コラム

2023.06.06 06:00

【2023年度版】中小企業にこんなに使いやすい!IT導入補助金をご存じですか

IT導入補助金のススメ 中小企業にこんなに使いやすい!IT導入補助金をご存じですか
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この記事に書いてあること

※本記事の内容は、記事作成日時点(2023年6月)の情報に基づいています。最新の情報は各施策の公式サイトなどをご参照ください。

IT導入補助金とは?

IT導入補助金は、企業が「生産性向上(業務効率化)」に役立つITツールを導入する際に、その導入金額の一部分を国に補助してもらえる制度です。

正式名称は「サービス等生産性向上IT導入支援事業」で、バックオフィス業務の効率化や新たな顧客獲得など「付加価値向上」につながるITツールの導入を支援するための支援事業です。

対象や補助額が異なる「通常枠(A類型)(B類型)」「セキュリティ対策推進枠」「デジタル化基盤導入枠」(デジタル化基盤導入類型、および複数社連携IT導入類型)が設けられています。

「聞いたことはあるけど、難しいんじゃないの?」

「うちの業務は特殊だから、対応してないのでは?」

などと考えて尻込みしているとしたら、実にもったいない!

今回の記事では、IT導入補助金とはどんな制度なのか、その概要をご説明します。

IT導入補助金による「生産性向上」とは?

IT導入補助金の対象となるのは「生産性向上」のためのITツール導入です。

では、生産性向上とはなにかといえば、仕事の無駄を省くことで、1人あたりの「粗利益金額」を増やすことです。

より正確にいうと、

「粗利益(売上-原価)/(従業員数×1人当たり勤務時間(年平均))」

と定められている労働生産性を向上させることが目的になります。

生産性向上についてはこちらのコラムもご覧ください。
生産性とは?生産性の種類や生産性を向上させる8つの施策などわかりやすく解説

たとえば中小企業では、経理で手書きの伝票を使っているところは珍しくありません。また、パソコンで処理しているとしても、エクセルやワードなどの汎用的なオフィスソフトで処理しているというケースもよく見られます。

そこに専門の経理システムを導入すれば、日々の経理業務に必要な労働時間が大幅に削減されます。このように同じ結果を出すために、より短い労働時間で済ますことができれば、生産性が向上していることになります。

あるいは、営業部に顧客管理システムを導入することにより、見込み顧客への効率的なアプローチが可能になれば、今までと同じ営業活動の時間でもより多くの売上や粗利益を上げることも可能になるでしょう。

このように、同じ労働量でより多くのアウトプット(粗利益)を出すことも、生産性向上にあたります。

導入の成果は?

中小企業庁が発表しているデータによれば、IT導入補助金の採択された事業者の平均で、

・労働生産性が24%増加、売上が16%増加

・勤務時間は2%減少

などの成果が出ています。

国の補助を得ながらITツールを導入して、労働時間を減らしながら売上アップ、そんな魅力的な制度が、IT導入補助金です。

IT導入補助金はどんな企業で使えるのか

IT導入補助金の対象となる企業には、いくつかの要件が定められています。細かい要件もありますが、ここでは主なものを記載します。

(1)中小企業、小規模事業者であること

申請できるのは、中小企業基本法に定義されている「中小企業」または「小規模事業者」になります。同法では業種ごとに、資本金または常勤従業員数が一定以下の企業を中小企業、または小規模事業者と定めています。

(例)

  • 製造業、建設業、運輸業:資本金3億円以下または従業員数300人以下

  • 卸売業:資本金1億円以下、または従業員100人以下

  • サービス業(ソフトウェア業などを除く):資本金5000万円以下または従業員数100人以下

  • 小売業:資本金5000万円以下または従業員数50人以下

なお、法人化していない個人事業主でも対象となります。また、医療法人、社会福祉法人、学校法人、財団法人、社団法人、特定非営利活動法人なども、一定の規模以下であれば対象となります。

(2)日本国内で事業をおこなうこと

海外での事業展開は対象となりません。

(3)労働生産性の目標計画を作成すること(通常枠のみ)

補助事業を実施することによる労働生産性の伸び率の向上について、1年後の伸び率が3%以上(過去3年間に類似の補助金を受けている場合は4%以上)、3年後の伸び率が9%以上(同12%以上)およびこれらと同等以上の生産性向上を目的とした数値目標計画を作成することが求められます。

(4)交付申請の内容について、IT導入支援事業者などの確認を受けること

IT導入支援事業者(後で説明します)にパートナーになってもらい、一緒に申請するのが、IT導入補助金のしくみです。

(5)ITシステム導入後の事後報告をすること

ITシステム導入後、実際に支払った金額などにもとづいて「事業実績報告」をします。さらに、一定期間システムを業務に利用した後には、どの程度生産性向上の効果があったのかなどを報告する「事業実施効果報告」の義務もあります。

他にも項目はいろいろありますが、簡単にいえば、中小企業で、法令違反などがなく、IT機器の導入によって生産性を向上させることができる(そのためにきちんと取り組む意志がある)会社であれば、業種や売上を問わず、幅広く申請することが可能です。なお、宗教法人、および風俗営業の事業者は対象外です。

