コラム

2020.12.14 06:00

売れない時代のWeb戦略とは?人間性と本音のマーケティング

第4回 坂口孝則の今伝えたい経済トレンド
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執筆者

坂口 孝則

未来調達研究所株式会社所属。経営コンサルタント。コスト削減・原価・仕入れ等の専門家として企業向けコンサルティングや講演を行い、日本テレビ「スッキリ」などテレビ・ラジオ等にも出演。著書は34冊を超える。近著に『未来の稼ぎ方 ビジネス年表2019-2038』(幻冬舎刊)など。

多く接触し、長い時間を共有するというビジネス戦略

若い二人の恋物語。あるカップルは彼氏が転勤のため遠距離恋愛になった。メールもない時代。彼は恋人に毎日のように速達で手紙を書いた。郵便局員はひたすら彼女に届け続けた。1年後にどうなったか。彼女は郵便局員と結婚した。

心理学的にはザイアンス効果と呼ぶ。簡単にいえば、接触の回数が多いほど好意を抱く人間の習性だ。遠くの親類よりも近くの他人。よく触れ合う人間からは商品もよく買う。

ビジネスはいつだって人脈で動く。取引先との会食で話す内容はたいしたことがないから会食は無駄だ、と批判的に語る人がいる。とんでもない。あれは時間を共有することそのものが重要だ。

盃の下が尖っているのは、飲み干さねば下に置けないようにするためで、同じ酒を飲み交わし親交を深める目的があった。面倒なオヤジがいう「俺の酒が飲めないのか」といった恫喝は文化人類学的にはある種の真理をついている。

潜在顧客にメールするだけでも効果は見込める

先日、ビジネス洋書を読んでいた。そこで語られていたのは原始的な方法だった。これだけCRMやらデジタルマーケティングが隆盛のなかで、「潜在顧客にたくさん連絡しろ」。マジかよ。

私は、もし空き時間があったら何でもいいから知り合いや以前の顧客にメールをすることにした。すると「久しぶり。ところで、こういう案件があるんだけど」といった返信が続々と届いた。

そのあと、社内にお願いして、メールを自動的に送付し、30日後、90日後にも御用聞きの連絡をする仕組みを作った。特別なお金はかからない。メール配信のサービスと契約しているなら実行できるはずだ。

これが効果てきめんで驚くほどだった。システムを使うのが冷たい感じがするなら、読者の社員に「スキマ時間があれば潜在顧客に挨拶メールを送ること」と送付回数を指示してもいい。

MAと人間性

米国のアパレル店で非常に面白い取り組みを聞いた。店舗で買い物をする。女性店員が男性客のメールアドレスを訊く。後日、男性客はその女性店員からの個別メールを受け取る。「あなたにオススメしたい新作があります」。

男性客は勧められた新作を見るが、あまり気に入らずに、違う服を眺めていた。買おうか悩んでいるタイミングで、なんと女性店員から電話がかかってくる。

「やあジョン、実はメールしたのと違うんだけど、私が個人的に勧めたい、あなたに似合う服があって……」。

彼女が勧めたのは。まさに彼が迷っていた服だった。彼はもちろん購入を決める。彼からすると、奇跡的、運命的なつながりのように思えるからだ。

おわかりだろうが、彼女からのメールもシステムが送付している。彼がどのページを何分くらい見ているかも機械的に把握しており、本部が彼女に電話をするように依頼している。

これは数年前から話題となっているMA(マーケティグオートメーション)を応用したものだ。顧客のIPアドレスを紐付けて、ホームページの行動や滞在履歴を把握できる。たとえば「問い合わせページ」にまでやって来ても離脱した状況もわかる

私が興味深いと感じたのが、MAを人間で補完している点だ。顧客への最終的なタッチは前述で書いた例のようにメールではなく、人間が対応している。現在では、電話での営業代行のサービスも充実してきている。デジタルと組み合わせることで効果があがる。何よりも、人間が触れたいのは人間なのだ。

本音を語るマーケティングを

ところで私はホームページの内容や、メールマガジンの記事でどのような内容のアクセスが多いかを常に気にしている。また、私はメディアで連載が6つほどあるから、同じくコンテンツによる人気度を注目している。

結果、流行に乗ったものが一番だ。ただ、それ以外でいえば、自分の経験や失敗を赤裸々に語ったものだ。これはやはり人間に興味があるのは人間ということだろう。そして、次に、本音を語ったものだ。実は、私はこの本音に、中小企業の突出策があると考えている。

このところ、中小企業でもホームページでCSR、ESG、SDGsといった言葉を並べている。それらは説明不要なほど、企業活動で重要視されているようだ。もちろん私も否定するわけではない。

ただ、見ている側はどうしてもそこに、建前や偽善、皮相といった感覚を抱いてしまうのだ。利益よりも社会貢献。そりゃわかるが、もっと本音で話してくれよ。

おそらく2020年のGDPはマイナス6%程度になるだろう。企業の売上高や利益は大きく下がるに違いない。実際に一部を除き、大手企業の決算予想も暗い見通しだ。正直にいえば、生き残るだけで大変なのだ。

中小企業のホームページを見ると、潜在顧客が訊きたい肝心の本音が書かれていない。サービスの価格はいくらなのか?→「お問い合わせください」。他社と比較して問題点はないのか?→「多くのお客様に選ばれています」。

自らをさらけ出さずに結婚したカップルは離婚に至る。建前だけで集まった潜在顧客とは長続きしない。素と本音でぶつかっていれば、ミスマッチも少なくなる。コロナ禍は、自社に合った顧客を選ぶ戦略を練る時期でもあると私は思う。

企業人は常に潜在顧客の立場になってみるべきだ。綺麗事だけを述べる会社。そして本音を述べて、その後も泥臭く接触してくる企業。スマートを売りにする企業が多い現代では逆説的だが、どちらと添い遂げたいだろうか。

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