事例集

2022.01.24 06:00

電子黒板の活用で海外拠点が身近になった 滝田(新潟県)

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「新型コロナウイルスの感染拡大で、人の移動が制限され、お客さまとの商談の機会が大幅に減ってしまいました。これを何としなくてはいけない。それが大きなきっかけになりました」

新潟県上越市で精密板金加工を手掛ける滝田の塚田章専務は2020年12月、50インチ超の画面サイズの電子黒板(インタラクティブホワイトボード)の導入に踏み切った。関東圏にある取引先企業や中国・インドネシアにある海外拠点とのオンラインでの商談や会議などに積極的に活用。導入から1年が経過し、今では、会社にとってなくてはならない存在になっている。

「商談は対面でやるもの。そんな固定観念を持っていましたが、実際に使い始めると、そんな考えは覆されました。こちらがイノベーションを促された感じでした」と、塚田専務は、その実用性を高く評価している。

創業は大正時代 スキー金具の製造が原点

塚田章専務(左)と瀧田隆一総務部課長

塚田章専務(左)と瀧田隆一総務部課長


滝田の創業は大正時代。2023年には創業100年を迎える歴史をもった会社だ。

「もともと上越市の高田はスキー発祥(伝来)の地で、多くのスキー用品メーカーがありました。そのメーカー向けに金属プレス加工で製造した金具を納めていたのが原点です。戦後になると、食糧増産で農機具の需要が高まり、地元の農機具メーカーにプレス加工した部品を納入していました」と、塚田専務は会社の歴史を紐解く。

だが、コメ余りの時代になると、農機具の需要が減少。生き残りをかけて電機・OA機器や産業機器へと受注先を広げていった。このころになると、100分の1ミリ単位の精度が求められる板金加工の技術を備えるようになった。製造した部品に対する信頼は厚く、海外進出する取引先に要請され、中国やインドネシアにも拠点を設けている。現在は売り上げの4分の3は海外が占めているという。

農機具から電機への転換は瀧田隆夫社長の代になってからのことだ。先代社長との間にはさまざまな葛藤があったそうだが、「この時の決断がなければ、地元の小さな部品メーカーのままでとどまっていたのではなかったかと思います」と塚田専務は話していた。

ビジネスの主力が海外にシフトする一方、国内では板金から塗装、組み立てまで一気通貫で製造する生産体制を整備。多品種小ロットの生産を引き受けるビジネスモデルを展開している。取引先には、一部上場の大手企業が名を連ね、製造する製品は通信インフラやハイテク製品の製造工場に使われる機器などさまざま。立体的な図案を二次元の設計図に落とし込み、製品化する技術もある。「開発はするがモノづくりの機能はない、というお客さまにはとても使い勝手がいい会社です」と塚田専務はアピールしていた。

新型コロナウイルス感染拡大で商談が激減、対応を急ぐ


激動の昭和・平成・令和をモノづくり一本でしたたかに成長を遂げた滝田にとって、新型コロナウイルスの感染拡大は、取引先とのコミュニケーションのとり方を進化させる大きなきっかけになった。

滝田が導入したインタラクティブホワイトボード。下に置いてあるのがカメラだ。

滝田が導入したインタラクティブホワイトボード。下に置いてあるのがカメラだ。


「実は、2019年にインタラクティブホワイトボードのデモ機を借りる機会があって、実際に使ってみたことがありました。まだ、感染が広がる前でした。Web会議よりも、ホワイトボードとしての使い方です。画面に設計図面を映して書き込みをしたりしながら打ち合わせをするためのツールとして検討していました」と、備品の調達を担当する総務部の瀧田隆一課長は打ち明けた。

インタラクティブホワイトボードは、ディスプレイとホワイトボードが一体になったタッチセンサー搭載型のディスプレイだ。パソコンの画面をディスプレイに映し出し、それをベースに会議で議論をする場面はよくある会議風景だ。だが、インタラクティブホワイトボードを使うと、ディスプレイの画面にタッチセンサーで直接書き込みを入れることができる。

例えば、設計図面をボードに映し出して、検討が必要な場所をチェックしたり、寸法を修正する場合には直接その長さを書き込んだり、書き込んだ内容を記録・保存もできる。パソコンを操作して、図面を拡大したり縮小したりすることもできる。設計画面の横に3Dのイメージ図を並べたりすることも可能で、画面をみながら、より分かりやすく、さまざまなイメージを膨らませた議論も可能になる。

「実際、デモ機を試めすと、部課長クラスの評価は高かったのですが、予算的に厳しく、残念ながら導入は見送られました」と瀧田課長は振り返った。その矢先、新型コロナウイルスの感染が拡大。多くが関東圏にある主要な取引先とのコミュニケーションが取れなくなってしまった。取引先に出向くことも、会社に来てもらうことも厳しい状況になった。Web会議の習慣がなかった滝田では、もっぱら電話やメールでのやり取りに終始していたという。

