事例集

2021.03.16 06:00

伝統文化と最先端の融合 京都の老舗建築会社が、ビルそのものをDX仕様に変える あめりか屋(京都府)

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執筆者

フジサンケイビジネスアイ

産経新聞グループの日本工業新聞社が発行する日刊ビジネス情報紙。我が国経済の成長を盛り上げると同時に、経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。


下鴨神社の近くにあり、まもなく創業100年を迎える京都の建築会社「あめりか屋」が、コロナ禍をきっかけに本社をICT仕様にリノベーションした上でさまざまなソリューションを導入し、顧客管理、営業、会社案内などで業務改革を進めている。会社の理念である永続性のある美と快適さを追求する上でもICTは大きな効果を発揮することがわかってきた。(上記写真はあめりか屋が施工した株式会社美津村社屋。グッドデザイン賞景観賞を受賞)

創業は大正時代 和洋折衷建築で政財界でも評判


和のイメージが強い京都に本社を構える建築会社としては一風変わった社名を持つ「あめりか屋」の起源は、明治時代末期の東京・芝浦にさかのぼる。創業者は渡米経験を持つ実業家で、日本の気候風土に合った日本向け洋風住宅の販売で一世を風靡した。その斬新な和洋折衷スタイルは、政財界の要人の間で評判になり、軽井沢の別荘など多くの案件を受注したという。
現在の「あめりか屋」が京都にあるのは、山本英夫社長の祖父が、1923年(大正12年)に、東京の本家から独立し、同じように和洋折衷建築を手掛ける工務店を京都高倉六条で興したからだ。ハイカラでモダンな建築スタイルは京都でも高い評価を受け、昭和時代に入ってからは同志社大学の新島会館や著名なドイツ人設計家、ブルーノ・タウトが設計に関わった住宅など数多くの洋風建築物の施工に携わった。「あめりか屋」を名乗ることが難しくなった太平洋戦争中は、社名を「山本工務店」に改称して乗り切ったという。
戦後間もない1948年に株式会社に改組し、1962年に第2代社長が就任してからは、渡月亭、楠莊、もみじ屋、いろは旅館など京都を代表する旅館や一般の住宅だけでなく、丁寧な仕事を心掛ける創業以来の理念を守りながらホテル、レストラン、オフィスビル、工場、学校、公共施設、マンション、病院、社寺などあらゆる建築物を手掛ける総合建築会社に転換し、実績を積み重ねた。

オフィスビルの5階に茶室 永続性のある美と快適さの創造


1990年には新築住宅の需要が高かったバブル期の大量生産・大量消費の世相に疑問を抱き、リフォームに着目。「永続性のある美と快適さの創造」をコンセプトにリフォーム専門の別会社「あめりか屋住宅部」を設立した。
先を見据えた戦略が功を奏し、リフォームは社の礎を支える重要な収益源として育っている。
 1971年10月に京都下鴨に完成した鉄筋コンクリート造5階建ての本社ビルは、1階から4階がオフィス、5階には東山三十六峰を臨む茶室が設けられている。本社前の幹線道路をはさんだ東側には2千年以上の歴史を持つ世界遺産、下鴨神社の境内が広がり、日常的に歴史や伝統文化を意識しながら仕事に打ち込める京都ならではの環境を備えている。

『夢がある』、『役に立つ』、『やりがいがある』3Yが共通の言葉


「創業から太平洋戦争、戦後の混乱期、高度成長期、石油ショック、バブル経済、平成不況、リーマンショックといった歴史の中で、時代の感性や社会のニーズに敏感なハイカラ精神を大切にしてきました。古いものを大切にしながら新しさを求める『古くて新しい会社』であると同時に『新しくて古い会社』でありたいと思っています」と4代目として2011年7月に就任した山本英夫社長は話す。きつい、汚い、危険の3Kと揶揄されることもある建設・建築業界のイメージを変えたいという思いは強く、10年前から『夢がある』、『役に立つ』、『やりがいがある』ことを意味する3Yというフレーズを積極的に使っている。

社長 山本英夫氏

社長 山本英夫氏


受注案件はオーダーメイドが主体。施主(顧客)の思いをいかに反映させるかを大事にしている。「なにより現場を重視しています。現場の経験が豊富であれば豊富であるほど、利用者が使いやすい住宅を設計することに意識が向き、お客様のことを考えた仕事ができると考えているからです。
営業担当者であっても必ず現場を経験してもらうことにしています」。建築業界を目指す最近の若者の傾向としてデザインの志望者が多く、現場に出たがらない人が目立つが、安易な妥協はせず、社の方針を堅持していきたいと考えている。
会社の方針をしっかりと理解しながら仕事を覚えると同時に、「あめりか屋」の社風を、若い間に体で理解してもらいたいとの思いから、以前から新卒を主に採用活動を行っている。

