コラム

2021.12.17 06:00

コロナ禍を乗り切る!財務基盤強化と経営戦略見直しのポイント

コロナ禍を乗り切る!財務基盤強化と経営戦略見直しのポイント 強い中小企業の作り方〜コロナで傾いた企業、傾いてない企業どこが違った?〜
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中小企業の財務基盤と感染症の影響を踏まえた経営戦略6の成功事例

中小企業の財務基盤と感染症の影響を踏まえた経営戦略6の成功事例

強い財務基盤を作り、新しい発想で経営戦略を見直すとは、具体的にどんな方法が考えられるでしょうか。異なる業務形態で、中小企業にも参考になるような6つの成功事例をまとめました。

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3回にわたり、「コロナ禍で傾いた企業と、そうではなかった企業」との違いを確認していく本連載企画。第3回は、「中小企業の財務基盤と感染症の影響を踏まえた経営戦略」を切り口として考察していきます。

新型コロナウイルスによる事業環境変化を乗り越えていくためには、なによりも継続的にキャッシュを生める強い財務体質が必要です。危機の時代でも傾くことがない強い中小企業は、まず自社の足元の財務状況を正確に把握し、その改善を常に図っています。

実際、新型コロナウイルス流行前から経営計画の定期的な評価や見直しを十分におこなってきた企業ほど、流行後にも売上高が回復している割合が高いということがわかっています。

いま、経営計画の評価や見直しを十分におこなうということは、いい方を変えれば、新型コロナウイルス流行前の損益構造を前提にしてそこに戻すという考え方ではなく、新しい収益構造を作っていくという発想で経営していくことに他なりません。

強い財務基盤の上で、将来のアフターコロナも見据えて事業戦略、経営計画を見直し、新市場、新規事業分野などへの戦略的な進出を模索することが、長期的な競争力の強化をもたらします。

財務の現状確認

新型コロナウイルスの流行は、広く経営への悪影響をもたらしましたが、各種助成金や緊急融資などの財政的な支援策が講じられたこともあり、いまのところは、中小企業の倒産件数が大幅に増加するような状況は免れています。

しかし、助成金等による支援は、いうまでもなく一時的なものです。融資にかんしてはさらに、元金返済と利払いの増加という形で、将来のキャッシュフローの低下要因にもなります。

それらの政策的な支援を受けるにしろ受けないにしろ、会社の基礎となる財務基盤を強化することは欠かせません。そして、財務基盤の強化のためにまず必要となるのは、現状を正しく把握しそこから将来を予測することです。

なにはともあれ、キャッシュの動向を常に把握しておく

財務にかんする数値には、損益計算書、貸借対照表に記載された数値から、それらを組み合わせて算出される経営指標まで、さまざまデータがあります。その中で、中小企業の経営にとって、特に重要性が高く第一に把握しておくべきなのは、いわゆるキャッシュ(現金、普通預金、当座預金など)の現状と将来を把握するためのデータです。

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「勘定あって銭足らず」という言葉を、一度は目にしたことがあるでしょう。計算上の「利益」がいくら出ていても、キャッシュがなければ従業員に給料を払うことも、仕入れ先に仕入代金を払うこともできないのです。キャッシュは企業の血液ともいうべきもので、その流れが止まったり足りなくなったりすれば、企業は死んでしまいます。そこで、キャッシュの動きの把握と改善とが、第一に重要となるのです。

資金繰り表

中小企業の経営者であれば、毎月の固定出費と、当月から12ヶ月後くらいまでの入金・出金の予定くらいはざっくりと頭の中に入っていることが多いでしょう。

キャッシュに十分な余裕がある状況なら、そのような把握でも特に困ることはありませんが、キャッシュに余裕がなくなると、細かい単位まで正確に把握しておかないと、「支払いが足りない」といった事故につながりかねません。

そこで必要になるのが、入金と出金の予定、およびキャッシュの残高の推移予定をまとめて正確に把握できるようにした「資金繰り表」です。

特に、手形を振り出している企業の場合、当座預金口座の残高不足により手形が不渡りになると「倒産寸前の会社」という認識がひろがり、事業に多大な悪影響が出ます。6ヶ月以内に2回の手形不渡りとなると、銀行取引停止処分となり「事実上の倒産」と呼ばれます。

