コラム

2022.01.19 06:00

i-Constructionとは?導入メリットやCIMやBIMとの違い、導入事例を分かりやすく解説

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この記事に書いてあること

i-Construction(アイ・コンストラクション)とは、国土交通省が提唱するプロジェクトのひとつです。コンピューターやネットワークなどの新しい技術を、建設現場に取り入れて生産性向上と経営環境改善を目指しています。この記事では企業の経営者に向けて、i-Constructionの概要やメリット、具体的な事例を紹介します。ぜひ、参考にしてください。

i-Constructionとは?

i-Constructionとは、国土交通省が進めている20個の生産性革命プロジェクトのうちの1つです。生産性革命プロジェクトとは2016年から始まったプロジェクトで、持続的な経済成長につなげるためのものです。

i-Constructionは建設業界向けのプロジェクトで、コンピューターやネットワークなどのICT技術を建設現場のあらゆるプロセス、例えば測量や施工、検査などに取り入れることです。これにより、生産性の向上や経営環境の改善を目指します。

参考:総合政策:生産性革命プロジェクト - 国土交通省

i-Constructionの目的

i-Constructionの目的は、「建築現場における生産性向上」と「労働環境の改善」です。建設業界では、作業現場が常に異なることや複雑な分業制などで、生産性向上のための施策を打ちにくいという課題がありました。そこで、i-ConstructionでICT技術を導入し生産性向上や経営環境の改善をすることを大きな目的としています。

また、労働環境の改善によって、3K(きつい・汚い・危険)というイメージを刷新し、魅力のある建設現場を作るのも目的の1つです。

i-Constructionの3つの柱

i-Constructionには3つの柱があります。ここでは、各ポイントについて詳しく解説します。

ICT技術の全面的な活用

建設現場では、測量や調査、設計や施工、検査などさまざまな作業があります。これらのプロセスにICT技術を導入し、全面的な活用を行うICT土木の実施はi-Constructionの柱の1つです。具体的には、ドローンを活用した3次元測量、3次元データを活用した設計図作成や施工量の算出、現場で使用する重機の自動化などが挙げられます。

規格の標準化

プロセス全体の効率化および生産性向上を目指すために、規格の標準化を行うことも重要です。建設現場では発注から加工、組み立て、維持管理などさまざまなプロセスがありますが、控除情報を共有して効率化を図る必要があります。例えば、コンクリート工の工法標準化、鉄筋のプレハブ化、各部材のサイズを標準化するなどが挙げられます。

施行時期の標準化

i-Constructionでは、施工時期の標準化も重要です。建設現場では年度末に工期が集中してしまい、年度明けには工事量が少なくなるなど、施工時期の偏りが激しいという問題があります。早期発注やゼロ債務負担行為の活用などすることで、発注者の計画性向上、労働者の収入や休暇の安定などにつながります。

i-ConstructionとCIMやBIMとの違い

i-Constructionと似た取り組みとしてCIMやBIMがあります。ここでは、各取り組みの違いについて解説します。

i-ConstructionとCIMの違い

CIM(Construction Information Modeling)とは、土木や建設現場に3次元モデルを活用するという取り組みのことです。例えば、調査や設計などの段階から3次元モデルを導入して、施工や維持管理においても3次元モデルを連携させます。i-ConstructionはICT技術をあらゆる建設プロセスに取り入れるプロジェクトで、その1つとしてCIMがあります。

i-ConstructionとBIMの違い

BIM(Building Information Modeling)とは、CIM同様に3次元モデルを活用する取り組みですが、土木や建設現場ではなく「建築現場」で進められているものです。土木・建設現場に先んじて、建築現場では3次元モデルの活用が行われており、BIMの要素やノウハウを取り入れたのがCIMです。i-Constructionは土木・建設現場、BIMは建築現場という違いがあります。

i-Constructionが導入された背景

i-Constructionが導入された背景には何があるのでしょうか。ここでは、i-Constructionに注目が集まる理由について解説します。

「未来投資会議」での宣言

2016年9月12日の「未来投資会議」で、建設現場の生産性向上に関する方針が示されました。具体的な内容としては、2025年度までに建設現場の生産性を2割向上させるという宣言です。

未来投資会議での宣言を実現させるための施策として、i-Constructionの普及が盛り込まれたという背景があります。そのため、測量や施工、検査などのプロセスへのICT技術の導入、3次元データの活用などが進められています。

技能労働者の高齢化と深刻な人手不足

「未来投資会議」による宣言が行われる前の2014年の段階で、建設現場では2025年までに50歳以上の労働者のうち110万人が離職すること、29歳以下の労働者が全体の10%以下と低くなっていることが指摘されました。

また、建設現場の人口がピークだった1997年よりも、29歳以下の労働者は1万人以上減少、対して55歳以上は3万人増加と、高齢化も深刻化しています。そのため、建設現場における長期的な体制構築や改善が求められているという背景があります。

参考:再生と進化に向けて|一般社団法人日本建設業連合会

建設業界の労働環境を改善する必要性

建設業界では、人手不足と高齢化が深刻化しています。この課題を解決するために、若年層や女性の労働者を増加させる必要性があります。

建設業界は、3Kといわれ敬遠されるケースが多いです。3Kとは、「きつい・汚い・危険」の3つです。肉体労働で作業がきつい、汚いイメージがある、事故などが起こるかもしれないなどのイメージが強く、なかなか若年層や女性が集まらないという問題がありました。そのため、労働環境の改善が求められているのです。

