事例集

2021.04.07 06:00

効果的なICTを実現し、顧客視点の全員参加経営へ 不動産総合センター(福岡県)

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この記事に書いてあること

執筆者

フジサンケイビジネスアイ

産経新聞グループの日本工業新聞社が発行する日刊ビジネス情報紙。我が国経済の成長を盛り上げると同時に、経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。


不動産業界でICTの有効性に着目し、業務改革につなげる企業が増えつつある。その中のひとつが、業務効率向上と情報発信にICTを積極活用している福岡市の不動産総合センターだ。

顧客要望に応える事で不動産事業が多角化していった


不動産総合センターは、福岡県を中心にマンション、一戸建て住宅、店舗などの賃貸物件の管理や、店舗・オフィスの仲介、土地・一戸建て住宅・マンションの仲介、マンション、一戸建て住宅の自社開発、工事開始前と完了後の近隣建物の調査を行う「家屋調査」など、不動産に関する多様な業務を展開している。1990年の創業以来、社名が示すように、不動産オーナーと入居者をつないで手数料を得る仲介ビジネスと自社開発案件の賃貸、売買ビジネスを総合的にバランスよく組み立ててきた。
福岡県では不動産分野のビジネスチャンスが拡大している。全国的に人口減少が進む中、同県では若い世代を中心に人口の流入が続いており、福岡市内の繁華街、天神地区では100年に一度の規模といわれるエリア全体の再開発計画「天神ビッグバン」、博多地区ではJR博多駅を中心とする再開発「博多コネクティッド」が進み、九州の玄関口としての更なる発展や賑わいが期待されている。

全員参加で業務改革を実践

全員参加経営を進める寺園公教社長

全員参加経営を進める寺園公教社長


「全員参加の経営を心掛け、社員には一人ひとりが会社の情報発信の担い手であることを意識してもらうようにしています。上司と部下、部署の垣根を越えて積極的にコミュニケーションを取ることを心掛けています」
運営の方針についてこのように語る寺園公教社長は、不動産総合センターの社長職を2年半前に創業者から引き継いだ。「就任以来、創業者が築いてきた福岡県での不動産ビジネスにおける存在感をいかに高めるか。そのために必要な改革をいかに実践していくかに心を砕いてきました」とこれまでを振り返る。

守りの改革=定型業務のシステム化による業務削減


就任以来の大きな課題は、慢性的な人手不足だった。限られたマンパワーを有効活用していかなくてはならなかった。
特にプロパティマネジメント(賃貸管理)の業務は、賃貸物件への入居者の募集、契約書の作成などの事務処理、賃料回収から不動産オーナーへの送金と明細書の発行、滞納者が出た場合の督促や交渉、建物の環境整備、不動産オーナーへの報告、空室対策など膨大な業務が伴う。賃料回収や送金といった毎月、一定期間に集中する業務も多い。
ルーティンワークの業務負担を減らし、不動産オーナーへの対応や入居者の満足度のアップ、情報発信など収益につながる業務に従業員の時間と労力をシフトしていくためにはICTの活用が不可欠と言えた。
寺園社長は積極的に動いた。そのひとつが、不動産の賃貸管理により特化したシステムの導入だった。
特に業務効率を図れたのは、入居者から振り込まれた家賃をオーナーに振り込む送金作業だ。不動産総合センターの管理物件は約900件にのぼる。入居者からの家賃は毎月下旬に振り込まれるため、送金準備作業はその翌月の前半に集中する。担当者はほかの業務も兼務しているため、軽減する必要があった。
システムを使うことにより、さまざまな帳票にひとつのデータから対応できるようになった。月あたり2人体制で62時間かかっていた作業時間が30時間に短縮できた。送金明細書の送付にかかる作業時間も5時間から2時間に、仲介契約時の契約書の作成業務も1件あたり45分かかっていたのが25分に短縮できたという。目的をもってジョブローテーションを実行することにより、属人的だった作業も、業務共有が行える体制になりつつあり、一人ひとりの業務の幅は広がっているという。

