コラム

2021.03.12 06:00

後継者に悩む方、必見!10年前から始める事業承継準備のポイントとは

HOW TO 事業承継 後継者に悩む方、必見!10年前から始める事業承継準備のポイントとは
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時系列で確認!事業承継準備フローチャート

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子が成長してからのプレ教育から、承継の10年前から直前までの準備、承継前後といったフェーズごとに、準備しておくべきポイントを時系列順にまとめました。お手元に置きながら事業承継の準備にお役立てください。

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中小企業の事業承継の現状

多くの中小企業を悩ませる、後継者不在問題

現在、多くの中小企業が後継者不在で悩んでいます。

たとえば、帝国データバンクによる「全国企業後継者不在率動向調査」(2020年)によると、後継者が不在の企業は65.1%に上ります。また、東京商工リサーチによる「後継者不在率調査」(2020年)では、後継者不在率は57.5%でした。

対象となる企業が異なるので多少の差はあるものの、少なくとも半分以上の企業において、後継者が決まっていないというデータとなっています。

約60%が親族承継を候補として予定。しかし実際は…

両調査ともに、後継者候補が決まっている企業における、後継者候補のタイプの割合では、同族承継(子、配偶者、その他親族)が約60%を占めています。残りは内部昇格(社員、役員などによる承継)と、外部招聘、M&Aなどです。

その一方、実際に承継をした企業に対して帝国データバンクが調査したデータでは、同族は34.2%、内部昇格が34.1%と、同族の割合が大きく減ります。後継者候補に占める同族との割合に大きな差が生じる理由の詳細は不明ですが、同族の承継を予定したものの、なんらかの事情により同族が承継できなくなり、内部昇格などをせざるを得なくなる企業が多いと推測されます。

これらの調査からも、中小企業を存続させるためには、早めに事業承継について考えておくこと、また、後継者候補を子などの親族(同族)にしたい場合、確実に承継させるための対策が必要になるということがわかります。

上記を踏まえて、今回の記事では、主に子を後継者候補として予定しているケースを中心に、確実に事業承継を成功させるための準備についてまとめます。さらに、親族外承継(内部昇格、外部招聘等)のポイントについても簡単に触れます。

親族内承継は10年前から準備を

親族承継は夫または妻の経営する会社を配偶者や兄弟姉妹が引き継ぐケースもありますが、そのような場合でもいずれは子世代へと引き継がれます。そこで、今回は「親の会社を子が引き継ぐ」こととして説明します。

親族承継は相続と切り離せない

親族承継において特徴的なのは、事業承継が相続と切り離せないということです。

企業経営者をしている親は、経営者であると同時に大株主であり、その保有株式が主要な相続財産となることが一般的です。

また、経営支配権を確保するためには、一定割合以上の株式の保有が必要なので、安定した事業承継のためには、承継候補者の子に株式を集中して相続または生前贈与しないといけません。

ここで、子が複数いる場合など、事業承継者(次期社長)以外に相続人(遺産を受け取る権利がある人)がいる場合、相続において事業承継者以外から不満が出ないことと、安定した経営支配権のために株式を集中させることを、両立させなければならないということです。

その具体的な方法はさまざまに考えられますが、「長男だから会社を継ぐのが当たり前」といった固定観念にとらわれた考えだと、相続人の間で不公平を生み、それがいずれ親族内での争いの種になりかねないという点には十分注意する必要があります。

後継者候補の選定、育成の初期の段階から、「なぜ他の子でなく、この子に承継させるのか」「他の子にはどのように納得してもらうか」を、事業承継面と相続面の両方からしっかり考えておくことが必要だということです。

事業承継には時間がかかる

一般的に、親族内承継には10年程度の時間がかかるとされています。たとえば、中小企業庁が作成している事業承継計画書のテンプレートなどを見ても、10年分の計画表が記載されています。

たとえば、いま社長の自分が60歳で、子が30歳だとするなら、自分が70歳、子が40歳になったときを見据えていまから準備を始めるということです。

では、10年かけて何をするかといえば、1つは後継者教育、もう1つは会社の磨き上げです。

なお、事業承継に時間がかかるということは、その準備期間に現社長に不測の事態が発生する可能性もあることを意味します。

現社長が事故などで万一の事態になった際、遺された親族や社員が混乱しないためにも、その後の事業承継についての考えをまとめた遺言書を書いておくことをお薦めします。

後継者教育は、長期、短期の2ステップでおこなう

後継者教育には、経営者としての一般的に必要とされる資質を磨いていく長期的教育と、その会社の経営のことを学ぶ短期的な教育の2種類があります。

長期的に教育して育てていかなければならない資質もいろいろありますが、もっとも重要なのは「経営者マインド」と「お金の能力」です。

・後継者に身に付けさせる「経営者マインド」

会社は、株主、経営者、従業員という3種の異なる立場の人によって構成されています。その成り立ち方や、その中で経営者が果たすべき役割は何かということを、しっかり理解することが何よりも重要です。