新型コロナの影響で中高年のICT活用が一気に広がった


実績と技術を兼ね備えた建築会社でも、大手のホームメーカーと競争して生き残っていくのは簡単ではない。限られたマンパワーを効率的に活用することが求められている。29人の社員のうち、40歳以上が19人と70%近くを占めることからでも分かるように、社員の高齢化が着実に進んでいる中で、特に20代の力を活用していかなくてはならない。

ICT化の取り組みとして3年前からクラウドサービスを導入して顧客データを共有化している。建築現場から、担当者がノートパソコンから直接アクセスして、自由にデータを閲覧できるようにしていたが、年配の社員の利用率は低く、導入前と同様に電話で本社に問い合わせることが多かったという。

「残念ながら十分に使いこなせていませんでした。ICTの導入は一進一退でしたが、昨年のコロナウィルスの感染拡大で社内全体の意識を一気に変える必要に迫られました」
躊躇している時間はなかった。顧客管理、施主への効果的なプレゼンテーション、原価管理、会社案内、人材獲得、働き方改革の実現。これら多くの課題を解決するためにリコージャパンのバックアップを受けて本格的にICTを導入することを決めた。

オンラインを活用したIT化推進委員会の会議の様子

オンラインを活用したIT化推進委員会の会議の様子


改革の第一歩として2020年4月に立ち上げたのが現場や営業の担当者で編成した「IT化推進委員会」だ。外部の専門家の指導を受けながら、30代の中堅社員をリーダーに据え、20代を中心に4人で編成した。運営にあたっては若手の意見を積極的に採用した。すると、おもしろいことに当初はデジタル化にそれほど積極的でなかった中堅社員も前向きに発言するようになったという。

最先端のDX環境に変えコミュニケーション速度を高める


委員会の活動と並行してデジタルトランスフォーメーション(DX)に対応するために本社ビルのリノベーションを進めた。受付、営業、経理を配置する2階は光ファイバーやWi-Fiを完備した最先端のICT仕様に改装し、3階は働き方改革を見据えて管理職以外の社員の席を固定しないフリーアクセスのレイアウトに変えた。

働き方改革を見据えてフリーアクセスのレイアウトにした3階のオフィス

働き方改革を見据えてフリーアクセスのレイアウトにした3階のオフィス


また4階は、コロナ禍を意識して密にならないよう広い会議室で行い、出社していない社員とも会社の様子や雰囲気が伝わるweb会議ができるようにしている。リノベーションによって本社ビルは伝統文化と先端技術が同居する都市、京都を体現するオフィスになったといえる。

オフィスに置くパソコンはノートパソコンでは画面が小さいことから大型のマルチモニター仕様にし、特に3次元CADのオペレーターは、3台のモニターを駆使してパース等を作成できるように作業環境を大きく改善した。

光ファイバーやWi-Fiを完備した2階のオフィス

光ファイバーやWi-Fiを完備した2階のオフィス


さらにディスクはハードディスクよりも読み込み、書き込みの処理能力が早いSSDに取り換えた。また、社員全員にDXを意識してもらうためにWeb会議を全社規模で実施することにした。

実際に会って話すときは、表情や、全身を使っての動きで情報を伝え、当然だがコミュニケーションにタイムラグは存在しない。
しかし、DX導入にあたって、小さな画面、遅い通信速度だと、相手の表情や動作もわからず、しかも表示がぼやけたり遅れるとストレスがたまる。
「あめりか屋」は社員間のコミュニケーションの中で新たなアイデアや企画が生まれることを知り、社員間のコミュニケーションを最優先し、妥協を許さない決断を下した。

ICTの導入で業務面でもICTの効果が出た。現場での写真撮影も、以前は担当者によって、スマートホンを使ったり、デジタルカメラを使ったりと仕様が統一されておらず、編集の手間がかかっていたが、素早く編集できるように撮影機材はタブレット端末に統一し、あらかじめ設定したテンプレートで建築種別のフォルダごとにまとめるようにした。

あめりか屋の社是

あめりか屋の社是


まもなく創業100年を迎える「あめりか屋」は、全社を巻き込んだ本格的なICT装備企業へ大きく舵を切り始めた。

会社概要

会社名

株式会社あめりか屋

本社

京都市左京区下鴨松原町20番地

電話

075-781-3151

設立

1948年6月(1923年10月創業)

従業員数

29人

事業内容

総合建設業(戸建て住宅、店舗、ビル、マンション、福祉施設などの設計・施工・内装、住宅のリフォーム)

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