事例集

2021.12.16 06:00

「3倍のポテンシャルがある」と社員に宣言 ICT活用から始まった三代目社長の改革 三友組(新潟県)

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「わが社のポテンシャルは3倍あります。それは、みんなの給料が3倍になる可能性があるということです」

新潟県魚沼市で土木建築事業を手掛ける三友組の三友玲央社長は就任2年目にあたる2015年度の経営計画を社員に説明した際、こう語りかけたという。

「この地域は仕事量がそれほどあるわけではありません。でも、業務を効率化して利益を増やせば、売り上げに依存しなくても利益目標を達成できる。当時の会社の業務内容をみながら、そう強く感じていました」。

異なるソフトをバラバラに運用、「無駄」生む下地に


三友社長の祖父が1941年に創業した三友組。この地域でも最も古い土木建設会社だという。新潟と福島の県境にある奥只見ダム建設に伴う道路整備に携わり、以来、地域のインフラ整備に大きな役割を果たしている。「崖崩れがあれば、崩壊を防ぐのり面工事をして、水害が起きれば、砂防設備を作り集落を守ります。雪害があれば雪崩対策をします。仕事の大半は山の中。街中の子供たちには知られていませんが、地元では知る人ぞ知る会社なんですよ」と三友社長は笑顔で説明してくれた。

父である二代目社長の後を20代で継いだ若き三代目社長は、会社が持つポテンシャルを見抜き、社長に就任するやいなや業務の抜本改革に乗り出した。最初に着手したのが、非効率だった事務部門の業務の見直しだった。

三友組の三友玲央社長。「わが社のポテンシャルは3倍」と社員に語り掛けたという

三友組の三友玲央社長。「わが社のポテンシャルは3倍」と社員に語り掛けたという


三友組では当時、受注した工事にかかる費用を計算する「原価計算」、社員一人ひとりの給与額を計算する「給与計算」、会社全体の資金の管理をする「会計」の3つの事務処理にそれぞれ異なったメーカーの業務ソフトを活用していた。それぞれの業務には1人ずつ担当者がついており、それぞれの業務をそれぞれのパソコンを使って専門的に作業をしていた。

1つのパソコンに1つのソフトを搭載していたが、それぞれの業務ソフト同士がつながっておらす、データのやり取りなどができなかった。残念なことにソフトだけではなく、担当者同士も連携の意識が希薄で、業務にさまざまな「無駄」が生じていた。

給与関連のデータと会計のデータをまとめた資料がほしくても簡単にはつくることができなかったり、それぞれの担当者が同じデータを重複してまとめていたり。細かいものを入れると山ほどあったんです」

事務部門の業務を洗い出し 社内の雰囲気変えるきっかけに


そこで三友社長は、事務部門の業務の洗い出しを行った。「社員たちと議論を重ね、どんなソフトが必要で、どのソフトを入れるとどれくらい仕事量を圧縮でき、業務の効率化につながるか。そういう議論にもっていきました」。社内をもっと風通しのいい雰囲気に変える狙いもあったという。

業務ソフト同士を連携させたおかげで、作業の効率が格段にアップした

業務ソフト同士を連携させたおかげで、作業の効率が格段にアップした


洗い出しの結果、これまで活用していたソフトをバージョンアップし、ソフト間の連携がしやすい環境を整えた。今まで、担当社員のパソコンでしか操作・閲覧できなかったソフトを別の職員も自身のパソコンで操作・閲覧できるようになった。重複して作成していたデータや資料も職員同士で共有化できるようになった。

具体的な事例を挙げると、こんな効果もあった。

工事未払金のデータ処理では、今までは、工事部が原価計算の観点から原価計算ソフトに入力する一方、事務は会計処理の観点から別に業者別支払い台帳を作成する目的で会計ソフトに入力する、という二重処理をしていた。ソフト同士のデータ連携が可能になり、工事部が入力したデータをそのまま利用。事務が伝票入力に費やしていた時間を大幅に削減することができた。

社員同士の横の連携がとれるようになり、これまで3人で行っていた作業も2人でこなせるようになった。社内の雰囲気にも変化が表れた。

奥只見ダム建設に伴う道路工事にも携わった歴史を持つ三友組。山間部での仕事が得意だ

奥只見ダム建設に伴う道路工事にも携わった歴史を持つ三友組。山間部での仕事が得意だ


「私が進めようとしている改革を理解してくれるチームに変わり、『全力で取り組んでいきましょう』と社員の意識も一つの方向に向かうようになりました」と三友社長は目を細めた。

東京で就職した会社での経験が業務改革の原動力に


三友社長が業務改革にいち早く取り組んだ行動力は、三友組の経営を引き継ぐ前に働いていた東京の建設会社での経験が背景にある。

東京の大学で英文学を学んでいた三友社長。将来の後継を意識し、その後、専門学校で建築意匠設計を学んだ。だが、すぐには魚沼に戻らず、東京での“修行”の道を選択した。就職した会社は、三友組より10倍程度売上規模が大きく、土木ではなくコンクリート建築を得意とする中小企業だった。

