コラム

2021.12.01 06:00

危機に負けない!変化に柔軟に対応できる強い組織の作り方

危機に負けない!変化に柔軟に対応できる強い組織の作り方 強い中小企業の作り方 ?コロナで傾いた企業、傾いてない企業どこが違った??
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変化にあわせてどう対応していく? 柔軟な企業5つの成功事例

変化にあわせてどう対応していく?柔軟な企業5つの成功事例

変化に対して柔軟に対応でき、積極的にトライ&エラーを許容する組織とは、どのようなものでしょうか?5つの成功事例をご紹介します。

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本連載では3回にわたり、「コロナ禍で傾いた企業と、そうではなかった企業」との違いがどこにあったのかを見ていきます。

第1回の本記事では、「組織風土」を切り口として考察していきます。コロナ禍でも強い企業は、変化によく対応できる柔軟な組織風土を持っています。そして、そのような組織風土を作るためには、普段から明確なパーパスの設定、経営情報共有化、幹部社員育成などの対応が必要になるのです。よくも悪くも社長の影響が大きい中小企業では、社長自身の考え方や行動の柔軟性が及ぼす影響も大。社長自らが自己変革する決意も必要です。

コロナ禍をチャンスと捉えている企業は売上高も回復基調

企業が長期間にわたりビジネスを続けていくなかで、大なり小なり、事業環境の変化に直面することは避けられません。その変化に対応しながら持続的な成長発展を遂げていく強い企業がある一方、変化への対応ができずに衰退し、場合によっては撤退してしまう企業があることも事実です。

たびたび繰り返される環境変化に際し、自らも変化しながら適応し、進化しながら生き残れることこそが「強い企業」の姿だといえるでしょう。

2020年春から発生したコロナ禍は、数十年に一度ともいわれるほどの大きくかつ急激な事業環境の変化をもたらしました。

それに対して、休業補助金など、行政からの各種支援策なども一定講じられているため、倒産件数こそ、足元で急増は見られていませんが、「2020年「休廃業・解散企業」動向調査」東京商工リサーチ」によると、休廃業件数が過去最多件数となり、事業からの静かな撤退を選ぶ企業が増えていることが見て取れます。

その一方で、この環境変化をむしろ「チャンス」と捉えて、したたかに成長を遂げている強い企業もあります。

『中小企業白書』2021年版では、一定数の中小企業がコロナ禍を「チャンス」と捉えていることが示されています。

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(注)感染症流行後(4-9月)に売上高が落ち込んだ企業を対象に分析。落ち込み幅が同程度の企業に比べて10-12月期時点の売上高が比較的回復している企業を「売上高回復企業」とした。

上図からわかるのは、コロナ禍をピンチだと感じている企業ほど、売上高回復企業の割合が低く、チャンスだと感じている企業ほど高いことです。

危機に強いのは、柔軟な組織風土

では、急激な環境変化をチャンスとして捉え、売上の回復につなげられる企業には、どのような特徴があるのでしょうか。それにはいくつか側面が考えられますが、「変化にスピーディに対応することができる、柔軟な組織風土」が、重要な要因の1つであること間違いないでしょう。

コロナ禍のように過去に例がなく、しかも急速に広がった環境変化においては、どのような経営の打ち手が最適なのかを正確に見通すことは、だれにもできません。

そうである以上、過去の経営データを演繹しながら今後の経営を推測し、その延長線上に会社の将来像を設定するという、連続的な経営意志決定のスタイルは適しません。

そこで、とにかく素早く試してみるという柔軟な意志決定、それがダメだったら別の方法を考えるという迅速な「トライ&エラー」により、最適な道を探ることがベターなのです。

『中小企業白書』2021年版においては、事業環境の変化に対して柔軟な対応ができていることと、売上高の回復との関連についての調査結果が掲載されています。それによると、柔軟な対応ができている企業ほど、売上高回復企業の割合が高いことが示されています。

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(注)1.感染症流行後(4-9月)に売上高が落ち込んだ企業を対象に分析。落ち込み幅が同程度の企業に比べて10-12月期時点の売上高が比較的回復している企業を「売上高回復企業」とした。2.感染症の流行による事業環境の変化への柔軟な対応がどの程度できていると考えているかについて聞いたもの。

また、同白書では「トライ&エラー」を許容する組織風土があるか別に、売上高回復企業の割合を示したデータも掲載されています。ここでは、「トライ&エラー」を許容する組織風土が強いほど、売上高回復企業の割合が高いことが見て取れます。

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(注)1.感染症流行後(4-9月)に売上高が落ち込んだ企業を対象に分析。落ち込み幅が同程度の企業に比べて10-12月期時点の売上高が比較的回復している企業を「売上高回復企業」とした。2.試行錯誤(トライアンドエラー)を許容する組織風土があるかについて聞いたもの。

危機に強い柔軟な組織風土を作るためには?

