、その将来性に着目し、2009年にLED加工に特化したグループ会社、LEDグローを設立した。
「従来型のサイン、看板だけではいずれ企業として厳しい状況に追い込まれるという危機感がありました。また、当時、LED加工の価格が高かったので、外注するよりも内製化した方がコストを削減できるとの判断もありました。ゼロからのスタートだったので最初は海外をはじめとするさまざまな展示会でLEDに関する情報を集めながら体制を整えました」。サンエイの社長も務めるLEDグローの大林義博社長は設立の経緯をそのように説明した。
LEDモジュールの組み込みに高い技術を誇るLEDグロー
LEDと発光のための電子基板を組み合わせた部品、LEDモジュールの分野で、LEDグローは高い技術を蓄積してきた。LEDモジュールにはカバー型、レンズ型、カラー型、バー型などさまざまな種類がある。LEDグローではその中から数十種類を扱い、文字や数字の形にあわせてLEDモジュールを組み込んだサイン、看板を制作している。
香川県三木町のサンエイの本社の一角にあるLEDグローのオフィスでは20代から40代の働き盛りの社員10人が、サンエイと連携しながら事業を進めている。本社1階のショールームではさまざまなLEDモジュールやサイン、看板のサンプルを展示している。
LEDモジュール配置図作成は重要な業務だが手間がかかっていた
お客様から見積の依頼があったとき、社員が最初に取り組むのが、サイン、看板の仕様、設置場所、サイズ、厚みなどさまざまな発注条件を満たすように、LEDモジュールを組み込んだ配置図を作成することだ。見積の依頼は、平均で月あたり1000件を超える。単純なデザインなら5分程度で配置を完了できるが、複雑なデザインや複数のサイズで依頼があった場合は、作業を完了するのに30分以上要することもある。
「FAXやスキャンデータ、手書きや電話でのやりとりでは必要なLEDモジュールの個数を算出しにくく、配置図を作成するのに時間をいただくことになりますので、アウトラインデータをメールで送っていただくようお願いしています」と営業担当の六車(むぐるま)美穂さんは説明した。
デザインに基づいて、使用するLEDモジュールの種類や個数を決定し、配置を完了してから積算に基づいて見積書を作成し、配置図とともに依頼主に送って発注を検討してもらっている。
だが、見積書を作成しても全てが受注につながる訳ではない。失注すれば会社の収益にはつながらず、見積書の作成にかけた時間と労力は無駄になってしまう。受注率を高めるために必要なスピードと正確さの板挟みになりながら現場は日々、仕事に取り組んでいる。
「社員の様子を見ているとモニターに向かって作業をしている時間が多く、仕事に追われているのではないかと思っていました。時間を割かなければならない業務があるのならICTを活用することでその負担を軽減できないかと考えたんです」と大林社長は以前の社内の様子を振り返った。
業務効率を変えたLED自動配置システム
課題を解決するために導入したのがLEDモジュールの自動配置に特化したシステムだった。
「以前使っていたグラフィックデザインのソフトウェアでは、担当者がカーソルを動かしてLEDモジュールの間隔を細かく調整しなければなりませんでした。細い文字や漢字の場合は神経も使いますし、時間も取られていました」と配置図の作成を担当するサービスエンジニアの松田昌規さんは話した。
一番手間がかかっていたのが、LEDモジュールの個数に対応した電圧などのデータの作成だ。新しいシステムを導入する前は、使用するLEDモジュールの個数を数えた上で数値は電卓を使って手作業で算出していたという。「依頼が多いとエンジニアのみなさんは夜遅くまで残業をしていることがあったので、いつも申し訳ないという気持ちで見積をお願いしていました」と六車さんは話した。
「依頼があった文字や数字の特徴に基づいて事前に設定しておけば、システムが自動的にバランスよくLEDモジュールを配置してくれます。細かい調整までしてくれるので作業が本当に楽になりました。使用する個数や電圧などのデータもワンクリックで計算してくれるので、一番手間取っていた工程を無くすことができました」と松田さんはシステムの効果について話した。前年同期比で見積の依頼件数は増えているが、4人で担当していた仕事が2人で済むようになっただけでなく、残業の時間も減少しているという。
素早いレスポンスがお客様への大きなアピールポイントに
システムのおかげで、お客様へのレスポンスを以前にも増して素早くできるようになった。「見積の依頼をいただいてから返信するまで以前は半日程度かかっていましたが、今は数時間でお返しできるようになりました。積算を担当している人に依頼するときの心理的なプレッシャーも軽くなりました。複数に見積依頼を出して早く返答があったところに発注を決めるお客様もいますので、レスポンスが早くなったことは大きなアピールポイントになっています」と六車さんは話した。
ICTでポテンシャルが高い市場を開拓する
「システムのおかげで社員たちも以前と比べると仕事に追われることが減って、広い視野で取り組むことができるようになっているように思います。お客様に選んでいただける企業であり続けられるようこれからも頑張っていきます」と大林社長は話す。
LED分野で蓄積してきたLEDグローの技術はICTを活用することでさらに進化が期待できる。環境にやさしく、お洒落な雰囲気を演出できるLEDモジュールを組み込んだサイン、看板の需要は高まり続けている。LEDを使ったデジタルサイネージ(電子黒板)の普及も進んでいる。LEDグローが、ポテンシャルが大きい市場をどのように開拓していくかに注目したい。
事業概要
会社名
株式会社LEDグロー
本社
香川県木田郡三木町氷上3098
電話
087-898-8126
設立
2009年6月
従業員数
10人
事業内容
サイン・看板・内装用LEDの製造、販売