また手形を出していなくても、仕入れ代金などの買掛金の支払いが約束した期日にできなければ、信用を失い、その後の仕入ができなくなるなどの影響を及ぼします。

業種にもよりますが、最低でも3ヶ月後程度までの正確な資金繰り表を経理担当者とともに作成しておき、常に最新のキャッシュの動きを把握しておくべきです。

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(注)1.業績や資金繰りの先行きについて、どの程度先まで管理しているか聞いたもの。「12か月超」「7~12か月後」及び「1か月後」「2~3か月後」と回答した企業はそれぞれまとめて集計している。

2.売上高経常利益率、自己資本比率は2019年時点のもの。

3.売上高経常利益率=経常利益÷売上高

4.自己資本比率=純資産÷総資産

上図は、『中小企業白書』2021年版記載の、業績・資金繰りの予測期間別に売上高経常利益率および自己資本比率の水準について見たデータです。

将来の資金繰りについて予測している期間が長いほど、「売上高経常利益率が高い」、また「自己資本比率が高い企業の割合が多い」と示されており、資金繰りの予測期間と企業の強さとに相関のあることがわかります。

キャッシュ・コンバージョン・サイクル(CCC)

資金繰りを良くしてキャッシュに余裕を持たせるためのコツとして、「入りは早く、出は遅く」という言葉を、目にしたことのある人も多いでしょう。

資金繰り表はキャッシュの現状を把握するために役立ちますが、その改善に役立つのが「キャッシュ・コンバージョン・サイクル:Cash Conversion Cycle」略して、CCC(シーシーシー)です。CCCとは、商品や原材料の仕入れに現金を支払ってから、それが売れて最終的に現金が回収されるまでの日数を示す指標です。

CCCは、「売上債権回転日数+棚卸資産回転日数-仕入債務回転日数」で計算され、その日数が短ければ短いほど、早くキャッシュ化できることを示します。

つまり、入り(売掛金の回収期間と在庫の滞留期間)が早くなるか、出(買掛金の支払い期間)が遅くなるかすると、CCCは短くなるということです。まず、現状のCCCを正確に把握し、どうすればそれを短くできるのかを考えることは、財務強化の基本です。

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CCCの計算式の各要素は、それぞれ次のように定義されます。

  • 売上債権回転日数=(売上債権÷売上高)×365日
  • 棚卸資産回転日数=(棚卸資産÷売上原価)×365日
  • 仕入債務回転日数=(仕入債務÷仕入高)×365日

では、以下の数値例を用いて計算例を見てみましょう。

  • 売上高25億円
  • 売上原価8億円
  • 棚卸資産2億円
  • 売上債権(※1)3億円
  • 仕入債務(※2)1億円
  • 仕入高5億円
  • (※1:売掛金残高の期中平均値など)
  • (※2:買掛金残高の期中平均値など)

各要素の日数は以下のようになります。

  • 売上債権回転日数=(3億÷25億)×365=43.8日
  • 棚卸資産回転日数=(2億÷8億)×365日=91.25日
  • 仕入債務回転日数=(1億÷5億)×365日=73日

あとは上記のCCC計算式に当てはめればいいだけです。

CCC=43.8日+91.25日-73日=62.05日

ここで、この62.05日という数字それ自体には、意味はありません。たとえば、昨期は70日だったものが今期は62.05日になっていれば改善している、とか、競合企業は50日であるので、競合よりも劣っているとか、そういった比較の基準として利用します。

また、CCCとは別ですが、ほぼ同じ意味の類似データとして、安定的な事業継続のために必要だと考えるキャッシュ水準が月商の何ヶ月程度と考えられているのかを、新型コロナウイルス流行の前後で比較したデータもあります。

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(注)月商の何か月程度かを聞いている。

上図を見ると、コロナ感染症の流行後は、それ以前より多くのキャッシュの備えが必要だと考えられていることがわかります。キャッシュを増やすためには、どのようにすればCCCを短期化できるかを考えることがポイントです。

売掛管理、棚卸は基本中の基本

資金繰り表にしてもCCCにしても、それを正しく作成するための基礎情報として、売掛金、買掛金、そして在庫の正確な把握が必要になります。しかし中小企業では、それが大雑把になっている場合も少なくありません。

売掛金については、管理を営業担当者に任せていると、長期間未回収となる滞留売掛金が生じたり、場合によって担当者自身が売掛金を把握していなかったりといったこともあるので、厳格に管理する仕組み化が必要です。