変化に対して柔軟に対応できる組織風土や、積極的にトライ&エラーを許容する組織風土であることが、「危機や変化に強い中小企業」となる条件であることがわかりました。

では、どのようにすればそういった組織風土を育むことができるのでしょうか? そのためには、日頃から常に次のような点に意識した経営を心がけることが必要です。

  • (1)価値観の枠組み(パーパスやビジョン)の共有と浸透
  • (2)組織が自律、自走するための経営情報共有
  • (3)心理的安全性が保たれる人事評価制度やオペレーション

(1)価値観の枠組み(ビジョンやパーパス)の共有と浸透

企業は日々の業務により利益を稼ぎ、社員は仕事をすることで給料という生活の糧を得ます。しかし、利益を稼ぎ生活の糧を得ること「だけ」を目的だと考えている企業では、長期間存続し成長していくことが難しいことは、これまでの歴史が示しています。

長期にわたって存続して成長を続け、高い利益を上げている企業は、必ずといっていいほど、自社がなんのために存在し、社員はなんのために仕事をするのかという「価値観の枠組み」を明確にしています。

それは「経営理念」と呼ばれることもあれば、「ビジョン・ミッション・バリュー」といった階層で示されることもあります。また最近では「パーパス」(存在意義)という言葉も一般的になってきました。

呼び方はなんであれ、「自社が大切だと考えていることは何か」という価値観の枠組みが社内で共有できていることは、柔軟で強い組織を作る上で、とても大切です。

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価値観が共有されていれば、行動の変動にも対応しやすい

たとえば、いままでAという行動をしていたのが、環境が変わり、Bという行動をしなければならないとなったときに、Aという行動をとること=自分の仕事と考えていると、「なんでBをしなければならないのか」という不満が生じるかもしれません。

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しかし、パーパスやビジョンが十分に共有されており、Aという行動はそのための手段であると理解されていれば、それがBに変わったところで、Bがパーパスやビジョンを達成するために役立つと理解されれば、スムーズにオペレーションを変更することができるでしょう。

そしてこれは、コロナ禍のような危機になったときに、急に理解させようとしても難しいでしょう。日頃から、価値観の共有を図り、なんのための会社の存在意義を意識に浸透させておくことが、危機にも柔軟に対応できる組織風土を作るのです。

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組織活性化や人材育成の進め方、よくある課題の解決方法については、こちらのコラムも参考にしてみてください。

(2)組織が自律、自走するための経営情報共有

社員が数名程度の小さい企業ならともかく、ある程度の規模になると、社長が各部門の業務をすべて把握していることは難しくなり、部門長となる幹部社員の存在が不可欠になります。変化に柔軟に対応できる風土を形成するためには、各部門がいわゆる「自律・自走できる組織」になっていることが必要です。

なぜなら、危機に際して各部門が部門計画や部門オペレーションを変更しようと思っても、いちいち経営トップの決定をまたなければ決定できないような組織では、意志決定に非常に時間がかかってしまうためです。

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組織の現状を正確に認識することが、自律・自走のための前提

また、各部門やその現場が自律的に変化への対応を考えられるようにするためには、先の価値観の共有とあわせて、業績・財務情報や会計数値の理解と浸透も非常に重要になります。

とくに部門長となる経営幹部は、経営トップと同様レベルで業績・財務の数値を理解し、数字をベースにした目標設定や業務改善を日頃から意識しなければなりません。変化に対応した業務改善をしようにも、その効果などを評価、計測するための会計数値への理解がなければ、対応方法が正しいのかを判断できないためです。

たとえば、製造業であれば、時間あたりの労働生産性、店舗であれば店舗ごとの1日平均の売上高など、どのような数値が重要になるのかは、業種業態によっても異なるので、一概にはいえませんが、それらの数字の変化が最終的な業績(たとえば月次の試算表)にどのように反映されるのかといった理解は必要になるでしょう。

そのために、最低でも部門長クラスの幹部社員は、会計数字と業務との関係についての理解と、最新の数値データの共有は欠かせないでしょう。

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ただし、(これも企業規模にもよりますが)現場の社員にまで会計数値の細目をすべて明らかにすべきかどうかは、ケースバイケースです。人件費率や役員報酬といった数字は知らせないほうがいいケースもあるでしょう。

いずれにしても、各部門が自社の現状を数値で正確に把握して、それの改善を常に意識する環境を日頃から作っておくことは、危機に際しても柔軟な対応を可能にする前提となります。

