事例集

2022.02.24 06:00

部屋の360°画像+間取り表示で賃貸物件のバーチャル内見が進化 リビングギャラリー(新潟県)

部屋の360°画像+間取り表示で賃貸物件のバーチャル内見が進化 リビングギャラリー(新潟県)
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進学に就職、そして異動といった出来事が重なる2月や3月は、不動産会社にとって大忙しのシーズンだ。例年なら営業所を訪ねて紹介を受け、担当者と一緒に物件を見て回る人でにぎわうが、今は新型コロナウイルス感染への懸念から、直接の訪問をためらう人も多い。

オンライン接客を強化し遠方の顧客サポート


「自宅に居ながら、オンラインで接客を受けられるリモート賃貸の仕組みは以前から導入していましたが、もっと手軽に部屋の様子を確かめられるようにしたいと考えました」。そう話すのは、専門学校や大学を展開するNSGグループのリビングギャラリー(新潟県を中心に不動産・賃貸・管理業務を営んでいる)の中川一也賃貸営業本部長だ。「1月20日にサイトをリニューアルして、部屋の内部をウェブサイトから360度の画像で見られる仕組みを導入しました。スマートフォンでも物件を調べやすくしています」。

手元のスマートフォンやパソコンからリビングギャラリーのサイトにアクセスして物件を選ぶと、部屋の画像が映し出される。 画像を左右にスライドさせると、見えていなかった部分が現れる。「360°カメラを使って撮影した画像です」。矢印にタッチして奥へと進めば次の部屋へと入って、そこでも周囲をぐるりと見渡せる。自分で部屋を歩いているような感覚で、物件を確かめることができる。リビングギャラ―ではこのサービスを作るため、各店舗用25台の360°カメラを導入した。

間取り図と360°画像が連動して利便性向上


これまでも、ひとつの物件について豊富に写真を掲載し、雰囲気をつかめるようにはしていた。

顧客の利便性向上について熱く語る中川一也賃貸営業本部長

顧客の利便性向上について熱く語る中川一也賃貸営業本部長


それでも、「写真が間取り図のどこを写したものかまでは分かりませんでした。360°画像を間取り図と連動させることで、物件のどこに位置するのかを把握できるようになりました」。コンセントの位置や形状もウェブで確認できれば、入居してテレビや家電やパソコンなどをどこに置けば良いかも自宅から検討できる。「娘さんとお母さんが一緒に360°画像をみて確認しながら、物件を探したという話も聞きました」。
360°画像だけでなく、クローゼットの中やコンセントの位置、コンセントの部分をズームアップすると形状が分かるため、持参する機器や荷物の置く場所もおおよそ分かる。

コンセントの部分をズームアップすると形状が分かる

コンセントの部分をズームアップすると形状が分かる


360°画像で物件の様子を知ってもらうことで、直接顧客を現地へと案内する件数を減らすことができる。「営業所では、顧客ひとりについて平均で3物件ほど案内していて、エリアによっては1時間から1時間半くらいかかっていました」。それでも契約に至らず、紹介し直すようなことになれば、さらに時間がかかる。360°画像でお気に入りの物件を選んでもらうことで、こうしたミスマッチを防ぐことができるのだ。

ホームページ掲載用の360°画像の撮影、1件あたり10分で済む


顧客にとっても営業所にとっても、お部屋探しの効率化につながる仕組みだ。しかし360°画像の準備のために手間がかかっては、働き方改革が言われている状況に逆行してしまう。360°カメラを使った撮影は「1物件あたりで5分から10分程度で済んでしまいます」。一見複雑そうに見える、間取り図と画像を結び付ける形でサイトに掲載するまでの作業も、1件あたり10分ほどで済むという。導入にあたってリビングギャラリーではあらかじめ、「営業所の社員にZoomで2回、研修を行いました。今はパートの方にも使い方を教えて、撮影してきてもらっています。」。今後は、4月入社予定の学生も動員して、物件数を増やしていくという。

360°カメラを使った撮影は「1物件あたりで5分から10分程度」

360°カメラを使った撮影は「1物件あたりで5分から10分程度」

効果を全社員が実感しながら掲載件数を伸ばしていく


こうした新しい取り組みを成功させるために、「この仕組みにどのような利便性があるか、実際に業務の効率化が図られているかを、現場の担当者に“腹落ち”させる必要があります」と中川本部長は語る。そのために、「来店しないで物件を決めている人たちが、これだけいらっしゃるといった数字を見せなくてはなりません」。

