コラム

2021.11.19 06:00

「事業再構築補助金」を活用して、事業環境の激変を乗り越える!

「事業再構築補助金」を活用して、事業環境の激変を乗り越える!
関連記事のお知らせを受け取る
問い合わせをする

この記事に書いてあること

新型コロナウイルスの突如の出現により、私たちの生活様式は大きく変化をせざるを得ない状況になりました。例えば、飲食店では対面での食事提供から、営業時間の制限の中でのテイクアウトへの追加対応となったり、航空や鉄道の業界では、利用客の減少で投資の見直しが生じ、航空機・鉄道向けの部品や材料の需要が大きく低迷したりと、企業の事業活動でも従来のスタイルからの変更を余儀なくされている例が枚挙に暇がございません。
新型コロナウイルスの影響を受ける中でも、新規事業の展開や業種・業態転換を試みようとしている経営者の皆様もいらっしゃいますが、先行きが不透明だけに、積極的な投資を進めにくいとおっしゃる方も少なくないです。
そこで、新型コロナウイルスで厳しい事業環境の中でも、事業の再構築を試みる企業の皆様に、補助金100万円から最大1億円までの補助が出るなど資金面や事業計画の策定の支援がある「事業再構築補助金」のご紹介をいたします。

事業再構築補助金とは

事業再構築補助金は、中小企業の事業再構築を支援することで、日本経済の構造転換も目指すために、新型コロナウイルスで売上減少などの厳しい状況にある中でも、思い切った事業再構築に意欲を有する中小企業、中堅企業、個人事業主の挑戦を支援する補助金となります。

「事業再構築」とは

事業再構築には5つの類型があり、いずれかに該当する必要があります。それぞれについて、簡単な事例とともにご紹介させていただきます。経済産業省の紹介サイトもございますので、こちらもご参照下さい。
事業再構築補助金事務局ホームページ
https://www.meti.go.jp/covid-19/jigyo_saikoutiku/index.html

第一類型:新分野展開

この類型は、「中小企業等が主たる業種または主たる事業を変更することなく、新たな製品等を製造等することにより、新たな市場に進出すること」となります。
新分野展開の例は、自動車向けのドライブレコーダー製造業者が、不要不急の外出の抑制で自動車向けの売上が減少したため、新たに需要の拡大が見込まれる医療用ライトなどの医療分野向け製品の製造に着手したり、宿泊施設を営んでいた事業者が、3密回避して宿泊を楽しめるキャンプ需要の増加に対して、新たにオートキャンプ場施設の経営を開始したりということが挙げられます。

この類型での申請には、3つの要件を満たすことが必要です。
第一に、製品等の新規性要件を満たしていることです。過去に製造等した実績がないこと、製造等に用いる主要な設備を変更すること、そして、従来の製品やサービスと比べて、定量的に性能又は効能が異なることが必要です。
第二に、市場の新規性要件を満たしていることです。従来の事業と衝突しないで、従来の事業の売上と新しい事業の売上がそれぞれ増加できることです。
第三に、売上高10%要件です。これは、3~5年の事業計画期間終了後、新しい事業の売上高が総売上高の10%以上となることとなります。

第二類型:事業転換

この類型は、「中小企業等が新たな製品等を製造等することにより、主たる業種を変更することなく、主たる事業を変更すること」となります。
事業転換の例は、観光バス事業を展開する事業者が、インバウンド需要の低下により収入が減少したため、新たに利用者が見込まれる高齢者施設向けの送迎サービスを開始したり、ビジネス関連の衣服品販売店を経営する事業者が、在宅勤務増加でビジネスウェアの売上が減少したため、既に実施しているフィットネス関連事業との相乗効果を念頭に、新たに健康・美容関連商品の販売店を展開したりするのが挙げられます。
この類型での申請も、3つの要件を満たすことが必要です。
第一に、製品等の新規性要件を満たしていることです。過去に製造等した実績がないこと、製造等に用いる主要な設備を変更すること、そして、従来の製品やサービスと比べて、定量的に性能又は効能が異なることが必要です。
第二に、市場の新規性要件を満たしていることです。従来の事業と衝突しないで、従来の事業の売上と新しい事業の売上がそれぞれ増加できることです。
第三に、売上高構成比要件です。これは、3~5年の事業計画期間終了後、新しい事業の売上高が、売上高構成比の最も高い事業となる計画を策定することが必要です。