また在庫については在庫量にもよりますが、まず理論上(帳簿上)の在庫は日次レベルで正確に把握し、必要に応じて実地棚卸の頻度や精度を見直す(増やす)ことの検討が必要になります。

財務データ全般にかんしては、中小企業では先月分の試算表が今月の20日過ぎにならないと出てこないといったことはよくあります。それでも、試算表が毎月出ていればまだいいほうで、中には何か月も前の試算表しかないというケースも見受けられます。それでは、到底正確な財務状況の把握や、財務強化はできません。

理想的には、月の上旬には、前月の試算表が用意されて経営会議で確認できるように、経理担当者と顧問税理士とを交えて、体制の整備をしましょう。

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損益構造の変化を前提に、強い財務を目指す

次に、キャッシュ不足が生じないように注意をしながら、財務体質の強化を図るためのポイントを解説します。

基本的な考え方として「どうすれば新型コロナウイルス流行前の損益構造に戻せるのか」と考えるのではなく、「新型コロナウイルス流行前の損益構造を前提にしない」という、発想の転換が必要です。

たとえば、新型コロナウイルス流行前に10億円だった売上高が、8億円に落ちているとします。その場合、売上高を10億円に戻すことを考えるよりも、8億円でも利益が上がる事業構造への転換を考えるということです。

そのために必要なのは、生産性を向上させることです。

経営効率化の指標は、人時生産性

生産性を測るための財務指標にもいろいろあります。あまり指標の活用になれてない企業におすすめなのは、まず「人時生産性」を基準として用いることです。

人時生産性とは「付加価値/労働時間」で測られる指標です。付加価値は売上高から外部購入価値を差し引いたもので、正確に計算しようとすると少し複雑になりますので、大雑把に粗利益(=売上高-原価)と考えればいいでしょう。

たとえば、月の粗利益が1000万円、全従業員の総労働時間が1000時間だとすれば、人時生産性は1万円ということになります。

これを基準にして、10,500円、11,000円と向上させていくために、同じ労働時間でより粗利益の高い製品を製造するとか、あるいは、同じ製品を生産するためにより短い労働時間で済むように小売かをする、といった方法を考えるのです。

売上高10億円だった企業が、8億円でも利益を上げられるように人時生産性を高めれば、もしアフターコロナで売上高10億円に戻れば、以前以上の高収益企業になっています。

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財務基盤強化の次には経営計画の見直しを

足元の財務体質を確認、強化する体制の構築のあとに、あるいはそれと並行して取り組まなければならないのが、中長期的な経営戦略の見直しです。

上記の収益構造変化の話でも触れましたが、新型コロナウイルスがもたらした経営環境の変化は、一時的な景気変動などとは異なり、不可逆的な変化であり「元に戻る」という発想ではなく変化に応じた事業構造へと変えていく発想が必要だと思われます。

『中小企業白書』掲載の次図は、新型コロナウイルス流行の前の時点で、経営計画に対する定期的な評価や見直しを実施してきたかを確認したものです。流行前から経営計画の定期的な評価や見直しを十分におこなってきた企業ほど、流行後にも売上高が回復している割合が高いのです。

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(注)1.感染症流行後(4-9月)に売上高が落ち込んだ企業を対象に分析。落ち込み幅が同程度の企業に比べて10-12月期時点の売上高が比較的回復している企業を「売上高回復企業」とした。詳細は付注2-1-1参照。

2.感染症流行前時点における、経営計画の定期的な実績の評価・見直しが十分だったかについて聞いたもの。

また、次図は、新型コロナウイルス流行後の、経営計画の見直し状況別に、売上高回復企業の割合を示したものです。

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(注)1.感染症流行後(4-9月)に売上高が落ち込んだ企業を対象に分析。落ち込み幅が同程度の企業に比べて10-12月期時点の売上高が比較的回復している企業を「売上高回復企業」とした。詳細は付注2-1-1参照。

2.感染症流行を契機に経営計画を見直したかをそれぞれ聞いたもの。

「経営計画を見直した上で、計画を実行している」と回答した企業で、売上高回復企業の割合がもっとも高くなっています。新型コロナウイルスの影響度別に分類した「(2)同業他社と比較した感染症の影響別」では、感染症の影響が大きいと感じている企業では、経営計画の見直し・実行をした企業と、今後見直す予定の企業では、2倍以上の差がついています。