IT導入補助金の「枠」および「類型」とは

IT導入補助金には、「枠」および「類型」で分類される種類があり、2023年度は、以下のような枠、類型が設定されています。

  • 通常枠:A類型、B類型

  • セキュリティ対策推進枠

  • デジタル化基盤導入枠:デジタル化基盤導入類型、複数社連携IT導入類型

類型の違いについて簡単に確認できる早見表はこちら。
【2023年度版】IT導入補助金 類型判別早見表

通常枠の概要:A類型、B類型

会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトも含めて、幅広いITツールの導入が補助対象になっています。ただし、ハードウェアは対象外です。

  • システム要件:生産性向上に役立つITツール導入であること

  • 必要なプロセス数:A類型では1以上、B類型では4以上

  • 補助対象:ソフトウェア購入費、クラウド利用費(クラウド利用料1年分)、導入関連費

  • 補助金額:A類型:5万円~150万円未満、B類型:150万円~450万円

  • 補助率:1/2以内

  • 賃上げ目標:A類型は申請時の加点要素、B類型は必須要件(未達の場合は補助金返還)

セキュリティ対策推進枠の概要

独立行政法人情報処理推進機構(IPA)が公表している「サイバーセキュリティお助け隊サービスリスト」に掲載されるサービスを利用するための料金の補助を受けられる枠です。

  • 補助対象:サイバーセキュリティお助け隊サービス利用料(最大2年分)

  • 補助金額:5万円~100万円

  • 補助率:1/2以内

デジタル化基盤導入枠の概要

デジタル化基盤導入枠は、「新型コロナウイルス感染症の影響を受けつつも、生産性向上に取り組む中小企業・小規模事業者等を支援するとともに、インボイス制度への対応も見据えつつ、企業間取引のデジタル化を強力に推進するため、「通常枠(A類型・B類型)」よりも補助率を引き上げて優先的に支援する」枠とされています。

単独で申請できる「デジタル化基盤導入類型」と、10者以上の事業者(法人、個人事業主)が共同で申請する「複数社連携IT導入類型」とがあります。

デジタル化基盤導入類型

デジタル化基盤導入枠(デジタル化基盤導入類型)の対象ITツールは会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフトとなります。また、クラウド利用料の他、PC・タブレット、レジ・券売機等のハードウェアの導入費用も補助対象となります。

  • システム要件:インボイス制度への対応を見据えた、会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフト、および、PC・タブレット、レジ・券売機等のハードウェアの導入であること

  • 補助対象は、ソフトウェア購入費、クラウド利用費(クラウド利用料最大2年分)、ハードウェア購入費、導入関連費

  • 補助金額

  • ソフトウェア:350万円以下
    (内、50万円以下部分は、会計・受発注・決済・ECのうち1機能以上、50万円超~350万円部分は、会計・受発注・決済・ECのうち2機能以上)

    ハードウェア:10万円以下(PC、タブレット、プリンター、スキャナ・複合機)、または20万円以下(レジ、券売機等)

  • 補助率:ソフトウェア: 50万円以下部分は3/4以内、50万円超~350万円部分は2/3以内

  • ハードウェア:1/2以内

  • 賃上げ目標:加点要素

複数社連携IT導入類型

複数の中小・小規模事業者が連携してITツールおよびハードウェアを導入することにより、地域DXの実現や、生産性の向上を図る取組に対して、複数社へのITツールの導入を支援するとともに、効果的に連携するためのコーディネート費や取組への助言をおこなう外部専門家に係る謝金等を含めて支援するものです。イメージとしては、商店街などで共同してIT導入をおこなう際に利用するものです。

  • システム要件:デジタル化基盤導入類型と同様のシステム、および、消費動向分析システム、経営分析システム等のシステム

  • 補助対象:デジタル化基盤導入類型と同様。それに加えて、デジタル化基盤導入類型の要件に属さない複数社類型特有の経費。

  • 補助金額:デジタル化基盤導入類型と同様。それに加えて、消費動向等分析経費:50万円×参画事業者数、および、補助事業者が参画事業者をとりまとめるために要する事務費、外部専門家謝金・旅費

  • 補助上限額:3,000万円、デジタル化基盤導入類型の要件に属さない複数社類型特有の経費は200万円

  • 補助率:デジタル化基盤導入類型と同様。それに加えて、デジタル化基盤導入類型の要件に属さない複数社類型特有の経費は2/3以内。

IT導入補助金をサポートするIT導入支援事業者

IT導入補助金の対象となるITツールは、あらかじめ事務局の認定を受けたものに限られています。そのITツールを事務局に申請し、認定されたITベンダーなどは、「IT導入支援事業者」として登録されています。

登録されたIT導入支援事業者は、申請する企業の共同事業者(=パートナー)として、この補助事業を手助けする役割を担う者となります。具体的には、ITツールの提案や導入の支援、補助金の申請に必要な事業計画の策定支援など、各種申請等の手続きのサポートをおこないます。