第三類型:業種転換

この類型は、「中小企業等が新たな製品を製造することにより、主たる業種を変更すること」となります。
業種転換の例としては、農業機械のリース事業を営んでいたところ、新型コロナウイルスの影響により利用客が減少したため、農業に限らず多くの分野で利用が期待されているドローンの操作を学ぶための通信教育ビジネスを新たに運用開始したり、トラックによる輸送業を営んでいたが、飲食店向けの業務用食材等の需要の減退で輸送量が減少したため、これまでの事業で生産者と繋がりがあった食料を用いたメニューを共同で開発し、飲食店を開業するなどが挙げられます。
この類型での申請も、事業転換と同様の3つの要件を満たすことが必要です。
第一に、製品等の新規性要件を満たしていることです。過去に製造等した実績がないこと、製造等に用いる主要な設備を変更すること、そして、従来の製品やサービスと比べて、定量的に性能又は効能が異なることが必要です。
第二に、市場の新規性要件を満たしていることです。従来の事業と衝突しないで、従来の事業の売上と新しい事業の売上がそれぞれ増加できることです。
第三に、売上高構成比要件です。これは、3~5年の事業計画期間終了後、新しい事業の売上高が、売上高構成比の最も高い事業となる計画を策定することが必要です。

第四類型:業態転

この類型は、「製品等の製造方法等を相当程度変更すること」となります。
業態転換の例は、居酒屋を経営していたところ、営業時間の短縮要請などにより来客数が大幅に減少したため、店舗の一部を縮小し、非対面式の注文システムを活用したテイクアウト販売を新たに開始することや、美容室を経営していたところ、外出制限で利用客が減少し、売上が大幅に減少したため、店舗を縮小し、外出の機会を減らしたいと考える利用客や、移動が難しい高齢者向けに訪問美容サービスを新たに開始したりすることが挙げられます。
この類型での申請は、3つの要件を満たすことが必要です。

製品の製造方法の変更の場合には、
第一に、製造方法等の新規性要件を満たしていることです。過去に同じ方法で製造等していた実績がないこと、新たな製造方法等に用いる主要な設備を変更すること、定量的に性能又は効能が異なることが必要です。
第二に、製品等の新規性要件を満たしていることです。過去に製造等した実績がないこと、製造等に用いる主要な設備を変更すること、そして、従来の製品やサービスと比べて、定量的に性能又は効能が異なることが必要です。
第三に、売上高10%要件です。これは、3~5年の事業計画期間終了後、新しい事業の売上高が総売上高の10%以上となることとなります。

サービスの提供方法の変更の場合には、
第一に、製造方法等の新規性要件を満たしていることです。過去に同じ方法で製造等していた実績がないこと、新たな製造方法等に用いる主要な設備を変更すること、定量的に性能又は効能が異なることが必要です。
第二に、商品等の新規性要件又は設備撤去等要件を満たしていることです。過去に同じ方法で製造等していた実績がないこと、新たな製造方法等に用いる主要な設備を変更すること、定量的に性能又は効能が異なること、または、既存の設備の撤去や既存の店舗の縮小等を伴うものが必要となります。
第三に、売上高10%要件です。これは、3~5年の事業計画期間終了後、新しい事業の売上高が総売上高の10%以上となることとなります。

第五類型:事業再編

この類型は、「会社法上の組織再編行為(合併、会社分割、株式交換、株式移転、事業譲渡)等を行い、新たな事業形態のもとに、新分野展開、事業転換、業種転換又は業態転換のいずれかを行うこと」となります。
事業再編の例は、オフィス街で営業する弁当屋が、テレワークの増加により売上が低迷したため、吸収分割を行い新たに病院向けの給食などの施設給食業に着手したり、パルプ装置・製紙機械を製造している事業者が、新型コロナウイルスの影響により需要が低迷したため、新設合併を行い、新たにマスクなどの衛生製品の製造業を開始したりするなどが挙げられます。
この類型での申請は、主に2つの要件を満たすことが必要です。
第一に、組織再編要件を満たすことです。「合併」、「会社分割」、「株式交換」、「株式移転」、「事業譲渡」等を行うことが必要となります。
第二に、その他の事業再構築要件を満たすことです。「新分野展開」、「事業転換」、「業種転換」又は「業態転換」のいずれかを行うことが必要となります。

事業再構築補助金を申請するための主な要件

それでは、補助金申請に必要な要件を確認しましょう。

売上の減少

2020年4月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、感染症の感染拡大以前(2019年又は2020年1~3月)の同3か月の合計売上高と比較して10%以上減少しており、2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の合計売上高が、感染拡大以前の同3か月の合計売上高と比較して5%以上減少していることが要件となります。この「任意の3か月」は連続していなくともよいです。

