コラム

2022.12.13 06:00

バリューチェーンとは?中小企業こそ活用したいマーケティング手法を解説

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バリューチェーンとは?1行で解説すると

企業の事業活動を連鎖的にとらえ、各プロセスで生まれる価値を見出していく考え方。

バリューチェーンとは

バリューチェーンとは、直訳すると「価値連鎖」という意味。アメリカの経済学者マイケル・ポーターが1980年代に提唱した概念です。製品やサービスの開発から顧客に届けられるまでの企業での活動を価値の連鎖ととらえ、その一連の流れの中で、自社の強みや弱み、または利益を生むために改善すべき部分などを分析していくマーケティング手法です。

バリューチェーンという言葉の使い方

バリューチェーンは、企業におけるマーケティングや、事業戦略立案の際に用いられる考え方です。そのためビジネスシーンでは、「バリューチェーン分析によって、自社の強みが明らかになった」「バリューチェーンには、主活動と支援活動に分類される」というように使われます。

バリューチェーンの考え方

次に、ビジネスにおけるバリューチェーンの考え方について具体的に解説します。

中小企業ができる付加価値のつけ方

バリューチェーンは、「主活動」と「支援活動」に分けられます。製品を顧客に届けるために必要な活動を「主活動」、そして、主活動を支える活動を「支援活動」と呼びます。

これらの各活動におけるコストや生産性を分析することで、どのプロセスで製品やサービスの付加価値が高まっているのかを理解できます。自社製品が支持されているポイントや、他社と比較したときの弱みを知ることで、より競争力を高めるためのヒントを得ることができます。

ビジネスシステムとの違い

バリューチェーンと近いシーンで使われる言葉が、ビジネスシステムです。ビジネスシステムとは、製品やサービスが顧客へ届くまでのプロセスのこと。事業の構造を可視化することで、俯瞰的に戦略を立てるために使われる考え方です。

バリューチェーンは、事業活動の連鎖の中で、どこで価値が生まれているのか分析する考え方です。そのため、価値に着目しているという点で、事業の構造自体を意味するビジネスシステムと異なります。

サプライチェーンとの違い

サプライチェーンは直訳すると「供給連鎖」という意味。製品が、原料から製造・加工を経て消費者に届くまでの流れのことです。

「モノ」の流れを指すサプライチェーンに対し、バリューチェーンは、製品が顧客に届くまでのプロセスの中で生まれる価値を見出すことです。ふたつの言葉の意味は異なりますが、バリューチェーンの分析対象には、モノの流れであるサプライチェーンも含まれます。

サプライチェーンについて詳しくはこちら

ほかにもこの言葉の意味はご存知ですか?

バリューチェーンと関連するサプライチェーンやトレーサビリティなど、うまく使いこなせていない言葉があるという方も多いのではないでしょうか。中小企業応援サイトではそんな方にとって役立つ、10の用語を解説した独自の資料「聞くに聞けない経営用語集」のダウンロードを実施中です。

そのほか経営用語についてより詳しく知りたい方はこちら

バリューチェーンが必要な理由、注目されている背景とは?

グローバル化やIT化による社会環境の変化によって、消費者のニーズや、企業に求められるものも多様化しています。競争が激化する中でも、売上アップや他社との差別化を実現するために、時代に応じた戦略を柔軟に検討していく必要があります。

その上で欠かせないのが、自社についてよく知ることです。バリューチェーンは、自社の製品・サービスの強みの根源となるステップや、不要なコストや非効率な部分を見出すことにつながります。新たな戦略やサービス改善の手がかりを得られるバリューチェーンは、企業の成長を実現する価値あるマーケティング手法なのです。

バリューチェーン分析とは?中小企業に必要なの?

では、バリューチェーン分析とは、どのようなステップで進めればよいのでしょうか。その方法を解説します。

分析の方法

バリューチェーンを、ビジネスの課題解決の枠組みとして活用するのが、バリューチェーン分析です。企業内の事業活動を「主活動」と「支援活動」に分類し、それぞれの工程で生まれる付加価値を分析します。

主活動とは、製品の製造、販売、物流、アフターサービスなど、製品を顧客に届けるための活動のこと。人事労務や管理業務、また財務、技術開発や調達など、主活動が効果的に進むよう支える活動が、支援活動です。

ステップ①自社のバリューチェーンを洗い出す

まずは、事業活動の全工程を、機能別に洗い出します。リストアップができたら、製品の生産や顧客に届けるまでの流れに関連しているものを主活動、それ以外のものを支援活動として分類します。