(3)心理的安全性が保たれる組織制度や評価制度

柔軟な組織風土には、失敗がつきものです。そのため、失敗をしないことではなく、失敗をしたらすぐに別のやり方に挑戦できること、つまり躊躇なく「トライ&エラー」を繰り返せることが大切です。「トライ&エラー」への許容度と、売上高回復に相関関係があることは、上のグラフでも示されているとおりです。

トライ&エラーを許容するためには、その組織に心理的安全性が担保されていなければなりません。心理的安全性が担保されている状態とは、「失敗をしてもそれが受け入れられるとわかっているので安心して挑戦できる状態」のことです。

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心理的安全性を担保する仕組みの必要性

経営トップが「どんどん挑戦しなさい」といいながら、その一方で失敗した社員を叱責したり評価を下げたりしているのでは、心理的安全性が保たれないため、社員が新しいアイディアを出したり、新しいことへ挑戦したりすることは難しくなります。

心理的安全性を高めるには、トップがその重要性を理解してメッセージを発するとともに、組織制度や評価制度の設計を見直すことも有効でしょう。

たとえば、管理者と部下、また社員相互が、信頼を醸成できるような「場」を組織的に設ける、また、人事考課制度において、挑戦が加点され、失敗が減点されないような制度設計をするなどの施策が一例です。

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信頼を醸成できる場づくりの例としては、管理者と部下であれば、1on1ミーティングを導入するなどです。また、社員相互でも、互いに現在どんな仕事をしていて、なにが課題になっているのかといったことを報告しあうミーティングの場を設けることは有効でしょう。

特にテレワークが導入されている場合は、そういった場を会社が意識的に設けないと、自然発生的に生まれることはありません。

1日の業務時間の最初か最後に15分の雑談時間をWeb会議で設定するとか、チャットシステムを導入するといったことが考えられます。

中小企業ではトップ自身の変化も重要になる

良くも悪くも、中小企業の組織風土は、経営トップである社長によるところが大きいのが現実でしょう。トップの発するメッセージや行動が、組織風土に大きな影響を与えます。

もし現在の会社が、柔軟性に欠けるような組織風土であるなら、それは社長自身の発想や行動に柔軟性が欠けているからかもしれません。

また、企業の組織風土は、創業以来の歴史の中で自然と形成されてきたものなので、一朝一夕に変えることできるようなものではありません。

場合によっては、社長が自らの考え方や行動を変えなければならないこともあるでしょう。しかし、自分を客観視することはかなり難しく、また、社内にも社長に対して「こうしたほうがいいですよ」と率直にアドバイスできる人材は、なかなかいないものです。

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まずは、部下から率直な意見を出してもらうための「ブレインストーミング会議」のような場を月に1回程度設けて、その場ではどんな意見を出してもよく、出された意見は絶対に否定しないといったルールを設けて、意見を聞いてみるのがいいかもしれません。

そういう「場」とルールが設定されれば、日頃は社長に対して意見をいいにくい部下でも、素直な意見を出しやすくなります。

もしくは、外部の専門コンサルタント会社などの力を借りることを検討したほうがいいかもしれません。

いずれにしても、自社を、危機に強い柔軟性ある組織風土に変革するなら、相応の時間と努力が必要になります。社長は「絶対に組織を変える」という強い意識を持ち、リーダーシップを発揮して進める覚悟が不可欠です。

まとめ

環境変化に対して柔軟に対応できる風土がある企業は、危機に対して強いだけではありません。会社が成長していくためには、現状の維持ではだめでつねになんらかの変化を求める必要があります。その意味で、平時における成長にも、柔軟な組織風土は有効に働くのです。

そのヒントとなる他社での取り組み事例を掲載したダウンロード資料を用意しましたので、自社の取り組みを考える際の参考にしてみてください。

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守田善紀氏の顔写真

取材協力

守田善紀(もりたよしのり)

みらいコンサルティンググループ大阪支社長。西日本地域を中心に、事業承継案件・資本政策案件に多数従事。金融機関主催の事業承継セミナー・勉強会、経営者向け・税理士向けセミナーなどの講師も多数行っている。

小谷野華氏の顔写真

取材協力

小谷野華(こやのはな)

みらいコンサルティンググループコンサルタント、MBTI認定ユーザー(Japan-APT正会員)。一般社団法人「すごい会議」の女性最年少認定コーチとして上場企業から中小ベンチャー企業まで様々な業種の目標設定や問題解決をサポート。コーチング技術を活用した「自律型」組織づくり支援やコミュニケーション研修等実施。

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記事執筆

中小企業応援サイト 編集部 (リコージャパン株式会社運営

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