事例集

2022.01.19 06:00

時間と距離の制約を解き放つデジタル技術が、障害者活躍のエンジンになる バウハウス(新潟県)

時間と距離の制約を解き放つデジタル技術が、障害者活躍のエンジンになる バウハウス(新潟県)
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新潟県を中心に障害者の就労機会の拡大など多様なソーシャルビジネスに取り組む企業、バウハウスの取り組みに注目が集まっている。地域や業種の枠を超えて構築している多彩なネットワークとICTを組み合わせることで、社会課題の解決につながるソーシャルビジネスの新しい可能性が広がろうとしている。

障害者の就労機会の拡大やまちづくりに尽力


バウハウスは、障害者の就労機会の拡大や新潟県内外の自治体と連携したまちづくり事業などに取り組んでいる。肥田野(ひだの)正明社長が1992年に、建物清掃を営む会社として創業し、30年の歴史の中でネットワークとともに事業領域を拡大してきた。本社はJR新潟駅から1キロほど離れた幹線道路沿いのオフィスビル内にある。社員人数は75人で女性が7割を占め、高齢者雇用や障害者雇用にも積極的だ。

バウハウスのオフィスの様子

バウハウスのオフィスの様子


2008年に、就労支援の一環として障害を持つ子どもたちを対象に清掃の講習を行ったことが、ソーシャルビジネスに取り組むきっかけになった。「子どもたちは、懸命に取り組んで掃除の仕方を覚えたのですが、就職になかなか結びつかない厳しい現実を目の当たりにしました。障害者が希望を持って生きていくことができる社会を作っていきたい。そう思って、障害者の自立につながる事業をひとつひとつ具体化していくことにしたんです」。12月下旬、取材に訪れたバウハウスの本社で肥田野社長はこれまでの取り組みを振り返りながらそう説明した。

障害者の就労機会の拡大など多様なソーシャルビジネスに取り組む肥田野正明社長

障害者の就労機会の拡大など多様なソーシャルビジネスに取り組む肥田野正明社長

反響を呼んだ障害者アートのレンタル事業


2016年から始めた事業が、障害者が創作したアート作品をバウハウスが管理し、企業や自治体などにレンタルすることで、障害者の安定した収入につなげる「まちごと美術館Cotocoto(ことこと)」だ。社会的な反響が大きく、作品は駅やバス停、オフィスなどさまざまな場所に展示され、2020年10月までに約110社が事業に参加し、展示作品数は約180点に拡大した。2021年12月にハンバーガーレストランを展開するモスフードサービスが、障害者のアート作品を内装にした新店を東京・原宿でオープンするという動きにもつながっている。
「ネットワークを活用して企業と福祉作業所の橋渡しをできるのがバウハウスの強みです。アート作品を多くの人に見て評価していただくことで障害者の新しい可能性を見出すことにつながっています」(肥田野社長)

人手不足に悩む企業と障害者をマッチング

水辺のにぎわいづくり事業の様子

水辺のにぎわいづくり事業の様子


2017年からは人手不足に悩む企業と短時間であれば就労することが可能な障害者をマッチングする事業もスタートした。企業の人手不足解消と障害者の就労機会確保を両立する取り組みとしてこちらも注目を集めている。
新潟市内の信濃川沿いの水辺や公園、港のにぎわいづくりなどさまざまな公民連携事業も進めてきた。「まちづくりに参画することで、本業では出会えない異業種の企業や団体の関係者と接点を持つことができます。業種や地域の枠を超えた幅広いネットワークは大きな財産になります。人と人とのつながりが新しい発想を生み出し、社会全体を住みよい形に変えていく。そういった好循環をつくっていきたいと思っています」と肥田野社長は語った。
プロサッカーチーム、アルビレックス新潟とも連携し、スタジアムでの障害者の就労体験も実施している。「障害者が、清掃を通じてサポーターからの感謝を実感することで自己肯定感を抱くことや、スタジアムが家庭と福祉作業所以外の拠り所になることが期待できます」(肥田野社長)。