IT導入補助金は、IT導入支援事業者をパートナーとし、共同で申請をする制度になっています。したがって、まず自社で導入したいITツールをIT導入補助金Webサイトでの検索などして、めどがついたら、そのツールを取り扱っているIT導入支援事業者に相談します。

また、出入りのITベンダーやシステム業者などがすでにいるのであれば、その業者がIT導入支援事業者に登録されていないかたずねてみるとよいでしょう。その上で、適切なツールがないか探してもらえる場合もあります。

そういった懇意のITベンダーがいない場合で、どんなITツールを導入すればいいかわからない場合は、近くのよろず支援拠点や、商工会、商工会議所、ITコーディネーターなどの支援機関に相談することも推奨されています。

IT導入補助金で導入できるツールにはどんなものがある?

IT導入補助金の対象となる導入ツールは、汎用的なものから、業種特化的なものまで、多種多様に揃っています。

汎用的なものとは、一般的な会計管理システムや給与管理システムです。

また、運輸業であれば、複雑になりがちなドライバーの勤怠管理をする専用システム、建設業であれば、CADデータと連動して見積りデータの作成をおこなうツールなど、業種に特化したツールもあります。

デジタル化基盤導入枠については、インボイス制度への対応を見据えた、会計ソフト・受発注ソフト・決済ソフト・ECソフト、および、PC・タブレット、レジ・券売機等のハードウェアのみが対象となります。

具体的なITツールの分類など

この補助金を使って導入できるITツールなどは、導入支援事業者が提供するITツールで、事前に補助金事務局に申請し認定を受けたものに限られます。具体的にどんなITツールがあるのかは、補助金事務局のウェブサイトで確認できます。

大きくわけると下記のようになっています。

補助を受けられるITツール等の種類

【大分類1:ソフトウェア】

  • カテゴリー1:ソフトウェア

【大分類2:オプション】

  • カテゴリー2:機能拡張

  • カテゴリー3:データ連携ツール

  • カテゴリー4:セキュリティ

【大分類3:役務】

  • カテゴリー5:導入コンサルティング

  • カテゴリー6;導入設定・マニュアル作成・導入研修

  • カテゴリー7:保守サポート

さらに、ソフトウェアは「プロセス」(どういう業務プロセスを効率化するのか)という観点から分類されています。

(1)業務プロセス(共通プロセス)

  • 顧客対応・販売支援

  • 決済・債権債務・資金回収管理

  • 調達・供給・在庫・物流

  • 会計・財務・経営

  • 総務・人事・給与・労務・教育訓練・法務・情シス

(2)業務プロセス(業種特化型プロセス)

  • 業種固有プロセス

(3)汎用プロセス

  • 汎用・自動化・分析ツール
    (業種・業務が限定されないが生産性向上への寄与が認められる業務プロセスに付随しない専用のソフトウェア)

なお、「業務プロセス」とは、ソフトウェアが保有する機能を導入することによって、特定の業務の労働生産性が向上する、または効率化される工程のことを指します。
(例)①顧客対応・販売支援→CRM:顧客購買履歴・対応履歴全社共有・顧客分析・販促・アフターケア機能

また、「汎用プロセス」とは業種・業務に限定されず、業務プロセスと一緒に導入することでさらに労働生産性を向上させるものを指します。
(例)文書作成ワープロソフト、表計算ソフト、簡易データーベースソフト、プレゼンテーションツール、メールソフト

ツール導入の注意点

導入するITツールは「【大分類1:ソフトウェア】の「業務プロセス(1)(2)」が必ず含まれていなければなりません。

つまり、【大分類2:オプション】や【大分類3:役務】だけに該当するツールのみ、あるいは、「汎用プロセス」だけに該当するツールのみを導入することはできません。

また、通常枠のA類型は1プロセス以上、B類型は4プロセス以上を含むツール、またはツールの組み合わせが補助対象となります。

なお、上記の点は実際に申請する際には、IT導入支援事業者がサポートしてくれますので、細かいところまで理解している必要はありません。

実際にどんな業種の企業が、どんな風にIT導入補助金を活用しているのかといった具体例をダウンロード資料としてご用意しましたので、ご覧ください。

※本記事の内容は、記事作成日時点(2023年6月)の情報に基づいています。最新の情報はIT導入補助金の公式サイト(https://www.it-hojo.jp/)などをご参照ください。

藤田有貴子さんの顔写真

監修

藤田有貴子(ふじた ゆきこ)

中小企業診断士。国家資格キャリアコンサルタント。慶應義塾大学大学院経営管理研究科修了。シンクタンクやIT企業等で企画調査分析、補助金を活用した新規事業立ち上げを経験し、実践的な支援を得意とする。

中小企業応援サイトロゴ

記事執筆

中小企業応援サイト 編集部 (リコージャパン株式会社運営

全国の経営者の方々に向けて、経営のお役立ち情報を発信するメディアサイト。ICT導入事例やコラム、お役立ち資料など「明日から実践できる経営に役立つヒント」をお届けします。新着情報はFacebookにてお知らせいたします。

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