そして、それぞれの活動をさらに細分化し、各工程における活動の特徴を記載して、バリューチェーンの全体を可視化します。

ステップ②コストを分析する

バリューチェーンの可視化ができたら、それぞれの活動ごとにかかっているコストを分析します。活動ごとに、どの部署が、どのようなコストをかけているかを洗い出していきます。

コストを一覧化したら、活動あたりのコストの比率、人件費や材料費などのコストの要因、各活動間のコストの関連性も明確にします。これらをふまえて、各活動あたりのコストの妥当性を検証しましょう。

ステップ③強みと弱みを分析する

コストを一覧化したら、それぞれの活動が顧客満足度につながっているかという観点で、付加価値を生んでいる活動を分析します。コスト分析もふまえながら、自社の強みが、どのステップに大きく関わっているのか検証しましょう。

また、各活動の特徴やコストから、製品やサービスの弱みにつながっている個所を見出します。強みと弱み、そして価値の関連性の分析によって、どの活動を強化すべきか、または改善すべきかが明らかになります。

ステップ④VRIO分析を行う

次に、ステップ③でわかった強みに対して、VRIO分析を行います。VRIO分析とは、Value(価値)、Rareness(希少性)、Imitability(模倣可能性)、Organization(組織)の4つの観点からそれぞれの活動を分析し、解決策を見出す考え方です。

分析ポイントは、その強みが自社の経営にとって価値があるのか(価値)、市場で希少価値のあるものか(希少性)、真似される可能性は低いか(模倣可能性)、その強みを有効活用できる組織体制があるのか(組織)の4つです。各活動において、この4つの条件がすべて揃っている状態を目指すことで、競争力を高めることができます。

中小企業だからできるバリューチェーンの高め方

では、中小企業が競争力を獲得するために有効なバリューチェーン分析の方法とは何でしょうか。業界ごとに、そのポイントを解説します。

製造業

製造業においては、商品の品質や性能が、利益や企業価値に大きく関わります。そのため、製造業のバリューチェーンでは、商品企画、設計、生産、保守など、含む製造プロセスで生まれる付加価値が、競争力獲得において重要です。製造の各活動における、開発時間や品質、コスト、安全管理等の改善、強化に特に注力しましょう。

また、消費者のニーズが多様化する現在は、単に技術や品質を強化するだけでなく、顧客の求めるものや社会課題を意識することも重要です。市場に目を向けながらバリューチェーンの最適化を進めることで、他社との差別化を図ることができます。

建設業

建設業においても、各活動の強み・弱みを分析するバリューチェーンが、競争力獲得に高い効果を発揮します。

建設業は、バリューチェーンの事業活動ごとに下請け業務特有の課題があるのも特徴です。たとえば、採算や工期の条件が悪くても受注を優先してしまう、複数の施工を掛け持ちすることで資金繰りが厳しくなるなどの状況が起こりえます。作業員不足によるスケジュールの遅延や、アフターサービスまで手が回らないなどの人材面の課題も含めて、各活動上で改善すべき点を見出し、対処することが大切です。

福祉介護業

高齢化による利用者増や、業界での人材不足が進む中、福祉介護業でもバリューチェーン分析を活用した業務改善や生産性向上が求められています。

介護施設のバリューチェーンには、サービスの企画開発やマーケティング、サービス提供のほか、ケアプラン作成や、サービス機能のモニタリングといった業界特有の活動が含まれます。介護職員の確保や、IT導入による作業効率化などの施策、サービス品質向上といったさまざまな改善策を通して、安定したバリューチェーンを構築することが大切です。

小売業

商品を仕入れ消費者へ販売する小売業では、商品企画や仕入、販売のほか、集客や店舗経営といった活動も、バリューチェーンの重要なプロセスです。店舗でのスタッフ活用や調理、キャンペーンやチラシを使った販促活動など、小売業特有の活動の中での強み・弱みを分析することが重要です。

細分化した各活動の中で、品揃え、商品の鮮度、価格、接客力といったさまざまな視点から事業を分析して改善策を講じていくことが、他社との差別化につながります。

サービス業

宿泊や飲食、生活関連サービス業、情報通信業などを含むサービス業のバリューチェーンにおいては、サービスの品質や魅力を決める企画や、顧客への営業活動の中で、いかに付加価値を生むかが重要です。

また、顧客との信頼獲得や、新規サービス開発やサービスの質向上につながる顧客との接点が重要なのも、サービス業のバリューチェーンの特徴。カスタマーサポート活動の詳細な分析も、サービス業が注力すべきテーマのひとつです。

聞くに聞けない経営用語集

バリューチェーンの意味や用語の使い方、理解できましたか? 自社の強みを理解して成長を続けるためにも、今日から、バリューチェーンの概念をビジネスに役立ててみてはいかがでしょうか。

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