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コラム
2020.11.16 06:00
ウィズコロナの今こそチャンス!広告費削減時代の宣伝戦略
この記事に書いてあること
執筆者
坂口 孝則
未来調達研究所株式会社所属。経営コンサルタント。コスト削減・原価・仕入れ等の専門家として企業向けコンサルティングや講演をおこない、日本テレビ「スッキリ」などテレビ・ラジオ等にも出演。著書は34冊を超える。近著に『未来の稼ぎ方 ビジネス年表2019-2038』(幻冬舎刊)など。
メディアの境界は溶けていく
「テレビ広告を出稿していないのに、テレビ広告で買ってくれた」。
先日、面白い話を聞いた。某企業はテレビ広告に注力しておらず、ネット広告が中心だった。しかし、商品を買ってくれた消費者のアンケートによれば購買動機はテレビ広告だったという。
理由は、いまのテレビはネットにつながっており、YouTubeを視聴できる。そこで見た動画CMをテレビCMと勘違いしたわけ。なるほど、視聴者からすれば見たツールがテレビならば、その出稿元など関係がないわけだ。
通常ならばテレビCM出稿は多額の費用精算がかかる。それに対してネット広告ならば手軽だ。マスに訴えるならばテレビCMはいまだに有効なものの、それでもターゲットを絞ったネット広告との境界が融解している。これは中小企業のマーケティングを考えるに象徴的だ。
私がテレビに出始めた10年前。YouTubeといった単語を発するのは躊躇した。しかし、いまではYouTubeでバズる動画をテレビが取り上げるのは当然となり、むしろテレビに出たければネットで人気者になるほうが近道ではないか。
私は書籍を36冊ほど上梓している。著者にとって小売店やネット書店の品切れが一番の関心事だった。売れどきを逃すからだ。しかし、電子書籍がさかんになり、著者にとって販売機会を確保できた。
さらに面白い事象が起きている。かなりの数が、Kindleで購入した後に、読み上げ機能で音声として楽しんでいるという。ジョギングしながら、通勤途中など、目ではなく耳でコンテンツを摂取している。
著者としては文字コンテンツを提供しているつもりでいた。しかし、音声コンテンツを消費されている。これもメディアが溶けている好例だろう。
私は必ずしも賛成しないものの、現在、書籍をイベントチケットと同等に扱う著者がいる。海外の著者で面白いと思ったのは、書籍の最後に白紙のページがあり「これを提示してくれたらいつでもサインしますよ」というもの。本を買ってくれたらリアルに会える。この場合、本は出版だろうかチケットだろうか。あるいは、面談権利だろうか。
宣伝広告費の縮減
ところで、企業は不景気や危機になると社員の教育費を減らす。次に外部へのコンサルティング費用を減らす。そして、宣伝広告費を減らす。
出す主体が少なくなれば、広告単価が安くなり、宣伝の出稿はしやすくなる。この局面では中小企業がむしろチャンスといえる。しかも、現在ではターゲティング広告など、効率的なアピールが可能になっている。
LTVという言葉がある。これは生涯にわたってどれくらい顧客がお金を落としてくれるかの指標だ。これが10万円なら、極端な話、9万9999円が宣伝による獲得コストであっても、やらないよりもやったほうがいい。収益が増すからだ。
とはいえ、中小企業にとっては決断が難しい。1年で見れば宣伝しても赤字に思えるかもしれない。しかし、多くの場合、集客すればするほど、トータルの収益は増えていく。まずは仮説でもいいので、一人の顧客がどれほど自社にお金を使ってくれるか計算が必要だ。それができれば、あとはアクセルを踏めばいい。
社員に報酬を払える仕組みを!
また、これをきっかけに高い客単価をもらえる事業創造が重要だ。お客から買い叩かれる理由は、結局のところ、どこでもできる仕事だからだ。自社の宣伝をしても、お客からすれば購買決定の理由がない。
ここで具体的な指標を示したい。製造業では、熟練工の工賃として顧客が払ってくれるのは1秒=1円。つまり時間で3600円だ。いっぽうで非熟練工なら、1秒=0.5円くらい。時間では1800円となる。
人を使うと、報酬の1.5倍ほどもろもろ費用がかかる。だから1800円を1.5で割ったら1200円だ。最低賃金がいくらであるべきか議論があるものの、アルバイトを含めて1200円を払えるぐらいのビジネスモデルではないと生き残れないと私は思う。
最低賃金が上がると経営が成り立たないと意見がある。ただ、そもそもが無理ゲーだからだ。理想はいくらであっても買ってくれるお客を集めることだ。
コストと収益を計算し、新たなビジネスモデルに挑戦しよう
現在、中小企業でもメディアを使って自社を広めるチャンスにあふれている。高収益、高利益のモデルを構築できれば一気に知名度をあげられるだろう。
メディアは、予算が潤沢ではない中小企業にも活用できる存在になっている。あとはコストと収益を計算しつつ実行する覚悟だけだ。
とはいえ、宣伝をするのであれば、広く取引先を募るビジネスモデルを構築せねばならない。特定企業の下請けに甘んじているのであれば、収益の拡大は望めない。
つまり、このコロナ禍は中小企業にとって宣伝改革、ビジネス改革、脱下請け改革の嚆矢となるものだ。私の実感としても、特定の企業に依存しない状況は経営的にもラクだ。
何より、いざとなればあの理不尽な取引先と手を切れると思えば、社員の福利厚生も向上するだろう。
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