建設業界特有の労働生産性

建設業界は、同じものを作り続けるわけではありません。現場によって施工内容や期間などがバラバラなので作業の標準化が難しく、作業の仕組み化や外注などをしにくくなっています。元請けや下請けなどの複雑な分業体制も問題です。

また、建設業者は中小企業の割合が多く、人材不足や工期の短縮といった観点からも労働生産性の向上は必須となっています。このような課題を解決するためにも、i-Constructionの導入が求められています。

建設業でi-Constructionを導入するメリット

i-Constructionを導入するとどのようなメリットが得られるのでしょうか。ここでは、測量・施工・検査におけるメリットを解説します。

測量におけるメリット

測量にi-Constructionを導入することで、人の手で行うと時間や手間のかかる測量や設計の効率化が図れます。例えば、ドローンを活用することで3次元測量が行えます。労働者が現場に赴いて測量する必要がなく、短時間で正確な測量が可能です。また、ドローンで得た3次元データを活用したCIMも行えるため、作業効率化につながります。

施工におけるメリット

ICT機器を導入することで誰でも操作することができ、女性などの幅広い人材活用につながります。ICT機器はモニター付きでオペレーションすることが可能で、操作を覚えれば比較的簡単に操作できます。そのため、経験値や熟練のスキルなども必要ありません。また、自動操縦によって人員削減ができ、人件費の削減も可能です。

検査におけるメリット

今まで手作業で行っていた検査・点検作業にi-Constructionを導入すると、作業工程の大幅な削減が可能で、業務効率化を実現できます。従来の検査・点検では、手作業で200mごとに測量検査を行っていましたが、ドローンなら定点観測が可能です。また、定点データをコンピューターで読み込んで処理できるため、入力する手間なども省けます。

i-Construction導入における3つのリスク

i-Constructionの導入で得られるメリットは多くありますが、リスクもあります。ここでは、3つのリスクを解説します。

設備投資の負担が大きい

建設業務のすべてのプロセスをICT化するには、複数のICT建機を購入しなければいけません。ICT建機を複数購入するには多くの資金が必要で、大手ゼネコンなどの資金が潤沢にある企業でなければ難しいでしょう。しかし、すべて購入すると設備投資への負担が大きくなりすぎる可能性もあります。比較的導入しやすいドローンやICT建機のリースを利用するのがおすすめです。

従来とは異なるスキルが求められる

i-ConstructionではICT建機の導入が肝ですが、従来とは異なるスキルが必要です。現場で実際に働く労働者がスキルを習得できなければ、ICT建機を導入してもうまく活用できません。例えば、ドローンの飛行計画や撮影を正確に行う技術を身につけたり、測量したデータを扱うソフトの操作を覚えたりしなければならず、難易度が高いです。

参考:建設業及び建設工事従事者の現状|国土交通省
参考:人材開発支援助成金|厚生労働省

費用対効果の見極めが必要

ICT建機を導入する際は、費用対効果を正しく見極める必要があります。ICT建機では作業効率アップや労働者の負担軽減、生産性向上などが見込めますが、導入コストは重くなりがちです。そのため、設備投資にかけた費用に見合った効果が得られるか、生産性向上できるかなどを検討して、自社に本当に必要かどうかを見極めましょう。

i-Constructionの導入事例

i-Constructionを導入すると、どのようなことが可能なのでしょうか。ここでは、実際の導入事例を2つ紹介します。

ドローンを活用した測量

株式会社技術開発コンサルタントでは、ドローンを活用した測量を行っています。大規模な現場の設計を担当するケースが多く、広範囲の写真撮影や造成計画などが必要でした。すべてを人の手で測量する場合時間も手間もかかってしまうため、ドローンを導入しました。

ドローンに、撮影用のカメラだけではなくレーザースキャナーを搭載、データを収集しています。データをもとにして3D設計を実施、測量・設計データだけでなく、CADなども3D化にシフトしています。ドローンによる定期的な撮影により、出来高管理や設計変更なども可能で、精度の高い施工管理を実現しています。

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CADソフト「A納図」とIT助成金の活用

東郷建設では、CADソフト「A納図」を導入しています。従来は、企業ごとに別々のCADソフトを使用して紙で情報共有をする、もしくは図面用フォーマットで変換して共有していたため、手間がかかっていました。

そこで、A納図というCADソフトにIT導入補助金を活用して導入しています。初心者でも使いやすいA納図の効果を実感し、協力企業にも補助金を活用した導入を進めました。これにより、協力企業同士で利用するソフトが統一され、情報共有がスムーズに進むだけでなく、詳細な打ち合わせや修正なども画面をみながら行えるようになるなど、業務効率化を実現しています。

#建設業(土木)の事例

連携が欠かせない建設業界 協力企業と次世代ICT化に取り組む東郷建設

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まとめ

i-Constructionとは、建設現場のあらゆるプロセスにICT技術を導入して、生産性向上や経営環境の改善などを行うためのプロジェクトです。ドローンなどのICT建機を導入すれば、業務効率化や生産性向上などが見込めるでしょう。

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記事執筆

中小企業応援サイト 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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