それを理解させるためには、従業員と同じ仕事をさせていてはいけません。

たとえば、小さい企業で、従業員が休日出勤ができないときなどに、社長が後継者候補の子に「悪いけど、日曜に取引先に行ってくれないか」と頼んでしまうことがあります。社長としては従業員に頼むよりも、子に頼みやすいので、ついそういうことをしてしまうのですが、そういうことは止めたほうがいいということです。

それよりも、どうすれば休日に仕事をしないで済むようになるか、あるいは、人をうまくやりくりして手当できるようにするかを考えさせるといった、経営者目線の仕事をさせるべきです。

経営者マインドとしてもうひとつ欠かせないのが「うちの会社は何で儲けているのか」つまりビジネスモデルを理解することです。ただし、ビジネスモデルの理解は会社の磨き上げとセットになっています。

・後継者に身に付けさせる「お金の能力」

会社経営は、究極的にはいかに継続的にお金を生み出し続けられるかにつきます。そのためにも、お金に対する能力は非常に重要です。また、中小企業では融資を受ける際の個人保証の問題もあるので、お金の能力が低い=信用力が低いとういうことは、それだけで問題となります。

個人的なお金の管理、計画的な使い方といった点から、企業会計や税金などの基本的な知識まで、幅広いお金の能力を身に付ける必要があります。

短期的には、経営会議に参加させて、経営的な意見を身に付けさせる

承継が間近(2~3年後に)になってくるにつれて、経営マインドやお金の能力といった一般的な能力に加えて、「その会社の経営者」としての力を付ける、短期的な教育も重要になります。

これは、経営会議に参加させて意見を述べさせるのがもっとも有効です。たとえば、売上や利益の推移についてどう判断するのか、どのような施策で改善すればいいのか、といった点です。

最初のうちは、まったく見当外れなことしか答えられないのが普通ですが、半年から1年も続けるうちに、ある程度しっかりした意見を身に付けるようになってきます。

その際に、どうしても甘くなりがちな親子だけで会議をするのではなく、第三者、たとえば他の役員や、外部のコンサルタントなどが入っていることも重要です。

1~2年前からは、世代交代に向けた社内整備を

1~2年くらい後には事業承継を実現させるという直前期になったら、社内外の環境整備も必要になります。特によく問題になるポイントは、以下のような点です。

現社長と同世代の親族役員などは、現社長と同時の引退を図る

中小企業では、社長の兄弟や親戚などが役員になっていたり、あるいは顧問などの名目で在籍したりしていることはよくあります。多くの場合は、実務を担っているのではなく、名誉職的な立場での在籍です。

後継経営者からすると、そういった親族役員などは、親族内の関係としては目上の人となるので、意見も言いにくく、しかも実務的に重要な役割を担っていないとなると、単なる「目の上のたんこぶ」に感じることがあります。

現社長は、事業承継で自分が引退する際に、そういった親族役員などにも退職金を支払い、同時に辞めてもらうように準備をしておくべきでしょう。

もし、その親族役員が資格などの面で、業務上不可欠な存在である場合は、現社長と一緒にいったん退職してもらって、後継社長のもとで再雇用して、関係性をはっきりさせる方法もあるでしょう。

親族外のベテラン社員、役員などへの対応

従業員の中にも、創業当時から働いているベテラン社員が在籍していることがあるでしょう。たとえば、優れた技術を持つ熟練工で、しかも後継社長より年上となると、後継社長にとっては、どうしても遠慮するような部分が生じて扱いにくいということもありえます。またベテラン社員から見ても、後継社長を軽く見るような面がないとも限りません。

この場合、重要なのは事業承継の前に、現社長が礼を尽くして「後継社長をよろしくお願いします」と頭を下げることです。

長く会社に勤めてきたベテラン社員は、多かれ少なかれ現社長を尊敬し、敬愛しているはずです。その社長が頭を下げてそのように頼めば、それに嫌な気持ちを持つ人はまずいません。また、長く一緒に働いてきた仲だからこそ、面と向かってそう伝えることに少し気恥ずかしい感じがあるかもしれません。しかし、言葉に出して伝えることが非常に重要です。

さらに、何らかの役職に就かせるなど昇進を図ることも必要です。こういった処遇をしておけば、後継社長になっても、ベテラン社員は協力的に働いてくれます。そして、現場で力を持つベテラン社員が後継社長に協力してくれれば、その下で働く中堅、若手社員も自ずと後継社長を認めるようになります。

後継者のための人材採用・育成

後継社長と同世代で、その「右腕」となって支えてくれるような経営幹部候補を、後継者候補が決まった段階からなるべく早く、遅くとも事業承継を予定している時期の3年くらい前までには採用し、育成しておくことも重要です。