製品をチェックする社員。少ロット多品種の製品受注にも対応している

製品をチェックする社員。少ロット多品種の製品受注にも対応している


取引先との商談ばかりでなく、面談の件数も減少。「このままではさすがに限界がくる」と心配していたところ、市による導入支援の補助金募集があることを見つけ、急いで申請。導入にこぎつけることができた。

インタラクティブホワイトボードでコミュニケーションが広がった


実際に使ってみると、そのメリットは予想を上回るものだった。

インタラクティブホワイトボードとともに、話し手を自動的に追尾するカメラも導入した。「多少はやりにくさや不便さが出るのではないかと思っていたのですが、その考えはひっくり返りました。十分に相手の表情や機微も分かり、こちらの伝えたいことも伝えられます。こちらの臨場感も十分に伝えられます」と塚田専務。マルチ画面で、図面や写真を画面に表示しながら取引先との情報を共有できる。対面での商談を上回る取引先とのコミュニケーションが実現している。

インタラクティブホワイトボードによって、中国やインドネシアにあるグループ会社とのコミュニケーションも緊密になった。

工場には女性の姿を多く見かける

工場には女性の姿を多く見かける


海外拠点とのコミュニケーションは日本以上に厳しさを増している。年に2度、日本で開催していたグループ会社幹部との会議は行われず、現地には、2019年から2年以上も帰国できていない駐在員もいるそうだ。インタラクティブホワイトボードを活用し、事業状況の確認や緊急の打ち合わせなどにも対応ができる。現地との打ち合わせは今まで以上に濃密になったそうだ。

新しいビジネススタイルに対応 複合機も新たに導入


オンラインでの会議に対応できるようにしてから1年が経過し、新たなビジネススタイルでの商談で、大型の機器製造の受注を獲得した。これを受けて、A1~A2サイズの大型用紙を印刷できる複合機を2021年12月に導入した。複合機の中でも最大級の用紙を印刷できる機種だ。受注する装置の精密化、大型化が進み、取引先から送られる設計図も大型化していることに対応した。

新たに導入した複合機。大型の用紙の印刷が可能だ

新たに導入した複合機。大型の用紙の印刷が可能だ


遠方とのオンラインの打ち合わせでもデータで図面を受け取れば、そのデータを細かい部分まで確認できるサイズで印刷ができる。ベースの設計図面を印刷し、自社で作業がしやすいように独自のノウハウなどの書き込みをするという。「今後、この複合機も積極的に活用して、作業の効率化や製造精度のアップにつなげたい」と塚田専務は大きな期待を寄せている。

ウィズ・コロナ時代に適応…企業の大きなテーマに


少々話がそれるが、対面ではみえてこないビジネスチャンスという点では、瀧田課長はこんなエピソードを話してくれた。2010年に導入したホームページ作成ソフトのことだ。

滝田では、ホームページの作成を専門業者に依頼して構築していたという。ところが、サイトの更新もすべて業者経由で行わなくてはならず、使い勝手が悪かったそうだ。そこで、自前での更新が簡単にできるホームページ作成ソフトを10年ほど前に導入。担当者を置いて、事業内容などを分かりやすく見直し、親しみやすい内容に変えたところ、ホーページを通じた企業からの商談が増えたという。

新潟県上越市にある滝田本社、海外にも事業を展開している

新潟県上越市にある滝田本社、海外にも事業を展開している


「以前こちらからアプローチをかけたものの取引に至らなかった会社から問い合わせをいただき、取引につながったこともありました。板金から組み立てまで一貫生産していることなど、会社をアピールするキーワードをしっかりと入れ込んだことが効果を上げました」と瀧田総務課長は話していた。

オンラインでの商談など新型コロナウイルスの感染拡大で変化したビジネススタイルについて、塚田専務は「仮に新型コロナウイルスが収束してももう後戻りできないのではないでしょうか」と予測する。滝田だけでなく、オンラインでのビジネスを経験した多くの企業が、直接会う以上の効果やメリットを実感しているからだ。

Web会議は広がりをみせているが、多くの企業はノートパソコンや通常のディスプレイを活用している。滝田が導入したインタラクティブホワイトボードはハイスペックで、取引先へのプレゼンテーション力の高い機器だ。ウィズコロナの時代の新たなビジネススタイルにいかに適応していくか。これからのビジネスを考えるうえで、オンライン環境の整備は重要なテーマといえそうだ。

事業概要

法人名

株式会社滝田

所在地

新潟県上越市大字藤塚411-1

電話

025-523-2881

設立

1923年5月

従業員数

97人

事業内容

金属プレス加工、精密板金加工、溶接、塗装、組立、プレス金型製作、産業機器設計・開発

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