コラム

2021.03.15 06:00

コロナ禍を生き抜くカギとは?商品を売る文脈を考える

第7回 坂口孝則の今伝えたい経済トレンド
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執筆者

坂口 孝則

未来調達研究所株式会社所属。経営コンサルタント。コスト削減・原価・仕入れ等の専門家として企業向けコンサルティングや講演を行い、日本テレビ「スッキリ」などテレビ・ラジオ等にも出演。著書は34冊を超える。近著に『未来の稼ぎ方 ビジネス年表2019-2038』(幻冬舎刊)など。

コロナ禍でも、発想しだいで売れる商品がある

みなさんは、飛沫感染防止ができる弁当箱を知っているだろうか。

飲食店でソロ客とソロ客の間にアクリル板を設置する取り組みは知っているはずだ。この弁当箱は紙でできていて、開くと大きくシールドが展開するようになっている。そうすると、アクリル板の代わりになる。これを使えば飛沫を遮ることができる。

これが売れている。なんという発想だろう。医療の専門家ではない企業も工夫次第で商品をアピールできる。怒られるかもしれないが、多額の開発研究費をかけなくても売れる商品は作ることができるのだ。

また2020年は片手で食べられるスナック菓子が大きく売れた。テレワークでパソコンの前に座っているビジネスパーソンを対象にしたものだった。左手でスナック菓子を握り、そして右手はキーボードの上にある。手を汚さずとも簡単にスナック菓子を口に入れられて、さらにはチャック保存も可能となっている商品がヒットした。これも、味や品質ではない。使い方の工夫だ。

以前、ハンコ企業が脱ハンコの流れに抗わずに、「手洗い練習スタンプ」として新たな商品を売り出したのは清々しかった。子供の手にハンコを押し、その印影が消えるくらい手洗いをしなければ雑菌が消えないと教えるものだった。これも同じく売り方を変えて、たくましく商品を売る工夫だ。

ちなみに、私がもっとも笑ったのは、単なるスノコを「テレワーク時代に、パソコンが熱くなって故障しないように下に敷くセパレーター」として売り出した事例だ。

しかし、なんであっても、文脈を考えるのが重要だ。子供用オムツのメーカーが「肌荒れしやすい乳幼児向けのオムツから得たノウハウ」と前面に出して、新たなマスク商品を喧伝していた。普通に考えれば、オムツは下半身に付けるもので、顔ではない。しかし、ここには商品を売り出す妙がある。

文脈に合わせて自社商品を定義しよう

ビジネスにはコンテンツ(商品の機能そのもの)ではなく、コンテキスト(文脈)も考えねばならない。たとえば、写真を撮影してカロリーを推計するアプリはあふれている。ただ、単にカロリーを計算するのではなく、それをコロナ禍と合わせてみたらどうだろう。

実際に、アイリスオーヤマはカロリーを計算してくれるIHジャーを発売した。コロナ禍でビジネスパーソンが巣ごもりするようになり、そこで運動不足が生じ、肥満が進むケースが多い。その文脈で、カロリー計算の意味を変換し、現代にマッチするよう自社商品を定義した。この自己定義がもっとも重要だ。

他の例もある。ロジクールは、もともと清潔感の保持のために丸洗いできるキーボードを販売していたが、現在ではコロナ禍の文脈で売れている。職場には共通のパソコンがあると思うが、CADなどのハイスペック仕様の場合、どうしても特定のパソコンを共同使用しなければならない。その際に共通のキーボードを使いたくないニーズは多い。

つまり、新商品や新サービスは必ずしも必要ではない。もちろんあったほうがいいけれど、現在求められているのは、文脈、意味づけ、さらにいえばストーリー作成なのだ。

単なるプラスチック製のハンガーを販売する業者がいた。アパレル業界の不振を見ればわかる通り、衣料が売れないので、合わせてハンガーが売れない。

すると、業者は何を考えたか。ハンガーを思いっきり小さくすることを考えた。同時に、なぜ小さくあるべきかを考えた。その業者は「コロナ禍におけるマスク専門ハンガー」として売り出した。その結果、バカ売れした。

ワークマンは、ずっと溶接工向けの耐火性のジャケットを販売していた。しかし、考えてみれば、コロナ禍で人気のキャンプやアウトドアに転用できる。ワークマンは焚き火でも耐えられるジャケットとして販売した。

コロナ禍は自社商品の文脈を考えるキッカケ

私たちは社会人になってから、目的を達成するために手段があると教育を受けている。だから、手段をいったん作り上げたあとには、特定の目的を達成する以外のことをなかなか思いつかない。

しかし、一つの商品が解決できる領域は意外に広く、販売者が思いついていないケースは多い。コロナ禍はもちろん最悪な出来事だったのは間違いない。ただ、自社商品を再考するタイミングでもあったのではないだろうか。

自社商品を、できればお子さんや、まったく異分野の友だちに見せて「これ違う使い方ないかなあ」と訊いてみよう。すると、バカげた、しかし想像もしなかった新たなアイディアを教えてくれるに違いない。

※本記事に掲載の会社名および製品名・ロゴマークは、それぞれの各社の商号、商標または登録商標です。

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