土木を得意とする三友組の新たなビジネスモデルを見据えた選択。「大手に就職をしても会社の歯車の一つになるだけなのではないか。それでは、経営の全体像は学べません。でも、うちよりちょっと大きい会社だと目指すべき姿もみえてきます」

魚沼市にある三友組の本社

魚沼市にある三友組の本社


前職では、現場監督として首都圏のマンションなどの建築を手掛け、著名な設計会社が設計する建築物の建設にも携わった。当時、その会社も業務改革に積極的に取り組んでいる最中で、改革を担当する先輩から話を聞き、大いに啓蒙を受けたという。

「先輩から『こう改革を進めると、こんな風に変わるんだよ』と聞いた話も、先進的に取り組んでいる会社に比べれば、取り組みが遅れている印象でした。でも、地元に戻れば、そこまでも進んでいないのが現実です」

三友組に移ってから2年間は、社員として先輩社員たちとともに現場を走り回った。その間も現場や社内の様子をつぶさに観察し、生産性や業務効率など改善すべき課題をチェックしていたという。「3倍のポテンシャル」は、こうした三友社長の地道な取り組みの中から導き引き出したものだ。すると、父から「来季から社長をやれ」と突然の下命。2年間ひそかに心に秘めていた改革に乗り出すタイミングが訪れた。

可能性を引き出す 新たなチャレンジ続々


ICTを活用した業務の効率化について、三友社長は「次の課題が出てきている」と話す。それぞれのソフトが持つ機能の十二分に発揮できていないからだ。「まずはソフトを使い倒してみて、業務改善につながる機能を活用できるようにしたい。そうすれば、もっと効率的になるはずです。今は、その試行錯誤中です」と三友社長は話していた。

YouTubeを使った情報発信にもチャレンジしている

YouTubeを使った情報発信にもチャレンジしている


土木建築分野では、設計や施工などの現場でICT化が急速に進んでいる。今まで2人必要だった測量も1人いれば作業ができる。重機も設計や測量のデータを入力すれば、設計通り正確な作業ができる機能を持つようになっている。現場作業の省力化も可能だ。こうしたICT施工にも積極的に取り組む考えだ。

改革への取り組みは、社員の給与アップにもつながっている。それが社員たちを結びつけ、新たなポテンシャルを生む大きな原動力になっている。

建設業界の働き手不足は深刻さを増しているが、人材確保の観点からYouTubeを活用し、自らユーチューバーとして情報発信することにもチャレンジする。「建設業にYouTubeとか、ICTを結びつけると、こんなことが可能になるというストーリーを発信したい。『それ、いいな』と共感して、うちの会社に働きに来てもらいたい」と、笑った。

「空き家を見回り」 地域貢献が新たなビジネスのヒント


三友社長は、昨今、地方で社会問題化している空き家問題にも着目。所有者に代わり、空き家を定期的に見回り、保守・管理するサービスを展開。持続可能な形で対策がとれるビジネスモデルを模索している。

この新たな事業は、地元の役に立ちたいとの思いからスタートし、本業からみると、ちょっと畑違いの取り組みだ。売り上げも土木と比較すれば、まだ事業と呼べるものではない。だが、空き家のオーナーたちと接し、外から見てもわからない生の声を聞くことができた。本業からは聞き出せない今までとは違う衝撃とヒントがそこにはある。もう一歩深くビジネスとして取り組む道筋がみえてきた。新たな経験が新たなビジネスのヒントとして浮かび上がってくる。

膨らむポテンシャル…可能性は10倍、20倍に


ICT化で余裕ができれば、「もっとこんなことができるのでは?」というアイデアや意欲がわく。ICT化することで、もしかしたらICT化が遅れている企業に役立つことができるかもしれないし、試行錯誤することで新たな事業が生まれるかもしれない。ICTの活用によって、会社のポテンシャルは5倍にも10倍にも膨らんでくる。

新しいことに挑戦することで、今まで知らなかった新しい世界が見えてくる。新しい世界がみえると、新しい可能性も見えてくる。漫然と取り組んだ会社との差はここで大きく広がってくる。

三友社長の経営姿勢を見ていると、新しい経験から学び、少しでも顧客や関係者の役に立ちたい、会社としても事業として取り組みたいという貪欲さが新たな事業の可能性を育てていることがよく分かる。「3倍のポテンシャル」どころか、10倍、20倍のポテンシャルを感じる会社だった。

事業概要

法人名

株式会社三友組

所在地

新潟県魚沼市吉田163番地

電話

025-792-4111

設立

1953年8月

従業員数

30人

事業内容

総合建設業、土木・建築工事の施工及び建築の設計(開発)

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