事例集

2020.12.01 06:00

連携が欠かせない建設業界 協力企業と次世代ICT化に取り組む東郷建設

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執筆者

フジサンケイビジネスアイ

産経新聞グループの日本工業新聞社が発行する日刊ビジネス情報紙。我が国経済の成長を盛り上げると同時に、経営者やビジネスパーソンの皆様に、ビジネスの成長に役立つ情報やヒントをお伝えしてまいります。


「株式会社になって40年。当時は職人も抱えていて、創業した父は『当時はよかった』といいますけど、自社だけでやるやり方から協力会社と協力して進めるやり方に変更しました」と、株式会社東郷建設の近藤洋一社長は笑顔で話す。2016年に父から経営を引き継いだが、それ以前から専務として実質的な経営を担ってきたという。

東郷建設は、地域の元請企業として、本社のある愛知県東郷町を中心に周辺の日進市やみよし市、豊田市、豊明市などで業務を展開し、地域の土木建設を担ってきた。バブル崩壊やリーマンショックなどの経済の荒波を乗り越え、現在は4人の従業員で、施工管理に特化した形で事業を展開。「地域の問題にはすべて対応する」が信条で、地域の公共工事から民間のちょっとしたメンテナンスも快く引き受けている。

建設業界は重層な下請け構造のもとで成り立っている。1つの工事を進めるにあたっては、総合的な工事の管理・監督を行う元請のもと、一次、二次、三次の下請け企業が存在し、中間的な施工管理や労務の提供、その他の施工そのものを担当する。いくつもの協力企業が参加することで工事が進められる。従業員がわずか4人の統合建設が大規模な公共工事を受注できるのは、専門的かつ熟練の技術を持つさまざまな分野の建設会社の協力があってこそのことだ。

施工体制管理台帳をIT管理 協力会社との書類のやり取りも激減

業界特有の重層な下請け構造のもと安全で適切な工事を行えるよう、発注者から直接建設工事を請け負った建設業者は、一定の下請契約を行う場合、「施工体制台帳」の作成を義務付けられている。

手作業の時代は、整理上手な社員が頼りだった。

提出を求められるのは、
(1)工事内容と建設業許可
(2) 配置技術者の氏名と資格
(3) 社会保険の加入状況
(4) 外国人建設就労者の従事の状況
といったものだ。

契約書の写しや技術者の資格を証明する書類なども添付する必要があり、協力企業が多ければ大きいほど台帳は膨大な厚さになる。

東郷建設では、長年にわたり工事を依頼してきた40~50社の協力企業を抱えている。「工事を行うたびに下請け企業には書類の提出をお願いしなくてはならず、整理や管理が大変で、書類の管理する場所の確保も大変でした」と近藤社長は語る。

そこで、東郷建設は、書類を複合機でスキャンしてデータとして管理できる施工体制台帳作成支援システムを導入することにした。

複合機でスキャンして、特定のフォルダーに登録すれば、ソフトで利用できるようになる


技術者の資格証明書のように下請けから提出される書類の中には、内容が変わらないものもある。こうした書類をあらかじめデータとして取り込んでおけば、いちいち下請けに提出を求める必要もなくなる。協力企業の情報と建設業許可証、技術者資格、社員証等を預かり管理することで、施工管理書類作成・管理にかかる手間と時間が大幅に削減された。許可証関係は、有効期限も入力できるので、無効になった許可証は、システムで表示されるので管理が非常に楽になった。

使いやすさで注目のCADソフト「A納図」とIT導入補助金が、協力会社との連携を容易にし、互いの仕事の質の向上を実現した

協力会社との協業は、単に管理だけではない。ICTの普及と補助金の支援は、地域において協力企業との連携支援となった。

例えば、図面については同じCADソフトのほうが、同じ仕事を協力して行う場合、何倍もスムーズに進む。ところが長い歴史の中それぞれがバラバラのソフトを使って、紙での情報共有か、DXFと呼ばれる図面用フォーマットでの変換だった。

東郷建設と協力企業は、「A納図」というCADソフトを知ることで仕事の進め方が大きく変わった。「A納図」は、初心者にも使いやすい電子納品対応の土木CADで、約4000種類の建設部品を搭載し、わかりやすい日本語メニューや豊富な作図機能を持っているソフトだ。


東郷建設の近藤社長が「A納図」を使い始めて、その威力に感動。すぐに協力会社に補助金活用での利用を進めた。そして次々に協力会社も「A納図」を導入した。

おかげで、協力会社同士の図面共有が一気に進み、細部にわたる打ち合わせや直しについても、電話で画面を見ながら進めることも可能になった。さらに、新しい機能を教えあいながら、お互いが仕事の質を高めることにも貢献している。

バラバラのソフトだったら、こういうわけにはいかなかった。共通のソフトをベースに教えあい、様々なヒントを共有することで、新たな展開の可能性が開けてきた。土木以外の業界でも、仕様の異なるさまざまなシステムが企業ごとに導入され、協力企業間の連携を阻害している傾向が少なくない。

しかし、このようにキラーコンテンツの登場とIT導入補助金などの支援により、グループ間のICT化が一気に進むことは、地域活性化の一助となる。また、次世代ICT協業のきっかけとなる可能性を秘めている。

会社概要

会社名

株式会社東郷建設

本社

愛知県東郷町大字諸輪字富士塚181-33

電話

0561-39-1752

設立

1972年8月

従業員数

4人

事業内容

上下水道、乗入、盛切土、擁壁等の許可申請が必要な工事から既設建造物のメンテナンスまでトータルに対応

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