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コラム
2021.01.29 06:00
中小企業でも環境を無視した経営はNG!「あるある」から課題を見つけよう
この記事に書いてあること
環境に配慮した経営のためには?課題がわかるチェックリスト
環境経営の経営課題を見つけるチェックリストを無料配布中。当てはまる「あるある」にチェックを入れるだけで、会社が抱えている問題のタイプを診断できます。手もとに置いて、課題解決の見直しにも。
あなたの会社はいくつ当てはまる? あるあるチェック
「あるあるから見つける経営課題」シリーズ、第8回のテーマは「環境経営」です。
「ESG」「SDGs」といった言葉が毎日のように新聞紙上に登場する昨今、中小企業の経営者も、環境への配慮が否応なしに意識されるでしょう。
しかし「目の前の事業で手一杯で、そこまで考える余裕がない」「何かしたいけれど、何から手を付ければいいのかわからない」ということも…。
そこで今回は、中小企業が環境に配慮した経営に取り組むためのヒントをお伝えします。
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自社の事業とは別に、脱炭素を考えなければならない
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再生エネルギーを購入しているが、CO2削減量は把握していない
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環境汚染防止の法規制を把握していない
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リサイクル素材を使うべきかどうか迷っている
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省エネ活動はやり尽くして、もうできるところはないはず
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工場のどこからどんな廃棄物がでるのか記録していない
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何年も使っていない化学物質が倉庫に保管されている
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廃棄物は処理業者に出せばOKだと思っている
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製造工程の改善指標はQCDだけで十分
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化学物質の管理表を作成していない
放置はダメ絶対!会社のピンチにつながります
「うちの会社は5つ以上当てはまるぞ」と思ったら、あなたの会社は環境経営に課題あり!(1つでも当てはまるものがあれば要注意です。)
環境経営というと、大手企業だけのもので、中小企業には関係ないと思われる方もいるかもしれません。
しかし、現代では中小企業でも環境を意識した経営が消費者や取引先から求められることが増えており、避けては通れない課題になっています。
業種や業態によって異なる面もありますが、自社でできる取り組みからスタートしましょう。
脱炭素(CO2削減)活動に問題があるタイプ → エネルギー消費を「見える化」して、多面的にアプローチしよう
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自社の事業とは別に、脱炭素を考えなければならない
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再生エネルギーを購入しているが、CO2削減量は把握していない
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省エネ活動はやり尽くして、もうできるところはないはず
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製造工程の改善指標はQCDだけで十分
私たちの日々の暮らしの中でも、異常気象を実感することが増えました。その原因の1つと考えられる地球温暖化は、石油や石炭などの化石燃料の使用によって排出される温室効果ガス(二酸化炭素など)の増大が原因とされます。
そのため、社会全体で化石燃料の利用から脱却する「脱炭素社会」へ向けた動きが進んでいます。
中小企業において脱炭素に向けた活動について考える際、事業とは別のボランティア的な活動として考えるのではなく、自社の事業と結びつき売上に貢献する活動であることが理想です。
たとえば、再生可能素材関連の事業を直接おこなうことや、再生可能エネルギーを利用することで新規の顧客を獲得するといったことです。
しかし、そういった取り組みを開始しても、売上に結びつけるには時間がかかるかもしれず、理想通りにはいかないことも多いでしょう。
そこで、まず「省エネ」の見直しから始めることがやりやすいでしょう。省エネは電力消費削減によって脱炭素の推進に結びつくとともに、自社においては費用削減による利益率向上の効果もあります。
再生可能エネルギー(グリーンエネルギー)の利用も悪くないことですが、それによって電力使用量が減らない、あるいは増大してしまったりしては本末転倒です。
製造業などでは、すでに省エネ活動に取り組んでいる会社も多いと思いますが、その取り組みを細分化、見える化することで、改善できる部分はたくさんあるのが普通です。
たとえば、エリアごと、設備ごと、時間ごとなどに細かく電量使用量を把握し、無駄を削減すること、製造工程におけるエネルギーロスを把握・改善することなどです。
環境汚染・環境悪化防止対策に問題があるタイプ→汚染防止の規制や法律を把握し、化学物質は管理を徹底しよう