業務効率化を図ったことで、一人ひとりの業務の幅は広がった

業務効率化を図ったことで、一人ひとりの業務の幅は広がった

攻めの改革=情報発信強化のためのホームページへ


業務の効率化が「守り」の改革とすれば、ホームページを活用した情報発信の強化は「攻め」の改革といえる。
「ホームページを設けてはいたのですが、情報更新の頻度はそれほど高くありませんでした。恥ずかしながら会社案内のためだけになっているというのが実情でした」と寺園社長は過去の状況を説明した。
当時、ホームページの更新などの業務は外部の専門業者に委託しており、更新する際に手間がかかるという意識もあって積極的な姿勢を取れていなかったという。
更新頻度の少ないホームページは、訪問者の再度アクセスしようという意欲の低下につながり、その結果、全体のアクセス数が減少してしまう。その結果、顧客を獲得する上で重要なホームページへのリピーターも確保できないという悪循環に陥っていた。
また、検索エンジンの運営業者も新しい情報の追加があるホームページを評価し、検索順位を上位にする傾向がある。検索エンジンを経由したアクセスを増やすには、更新する情報の量と質を上げていく必要があった。
「情報発信の強化が重要な課題だと気付いてからは、情報の更新を社内でできるようにすることにはどうすればいいか日々考えていました」(寺園社長)。

ホームページでタイムリーな情報発信を全社員で

ホームページは写真が豊富で情報が伝わりやすいように工夫されている。InstagramやFacebook、SNSでは動画での紹介も

ホームページは写真が豊富で情報が伝わりやすいように工夫されている。InstagramやFacebook、SNSでは動画での紹介も


情報を探す中で、リコージャパンの担当者に誘われたセミナーを機に導入した中小企業向けホームページ作成システム(おりこうブログ)はその課題を解決してくれるものだったという。
「閲覧画面をそのまま編集するような感覚で文章の変更ができる機能や豊富なテンプレートが用意されているので、機動的に更新情報を追加していくことができています。ホームページの訪問者の傾向を把握する上で便利な解析機能が付いているのもありがたかったです」 寺園社長は、社員全員に情報発信の重要性を説いて回った。不動産総合センターの社員構成は、デジタルリテラシーが高い30代以下が40%を占める。寺園社長の呼びかけに社員たちは前向きに取り組んでくれたという。
以前のホームページ担当は1人だけだったが、ホームページ作成システムの導入後は、営業、開発、総務などの各部署がそれぞれの情報を更新し、FacebookやInstagramを通じたSNSの発信も積極的に行うようになった。
成約案件については、お客様の了解を得た上で随時情報を更新し、それ以外でもオープンハウスなどの情報等、平均すればほぼ毎日といったペースで更新している。大手不動産仲介業のポータルサイトとの掲載情報の連携も積極的に取っている。更新頻度は劇的に変わった。

お客様の豊かな生活へのお手伝いを発信

不動産総合センターでの社内会議風景。ウェブ会議を開催できる仕組みも整えた

"不動産総合センターでの社内会議風景。ウェブ会議を開催できる仕組みも整えた


さまざまな対策が効を奏し、新システムを導入してからのホームページへのアクセス数は30%以上も増加した。物件探しを求める企業の問い合わせも増えている。ホームページのアクセス数の増加が成約物件の増加につながり、会社の実績がより広く認知されていくという好循環が生まれている。
ホームページの閲覧者がどの検索エンジンを介してホームページに来たのか、閲覧者の性別、年齢層、市町村、ホームページの滞在時間などのデータを収集する機能をフル活用し、「不動産の情報を求める人が重視しているのは何なのか」、「どうすればアクセス数が伸びるのか」を定期的に検討し、その結果をホームページに反映させている。
「データがそろっているので、私も社員も根拠を持って議論することができるのがありがたいですね。どのように内容を変えていこうかという話し合いは前向きでモチベーションのアップにもつながります」と寺園社長は満足そうに語った。
「福岡県を中心に、九州での暮らしを豊かにすることに貢献していくために、今後もICTを積極活用していきたい」と話す寺園社長。 新しい働き方に対応するため、経理業務をリモートで行うことや、ウェブ会議を開催できる仕組みも整えた。お客様への不動産物件案内は、コロナ禍の影響もあり、現地立ち合いだけでなく、ICTを活用してのリモート内覧を試みるなど試行錯誤しながらお客様の満足を追求している。
福岡県内でのマンションや一戸建て住宅の自社開発物件も増やしていきたいという。福岡県内のみならず九州全域から福岡市内へとオフィスワーカーが流入していることから、福岡の住環境は今後も活発に推移していくことが見込まれる。福岡県とともにこれからも成長を続けていきそうだ。

会社概要

会社名

株式会社不動産総合センター

本社

福岡市博多区博多駅南5丁目15番9号

電話

092-475-0055

設立

1995年5月

従業員数

28人

事業内容

不動産の売買・賃貸・仲介・管理、新築戸建て住宅企画販売、投資用収益ビル企画販売、家屋調査、リフォーム事業など

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