事例集

2021.02.18 06:00

「高技術のものづくり企業」の業務を支えるにはパートナー企業の存在が不可欠だった 寺方工作所(鳥取県)

「高技術のものづくり企業」の業務を支えるにはパートナー企業の存在が不可欠だった 寺方工作所(鳥取県)
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執筆者

フジサンケイビジネスアイ

産経新聞グループの日本工業新聞社が発行する日刊ビジネス情報紙。我が国経済の成長を盛り上げると同時に、経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。


鳥取県東伯郡北栄町に本社を置く株式会社寺方工作所。日本海に近い風光明媚なこの地に工場を構え、プレス工法を応用した多種多様な工業用部品の生産を手掛けている。特許を持つ加工技術もあり、顧客からの評価は高い。

電子部品がルーツ、精密度が強み


寺方工作所は1946年、大阪で創業。当初はプレス金型の製造を請け負っていたが、新たな顧客を求めて66年、鳥取県へ進出した。現地には多くの製造業の工場があり、その協力先としての存在価値を見出そうという狙いだった。70年2月、株式会社寺方工作所を設立。2007年には本社を大阪から鳥取へ移転し、現在の体制となった。

自動車部品や携帯電話、OA機器など、手掛ける加工分野は幅広い。鳥取県へ生産拠点を移した当時、取引先に家電メーカーやオフィス機器を扱う企業が多かったため、仕事には精密さが要求されたという。「元々、当社は電子部品がルーツ。CADのブラウン管や携帯電話の部品など、製品に求められる精密度は高かった」と寺方泰夫社長は説明する。

常に新しい分野を開拓し、高い技術を追求する寺方泰夫社長

常に新しい分野を開拓し、高い技術を追求する寺方泰夫社長


精度の高い部品を生産する経験が、現在の他社と差別化できるプレス工法へとつながっている。

ICTを活用しての業務の効率化は、パートナーシップ制で成功


「リコーさんとは付き合いが長く、2種類ある当社のネットワーク――事務系とCAD系のサポートを全面的にお願いしています。一時期、他社を利用したこともありましたが、サービスの質が低下したため、元に戻しました」と語るのは寺方泰夫社長。
「ものづくりに熱心な企業は、どうしても技術開発に熱心でお金の管理や、社内のネットワークやセキュリティについては二の次になることが多く、企業を経営する観点からは問題があると常々考えていました。
当然社内で人を育成して業務システムの管理やネットワークの管理をと考えた時もありましたが、ものづくりと同様にどんどん変化していくICTのシステム管理を自社内で行うのは費用対効果も含めて適切ではないと考えた結果です。
おかげさまで、問題が起きた時の即応能力やマンパワーにはとても助かっています」。

必要な人材は、ユニークな入社試験で確認


寺方工作所が差別化のノウハウとしているのは、精密な鍛造加工技術。通常、プレス工法で出来上がった製品には“バリ”など余分な個所が発生するため、研磨などの仕上げ作業が必要だ。一方、同社の「精密板鍛造加工技術」は、こうしたバリなどの発生を最小限に抑え、生産の効率と精度を高めることができる。

精密な鍛造加工技術により生産された様々な製品

精密な鍛造加工技術により生産された様々な製品


もう1つの強みが、「温間加工技術」。一般的な「鍛造」では、材料を熱する「熱間加工」と常温でプレスする「冷間加工」が主流だ。同社では独自開発した中間の温度帯で行う「温間加工」を採用している。金属が特定の温度に達すると、軟化して滑らかになる性質を利用し、製品の表面を鏡面加工する技術だ。精度と技術力が要求される高度な工法を持ち合わせているからこそ可能な加工方法だ。

温間加工技術を使った鏡面仕上げの部品

温間加工技術を使った鏡面仕上げの部品

こうした精度の高い技術を強みにする同社が求める人材も、「ものづくり企業」ならではの特徴がある。

入社試験の課題もユニークだ。
その一例が、飛行機の紙模型を出題したこと。
「当社が従業員に求めるものは、コツコツと日々の仕事をこなしていく姿勢を基本として、器用さ、応用力です」。
入社試験に採り入れたのが、飛行機の紙製模型を組み立てること。その出来栄えで、手先の器用さを見極めることができます」と寺方社長はその理由を説明する。
「ものづくりの会社は毎日が技術の応用編。需要の変化のスピードが速いため、応用できる能力が必要になります」。

採用特設サイトで新しい人材を広く集めたい

寺方工作所の採用特設サイト

寺方工作所の採用特設サイト


寺方工作所に必要な人材を獲得するには、採用のためのWebサイトが必要と考えリコージャパンの人財獲得支援パックを活用して、社内のスタッフが自社のウェブサイトに「採用特設サイト」を作成、運営している。
人財獲得支援パックは、最初の講習を受ければ自分たちで作成でき、Web作成だけでなく、Webのデータを使って会社紹介のためのパンフレットもほぼ自動で作成できるので、企業側の負担が少ないというユーザー本位のシステム。

「採用サイトの効果が具体的に表れてくるのはこれからだと思います。現在は工場見学や知人の紹介などで、現場のスタッフを効率良く確保できている面もありますが、今後は自社サイトを通じて、新しい人材を獲得できればと考えています」。

ネットワークセキュリティの重要性を再認識


リコージャパンとのパートナーシップの最も大きなメリットは日々の業務のサポート機能だという。寺方社長も「先方も当社の事情を良く理解してくれているし、信頼関係が構築できています」と評価する。

「社内のPCがウイルスに感染した時は取引先と満足に連絡ができず、業務も滞って大騒ぎになりました。幸い、工場のシステムはオフラインにしていたので助かりましたが・・。すぐにリコーの担当者が駆け付け、復旧作業に当たってくれました。システムの不具合が発生した時もすぐに対応してくれた。機器の入れ替えの時も然りで、ネットワーク全体をサポートしてもらっています」。

高技術でものづくりに熱心な企業は、日本の財産だ。
ただ技術開発に熱心で、業務処理や利益管理、あるいは高度なセキュリティが後回しになる企業が多いのが日本の現状だ。
そういう中で、寺方工作所は、「高技術企業がやるべきこと」に集中し、サポートをパートナー企業に任せるというメリハリの利いた経営を行っている。

高技術情報を守るためにも、リコージャパンのように、個々の企業に寄り添いながら、全国企業のネットワークを活用した適切な提案、場合によっては国際企業としてのリコーのリソース(経営資源)を使える会社というのは、中小企業にとって、とても重要で稀有な存在だと感じた。

会社概要

会社名

株式会社 寺方工作所

本社

鳥取県東伯郡北栄町田井175

電話

0858-36-4311

設立

1946年11月

従業員数

152人

事業内容

成形法による精密板鍛造加工技術を用いたプレス品の製造。主に自動車や携帯電話、OA機器などの部品を手掛ける。温間加工技術による精度の高い製品も生産する。

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