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環境汚染防止の法規制を把握していない
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何年も使っていない化学物質が倉庫に保管されている
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化学物質の管理表を作成していない
自社が外部環境に直接悪影響を与える可能性のあるものとしては、排気ガス、排水、騒音・振動、化学物質などがあります。
これらを適切に管理しないことで環境に悪影響を与える行為は、環境負荷という観点だけではなく、違法行為になる場合もあり、また、レピュテーション(評判)リスクの点からも、絶対に避けたいところです。
しかし、中小企業においては、そもそもどんな法規制があるのかといったことを正確に把握できていない場合もあります。
たとえば、化学物質管理については、毒物及び劇物取締法、特化則(特定化学物質障害予防規則)、有機則(有機溶剤中毒予防規則)、PRTR法(化学物質排出把握管理促進法)、などの諸法規、諸規則があります。
化学物質を扱う中小企業でも、これらのすべての内容を正確に理解している経営者、担当者は少数だと思われます。そのため、知らないうちに違法状態となっている場合もあります。
そのような状態になる理由として、化学物質の管理が適正におこなわれていないということがあります。足りなくなったらその分を補充するといったやり方で、計画的に在庫量を管理することをそもそもしていない場合もあります。
また、以前は使用していたがいまは使用していない化学物質を倉庫にしまい込んだままにしていて、何がどこにあるのかさえ正確にわからなくなっていることも、中小企業でよく見られます。こういった状態は環境汚染への潜在的リスクです。
まず、保管している化学物質、素材の在庫管理表を作成し、その種類や在庫量、保管場所などを明確にすることから着手するとよいでしょう。
循環型社会への適応に問題があるタイプ → アウトプット(廃棄)の把握と見直しをしよう
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リサイクル素材を使うべきかどうか迷っている
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工場のどこからどんな廃棄物がでるのか記録していない
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廃棄物は処理業者に出せばOKだと思っている
廃棄物を減らし、資源を効率的に活用して、将来の長期にわたる持続可能性を目指すのが循環型社会です。
企業においては、インプット段階、たとえば製造に使用する原材料などリサイクル素材を使うという側面と、廃棄物の排出削減やリサイクルというアウトプットの側面があります。
インプット面では、製品によっては、リサイクル原材料では製造に適さない場合や、製法・工法自体の変更などが求められることもあり、中小企業では対応が難しかったり、時間がかかったりすることもあります。
それに対してアウトプット面の施策は取り組みやすいので、まずそちらから始めるのがいいでしょう。
この場合、会社全体での廃棄物量を減らそうとしても、実現はなかなか難しいことがあります。そこで、廃棄物の発生元を細分化、見える化することからスタートします。
つまり、部門や工程ごとの廃棄物の種類、量、排出タイミングなどを把握して、それぞれの部門や工程、タイミングごとに削減可能な部分がないかを検討します。
なおその際、MFCA(マテリアルフローコスト会計。製造プロセスにおける原材料やエネルギーなどのマテリアルのロスを、会計的に見える化する原価計算の手法)といった考え方を活用するのも有効ですが、専門的な内容になるので、顧問税理士・会計士などに相談してみるといいでしょう。
さらに、廃棄物処理業がどのような処理をおこなっているかを確認しましょう。廃棄物業者によって、廃棄物処理の内容やリサイクル率に差があります。処理内容が確認できて、かつリサイクル率の高い業者を選ぶことも有効です。
まとめ
環境分野は多岐にわたり、なにから手を付ければいいかわからないということがあるかもしれません。
その場合、環境省が策定、推進している「エコアクション21」から着手するといいでしょう。
これは、国際標準規格であるISO14001(環境マネジメントシステム)の簡易版のような内容で、環境省が策定した日本独自のシステムです。あらゆる業種の中小企業が着手しやすく、継続的に取り組みやすい環境経営の方針が定められています。
このシステムを運用することで、環境への貢献だけでなく、経費削減や生産性向上といった副次的な効果もありますし、認証を受けることで社会的な信用が高まり、取引先などからの評価が上がるといったメリットも期待できます。
本記事をもとに、環境経営の課題を見直すためのチェックシートを用意しました。お手もとに置き、自社の課題や取り組むべきことを見直すのにご活用ください。
取材・文:編集部
取材協力
山田 朗(やまだ あきら)
株式会社日本能率協会コンサルティング シニア・コンサルタント。エネルギー管理士、エネルギー診断プロフェッショナル。生産、開発部門のコンサルティングを経て、環境分野を中心としたコンサルティングに従事。主要テーマは、環境・サステナビリティ経営戦略立案、環境マネジメントシステム(ISO14001)の高度化など。
記事執筆
中小企業応援サイト 編集部 (リコージャパン株式会社運営)
全国の経営者の方々に向けて、経営のお役立ち情報を発信するメディアサイト。ICT導入事例やコラム、お役立ち資料など「明日から実践できる経営に役立つヒント」をお届けします。新着情報はFacebookにてお知らせいたします。
環境に配慮した経営のためには?課題がわかるチェックリスト
環境経営の経営課題を見つけるチェックリストを無料配布中。当てはまる「あるある」にチェックを入れるだけで、会社が抱えている問題のタイプを診断できます。手もとに置いて、課題解決の見直しにも。