感染症の影響を大きく受けている企業こそ、スピード感を持った経営計画の見直しと実行が有効であることがわかります。

経営計画の見直しは、多岐にわたりますが、たとえば製品ラインナップが複数あるのなら、その生産比率や数量、事業部ごとの人員配置、また営業エリアや営業ターゲットなどを、機動的に見直すことが売上高回復に結びつくものです。

新規事業のとりかかりは既存事業の一部から

経営計画の見直しは、大きく分けて既存事業を軸とした拡張、強化と、新規事業分野への進出とがあります。『中小企業白書』には、新型コロナウイルスが流行する前の2019年に、中小企業が新たに進出を検討している成長分野が掲載されています。

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(注)1.複数回答のため、合計は必ずしも100%にならない。

2.新たに成長分野に進出を検討している企業数と進出を検討していない企業数の合計値(n=1,429)に対する回答の割合を集計している。

中小企業においても、「環境・エネルギー」や「AIIoT」が今後の成長分野として高い注目を浴びていることがわかります。しかし、これまでにその分野での事業経験がまったくない企業が、新規事業分野にいきなり進出することは、かなりハードルが高いといえるでしょう。

その場合は、それを事業テーマとするというより、まず既存事業のプロセスの中に「環境・エネルギー」や「AI・IoT」などの要素が採り入れられないのかを考えたほうがいいでしょう。

たとえば、プラスチックを使った製品を製造しているのであれば、それを生分解性プラスチックに変更するとか、営業管理工程の一部にAIを導入するといった活用です。

その上で、そういった代替や追加がうまくいったら、今度はその方法をパッケージ化して同業他社に販売する形で事業化するという方法もあります。

基板の弱い中小企業だからこそ「シェア」「共創」をキーワードに強くなる

多くの中小企業は、大企業に比べると経営資源(=人、モノ、カネ、情報)に余裕がないのが実態です。そのため、コロナ禍のような急激な変化が生じた時に、スピード感のある対応が難しくなります。そこで、日頃から財務基盤の強化を図ることも大切ですが、これからの時代にはネットワーキングによる「シェア」や「共創」という考え方も、とても重要になります。

これまではライバルだと考えられていたような相手とも手を組んで顧客や仕入れ先を「シェア」することで、より効果的なマーケティングや効率的な仕入を実施する方法があります。

あるいは、まったく事業分野の異なる企業と提携することで、新たな価値を「共創」することが可能になるケースもあるでしょう。自社では0から取り組むのでは時間がかかったり実現できなかったりする事業変革や新規事業も、他社などと組むことでスピーディに実現することが可能になります。もちろん、大企業と組んでその経営資源を活用しながら「オープンイノベーション」を図るのもその1つです。

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まとめ

どんなに小さな会社でも、これまで長く経営を続けてきた企業は、世の中に必要とされる価値を必ず提供してきています。苦況の時には、自社の持つ価値はなんなのかをしっかり見極め、それを時代に即した形にできないかを考えることが、ビジネスの活路を見いだす基本です。

他社がどのようにしてそれをおこなっているのか、本記事で採り上げた財務強化や、事業転換の取り組みにより、強くなった企業の事例を集めたダウンロード資料も用意しました。ぜひ参考になさってください。

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中谷仁氏の顔写真

取材協力

中谷 仁(なかたに まさし)

公認会計士/みらい創生監査法人 代表社員。2003年に中央青山PwCコンサルティング株式会社(現:みらいコンサルティング株式会社)入社。会計監査をはじめ、管理会計構築、IPO支援、内部統制(J-SOX)構築支援など会計を中心とした業務に従事。

眞船雄史氏の顔写真

取材協力

眞船 雄史(まふね ゆうじ)

税理士法人みらいコンサルティング 代表社員税理士。地域優良企業の事業承継や組織再編の提案から実行支援型コンサルティング業務に従事し、後継者育成持続的な成長に向けてサポートを行っている。

中小企業応援サイトロゴ

記事執筆

中小企業応援サイト 編集部 (リコージャパン株式会社運営

全国の経営者の方々に向けて、経営のお役立ち情報を発信するメディアサイト。ICT導入事例やコラム、お役立ち資料など「明日から実践できる経営に役立つヒント」をお届けします。新着情報はFacebookにてお知らせいたします。

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