事業再構築への取り組み

事業再構築とは、先述の「新分野展開」「事業転換」「業種転換」「業態転換」「事業再編」の5つのいずれかに該当する事業に取り組む必要があります。

認定経営革新等支援機関と事業計画を策定する

事業再構築に係る事業計画を認定経営革新等支援機関と策定することが必要となります。なお、補助金額が3,000万円を超える案件は金融機関(銀行、信金、ファンド等)も参加して策定することが求められます。なお、金融機関が認定経営革新等支援機関を兼ねる場合は、金融機関のみで構いません。
補助事業終了後3~5年で付加価値額の年率平均3.0%(グローバルV字回復枠は5.0%)以上増加、又は従業員一人当たり付加価値額の年率平均3.0%(同上5.0%)以上増加の達成を見込む事業計画が求められます。この付加価値額とは、営業利益、人件費、減価償却費を足した金額です。


事業計画に求められる要素
事業計画を準備するにあたって、求められる要素を纏めます。
まず、形式面では、A4サイズで15ページ以内、補助金額1,500万円以下の場合は計10ページ以内)でまとまるように作成して下さい。
次に、内容面では、第一に、補助事業の具体的取組として、現在の事業、強み・弱み・事業再構築で提供する製品やサービスなどをまとめましょう。第二に、将来の展望では、その成果の優位性・収益性、課題やリスクとその解決方法などを記載します。第三に、本事業で取得する主な資産で、単価50万円以上の建物、機械装置・システム等を整理記載します。

事業再構築補助金の内容

補助金の金額や補助率は中小企業と中堅企業の企業規模によって設定されています。

中小企業の補助額と補助率

通常枠と卒業枠という2つの枠があります。
通常枠では、補助額は100万円~6,000万円で、補助率は 2/3です。
卒業枠では、補助額は 6,000万円超~1億円で、補助率は2/3です。

卒業枠とは
400社限定の枠で、事業計画期間内に、①組織再編、②新規設備投資、③グローバル展開のいずれかにより、資本金又は従業員を増やし、中小企業者等から中堅・大企業等へ成長する中小企業向けです。

中堅企業の補助額と補助率

通常枠とグローバルV字回復枠という2つの枠があります。
通常枠では、補助額は100万円~8,000万円、補助率は 1/2(4,000万円超は1/3)です。
グローバルV字回復枠では、補助額は 8,000万円超~1億円、補助率は 1/2です。

グローバルV字回復枠とは
100社限定の中堅企業の特別枠で、以下の要件を満たす必要があります。
第一に、2020年10月以降の連続する6か月間のうち、任意の3か月の売上高が、コロナ以前の同3か月の売上高と比較して15%以上減少していることです。
第二に、補助事業終了後3~5年で付加価値額又は従業員一人当たり付加価値額の年率5.0%以上の増加を見込む事業計画であること。
第三に、グローバル展開を果たす事業であることです。

別枠での審査

通常枠の申請に、追加で条件を満たすと、別枠で審査されて不採択となった場合でも、通常枠で再審査を受けられるケースもあります。

大規模賃金引上枠(150社限定)
多くの従業員を雇用しながら、継続的な賃金引上げに取り組むとともに、従業員を増やして生産性を向上させる中小企業等を対象とした「大規模賃金引上枠」が新設されました。「大規模賃金引上枠」で不採択となったとしても、「通常枠」で再審査されます。

補助金は、従業員数101人以上の中小企業・中堅企業に対して、8,000万円超~1億円。補助率は、中小企業は2/3(6,000万円超は1/2)、中堅企業は1/2(4,000万円超は1/3)です。

緊急事態宣言特別枠(採択件数に限りあり)
令和3年の緊急事態宣言により深刻な影響を受けた中小企業等(緊急事態宣言に伴う飲食店の時短営業や不要不急の外 出・移動の自粛等により影響を受けたことにより、令和3年1月~8月のいずれかの月の売上高が対前年 又は前々年の同月比で30%以上減少している企業)については、 「緊急事態宣言特別枠」を設け、補助率が引き上げられます。「特別枠」で不採択となったとしても、加点の上、「通常枠」で再審査されます。

補助率は中小企業で3/4、中堅企業は2/3で、補助金は従業員数によって以下の通り設定されています。
5人以下の場合、100万円~500万円。
6~20人以下の場合、100万円~1,000万円。
21人以上の場合、100万円~1,500万円。

最低賃金枠(採択件数に限りあり)
最低賃金の引上げの影響を受け、その原資の確保が困難な特に業況の厳しい中小企業等を対象とした「最低賃金枠」が設けられ、補助率を引き上げられました。通常枠の申請要件に加えて、① 2020年10月から2021年6月までの間で、3か月以上最低賃金+30円以内で雇用している従業員が全従業員数の10%以上いること、② 2020年4月以降のいずれかの月の売上高(または付加価値額)が対前年又は前々年の同月比で30%以上減少していることが要件となります。なお、「最低賃金枠」は、緊急事態宣言特別枠に比べて採択率において優遇され、「最低賃金枠」に申請されて、不採択となった事業者については、通常枠で再審査されます。
補助率や補助金は、緊急事態宣言特別枠と同様です。
補助率は中小企業で3/4、中堅企業は2/3で、補助金は従業員数によって以下の通り設定されています。
5人以下の場合、100万円~500万円。
6~20人以下の場合、100万円~1,000万円。
21人以上の場合、100万円~1,500万円。

