事例集

2022.02.15 06:00

勤怠表作成と給与計算にかかる時間が1割程度に ICT導入で事務作業の進め方が劇的に変わった 開成工業(香川県)

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「社員の出退勤時刻、残業時間、休日出勤、欠勤の情報を記した勤怠表の作成と給与計算は総務部で、最も神経を使う仕事でした。その仕事が勤怠管理システムによって導入前の1割程度の時間で済むようになりました。導入して2年半ほどになりますが、仕事の効率を劇的に向上させるICTの効果をあらためて実感しています」。1月下旬、香川県と本州をつなぐ瀬戸大橋を臨む企業団地の一角にある開成工業の本社で、総務部門を統括する西本正美取締役はこれまでのICT導入の経緯を振り返りながら話した。

システムが出退勤の時間を自動集計


開成工業が2019年6月に導入した勤怠管理システムは、社員が各自のICカードを読み取り機にかざすだけで出勤や退勤の時間を記録、集計してくれる。そのおかげで、勤怠表のデータを給与計算システムに入力する必要がなくなり、経理の担当者はチェックに集中するだけで済むようになった。

「勤怠管理システムは給与計算システムと連動しているので、勤怠表の内容を確認して確定をクリックすれば自動的に残業時間を反映した形で給与の計算が完了します。入力作業の必要がなくなったことで時間を生み出せただけでなく、転記ミスや計算ミスの心配がなくなったので、社員のストレスも大きく減りました。そのおかげもあってか工事書類や請求書の整理といったほかの仕事も以前よりはかどるようになりました。電卓で残業時間の集計をしていた昔のやりかたには決して戻れないですね」(西本取締役)。

パソコンで勤怠表関係の作業をしている様子

パソコンで勤怠表関係の作業をしている様子

モータリゼーションの流れに乗って事業領域を拡大


開成工業は、防塵剤を扱う会社として創業し、高度経済成長期以降にモータリゼーションが加速する中、道路関係の工事や防護柵などの交通安全設備、標識の設置を手掛けるようになった。その後、公園整備などへも事業領域を拡大し、近年は国連の持続可能な開発目標、SDGsへの対応を考えて、間伐材を使った複合素材、ウッドプラスチックの活用もはじめている。

百聞は一見に如かず 展示会でICTの効果を実感した


勤怠管理システムを導入する前、社員45人の人事と経理を担う総務部では、勤怠表の作成とその内容を給与計算システムに入力する作業に5人中2人の社員が携わり、その作業には月当たり延べ4日から5日かかっていた。

「勤怠表は社員が出勤時と退勤時に打刻した紙製のタイムカードを一枚ずつ確認して作成していました。さらに給与計算ソフトに入力する前に、2人以上で見直すなど何度も念入りにチェックしていたので時間がかかるのも当然でした。今から振り返ると、給与計算は『時間と手間をかけて当たり前の仕事』という先入観があったように思います」と西本取締役は振り返った。

西本正美取締役

西本正美取締役


2018年秋、付き合いのあるシステム会社が高松市で開いた展示会に西本取締役が参加したことをきっかけに、仕事の進め方が大きく変わった。「以前から勤怠管理システムについての情報を集めてはいたのですが、これほど使いやすく、業務を効率化できるとは思ってもいませんでした」と西本取締役。会場で勤怠管理システムの使い方の実演を見た上で、担当者の説明を受けて疑似体験したことで、どのように活用するのか具体的に知ることができたという。「使い方がわかったことで是非とも導入したいと思いました。あの時、展示会に行っていなかったら今も昔と同じように仕事に追われていたかもしれません」

導入にあたって十分な試行期間を設けた


本社から離れた場所の工事を担当する現場事務所の勤務者を除いた9割の社員は、本社で出退勤を記録している。勤怠管理システムを導入する際は、社員に新しいシステムに慣れてもらうために十分な試行期間を設けた。「社員にとっては出退勤の記録の際に使うツールが紙のタイムカードからICカードに変わっただけなのですが、最初の4カ月は両方で打刻してもらっていました。自然な流れでICカードに移行することを心掛けました」(西本取締役)。

社員がICカードで打刻する様子

社員がICカードで打刻する様子

VPNで現場事務所を本社と同じような環境に


勤怠管理システムを導入した後もICTを積極的に活用している。2020年にはVPNを導入し、外部からでもパソコンやスマートフォンなどの端末を通じて図面などの資料を収めた本社のファイルサーバーにアクセスできるようにした。
「現場事務所から本社への情報アクセスに課題がありました。本社のファイルサーバーに入っている資料が必要なときは、本社の社員に連絡してダウンロードしてもらい、メールに添付して送ってもらわなければなりませんでした。容量が大きいと送信できなかったので、その時はわざわざ社員が現場事務所から本社に戻ることもありました。VPNを導入したことで時間を効率的に使えるようになりましたし、社員に移動で余計な負担をかけないですむようになりました」と西本取締役はその効果を説明した。
現場事務所では会社が支給するスマートフォンから勤怠状況も打刻できるようにしている。

外部からスマートフォンで勤怠状況を打刻する様子

外部からスマートフォンで勤怠状況を打刻する様子

路面の劣化状況診断にAIを活用


自治体から請け負う横断歩道や停止線といった路面表示の劣化状況を把握する業務でも、AIを活用した検知システムを最近導入した。路面表示をカメラで撮影すると、AIが画像を分析して剥離状況を計算してくれるので、目視でチェックしていたときと比べて手間と時間の大幅な削減につながっている。どの程度剥離しているかを数値で把握してデータ化できるので、更新工事の提案にも効果を発揮しそうだ。

これからもICTを活用することで発信力強化や現場の仕事の効率化につなげていきたいという。「ベテランの豊富な知識を若い人材に伝えるのにもICTは有効です。社員が使いたいと思うICTを積極的に導入していきたい。年配の社員ほど最初は抵抗があるかもしれませんが便利であることがわかればきっと前向きに使ってくれるはずです」と西本取締役は話した。

開成工業の本社の外観

開成工業の本社の外観


働き方改革の流れが加速する中、西本取締役はICTを仕事の属人化の解消に活用することも考えている。西本取締役は「特定の社員に業務が集中しないようにしてワークライフバランスがしっかりした職場にしていきたい。どこでも本社と同じように仕事ができる環境を整えていきたい」と抱負を述べた。

開成工業のICT導入の過程や使い方を見て、社員の利便性が明確だからこそICTの導入効果が見える形で現れたのだと実感した。
開成工業が取り組む属人的な業務の解消も、常に社員の利便性や経営にとっての効果等、社員が納得する形でおこなわれ、ICT化がやがて経営革新へ進化すると確信した。

事業概要

会社名

開成工業株式会社

本社

香川県綾歌郡宇多津町浜一番丁1番地

電話

0877-49-2211

設立

1965年11月

従業員数

45人

事業内容

土木事業、とび・土工、電気、舗装、塗装、造園、建築関連の各工事業



中小企業診断士監修の建築業の課題診断
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