そのような人材を後継社長が自分で採用、育成していくことは時間もかかり、難しい面があるので、現社長のうちに、可能な限りその準備を進めておくことが必要です。

親族外承継の基礎

以上、親族承継を前提に話をしてきましたが、親族に承継する者が見つからない場合は、他の手段を準備する必要があります。

親族外の承継には、

  • 社内承継(役員、社員の内部昇格)

  • 社外からの経営者の招聘

  • M&A(会社または事業の売却)

の3通りがあります。また、いずれの方法も不可能な場合は廃業を検討しなければなりません。

一般的に、社内承継→社外からの承継→M&A→廃業の順で考えていきます。なお、本記事は承継をテーマとしていますので、廃業についての説明は割愛します。

社内承継のポイント

当然ですが、まずは役員など経営幹部の中から候補を探します。普段はそんな素振りを見せていなくても、面と向かって話してみると、意欲を示すということはよくあるので、丁寧に話すことが重要です。

経営幹部の中に候補が見つからなければ、一般社員の中から探します。

よく、「うちの社員は現場での仕事はできるが、経営をまかせられる人間はいない」と考えている経営者がよくいます。しかし、実際には、やる気のある人間に、先に述べたような後継者教育を実施すれば、多くの場合、後継者として育ちます。

一般社員の中でも、いつもみんなの面倒を見たり、意見のまとめ役になったりするリーダー的な存在が必ずいるはずです。そういう人に白羽の矢を当てて、相談してみるといいでしょう。

社内承継の場合、やる気のある人材が見つかっても、株式の買い取り資金や、会社借入金の保証の引き継ぎなど、資金面が問題になることがよくあります。

しかしほとんどの場合、株価の引き下げ策を講じる、会社から資金を貸し付ける、あるいは、事業承継ファンドなどの協力を得ながら承継スキームを組むといった形で、技術的に解決可能です。ただし、専門知識が必要になるので、事業承継を専門としているコンサルタントなどのアドバイスを受けたほうがいいでしょう。

社外からの招聘のポイント

1つは、経営人材を紹介してくれる人材紹介会社などがあるので、そういったところを活用するのが1つの方法です。

ただし、ある程度の規模の中堅企業ならともかく、規模が小さい中小企業の場合は、なり手は見つかりにくいかもしれません。また、紹介されてくるのがどういう人物かわからないため、1年くらいは役員などとして働いてもらって、それから正式に決めるなど時間がかかります。

もう1つは、地元の同業他社、あるいは仕入れ先、販売先などの上流・下流の取引先に、適切な人物を紹介してもらう方法です。たとえば、長年取引してきた仕入先の役員がスピンアウトしてきて、後継社長に就任するといったケースもあります。この場合は、その会社や現社長のことをある程度知っているので、スムーズにまとまりやすいというメリットがあります。

M&Aのポイント

社内承継も、外部からの経営者招聘も難しければ、M&Aを検討します。M&Aにも、株式の売却、事業の売却、会社合併など、さまざまな方法があります。

実際に売れるのか、売れるとして対価はどれくらいになるのか、従業員の雇用は維持されるのかといった点は、会社の状況により異なります。

各都道府県に設置されている公的支援機関の事業引継ぎ支援センター、あるいは、民間のM&A仲介会社などに相談をすると、上記のような点について目安を教えてくれます。

後継者の目処がまったく立たず、廃業するしかない場合、設備撤去などで数百万円の廃業費用がかかることもあります。そういった場合、M&Aでたとえ「0円」で引き取られたとしても、数百万円が浮くことになります。

そういう観点からも廃業を検討するなら、その前にまずM&Aを検討したほうがいいでしょう。

まとめ

長い間事業を続けてきた会社が後継者不在により休廃業となるのは、社長にとっても、社員にとっても、また地域経済にとっても大きな損失です。

そのような事態を避けるためにも、ぜひ早めの承継準備をして、確実な事業承継を目指しましょう。

現社長と後継社長がやるべきことを時系列にまとめた、フローチャートを配布しています。ぜひ無料でダウンロードし、お手元で進め方を確認しながら、着実に事業承継準備を進めてください。

文:編集部

内藤博氏の顔写真

取材協力

内藤博(ないとう ひろし)

一般社団法人事業承継協会代表理事。事業承継センター株式会社取締役会長。中小企業診断士、事業承継士、事業承継プランナー。単なる相談にとどまらず、家族会議への参加、親子間のコミュニケーション調整もおこなうなど、人間味があふれるコンサルティングスタイルに、根強いファンがいる。著書に『いちばん優しい事業承継の本』(共著、税務経理協会)、『会社の終活読本』(共著、日刊工業新聞社)、『これから事業承継に取り組むためのABC』(共著、税務経理協会)。

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