補助の対象となる経費の例

補助金の経費対象としては、本事業の対象として明確に区分でき、対象経費は必要性と金額の妥当性を見積書や相見積書などで証拠書類によって明確に確認できる必要があります。
経費の一覧を以下に纏めます。

・建物費(建物の建築・改修、建物の撤去、賃貸物件等の原状回復)
・機械装置、システム構築費(設備、専用ソフトの購入やリース等)
・技術導入費
・専門家経費
・運搬費
・クラウドサービス利用費
・外注費(製品開発に要する加工、設計等)
・知的財産権等関連経費
・広告宣伝・販売促進費(広告作成、媒体掲載、展示会出展等)
・研修費
・海外旅費(卒業枠、グローバル V 字回復枠のみ)


対象経費の詳細:事業再構築補助金 公募要領をご参照下さい。
https://jigyou-saikouchiku.jp/pdf/koubo001.pdf

補助の対象にならない経費の例

他方で、補助金の対象にならない費用もあります。
まず、一過性の支出が補助対象経費の大半を占めるような場合は支援対象にはなりません。
次に、汎用性があり、目的外使用になり得るもの(事務用のパソコン、プリンタ、タブレット端末、スマートフォンなど)の購入費は対象となりません。
費用対象とならない経費を以下に纏めますのでご確認ください。

・事務所等に係る家賃、保証金、敷金、仲介手数料、光熱水費
・フランチャイズ加盟料
・飲食、娯楽、接待等の費用
・不動産の購入費、株式の購入費

対象外経費の詳細:事業再構築補助金 公募要領をご参照ください。
https://jigyou-saikouchiku.jp/pdf/koubo001.pdf

補助金交付までの流れ

この補助金は、申請したら必ず受領できる助成金とは異なり、また、補助金は原則後払いで、審査が通ったからといって、すぐ資金が入るわけではないということをご確認ください。審査があり、先に支出をしたのちに、報告書の申請や検査などを経て、事後に補助金を受領するものとなります。
ただし、事前着手承認制度もあります。これは、公募開始後、事前着手申請を提出し、承認された場合は、2月15日以降の設備の購入契約等が補助対象とすることができます。その際には、設備の購入等に相見積など必要となったり、補助金申請後不採択となるリスクがありますので、ご注意ください。
以下に、申請から補助金が交付されるまでの流れを纏めます。

1.事業計画書を作成します。
 認定経営革新等支援機関と事業計画を策定し、作成します。
2.電子申請システムで申請を行う。
※「GビズID プライムアカウント」の登録を事前にお済ませ下さい。
3.審査結果の通知され、公表されます。事務局より「採択」または「不採択」の通知が届きます。「採択」となった場合、次に進めます。
4.補助金の交付申請手続きを行います。
5.交付決定通知書が届きます。
6.補助事業を実施します。期間中には進捗状況の報告を行います。
7.補助事業終了後に実績報告を行います。
8.事務局が確定検査を行います。
9.交付額の確定後に補助金を請求します。
10.補助金が支払われます

まとめ

新型コロナウイルスの影響で大きな経営環境の変化が求められる中、「事業再構築補助金」を活用して、資金面の負担を軽減させて、事業基盤を強化することも有効です。こうした事業再構築補助金のほかにも、補助金・助成金や融資制度など多数の政府支援策があります。
しかし、どの補助金や助成金が最適なのかなどお悩みになられる方もいらっしゃるかと思います。
「コロナ禍で活用できる、代表的な支援策をもっと知りたい」、「自分の会社に合った支援策が何なのか知りたい」、「それぞれの支援策の対象者や、融資額などを比較したい」という方は、『【2021年度版】コロナに負けない!中小企業向け支援策検討チャート』を確認してみては如何でしょうか?
新型コロナウイルス対応に役立つ代表的な支援策を種類別、支援金額別にまとめられており、目的に合わせて、どんな支援策がおすすめなのかをチャート式に選ぶことができます。プリントしてお手もとに置いておけば、いざというときの要件の確認にも役立ていただけますので、ぜひご活用ください!

小島 洋介(こじま ようすけ)

執筆者

小島 洋介(こじま ようすけ))

中小企業診断士・東京都中小企業診断士協会 城南支部 国際部 副部長
商学修士課程を修了以降、メーカーの海外営業に従事。中小企業診断士登録後は、きらりと輝く知的資産を生かした事業計画の立案支援を実施。創業・海外進出・補助金申請を力強くご支援中。

関連記事のお知らせを受け取る
問い合わせをする