コラム

2021.03.15 06:00

事業承継計画書とは?事業内容を見える化して承継に備えよう

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事業承継計画書を書くための承継準備ワークシート

事業承継計画書を書くための承継準備ワークシート

シートを埋めていくことで、承継すべき内容を整理できるワークシートです。計画書作成や承継内容の整理にお役立てください。

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なぜ事業承継に計画書が必要なのか

「事業承継計画書」は、会社の現状、事業承継の課題、なにをどうやって承継するのか、なにを準備するのかといった事業承継の内容をまとめた書類です。

「事業承継計画表」は、事業承継の実施までに、会社や経営者、後継者がどのように変化していくのか、その予定を年次でまとめた工程表です。一般的には10年の表が用いられることが多いようです。

第1回の記事では、「だれに」承継させるのかという後継者選びの考え方について説明しました。今回は、「なにを」「どうやって」「いつ」承継させるのかについて整理し、準備するための「事業承継計画」について説明します。

事業承継は何年もの時間をかけて進めるものなので、なんらかの計画を策定して準備をしておかないと、つい後回しになってしまったり、やるべきことに抜けや漏れが生じたりします。

そこで計画を作り、それを随時確認しておくことで、着実な事業承継の準備が進められるのです。その事業承継計画作りに役立つツールが「事業承継計画表」や「事業承継計画書」です。

事業承継計画表と、事業承継計画書とは

事業承継計画表や事業承継計画書は法定の書類ではないので、こうでなければならないという決まったフォーマットはありません。

しかし、自分でゼロから作ることは難しいので、普通はすでに用意されているひな形を用います。そのひな形の中で、自分の会社の現状に即して、さほど重要ではないと思われる項目は省いてもかまいませんし、不足すると思われるところは、項目を付け足してもかまいません。

ひな形は、中小機構や各地の商工会議所などの公的団体がWebサイト等で公表しています。また、銀行・信用金庫や事業承継センターなどの民間支援会社でも、独自に事業承継計画書のひな形を用意しています。いくつかのひな形を入手して、自分で使いやすいと思えるものを使うといいでしょう。

たとえば、中小機構が用意している事業承継計画表、事業承継計画書のひな形は、以下のWebサイトからダウンロードできます。

中小機構Webサイト内「中小企業経営者のための事業承継対策」

ソフトとハードの両面をまとめよう

事業承継において承継すべき内容は、大きく「ソフト面」と「ハード面」とにわけられます。

ソフト面とは、経営において経営者が大切にしている考え方、企業理念やビジョン、ミッション、バリューといったものです。

ハード面とは、貸借対照表に計上されている資産、負債、純資産や、その他の経営資源(従業員や各種の無形資産など)です。

経営においては、ハード面の適切な運用、管理がなければ、売上や利益を出し続けることはできません。一方、ハード面を適切に運用、管理するためには、考え方の原理、原則といったソフト面が重要になります。

ハード面の承継においては、株式(経営権)の集中対策や、税金・納税資金対策といった面も関連してきます。つまり、相続とも密接に関連するので、相続と事業承継を一体で考えて計画を立てる必要があります。また、ハード面の多くは数値で表すことが可能のため、どうしてもハード面を中心に考えてしまいがちです。

しかし、いくらハード面を適切に承継したとしても、ソフト面を正しく伝えなければ、その会社が長期的には衰退してしまう可能性もあるでしょう。先代が築いた会社を、2代目、3代目が放漫経営やまちがった経営で潰してしまったり、経営危機に陥らせてしまったりした例は、枚挙にいとまがありません。

そうならないためには、ハード面とならんで、ソフト面をしっかり承継することが非常に重要なのです。

事業承継計画書にまとめる内容(1)前提状況

事業承継計画書に記載すべき内容は、親族関係、承継予定時期、会社概要などです。

親族関係

相続人が後継者だけなら相続の問題は発生しにくいですが、複数の親族(相続人)がいる場合は、後継者に株式を、いつ、どれだけ承継させるのかがポイントです。株式は、後継社長1人に集中させるほうが経営支配基盤は安定します。しかし、相続財産の中心が株式である場合は、他の相続人に対する配慮が必要になります。

また後継者に株式を移転する際には、適切な評価額で売却する、生前贈与する、相続するといった方法があり、それぞれ課税関係が異なりますし、必要な資金も異なります。

承継予定時期

自分が何歳のときに承継させるのか、その年を想定しておく必要があります。承継予定時期が明確になっていないと工程表である事業承継計画表は作成できません。

事業承継計画表では、株式をいつ、どれだけ移転するのかが重要になります。議決権の過半数を後継者に譲渡してしまえば、現社長ではなく後継者が経営支配権を持つことになるので、移転のタイミングも重要です。