現時点ではリモートの案内が全体の2.5%ほど。来年度は、360°画像の導入で5%弱の500件ほどに増やす考えだ。こうした成果を改めて示すことで、物件紹介の360°画像掲載に弾みがつく。「現在、全体の3割にお部屋の360°画像が入っています。来年度中に6割、物件数で3000件ほどに持って行きたいと考えています」。社員が実践し、効果を実感して取り組みを加速させ、顧客サービスの知恵をさらにみんなが出し合う、そんな姿を考えている。

さらに、「春先から、宅建士との媒介契約書の取り交わしが電子化されます。その次のフェーズで、賃貸契約書の電子化が実現すれば、不動産会社に1回も足を運ばなくても、家にいながら物件を探して、360°画像で内覧して、契約を結ぶまでできるようになります」と中川本部長。そのような時代が来た時、今の360°画像の取り組みが大きな転機になるだろう。

さまざまな業務革新に取り組む。「FAXの誤送信0」もその一つ


「管理戸数が2万戸に迫る中で、コストを増やさず人も増やさないで業務を回していけるような仕組みを作らなくてはなりません」。そう中川本部長が語るリビングギャラリーでは、ICTによって人手を省き業務の効率化に取り組んでいる。その中でICTの活用を進めてFAXの誤送信というミスの削減に取り組んでいる。

契約にあたって不可欠となる保証会社への審査依頼は、ペーパーレスにできず、FAXでの送信が今も必要となっている。ここで「絶対に起こってはいけない誤送信が発生してしまうエラーが起こってしまいました」と、小日向博美賃貸管理部長は残念がる。2月3月の繁忙期に営業所が、大量の書類を送信する中で、FAXに登録された送信先を押す際に、別のボタンを押してしまい別の取引先に届いてしまったという。

業務革新に取り組む小日向博美賃貸管理部長

業務革新に取り組む小日向博美賃貸管理部長


「2人1組で確認して送りましょうという取り決めをしていても、案件が大量に重なるとエラーが避けられません」。そこで、リビングギャラリーでは、『送信先の情報が記録されたQRコード入りの送信票』を使う仕組みを導入した。「QRコード入りの送信票と審査依頼の用紙を複合機にスキャンさせると、複合機がQRコードを読み取って、送り先を判断して、FAX送信してくれるようになり、FAXの誤送信が「0」になりました」(小日向管理部長)。

送信先のQRコードをつけることでFAXの誤送信が「0」に

送信先のQRコードをつけることでFAXの誤送信が「0」に


その他のICT化も計画している。「管理部門で、修繕業者との間で見積もりや発注書のやり取りをクラウドにして、ペーパーレスにする事を考えています」(中川本部長)。 現状は、ICT導入が進んでいない小さい事業者もあって対応しきれていないため、「退去した後の写真を現場に撮ってもらってクラウドで共有し、修繕業者が見積もりする、という仕組みを考えています」(中川本部長)。 入居者アプリの導入も検討している。不具合が出た場所を入居者に撮影してもらってアプリで共有することで、修繕の手配をスムーズに行えるようになる。

オレンジ色がトレードマークのリビングギャラリーは、新潟医療福祉大学や開志専門職大学、新潟ビジネス専門学校、新潟コンピューター専門学校といった大学や専門学校を数多く運営しているNSGグループに所属。県内トップクラスの不動産・賃貸・管理会社として信頼性を確保し、働き方でも業界のリーダー的な姿を見せる必要がある。一連の取り組みは、企業価値の維持・向上に大いに役立つ。

近年は、首都圏での顧客確保にも力を入れ始めた。現在5店舗を赤羽、日暮里、錦糸町、船橋、川崎に出している。「新潟から東京の部屋を探したり、東京で新潟の部屋を探したりする需要もあります」と中川本部長。それぞれの地域で地元のニーズにも答えて定着を目指している。首都圏は競争が激しいが、地元で培った信頼に加え、360°画像のサービスもどんどん進化させている。顧客にとって利便性の高い特色を知ってもらうことで、オレンジ色の不動産会社として認知され、選んでもらえるようになるだろう。

会社概要

会社名

株式会社リビングギャラリー

本社

新潟市中央区米山4丁目1番28号

電話

025-246-0609

設立

1990年10月29日

従業員数

225人/ 宅地建物取引士78人(2021年8月1日現在)

事業内容

不動産賃貸、売買、管理、仲介

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