事例集

2021.11.12 06:00

脱炭素社会へ。環境配慮素材対応のプリンター活用法 髙田商会(熊本県)

脱炭素社会へ。環境配慮素材対応のプリンター活用法 髙田商会(熊本県)
関連記事のお知らせを受け取る
問い合わせをする

この記事に書いてあること

制作協力

産経ニュース エディトリアルチーム

産経新聞公式サイト「産経ニュース」のエディトリアルチームが制作協力。経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。


環境配慮型の新素材を活用した商品開発に力を入れている社員9人の印刷会社が熊本市内にある。2023年に創業70周年を迎える合資会社髙田商会。父親、兄たちから家業を受け継いだ4代目の髙田照三代表は、これまで数々の印刷商品を世に送り出してきたアイデアマン。豊富な発想の具現化にプロダクションプリンター(業務用印刷機)の機能とデジタル技術をフル活用している。

印刷は情報サービス業 デジタル技術でアイデアを具現化

髙田商会の髙田照三代表

髙田商会の髙田照三代表


「ポスターやチラシといった印刷物はいわば情報の加工品。印刷業は情報サービス業と考えて事業を行っています。お客様からの要望に応えることはもちろん、プラスアルファの提案をいかに行っていくかということを大事にしています。デジタル技術が進化したことで、以前とは比較にならないくらいアイデアを現実化しやすくなりました」。
10月中旬。JR熊本駅から東へ約1キロの産業道路沿いにある髙田商会の本社で、髙田代表は笑顔をうかべながらそう話した。

髙田商会が取り組んでいる挑戦のひとつ。それは、地球上に豊富な石灰石を主原料に製造する環境配慮型の新素材、LIMEX(ライメックス)の印刷への活用だ。約3年前、髙田代表は、紙とは異なり、原料と製造工程で木材や水を使わないLIMEXのことを知った。環境問題に以前から強い関心を持ち、地球温暖化防止に印刷会社として何ができるのかを考え、紙に代わる環境配慮型の素材を探していたという。

LIMEXの特徴生かした新商品を考案


そのような思いから巡り合うことができたLIMEXだったが、大きな課題があった。新素材ということもあって会社で使っている従来のプロダクションプリンター(業務用印刷機)では印刷することが難しかったのだ。そんな折、取引のあるリコージャパンの担当者が、高性能でLIMEXへの印刷にも対応可能なRICOH Pro C7200Sを提案してくれた。

2018年3月に導入して使い始めた当初はLIMEXへのトナーの定着がうまくいかないなどの課題があったが、担当者は素材メーカーとも粘り強く対応し、納得のいく刷り上がりになるまで調整してくれたという。「多品種少量生産に向いたオンデマンドプリンティング機能を備え、パソコンで制作したデジタルデータから直接印刷できるのでアイデアやデザインをすぐに形にできます。中小の印刷会社にとって本当にありがたい機能です。耐久性、耐水性に優れたLIMEXの特徴を活用することで、平面だけでなく立体加工した新しいタイプの商品を開発できるようになりました」(髙田代表)。

パソコンで制作したデザインをオンデマンドですぐにLIMEXに印刷できる

パソコンで制作したデザインをオンデマンドですぐにLIMEXに印刷できる

パソコンで制作したデザインをオンデマンドですぐにLIMEXに印刷できる

LIMEX素材の一輪挿し「花一輪」を開発


これからのテーマはいかにLIMEXのことを知ってもらうかだ。古くから取引のある企業や団体から名刺の発注を受ける際には、紙からLIMEXへの切り替えを勧めている。「LIMEX製のクリアファイルなどノベルティグッズとしての開拓も進めています。これからの時代、環境に配慮する姿勢は、商談や連携を進める上で大事な要素になっていくはずです。オーダーメイドで請け負いますので自分のペットをプリントしたクリアファイルなどを作るといったことも可能です」と髙田代表はさまざまな取り組みについて説明した。

髙田代表の商品開発のポリシーは「社会を明るくするものを世に送り出すこと」。印刷業に50年近く携わる中で、これまでも長期間香りが持続するように紙を加工した「香美遊(かみゆ)」、トランプを使ってビンゴゲームができるカードなどを開発してきた。その実績と発想力を基に、RICOH Pro C7200Sの印刷機能を活用して開発したのがLIMEXを素材にした一輪挿し「花一輪(はないちりん)」だ。商標登録、意匠登録を行った上で今年から販売を開始した。

LIMEXを素材に開発した一輪挿し「花一輪」

LIMEXを素材に開発した一輪挿し「花一輪」


花一輪は今年10月、日本グラフィックサービス工業会が主催する作品展の開発・開拓部門で作品展審査会委員長賞を受賞するなど高い評価を受けている。「毎日、生活するリビングやオフィスの壁などに、水をためた花一輪を、粘着テープで貼り付けるだけで簡単に生花を飾っていただけます。コロナ禍による巣ごもり型の新しい生活様式が広がる中、いろいろな場所、空間を生花で豊かにしていただけたらうれしいですね。地元の保育園では、父の日に、園児が描いたお父さんの絵を印刷した花一輪に花を添えてお父さんにプレゼントするといった企画にもご利用いただきました」(髙田代表)。

SDGs、環境配慮への熱い思い

LIMEX製で抗菌フィルムを添付したマスク用ケース「RORO」

LIMEX製で抗菌フィルムを添付したマスク用ケース「RORO」


今後も様々な取り組みを考えている。LIMEX製で抗菌フィルムを添付したマスク用ケースも開発した。漢字の口をカタカナのロにみたててアルファベットで「RORO」とネーミングし、商標登録を申請している。来年3月から5月にかけて熊本市内で開催される「くまもと花と緑の博覧会」で花一輪をはじめとするLIMEX製商品を展示、販売することも計画している。

「環境に配慮した商品を展開することによって、地球温暖化を食い止めるには誰かではなく自分がするという意識が大切であることを訴えていきたい。日常的に使ってもらうことで国連が進めるSDGsへの意識も自然と高めていってもらえるのではないかと期待しています」と髙田代表はその熱い思いを語った。

印刷市場に、デジタル技術で付加価値を創造

JR熊本駅から近い髙田商会の本社

JR熊本駅から近い髙田商会の本社


社会のデジタル化によって印刷物の市場は年々縮小しているが、危機感よりも挑戦への気持ちの方が強いという。「価格競争に走ると更なる縮小を招きかねません。それよりもデジタル技術を活用し、付加価値をつけていかにお客様にご利用いただくかで競いたいと思っています。熊本地震やコロナ禍といった危機を乗り切ることができたのも長年培ってきたお客様とのつながりがあったからこそ。『こういった商品を作ってもらえませんか』と気軽に相談してもらえる企業であることがなにより大切と思っています。大変な状況に見舞われたとしても印刷業にはこだわりたい。お客様を大事にしていけば乗り切っていける。そう信じて頑張っていきます」。事業への思いについて髙田代表はそう語った。

アイデアを重視し、付加価値で勝負していこうとしている髙田商会。その姿勢にデジタル技術を活用する中小企業の大きな可能性を感じた。

事業概要

会社名

合資会社髙田商会

本社

熊本市中央区本山4丁目7-78

電話

096-356-0329

設立

1953年5月

従業員数

9人

事業内容

印刷業、印刷業に付帯するデジタル業務、オリジナル商品開発販売

関連記事のお知らせを受け取る
問い合わせをする