会社概要

資本金などはもちろん、創業の経緯、沿革などを後継者にきちんと伝えていないことは、意外とよくあります。歴史をしっかり伝えることは、ソフト面の承継という点で重要なポイントになります。

事業承継計画書にまとめる内容(2)経営者の想いと、後継者の想い

これが、先に述べたソフト面です。どのような理念で会社を経営してきたのか、自分なりの言葉でまとめます。

経営理念や、ミッション、ビジョン、バリューといった言葉でまとめているのなら、単にそれを書くだけでは無く、どうしてそれが生まれたのか、なぜそれを大切だと考えているのか、背景や理由もあわせて書いておくといいでしょう。

また、後継者にこういうことを心がけて経営をしてほしい、こういうところに気をつけて経営をしてほしいといった、より具体的に落とし込んだ注意などを挙げていってもいいでしょう。

一方、その経営者の想いに対して、後継者がどう理解したのか、どう応えるのか、後継者の気持ちや決意をあわせて書いておくことも必要です。

ソフトの面の承継内容については、日頃から社長と後継者とが密にコミュニケーションを取って、話し合っていれば、ある程度伝わっているものです。

しかし、実際には、経営理念や想いといったことを、きちんと話している社長は少ないものです。親子だからこそ、そういうことを面と向かって話すのが難しいということもあるでしょう。そのため、書いて伝えることが有効になるのです。

事業承継計画書にまとめる内容(3)事業の現状分析と将来予測

ハード面の中心になるのは、事業の現状分析と将来予測です。

事業の現状分析には、さまざまな方法論(フレームワーク)がありますが、よく使われているのが、分析対象を内部環境と外部環境とにわけて、それぞれ「強み」と「弱み」、「機会」と「脅威」を確認する「SWOT分析」です。

それらの要素をまとめてから、機会と強みを活かして、会社が成長していくための課題を抽出、設定します。その課題は、現社長の代で解決できるものもあれば、後継社長に引き継いで解決してもらうものもあるでしょう。

いずれにしても、会社の現状と課題を「見える化」して、後継者に理解してもらうことが目的です。それほど厳密に考えなくても、社長が気付く範囲でまとめればよいでしょう。少し難しいかもしれませんが、ぜひトライしてみてください。

一方、業績推移については、顧問税理士の協力も得ながら、売上や利益の長期推移を予測します。そこから、社長退職時の退職金の設定や、課税対策もある程度考えていきます。

アクションプランで、事業承継計画書を活用しよう

事業承継計画書をまとめることで、伝えたい想い、会社の現状と課題、なにをいつ承継するのかといったことが「見える化」できます。

次に、その見える化された情報を活用して、承継のためのアクションにつなげます

仮に、新規顧客の獲得が課題として抽出されたとします。その課題の達成のためのアクションプランを策定するのです。たとえば、事業承継が予定されている年までに毎年の新規獲得数を◯件増やしていく、といった具合です。そして、そのプランを、社長と後継者が併走しながら実行していきます。

これは、社長がサポートしながら後継者が実際に計画を実現させていくことで、社長の理念を実地で経験し、経営者としての実力をつけていくOJTになります。また、課題を達成することが、いわゆる経営の「磨き上げ」となり、承継される会社の魅力を上げていきます。

事業承継計画書は、作成して会社の現状や事業承継の準備を「見える化」するだけでも、役に立つツールですが、このように会社を磨き上げるため、後継者の経営者教育をするためのツールとしても使えるのです。

まとめ

きちんとした事業承継計画書をいきなり作ることは難しいかもしれません。その場合は、事業承継に関して思いついたこと、伝えたいことなどを日記のような形でメモしておくだけでも、十分に役立ちます。

それが1年分、2年分とたまってきたら、改めて事業承継計画書に落とし込んでもいいでしょう。また、その日記をそのまま後継者に渡して読んでもらうだけでも、大いに気持ちが伝わるはずです。

まずは、このようなやりやすい取り組みからはじめてみるのも、1つの方法です。

事業の価値や課題が具体的に思いつかない人のために、シートを埋めていくことで承継すべき内容を考えられるワークシートをご用意しました。ぜひ無料でダウンロードし、事業承継計画書の作成にお役立てください。

文:編集部

石井照之氏の顔写真

取材協力

石井照之(いしい てるゆき)

2018年3月より事業承継センター株式会社取締役。事業承継士と中小企業診断士の資格を活かして事業承継コンサルティングと後継者育成、セミナー等を数多く実施。寄り添って一緒に悩みを解決する、伴走型支援を心がける。

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