ホームページによる広報戦略を重視

ホームページの編集作業の様子

ホームページの編集作業の様子


バウハウスが異業種との連携によるソーシャルビジネスの拡大とともに力を入れているのがデジタル技術の活用だ。中でもホームページを使った情報発信を重視している。2018年に広報部を新設し、それまで企業情報を紹介するだけだったホームページを機動的に情報発信できるように一新した。事業実績を複数の写真を使ってビジュアルにわかりやすく掲載し、経営者・事業戦略担当者、教育関係者・学生、自治体、報道・メディア向けにそれぞれページを設けて、関心を持ってくれた人が必要な情報を見やすいように構成を工夫している。
「会社のビジョンや取り組みを発信できるホームページは、会社の認知度を高めるだけでなく、ひとつひとつの取り組みを継続的に掲載し、充実させればさせるほど営業面での大きな戦力にすることができます。メディア向けにプレスリリースを発信して報道してもらうことでより大きな相乗効果を発揮することができます」。このように肥田野社長は企業の広報戦略の重要性を説いた。

売上の可視化と共有化で社員の意欲がアップ


3年前に事業譲渡を受けたスーパー銭湯内のレストラン事業でもICTを活用している。運営の引継ぎにあたって業務の効率化を図るため勤怠管理システムと販売管理システムをクラウド化した。3つ店舗の日々の来店客数や売上の状況をスマホやパソコンを通じてそれぞれの店舗からも確認できるようにしたところ、いい意味での競争意識が生まれたという。
「運営は店舗ごとに任せているので、社員たちはスポーツの団体戦のような感覚で楽しみながら創意工夫しています。仲間の頑張りを数字でリアルに確認できることがモチベーションにつながっているみたいです。コミュニケーションも活発になり、ある店舗がインスタグラムで発信を始めると他の店舗でも始めたり、ある店舗でうまくいった販促活動があると他の店舗が早速取り入れたりしています」と肥田野社長は満足そうに話した。

社会のデジタル化を見据えて積極的に設備投資

新しく導入した複合機は、デジタル化の入り口

新しく導入した複合機は、デジタル化の入り口


2021年7月にはリコージャパンに相談して、複合機や社内のネットワーク環境を一新した。オフィスのネットワーク整備を担当したバウハウスの江口知美さんは「2020年のコロナ禍以降、外部とのWEB会議や動画データのやり取りが増えたことから、オフィスのネットワーク環境の不安定さを以前より実感するようになりました。社会全体でデジタル化が進むこれから先のことを考え、思い切って設備投資に踏み切ることにしました」と説明した。一新した後は、ネットワークがつながりやすくなり、複合機のディスプレイも非常に見やすくなって仕事の効率がアップしたという。

オフィスのネットワーク整備を担当した江口知美さん

オフィスのネットワーク整備を担当した江口知美さん


今後は複合機に入ってきたFAX文書のデジタル管理を可能にする機能を追加する予定だ。「建物や施設のクリーニングなどの業務報告書は、毎日、それぞれの現場の担当者からFAXで報告してもらい、紙文書で保管しているのですが、SDGsの視点から今後はペーパーレス化を進めていかなければならないと思っています」と江口さんは今後の方針を語った。

グループで多様な事業を展開するバウハウスのオフィスの入口付近

グループで多様な事業を展開するバウハウスのオフィスの入口付近


肥田野社長は、時間と距離の制約を解き放つデジタル技術が、社会のダイバーシティ(多様性)を促進する大きなエンジンになると実感している。「障害者アートの展示にVR(バーチャルリアリティ)を活用するなど新しい可能性を探っていきたい。これまでは思いついても具体化することが難しかったプロジェクトが実現できるようになっていくのではないかとワクワクしています」と肥田野社長はうれしそうに話した。ICTを活用することでバウハウスのソーシャルビジネスは一層、本格的に進化していくに違いない。

事業概要

会社名

株式会社バウハウス

本社

新潟県新潟市中央区堀之内南1-32-16 3F

電話

025-248-1960

設立

1992年1月

従業員数

75人

事業内容

建築物清掃、障害者アートレンタル、企業と障害者のマッチング、公民連携、道路資材販売、飲食業

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